言葉の救はれ・時代と文學

言葉は道具であるなら、もつとそれを使ひこなせるやうに、こちらを磨く必要がある。日常生活の言葉遣ひを吟味し、言葉に学ばう。

美しかつた本日の空

2015年09月26日 22時07分47秒 | 日記

今、住んでゐる家から見た景色である。何気なくベランダに出た時の空があまりに美しくて、ついカメラに収めたものである。夏と秋との重なり、穏やかな海、ちょうど良い気温、幸せなひと時であつた。その後、散歩に出た。久しぶりに自然の中にゐるといふことを感じた一日であつた。

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鷲田清一『しんがりの思想』

2015年09月21日 21時40分12秒 | 日記

 「反リーダーシップ論」と副題がついた本である。
 リーダーであることを目指すことが、今日の社会が直面してゐるほんたうの課題をむしろ押し隠すといふ方向にしか機能しないのではないかといふ問題意識が、著者にこの本を書かせたやうだ。

 大阪大学の総長まで務めた著者が、かういふ本を書くといふのだから、大学といふ組織は相当程度に「反リーダー」的であるといふのだらう。アカデミズムはそもそも誰かに言はれて行動することを嫌ふ。自分の頭で考へることを尊重するのだから、それは当然である。しかしながらである。あへて言へば、人はいつでも時代の子である。自分の頭で考へたと思つても、やはり時代の空気に動かされてゐるのである。ましてや国家から、あるいは国から補助金を得て経営が成り立つてゐる大学の教員が、果たしてどこまで徹底的に自分の頭で考へられるのか疑問である。

 うがつて言へば、大学の責任者として、教授会と文科省からの指示との間で苦しんだ故の感慨であるとも思へたのである。学問とは何か、大学とは何かと誠実に考へる著者であるからこそ、経営的な観点での政治家のリーダーシップに基づく文科省からの「改革」要求に我慢がならなかつたのではないか。

 その気持ちは分かる。しかし、リーダーが必要なところもフォロワーが必要なところもあるといふのが、より誠実な思考ではないか。リーダー不在のところにはリーダーが、やることは決まつてゐるところでは、淡々と仕事をこなしていく真面目なフォロワーが必要なのである。私には、「しんがり」とはさういふ人物であると思へる。

 亀井勝一郎が幕末の官僚栗本鋤雲を取り上げて称揚し、中村光夫が彼を主人公に『雲をたがやす男』といふ戯曲を書いたが、彼はリーダーでもあり、フォロワーでもあつた。さういふ人物こそが今求められてゐるのである。

 安倍総理が、戦後レジームからの脱却と言ふことにはやや異論があつて、私は戦後レジームの解消だと思ふ。しかし、彼は責任の所在を明確にしてその解消を断行してゐる。「課題を押し隠す」のではなく「課題を顕在化」して歴史に挑んでゐる。その真価は当然、数年の内には分からない。しかし、誰が行つたのかは明確なのだから、それは無責任ではない。

「国の重要政策になると、教育『改革』であれ、憲法の『解釈変更』であれ、年金制度の『改定』であれ、それらの決定は、決定にかかわるひとたちの人気をはるかに超えて、遠い未来世代の行く末にまで大きな影響を与える。(中略)未来世代が抱え込むかもしれない負荷については、責任をとらないし、とれもしない。」

 かういふ批判は一面正しいやうに思へる。しかし、深いところで無責任を隠蔽してゐる。きつと著者自身も気づいてはゐまい。未来世代に大きな影響が出ることを気にして、彼らに目に見える負荷をかけまいとすることが、「ほんたうの課題をむしろ押し隠す」ことになるといふことなのである。

 いやな感じがする。


 知的に興奮する本であつた。新書で讀みやすい文章である。全面的に否定するものでもない。だが、やはり鷲田さんとは違ふなといふ差異を実感する書であつた。

(角川新書 820円+税)

 

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(お知らせ)岡崎久彦文語賞 作品募集

2015年09月20日 10時18分19秒 | 日記
私が所属する国語問題協議会から、案内が来ましたので告知いたします。

第一回 文語作文コンクール 岡崎久彦文語賞

趣旨 長く日本文化の伝統を支へてきた格調高く優美な文章語である文語を後世に伝へていくために、優れた文語創作を顕彰し、文語の魅力を世に訴へる。

主催 特定非鋭利活動法人 文語の苑

締切 平成27年11月30日(月)必着

応募作品 未発表の文語作文とする。課題は設定しない。創作のみならず口語文で執筆された文章や文語作品の文語訳も含める。創作でない場合は原文の引用文を明示のこと。著作権に配慮すること。

枚数 800字以上、4000字以内


賞金 最優秀作品 岡崎久彦文語賞 20万円
   二等賞  5万円
   三等省  3万円
   佳作   1万円

審査委員長 藤原正彦(お茶の水女子大学名誉教授)
  委員  瀧 一郎(大阪教育大学教授)
      愛甲次郎(元クウェート大使・元ソニー専務)
      市川 浩(国語問題協議会常任理事)
      加藤淳平(元国際交流基金専務理事)
      谷田貝常夫(文字文化協会理事長)

詳細は、文語の苑ホームページでご確認ください。

    http://www.bungonosono.or.jp
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時事評論 最新号のご案内

2015年09月19日 11時50分16秒 | 日記
 学校が始まると、まつたく更新できなくなつてしまふ。書きたいことがないわけではないが、書く時間があれば事務の処理にあててしまはう。そして夜帰宅すると、少し頭を休ませようと考へてだらだらと時を過ごしてしまふ。ずゐぶんのん気な感慨であるが、やはりその程度なのである。ご勘弁を(だれに謝罪してゐるのかも定かではありませんが)。


 それでも、時事評論だけは毎回筆を取らせてもらつてゐる。表現する場があることに感謝をしてゐる。

 今月号は、次の通り。 どうぞ御關心がありましたら、御購讀ください。
1部200圓、年間では2000圓です。
(いちばん下に、問合はせ先があります。)

                 ●



 

   ☆    ☆    ☆

安保法案を潰すためなら・・・・・・

――中国を平和勢力と見なす痴呆メディア―― 

   ジャーナリスト 山際澄夫



中韓関係 前のめり韓国、冷淡な中国

   韓国語翻訳家・韓国問題研究家 荒木信子




教育隨想

安倍談話は村山談話を乗り越えたか(勝)




芥川賞の今昔

転げ落ちていく日本文学 
         文藝評論家 前田嘉則



この世が舞台

『サン・ルイス・レイ橋』 ソーントン・ワイルダー


コラム


     三度目の反省文(紫)

     安易な「謝罪」の行方(石壁)

     邪知暴虐の安保法案審議(星)

     歴史を押しつける者(騎士)



問ひ合せ

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