樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

落葉する常緑樹

2007年01月31日 | 樹木
最近2日連続のセット記事が多いですが、昨日に続いて落葉の話。
樹のことを勉強するまで、私はマツやスギなどの針葉樹はすべて常緑樹だと思っていました。みなさんの中にもそういう方がいらっしゃるでしょう。
でも、日本に1種類だけ落葉する針葉樹があります。カラマツです。その珍しい性質を表現するため、漢字では「落葉松」と当て字します。長野県や東北地方では自生するので、寒い地方の人たちにとっては「落葉する針葉樹」は珍しくないでしょうが、中部以南の人間にとっては「針葉樹はすべて常緑樹」なのです。

      
       (ある研究林に植林されているカラマツの落葉)

でも、中部以南の人も「落葉する針葉樹」をよく目にしているはずです。公園や学校の敷地などによく植えられているメタセコイヤという外来の針葉樹は落葉します。私の近所の公園にも1本植えてあります。この樹は手が加わっていますが、普通はきれいな円錐形の樹形になります。


(近所のメタセコイヤ。左は夏、右は先日撮影。)

以上は、落葉する針葉樹ですが、常緑の広葉樹も落葉します。私も以前は何となく「常緑樹は落葉しない」と思い込んでいましたが、よく考えれば1枚の葉が何十年も何百年も枝に付いたままの訳がありません。
でも、いつ落葉するんでしょう? 樹種によって違いますが、1年中パラパラと落葉するもの、秋に落葉するもの、若葉が出る春に落葉するものがあるようです。落葉樹みたいに秋に一気に葉を落としたり春に一斉に若葉を出したりしないので目立ちませんが、常緑樹も少しずつ落葉し、少しずつ若葉を出しているのです。
ただし、落葉樹の葉の寿命は約半年ですが、常緑樹の場合は1年以上。樹種によって差があるようですが、平均すると2~3年のようです。ある調査によると、シロダモという常緑広葉樹は10年、イヌマキという針葉樹は17年も落葉しない葉があったそうです。
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落葉しない落葉樹

2007年01月30日 | 樹木
下の写真は庭のカシワです。5月に「わが家の大名」としてご紹介しました。
ご覧のように、茶色く紅葉していますが葉は落ちていません。カシワは分類上は落葉樹ですが、落葉せずに冬を過ごすのです。

         
         (紅葉しても落葉しないカシワ)

落葉樹は寒くなると葉緑素が分解されて紅葉し、その後、普通は葉と枝の間に離層という層が形成され、酵素が細胞を溶かして葉が落ちるのですが、カシワはその働きが弱いようです。
こうした「落葉しない落葉樹」は他にもあって、よく知られているのはクヌギ。下の写真は近くの茶畑の脇に植えられているクヌギです。カシワと同じように茶色の葉をつけたまま冬を越します。
でも、散歩コースで見る別のクヌギの巨木は落葉しているので、落葉しないのは若い樹だけかも知れません。

         
         (クヌギも落葉しない落葉樹)

「落葉しない」と言っても、いつまでも葉をつけているわけではありません。春になって若葉が出てくると、それに押し出されるように落葉します。
カシワやクヌギはブナ科の樹木。このグループには常緑樹のカシ類があるので、その性質を受け継いでいるのではないかという説もあります。そう言えば、ヤマコウバシという樹も「落葉しない落葉樹」ですが、このグループのクスノキ科の中にも常緑樹があります。

      
      (いつまでも枝にへばりついているヤマコウバシの葉)
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都の鳥

2007年01月29日 | 野鳥
宇治市の木がイロハモミジで、鳥がカワセミであることは何度か書きました。京都府は木が北山杉で、鳥は日本海の冠島に生息するオオミズナギドリ。ところが、京都市はシンボルツリーとしてシダレヤナギ、タカオカエデ(=イロハモミジ)、カツラと3種も選定しておきながら、鳥はまだ選定していません。
実は10年ほど前、京都市から日本野鳥の会京都支部に「市の鳥を何にしたらいいでしょう?」という問い合わせがありました。支部の幹事会ではいろんな案が出ました。京都支部のシンボルと同じシジュウカラ、昔は「都鳥」と呼ばれていたのでユリカモメ・・・。
私は冗談半分でキョウジョシギ(京女鴫)を提案して、他の幹事のヒンシュクを買いました。シギにしては派手なので、おしゃれな京女に例えられる鳥ですが、京都市では出現しないので却下は当然です。
結局、鴨川にたくさん集まるし、昔の名前もぴったりなのでユリカモメを提案したはずですが、京都市は未だに決めていないようです。その理由は後述します。

