言葉の救はれ・時代と文學

言葉は道具であるなら、もつとそれを使ひこなせるやうに、こちらを磨く必要がある。日常生活の言葉遣ひを吟味し、言葉に学ばう。

『カエルの楽園』を読む。

2017年09月24日 19時23分36秒 | 日記
カエルの楽園 (新潮文庫)
百田 尚樹
新潮社

 

 

 文庫になつたら読まうと思つてゐたら、想像以上に早く文庫になり、直ちに読んだ。三時間ほどで読める。内容は、まさに現代日本を戯画化したものである。安全保障を巡る私たちの国の言論状況のお粗末ぶりを真剣に的確に書いてゐる。

 しかし、百田尚樹氏は楽しくはなかつたであらう。笑ひながら書いてゐたかもしれないが、平和主義者の主張の方をたくさん書かなければならないのであるから、内心は愉快であるはずはない。

 憲法九条があるから平和が保たれてゐる、こんなウソ話が真実だと「信」じられてゐるのであるから、恐ろしい。それはまさに信仰の境地であらう。憲法は経典であり、教祖はマッカーサーか。その名は「平和信教」である。

 カエルでしかない私達。それでもこの国に生まれた私達には、逃げる場所もない。言論でたたかふしかないが、極めて疲れることである。信者から信仰を奪ふことはたいへん難儀なことだからである。「ゲロゲロ」と「ケロケロ」とを合唱しあつてゐるのであれば、まさに徒労とならう。さうしてそんなことをしてゐるうちに、ミサイルが飛んでくるのではないか。最近ではそんなことさへ危惧される状況である。

 

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天のはしごに秋の風

2017年09月18日 22時34分28秒 | 日記

弾丸大阪ツアー。台風に向かつて行き、台風を見送る。そして天梯を見る。
本を読むつもりでゐたが、少ししか進まず。でも頭が動き出した感じがした。
さあ秋だ。

 

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『オデッセイ』を観る。

2017年09月13日 15時30分08秒 | 日記
オデッセイ [Blu-ray]
マット・デイモン,ジェシカ・チャステイン,クリステン・ウィグ,キウェテル・イジョフォー,ジェフ・ダニエルズ
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

 ふとしたきつかけで『オデッセイ』を観ることになつた。

 アメリカ映画。不慮の事故で火星に一人取り残された仲間を再び地球に帰還させるといふ話。

 死んだと思つてゐた仲間が生きてゐたといふことを知る。船長はその仲間が死んだはずだと判断して火星を脱出した。しかし、生きてゐたことを知る。そこでの心理的葛藤がある。

 そして、その生き残つた宇宙飛行士は、たまたま植物学者であつたので、火星基地内を緑地化し(水や肥料の作り方も映画では描かれてゐる)ジャガイモの栽培に成功する。定義によれば「外地に植物を栽培することを以て植民地の開始」とするやうである。したがつて彼は火星の植民地化を行つた人物といふことになる。

 もちろん、映画はそのあといくつかのドラマを用意し、観客を飽きさせない。科学的な知見のない私にはその当否はあまり関心がない。しかし、アメリカ人のこの横溢する危機意識と、それを救済するに際しての知の総合力、レヴィストロース流のブリコラージュの執念に、気持ち良さを感じる。

 人を救ふことにこれほど熱心になれる国民は、やはり信教の自由を求めたピリグリムファーザーズの血筋なのだらう。この種の映画が量産されるのは、その血筋が騒ぐからだらうと感じる。

 危機に屈しない信念を内に秘めた人=必ず救済に来る仲間が外にゐる人。彼はきつと悲しい人である。

 

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犬塚勉の絵を観る。

2017年09月10日 21時55分49秒 | 日記

 二週間ぶりに休みが取れたので、県内の美術館でやつてゐる「リアルのゆくえ」展を観に出かけた。高島野十郎の絵との再会も楽しみであつたが、なんといつても今回はスーパーリアリズムと呼ばれる写真のやうな絵画を描く犬塚勉の絵を観るのが楽しみであつた。

 ここに貼り付けることはご法度だらうから、犬塚勉の公式ホームページを張り付けておくので興味のある方はご覧ください。そこに出てゐる「梅雨の晴れ間」(1986年)と、ホームページの作品紹介にある「林の方へ」(1985年)とを観た。そこには人の姿はないが、ありありと人間の生活や存在のぬくもりを感じるやうな作品であつた。写真の誕生で絵画がリアルであることを放棄してきた長い時間があつたが、かうして再びリアリズムを捕まへやうとしてゐる。この間に得られた技術と、それを支へる画家のモティーフの強靭さを思ふと、何か勇気を与へられたやうな気がした。

 絵画がまた魅力を持ち始めてゐる。大袈裟に言へばさう思はせてくれる絵であつた。

 9月18日まで碧南市藤井達吉現代美術館。

 その後、姫路市に巡回する予定のやうだ。

 姫路市立美術館 2017年9月23日〜11月5日

リアル(写実)のゆくえ〜高橋由一、岸田劉生、そして現代につなぐもの
木本文平,山田真規子,土生和彦,安部沙耶香,品川ちひろ
生活の友社
   
 
 
写実画のすごい世界
月刊美術
実業之日本社

 

 

 

 

 

 

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