「時事評論石川」2月号のお知らせ。
世の中、「武漢肺炎」一色である(この名称を使ふべきといふ浅野氏の論考はその通り。四日市ぜんそく、水俣病など、地名で病名をつけることはをかしくないはず)。何が嫌つて、下手なサッカーチームよろしくボールがあるところに人が集まるが如く、ニュースがこの話題に集中することである。
大事なことは、いくらでもある。中国の南シナ海の支配や日本の土地の購入問題も、それから習近平の国賓待遇問題もある(二面の吉田先生の論考を参照)。児童虐待防止法の改正も、ロシアのスパイの問題も、大学入試改革だつてまだ終はつてゐないし、消費税の引き下げだつてこれからでも検討すべきである。さういふいろいろな大問題が吹つ飛んで、公衆衛生に電波ジャックされてゐる事態は、愚かとしか言ひやうがない。 国会は国会で、まだ桜を見る会のことをやつてゐる。いい加減にせい。これほどまでに時間と経費を無駄にしてゐるのは、何か大きな問題を隠すためにわざと些末なことに国会の審議日程を費やしてゐると勘繰りたくなる。
『南京事件』については、この書を以て確定としてはどうか。何か異論があるのなら、左翼陣営は批判本を出すべきである。教科書も何十万人説をさつさと引き下げて、「真実」を書け。文科省の検定といふ制度は果たして機能してゐるのかしらん。
「この世が舞台」は、ソフォクレスの『コロノスのオイディプス』。「人間は誰しも未來が摑めぬ『穢れの住み家』でしかない」といふ言葉が重い。それなのに、一部の政治家や教育者やテレビのコメンテーターは、言へば何とかなると思つてゐるやうで、人間を軽信してゐる。その意味では人間音痴である。聖書は「曲がつた矢」と人を譬へてゐたと思ふが、どんな弓の名手も矢が曲がつてゐれば、その矢を的に当てることは難しい。だからこそ技術が磨かれ、文化が洗練されていくのである。矢は真直ぐであるはずといふ観念が、人間を駄目にしていく。ソフォクレスがこの作品を書いたのは90歳。アテナイの市民に遺言として書いたのだらうが、ソフォクレスの死の翌年、アテナイはペロポネソス戦争に敗北したと言ふ。かう書いてゐる留守氏の筆も重いやうに感じた。
今月号の内容は次の通り。
どうぞ御關心がありましたら、御購讀ください。 1部200圓、年間では2000圓です。 (いちばん下に、問合はせ先があります。)
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中国共産党独裁体制の限界を露呈した「武漢肺炎」
平成国際大学教授 浅野和生
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同じ轍を踏むのか
習近平の国賓待遇を巡る高原東大教授と安倍首相の不見識
宮崎大学准教授 吉田好克
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教育隨想 教科書のデタラメさは日韓両国共通だ(勝)
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一次資料が明かす
『南京事件の真実』――アメリカ宣教師史観の呪縛を解く
南京事件研究家 阿羅健一
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「この世が舞台」
『コロノスのオイディプス』 ソポクレス
早稲田大学元教授 留守晴夫
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コラム
配慮を尊重する割には冷たい(紫)
模範的“謀殺”とは?(石壁)
批評家失格の憂国説(星)
中村哲氏の言葉を考へる(白刃)
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