      
 (鴨川のユリカモメは冬の京都の風物詩。写真は2枚とも友人に借りました。)

平安時代の小説『伊勢物語』の主人公が東国へ下った際、ユリカモメを見て次の歌を歌います。
  名にし負はば いざこと問わむ都鳥 わが思ふ人はありやなしやと
「お前が都鳥という名前なら教えて欲しい、京都に残してきた恋人は生きているのか死んでいるのか」。当時からユリカモメは京都のシンボルとされていたようです。

      
  (春になるとユリカモメの顔は黒くなって、ヒョウキンな印象になります。)

いろいろ調べるうちに、京都市がユリカモメを選定しない理由が分かりました。実は、東京都の鳥がユリカモメ。多分「都鳥」という昔の名前が選定の理由でしょう。以下は私の推測ですが、遷都1200年の京都市としては、たかだか遷都140年の後輩首都・東京が唾をつけた鳥を選定するのはプライドが許さないのでしょう。
京都支部としてはそういう微妙な事情も配慮して別の鳥を提案するべきだったな~。そうなると、やっぱりキョウジョシギしかないんじゃないか?
話はさらにややこしくなりますが、昔は「都鳥」と言えばユリカモメだったのですが、現在「ミヤコドリ」は全く別の種類を指します。ユリカモメはカモメの仲間、ミヤコドリはチドリの仲間です。こっちのミヤコドリを選定してもいいけど、残念ながらこの鳥も京都市には出現しないのです。
京都市の鳥はもうしばらく決まりそうにないですね。
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ドド~ン

2007年01月26日 | 木と楽器
日本の祭には和太鼓が欠かせません。私も小さい頃から太鼓が好きで、お祭が近づくとワクワクして、食卓の茶碗を箸で叩いてはおばあちゃんに叱られていました。それでも太鼓好きが抑えられず、高校では軽音楽部(言い方が古いな~)でドラムを叩いていました。

      

和太鼓の胴には普通ケヤキが使われます。太いケヤキをくり抜いて作るのですが、最近は胴にするような巨木がなかなか手に入らないそうです。
ケヤキ材の特長は、ダイナミックな木目。年輪が明確なので、力強い模様を描きます。太鼓と関係ないですが、ニュースで日銀の記者会見が報道されると、福井総裁の後ろに大きな木目の立派な板壁が映るのですが、あれは多分ケヤキだと思います。
太鼓にはケヤキのほかセン(ハリギリの材木名)も使われます。胴の壁が硬いほど反響する時間が長くなり、残響を生み出して迫力のある音になるそうです。
皮は黒毛和牛の牝牛のもの、バチにはホオノキ、ヒノキ、カシなどが使われます。
日本にはこの和太鼓のほかに、独特の形をした鼓があります。こちらの胴はサクラが最上とされ、皮は生後3ヵ月の子馬の背の部分を使うそうです。先日、琴の話を書きましたが、木と楽器の関係もなかなかおもしろいです。
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仲の悪い3兄弟

2007年01月25日 | 樹木
私のメインフィールド「栃の森」には、サワグルミやオニグルミがたくさん生えています。サワグルミは幹がまっすぐに伸びる「素直な良い子」、オニグルミは枝がニョキニョキと曲がって、樹形も乱れる「暴れん坊」です。

      
      (名前のように暴れた樹形のオニグルミ)

でも、役にたつのはオニグルミ。まず、実が食べられます。市販されているのはテウチグルミという西アジア原産の栽培種ですが、オニグルミの実も食べられます。
材木としても優秀で、狂いがなく、油分があって磨くほどに艶が出るので、特に銃床(鉄砲の取っ手部分)に重用されました。そのため、戦争中はかなりの量が伐採されたようです。

      
     (オニグルミの実。私たちが食べるのはこの中にある種子の核)

woodyowakuさんのブログで知ったことですが、油が少しずつ出て滑りがいいので東北地方では敷居に使うらしいです。海外の小説を読むと、上等な部屋の描写に「キャビネットはウォールナットだった」というような表現が出てきますが、オニグルミの英名はJapanese Walnat。クルミは家具や建材としても優良材なのです。
最近は硬い殻も車のタイヤに混ぜて使われています。

          
           (まっすぐに伸びるサワグルミ)

一方、サワグルミの用途はあまりパッとしません。まず、実は小さくて食べられません。材も割れやすいので、キリの代用品として下駄に使われるくらい。でも、この伸び伸びとした樹形はいつ見ても気持ち良くて、私は大好きです。

      
        (クルミとは思えないノグルミの実)

日本にはもう一つ、ノグルミというクルミがあります。こちらは、花のつき方も実の形も他の2種と全然違います。私も京都府立植物園で初めて見たときはクルミとは思えませんでした。
同じクルミ科ですが、クルミ属(オニグルミ)、サワグルミ属、ノグルミ属に分かれています。共通点は大きな羽状複葉とコルク質が発達した樹皮くらいでしょうか。あまり仲の良くない3兄弟みたいです。
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お~恐っ!

