樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

三色シギ

2016年08月25日 | 野鳥
先週の大潮の日、大阪南港野鳥園へシギ・チドリ観察に行ってきました。以前の記事に書いたように、この施設は橋下徹大阪市長時代に市政改革プランの対象になって一旦は廃止と決まりましたが、その後見直され、NPO法人が運営するという形で存続されています。
スタッフは常駐しなくなりましたが、貴重な「鳥の聖域」が残されたことは、鳥にとってもバーダーにとってもありがたいことです。
この日、最も多かったのはアオアシシギとキアシシギ。どちらも15羽くらいが広い干潟で採餌していました。その中に、1羽だけアカアシシギが混じっています。
赤・黄・青の信号トリオが3ショットで撮れないかなと思いながらカメラを向けていましたが、そんな「しょーもない」注文には応えてくれません。でも、赤と青、赤と黄の2ショットは撮れました。






このほか、ソリハシシギ、イソシギ、メダイチドリ、コチドリ、シロチドリ、トウネンが忙しく採餌したり、のんびりたたずんでいます。
シギやチドリは1カ所でじっくり、心行くまで観察できるので、私みたいに愚鈍なバーダーにはぴったりです。
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ツバメ三昧

2016年08月18日 | 野鳥
宇治川の河川敷にツバメの集団ねぐらがあって、8月上旬の夕方には数万羽のツバメの乱舞が見られます。野鳥の会では私が案内役で毎年観察会を実施していますが、今年はいつもと違って5回現地に行きました。
1回目は8月6日(土)の朝4時半。これも毎年恒例で、ツバメの数を調査するために、宇治市在住の会員数人が集まって堤防に50~80m間隔で立ち、自分の受け持ちエリアを飛び立っていくツバメの数をカウントします。
夕方は入り乱れて乱舞するのでカウントできませんが、早朝アシ原から堤防を越えて一定方向に飛び出していくところをカウントします。今年の総数は25,200羽。昨年(46,700羽)の約半分でした。
その様子が以下の動画(撮影は2012年8月6日)。左から右に流れている黒い点々がすべてツバメです。



調査の日の夕方は恒例の観察会。今年は参加者が約40人と少なめでしたが、尼崎市からベビーカー連れの4人家族のほか、西宮市や近江八幡市など遠くからも来ていただきました。
驚くべきことに、出雲市からわざわざ来られた方もいらっしゃいました。「一度見てみたいと思って来ました。観察が終わったらそのままJRで出雲に帰ります」とのこと。担当者としては嬉しいかぎりです。



尼崎市から参加されたご家族のお姉ちゃん

3回目は8月8日(月)。地元の小学校の保護者会主催の観察会に案内役として招かれました。その翌日は、午後3時から宇治川の南に広がる干拓地でシギやチドリを見た後、宇治川でツバメの群舞を観察しようという平日探鳥会。私の企画で、今年初めての試みです。さすがに猛暑の中、日陰のない干拓地を歩こうという方は少なく参加者は8名でした。
そして、5回目は13日(土)のヤング探鳥会。担当は私ではないですが、お手伝いに行ってきました。
このツバメ観察会は、他の探鳥会と違って決まった時間になると必ず数万羽のツバメが集まるので当たり外れがなく、しかも初めての方は「スゴ~イ!」と感動されるので、案内役としては安心です。来年もツバメ三昧することになるのかな?
以下に、夕方のねぐら入りの様子をご紹介載します(2012年8月3日撮影)。

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スペインはスゴい!

2016年08月11日 | 野鳥
京都市美術館でダリ展を見てきました。シュールリアリズムの作品なので、普通の絵画とは響く場所が違います。心よりも頭に響く絵というべきか…。ピカソなどのキュビズムよりも難解だと思いますが、平日にもかかわらず多くの人々が観覧していました。
ポスターに使われている『素早く動いている静物』に、なぜかツバメが…。絵を見るときくらい鳥から離れればいいのに、ついつい気になります。「すべての生物は、実はツバメのような速さで動いている」というコンセプトかな?


『素早く動いている静物』の部分拡大図

もう1枚、鳥を描いた作品がありました。『ガラの晩餐』という料理を描いた連作の中の1枚『君主政的肉』。制作に当たっては、マキシムやトゥールダルジャンなど一流レストランが協力したそうです。
描かれているのは、日本のキジではなくコウライキジのようです。本来の生息地にはヨーロッパは含まれていないので、食用として流通しているコウライキジをモチーフにしたのでしょう。


『君主政的肉』の部分拡大図

ダリ展を見た数日後、たまたまスペイン映画を見ました。1930年代の内戦時代のスペインを舞台にした作品。以前からこの国の当時の政治・社会状況に興味があって、本をたくさん読みました。詳細は省きますが、スペインという国の思想・文化の深さ、濃さに感嘆しました。
ダリだけでなく、ピカソやガウディが創り出したものを思い浮かべていただくと、私が言おうとしている意味が少しは分かっていただけるかも知れません。単純にいえば、「スペインはスゴい!」ということです。
ただ、ピカソが「ゲルニカ」でナチスに対抗した一方、ダリは原爆に興味を持ったものの絵に原子物理学を取り入れるという方向に走ったようです。
ピカソは絵描きである前に人間、ダリは丸ごと絵描き、ということでしょうか。
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カッコウの托卵とワクチン

2016年08月04日 | 野鳥
カッコウは他の鳥の巣に卵を産みつけ、自分では子育てしません。「托卵」と呼ばれるこの不思議な習性が、日本では『万葉集』に詠まれ、ヨーロッパではもっと古くアリストテレスの『動物誌』に登場することは以前の記事でご紹介しました。
ただ当時は、宿主の卵を巣の外に放り出すのはカッコウの雌親の仕業と考えられていたようです。実際には、以下の動画のように、宿主の卵よりも早く孵化したカッコウのひなが自分で背負って排除します。



この驚くべき習性を発見して学会に発表したのは、エドワード・ジェンナーだそうです。ジェンナーといえば、ワクチンを発明して天然痘を根絶した医学界の偉人。その一方で、博物学者として昆虫や化石を収集しながら動物や植物を研究していたようです。渡り鳥の生態についても論文を発表しています。
生まれたばかりのカッコウのひなの行動を発表したのは1789年。その論文が認められて、エリート科学者の団体「ロイヤル・ソサエティ」の会員になっています。



エドワード・ジェンナー(画像はパブリックドメインン)

ところが、多くの人々はひながそんな行動をとるとは信じなかったようです。130年ほど後の1920年代に托卵行動の映像が公開されて、ようやく一般的にも認められるようになったとのこと。
私自身も本で托卵の話を読んでも信じられませんでしたが、NHKの番組を見て納得しました。百聞は一見に如かずとはこのことでしょう。
托卵行動の解明もワクチンの発明も、多分ジェンナーにとっては「真実を知りたい」という同じ好奇心からだったのでしょうね。
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