言葉の救はれ・時代と文學

言葉は道具であるなら、もつとそれを使ひこなせるやうに、こちらを磨く必要がある。日常生活の言葉遣ひを吟味し、言葉に学ばう。

休みには休みの難しさがある。

2022年07月31日 09時44分26秒 | 日記

 やうやく長い休みに入つた。

 ゴールデンウィーク以来の休みだらうか。だいぶ疲れも溜まつてゐるやうな気がする。もちろん、日曜日には休める日もあることはあつたが、それでも何かしら仕事をこなさなければ、翌週の仕事が回らないといふ状況で、緊張感が続いてゐた。

 それが端的に現れるのは、朝早く起きてしまふといふことだつた。年のせいもあるが、熟睡といふことをここのところ経験したことがない。寝つきは悪くないが、夜は何度も起きてしまふ。夕方には集中力がなくなることもあつて、仕事のペースが落ちてしまふ。

 それでも「ちょつとお話が……」と生徒や同僚が来れば、直ちに自分の仕事は脇において、そちらの話を聴くことにしてゐる。それがささやかな信条でもある。さうして私の時間は微分化(最適化)されていく。私自身が、恩人たちの人生の微分化によつて育ててもらつたといふ経験があるので、私もさうしようと思つてゐる。

 さういふ時間が三カ月も続いてゐると慣性の法則が働いてゐて、緊張感だけは続いてゐる。何もしなくてよいのだと頭では分かつてゐるが、体の方はいつ何があつてもいいやうに適応できる体勢を整へようとしてゐる。したがつて、いつものやうに何度も起き、早く起きてしまふことになる。そして、読書すべき本を決め、執筆の仕事を組み込んでやるべきリストを作らうとしてしまふ。手帳には予定を入れ、誰とはいつ会ふことにするといふスケジュールを入れて、業務のやうな休みを作らうとしてしまふ。

 これが悪いことなのかどうか分からない。ここには子供の頃の「無為な時間」を過ごしたことへの反省がこびりついてゐるやうな気もするからだ。

 そして、厄介なことには、休みが長くなつてくるにしたがつて、その「業務のやうな休み」からも緊張感は薄れてくるので、「業務」が滞ることへのいら立ちが出てくることだ。この対応が難しい。休みに入つても緊張感があつてうまく休めない難しさ。そして、休みに入つて緊張感が抜けていくことへの苛立ちとの付き合ひ方の難しさ。厄介である。これは私だけのことだらうか。それも分からない。やれやれである。

 今夏も同じやうな過ごし方をしてしまひさうだ。

 

 

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スジの悪い大学入試改革

2022年07月29日 10時05分10秒 | 日記

 やうやく明日から夏休み。今日の大阪出張で、そのまましばらくは休み。

 じつは、一昨日から大阪入りしてゐて、まづは京都大学の交流会に参加。京大の各学部の先生から10分づつ話をうかがふ。これがすこぶる面白い。話そのものといふより、その話の観点がまつたく世間ずれしてゐて、大学といふ空間の独立した雰囲気がいいのである。何学部とは言はないが、新しいことを目指す学問なのだから、その新しさを表現できないと話してゐた。なるほど、その方の認識の中ではその通りきれいに整理されてゐるのであらう。しかし、学問の新しさとは、さういふものなのだらうか。少なくとも文系の学問においては文献研究から始めるのだから、新しいこととは何かを知るためには古いことを知らなければならない。大学の学部といふところが、それに始まりそれに終はるところである。高校三年生に伝へるのであれば、せめて新しさを知るには古さが必要だといふことぐらゐ、丁寧に言つて欲しかつた。

 その他、令和7年度からの入試のあり方を説明する会といふことで、わざわざ出かけたのであるが、結論が今年12月までに発表しますといふ結論だつたのには驚いた。しかも、その時点では明確にはできないことがありますとも言つてゐた。このことを伝へるのに20分以上時間をかけたといふのがさらに驚きだつた。さすがである。法学部の先生だと思ふが、面目躍如であつた。こんなふうにしつかりと計画も立てないで「高大接続改革」など文科省が進めるから、かういふ面倒くさいことになるんだよといふ行政への「大批判」であるやうに私には思へたのである。一見すると、自分の大学の今後の計画の紹介に聴こえながら、じつは行政の不誠実さへの批判が主眼である、さういふ仕掛けを内包してゐるといふのは、皮肉が利いてゐる。目の前に繰り広げられてゐたのは、京大の不誠実の告白ではなく、文科省の不誠実の摘発である。だから、この先生は「こんなことぐらゐしか発表できません」とは決して言はなかつた。「さすがである」と先に私が書いたのは、このことゆゑである。

 大学入試の変化について知らない方にはなんのことかはお分かりにならないと思ふが、いまの高校一年生から入試制度が大きく変はる。そのことについて大学ごとに広く市民に公表せよといふのが文科省の指示である。ところが、その大本の文科省自身(直接的には大学入試センターである)がまだ細目を決めてゐない。それなのに、入試の行はれる2年前にはちやんと示しなさいといふ指示だけは強く出されてゐるから、各大学では今回のやうな「不誠実」な会が行はれるのである。京大の主張もむべなるかな。むしろこの大芝居に拍手喝采を送りたい。