2007年01月24日 | 木と宗教
以前、清水の舞台をご紹介しましたが、その撮影に訪れた際、境内にある地主(じしゅ)神社に恐ろしい樹があるのを見つけました。
この神社は恋愛成就の神様として、地元京都はもちろん全国の若い女性にも人気のスポットです。私が訪れたときも、若いカップルに「すいませ~ん、写真撮ってください」とデジカメを渡されました。
その地主神社の片隅、華やかな絵馬が飾ってあるコーナーの裏に、朽ちかけた古いスギが立っています。幹には小さな鳥居が縛りつけてあります。

           

案内板によると、このスギは「祈り杉」とも「呪い杉」とも言われ、昔女性の間で流行した「丑の刻まいり」に使われたそうです。白装束に白化粧、頭にローソクを巻きつけて、午前2時(丑の刻)に人知れずこのご神木にワラ人形をクギで打ち付けて呪いの願をかけたそうです。
その五寸クギの跡が今も残っているのです。下の写真の中央部にある2つの穴のがそうです。他にもいくつかクギの跡が残っていました。お~怖っ!

      

昔は「祈り」も「呪い」も叶える神様として信仰されていましたが、現在は「祈り」の方だけを残して恋愛成就の神様ということにしているのでしょう。お参りするたくさんの若い女性は、クギの跡など見向きもせず絵馬を掛けていました。
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樹の名の鳥

2007年01月23日 | 木と鳥・動物
昨日の「鳥の名の樹」を調べているうちに、「逆に、樹の名前を持つ鳥はいるのだろうか?」という疑問が湧き、今度は鳥の図鑑をしらみつぶしに調べました。掲載種は約500種、別名も少ないので、樹に比べれば楽でした。
その結果、5種類ありました。キバシリ、コノハズク(オオコノハズクも含む)、サンショウクイ、そして、種名ではなくグループ名ですが、みなさんよくご存知のキツツキ。また、過去に一度だけ記録されているヤドリギツグミという迷鳥もいます。
キバシリ(木走り・リンクは北海道の亜種)は私のフィールド「栃の森」ではよく見られますが、見たことがないバードウォッチャーも多いはずです。文字通り、スギなどの樹の幹をチョロチョロ走るように登りながら餌を取っています。
コノハズクは「木の葉のようなズク(=フクロウ)」という意味で、日本最小のフクロウです。私は姿を見たことはありませんが、夜の栃の森で「ブッキッポー」という声を何度も聴いています。
サンショウクイ(山椒喰い)は、「ピリリ、ピリリ」と鳴くのでこの名があります。以前は近くの山でも見られましたが、最近は奥山でないと会えません。キツツキは日本に10種類いますが、私はそのうちの7種類を見ました。

      
        (去年の秋に撮影した庭のホトトギス)

私は草本には詳しくないのですが、ホトトギスという植物があります。うちの庭にもあって、秋にはけっこう華やかに咲きます。これは昨日の話題にすべきでしたが、こんな鳥の名前そのままの草本は他にもあるのでしょうか? ご存知の方は教えてください。
最後に、鳥と樹をある程度知っている人なら分かる川柳を一句。コアジサシ 一字違いで コアジサイ。

      
       (コアジサシとは全く関係のないコアジサイ)
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鳥の名の樹

2007年01月22日 | 木と鳥・動物
6月5日にウグイスカグラという樹をご紹介しました。 
この樹の枝でウグイスが神楽のような踊りをするのでこの名があるそうです。私はバード&ツリーウォッチャーなので、以前からこうした鳥の名前を持つ樹のことが気になっていました。

      
       (広島県の帝釈峡で撮影したウグイスカグラ)

先日、時間があったので、家にある最も詳しい図鑑をしらみつぶしに調べました。この図鑑には1300種が掲載されていて、しかも別名や属名も並んでいるのでちょっと大変でした。
鳥の名を持つ樹はけっこうあります。まずは、チドリノキ。カエデ科特有の翼を広げたような実を千鳥が飛ぶ姿に見立てて命名されたようです。カラスザンショウというミカン科サンショウ属の樹もあります。10月23日にご紹介しましたが、利用価値がないのでカラスという蔑称をつけられました。
タカノツメという樹もあります。お茶や唐辛子にもこの名がありますが、冬芽が鷹の爪のように曲がっているのでこう呼ばれています。名前は勇ましいですが、材としてはやわらか過ぎて利用価値がないので別名イモノキ。でも、独特の3枚の複葉が秋には鮮やかな黄色に染まって、目を楽しませてくれます。

      
           (タカノツメの黄葉)

また、ウダイカンバという樺の木がありますが、ウダイとは鵜飼いに使う松明のことなので、これも鳥の名の樹と言えます。
この他にも、ムレスズメという中国原産の樹やメジロザクラという別名を持つサクラがありました。さらに、どの樹を指すかは地方によって異なるようですが、タラノキなどトゲの多い樹をトリトマラズ(鳥止まらず)と呼ぶことがあります。
ちなみに、他の動物の名前を持つ樹もたくさんあって、サルスベリ、ネコヤナギといった一般的なものから、ネズミモチ、クマシデ、ヘビノボラズ、コウモリカズラなどけっこう多彩です。
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ヒノキの楽器の音色

2007年01月19日 | 木と楽器
木は楽器にもよく使われます。ご存知の方も多いと思いますが、日本伝統の楽器・琴は桐で作られています。
昔から、「山奥にひっそりと生え、清らかなせせらぎの音を聴いて育った桐が最高の琴になる」と言われていたそうです。でも、これは多分ウソ。私の知る限り、キリは川が流れるような谷筋ではなく、陽当たりのいい斜面に生えています。せせらぎの音と琴の音色をダブらせたつくり話でしょう。

      
     (京大宇治キャンパスの「材鑑調査室」には琴も置いてありました)

私たちが知っている琴は、実は中国からもたらされたもので、形は少し違いますが、中国や朝鮮半島にも桐製の琴があります。それ以前には「和琴(わごん=やまとごと)」と呼ばれる日本独自の琴があったようで、正倉院に10張り残っています。
おもしろいことに、この和琴は日本固有の木・ヒノキで作られているそうです。ある本に「ヒノキでバイオリンを作ったら和風の音がした」と書いてありましたが、ヒノキ製の琴やバイオリンの音を聴いてみたいものです。
去年の夏、ある百貨店が開催した「伝統工芸展」に琴や三味線の製作実演販売コーナーがあるというのでデジカメ片手に行きましたが、おじさんが一人で店番しているだけでした。でも、800万円もの琴や、100万円近い三味線のバチ(象牙製)が並んでいたのにはビックリしました。どの世界にも高価な逸品というものがあるんですね。
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LEMON TREE

2007年01月18日 | 木と歌
ご主人が趣味で作っている果樹園が近所にあって、栗、柿、びわ、桃、キーウィなどいろんな果物が目を楽しませてくれます。
今の時期は柑橘類が黄色い実をつけていて、その中にレモンが1本あります。実はしょっちゅう利用しますが、レモンの樹は珍しいので、畑仕事をされているご主人お許しをもらって撮ってきました。

      
      (ほとんど収穫済でしたが、少しだけ実が残っていました。)

レモンは温暖な地方の産物と思い込んでいましたが、こんな冬寒い地域でも実をつけるんですね。ご主人に聞くと、「けっこう採れるよ」。
調べてみると原産地はインド北部のヒマラヤ地方だそうです。このレモンも含めて、普通に食べるミカンや夏ミカン、ハッサク、ユズなどはミカン科ミカン属の樹木。
レモンの樹と言えば、アメリカのフォークグループ、ピーター、ポール&マリーの歌に「LEMON TREE」がありました。さきほど調べたら、「レモンの樹は美しくて花はいい匂いだけど、貧弱な実は食べられない」というような歌詞でした。オリジナルは南米の民謡だそうです。
文学ファンは梶井基次郎の『檸檬』を思い出すでしょう。梶井がレモンを買った京都の果物屋「八尾卯」はまだあるようですが、そのレモンを置いた本屋「丸善」は一昨年閉店しました。いい本屋さんだったのに残念。

      
         (わが家のユズは豊作でした。)

さて、昨年の6月に「今年はわが家の柚子が豊作かも」と書きましたが、ほんとに豊作になりました。1mくらいの小さな樹ですが、40個くらい実をつけました。鍋物のつゆにしたり、焼き魚に絞ったり、皮を白菜の漬物に入れたり・・・、その都度実を取ってきて使っています。
でも、果樹園のご主人は「成り年の次は不作になる」と言っていたので、次の冬はダメですね。
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