 筋の悪い大学入試改革である、と改めて思つた。

 

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時事評論石川 2022年7月号(819号)

2022年07月22日 10時19分34秒 | 告知

今号の紹介です。

 一面の「忘れられる精神の安全保障問題」は、必読だ。国家の独立は一身の独立からとは福沢諭吉の言葉だが、その言葉が暗示するやうに、独立とは精神の独立である。したがつて安全保障とは精神の安全保障である。今般、安倍元首相の暗殺によつて世の中がパンドラの箱を開けたやうに混乱してゐて、なかんづく「虚しい気分」が蔓延してゐるが、そんなときに、本稿は精神の安全保障に役立つものとなつてゐる。つまりは、私たちの日本は、精神が侵されてゐるのである。しかも、そのことに気づいてゐないといふ状況である。マスコミの対応一つとつても、そのことに気づいてゐないことは明白である。なんとなれば、今起きてゐるのは元首相の暗殺事件であるのに、そのことの重大さはどこかに行つてしまつて、容疑者への同情に終始し、警備当局の大失態や今なすべき諸対策(東アジア情勢・コロナと経済の両立・冬のエネルギー問題・不況脱出策)の遅滞については一向に触れない。

 他責的に自分の不幸を解決しようとする精神の堕落こそが、現代の病理である。酒井氏が挙げてゐる歴史問題もさうであるし、今マスコミが騒いでゐることもさうである。そして、繰り返すが、その精神病理に気づいてゐないのが、その病理の病理たるゆゑんである。だから安全保障の問題にはならないのである。昭和天皇のせいにして、大東亜戦争の問題を解決しようとする左翼の思考は、政府や教団のせいにして、現在の不況や家族崩壊の問題を解決しようとする思考そのものであり、その意味で今のマスコミは左翼であることを露呈してしまつた。そして、そのことに気づかずに毎日毎日物価が高いだの、宗教は怖いだのと言つて、自分は正常だと思つてゐる人々もまた、左翼なのである。

 かつて西部邁は現在の日本は「薄められた左翼に牛耳られてゐる」と言つたが、あれから20年経つて、いよいよそれは完全支配の域に達してゐるやうだ。

 問題は、自己の確立である。物価高が怖いのであれば稼げばいい。それが無理なら我慢すればいい。宗教が怖いならば、信じなければいい。

 その意味で、二面の「教育随想」の次の言葉は示唆的であつた。

「主体性の欠如は往々にして日本人の常であり、発達障害でない健常者が『主体的』だとは、筆者にはとても思へない」

 まさに至言である。「発達障害者の多くは『主体』が弱い」といふ京都大学教授の河合俊雄教授の説への疑問であるが、そこまで言ふのなら、「日本人全体が発達障碍者だ」と言つた方がよいのではないか。言ひ方がきついのであれば、「日本人全体が未発達者だ」と言へばよい。あまりに精神が幼くて、他責的で、自分だけが正しいと思つてゐる幼児的正義感に、閉口するばかりである。

  どうぞ御關心がありましたら、御購讀ください。  1部200圓、年間では2000圓です。 (いちばん下に、問合はせ先があります。)
            ●   

教科書、靖国、慰安婦…

 忘れられる精神の安全保障問題

        元東京大学教授 酒井信彦

            ●

コラム 北潮(森鴎外について)

            ●

憲法9条反対が日本共産党だ

     福山市立大学非常勤講師 安保克也

            ●

教育隨想  発達障害ー「主体性」の欠如への疑問(勝)

             ●

労働問題は何処へ行った

     元大学教員 青木英實

            ●

コラム 眼光
   『傲慢罪』(慶)
        
 
            ●
コラム
  歴史認識としての幻想(紫)

  不可解な「反戦デモ」(石壁)

  貧しい文化が招く建築破壊(星)

  割れ鍋に綴ぢ蓋(梓弓)
           

  ● 問ひ合せ     電   話 076-264-1119    ファックス   076-231-7009

   北国銀行金沢市役所普235247

   発行所 北潮社

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追悼 三本和彦さん

2022年07月17日 22時07分02秒 | 評論・評伝

 自動車ジャーナリストの三本和彦氏が亡くなつた。車そのものの批評も素晴らしかつたが、日本の車社会の問題点もズバリと言ひ当ててゐた。心に残る言葉もいくつもあるし、心に残る言葉をインタヴューの相手から引き出す人でもあつた。

 

【訃報】三本和彦氏がご逝去されました(ベストカーWeb) - Yahoo!ニュース

【訃報】三本和彦氏がご逝去されました(ベストカーWeb) - Yahoo!ニュース

 2022年7月16日早朝、ジャーナリストの三本和彦氏(91歳)がご逝去されたことがわかりました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。文/ベストカーWeb編集部、写真/三信工房...

Yahoo!ニュース

 

 

 残念だ。

 

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一撃の音響き行きしのぶ夏

2022年07月10日 13時18分14秒 | 日記

一瞬の暗転しのびしのぶ夏

 

7月8日昼の出来事に。

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