樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

トリュフと松露

2010年10月28日 | 木と飲食
私は食べた記憶がないですが、世界三大珍味の一つとしてトリュフがあげられています。ヨーロッパではブタを森に連れて行って、臭いで探させて採るとか。
本物は口にしたことはないですが、チョコレートのトリュフなら以前ゴディバのをバレンタインデーにもらったことがあります。妻からですが…。


ゴディバではなくブルボンのトリュフ。こっちは1袋100円くらい(笑)

意外にも、そのトリュフが日本でも採れるそうです。しかも、10種類ほどのトリュフがあるとのこと。イヌシデなどカバの仲間やコナラなどブナ科の樹木が生えている場所で、枯葉が堆積しているような林床を金属製のクマデで掻き出すと、結構たくさん採れるようです。
11月頃がベストシーズンらしいので、今度栃の森に行ったとき私も探してみようと思います。シデ類やコナラがたくさん生えている場所があるので。


イヌシデが生えている栃の森の斜面

日本ではトリュフよりも松露が知られています。トリュフも松露も同じショウロ科のキノコで、土に埋もれた状態で成熟するそうです。違うのは、松露は文字通りマツと共生する一方、トリュフはカバやブナの仲間と共生するようです。
そう言えば、松露もお菓子になっていますね。京都の老舗のお菓子屋さんでもよく売っています。松露も本物は口にした記憶がないですが、お菓子は何度も食べました。


老舗の松露ではなくスーパーで売っている松露

高価なキノコがヨーロッパでも日本でもお菓子になっているというのは偶然でしょうか。
トリュフを採取して一儲けしたいという方はこちらをどうぞ(PDF)
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世界最古の建築木材

2010年10月25日 | 木造建築
奈良の元興寺(がんごうじ)というお寺の屋根裏で世界で最も古い現役の建築木材が発見され、「屋根裏探検」という面白い説明会が催されました。
このお寺の前身は飛鳥時代に建てられた日本初の仏教寺院である飛鳥寺。710年の平城遷都に伴って現在地に移築され、元興寺と名前を改めたという経緯があります。公開された禅室は国宝です。
土日の予約が満杯で平日しか残っていなかったのですが、国宝のお寺の屋根裏に公然と侵入できるチャンスはもうないでしょうし、何よりウッドウォッチャーとしては「世界最古の建築木材」を見逃すわけにはいきません。仕事の合間に出かけてきました。


元興寺の禅室


屋根裏

長い歴史の中で何度か修理されたらしく、飛鳥時代、白鳳時代、鎌倉時代、そして昭和の木材が混在して使われています。鎌倉時代以前は現在の平ガンナはなく、槍ガンナやクワみたいなチョウナで削り取っていましたから、梁や柱の表面に凹凸が残っています。


凹凸が残るチョウナの跡

で、お目当ての「世界最古の建築木材」は下の写真。頭貫(かしらぬき)と呼ばれる部材で、年輪年代測定法によって590年頃に伐られた木材であることが判明しました。樹種はもちろんヒノキ。


590年頃に伐採された世界最古の現役木材

世界最古の木造建築物は7世紀末に建てられた法隆寺ですが、それよりも100年ほど前に建てられたお寺の部材が再利用されて残っているわけです。飛鳥寺の建立年は不明ですが、『日本書紀』に用材を590年に伐採したことが記されているそうで、それが裏付けられたわけです。
他にも、639年(白鳳時代)に伐採された大梁も現役建築材として頑張っていました。


こちらは白鳳時代の大梁

1400年も前のヒノキが今でも建築部材としてお堂を支えているのです。柱として使われる場合と、梁や貫として使われる場合では、耐久性や強度の劣化状態が違うでしょうが、建築材としての木の優位性を物語っています。
手の届かない位置にあったので叶いませんでしたが、撫で撫でしてやりたい気持ちでした。
昭和の修理の際に左官職人が手慰みにコテで壁に描いた鶴も残っていました。絵心のある粋な職人がたくさんいたのでしょうね。


コテで描いた鶴の絵

余談ですが、受付でヘルメットと懐中電灯を渡されました。「ちょっとオーバーじゃないの?」とナメていましたが、屋根裏で梁に思い切りヘルメットをぶつけてしまいました(笑)。


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紅葉、黄葉、黒葉、白葉

2010年10月21日 | 樹木
先日、4ヶ月ぶりに栃の森に行ってきました。紅葉には少し早かったものの、林床にはそれぞれに色づいた葉が落ちていました。
本などで紅葉の仕組みを調べると、もともと葉の中に含まれているクロロフィル(緑の色素)とカロチノイド(黄色の色素)のうち、気温が低くなるとクロロフィルが分解されて黄色が目立ってくる。さらに、葉と枝の間に離層が形成され、葉で光合成された糖分の行き場がなくなってアントシアニン(赤の色素)が作られる。そして、陽が当る部分から先に紅葉すると書いてあります。


ハウチワカエデの紅葉

でも、実際の紅葉を観察すると、それだけでは納得できません。例えば、上の写真のようにハウチワカエデなどは緑からいきなり赤に変色します。黄色の色素は含まれていないのでしょうか


トチノキの変色

また、上の落葉はトチノキの小葉ですが、先端が緑、真ん中が黄色、元が褐色です。陽が当る方が先に紅葉するというなら、順序が逆になるはずです。
下の写真はミズメの落葉ですが、これも陽当たりとは関係ないようで、むしろ葉脈に沿って黄葉あるいは紅葉しています。


ミズメの変色

さらに不思議なのは下のミズキの落葉。黄色や赤に染まることなく、黒く変色します。メラニン色素が含まれているのでしょうか。同じ仲間のハナミズキは先端から赤くなって、最終的には黒ではなく褐色になります。


ミズキは黒葉

近所のハナミズキの紅葉

もっと不思議なのはコシアブラ。この葉は緑からベージュに変わり、最終的には白くなります。色素が消えて脱色するのでしょうか。


白葉するコシアブラ

紅葉のメカニズムも一筋縄ではいきません。自然は不思議です。
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森ガール、山ガール

2010年10月18日 | 木と文化
若い女性のファッションには全く関心ないですが、少し前に「森ガール」と呼ばれるスタイルが流行したそうです。「森にいそうな女の子のスタイル」ということらしいですが、私には意味不明です(笑)。
その流れを受けて、現在のトレンドは「山ガール」。カラフルな登山ウェアを身につけて野山に出かける若い女性が増えているそうです。
私が通っている「栃の森」近くの観光協会が、その山ガールを狙って、間伐作業やトレッキング、バーベキューなどの婚活イベントを企画したところ、男性15人に対して、女性は45人が申し込み、キャンセル待ちだとか。


鳥や樹を見に行く時のマウンテン・パーカー

30年ほど前、ネルシャツにダウンベスト、ワークブーツというヘビーデューティー・ファッションが流行りましたから、その繰り返しなんでしょう。
私の冬のスタイルは、長袖のアウトドアシャツ+セーター+マウンテン・パーカーというのが定番。流行とは全く無縁で、ここ数十年変わりません。しかも、普段の生活でも、趣味で出かける野山でも、仕事先でも同じスタイル(笑)。


仕事に出かける時のマウンテン・パーカー

ファッションとしては満足していますが、機能的には改良して欲しい点があります。バードウォッチャーは目よりも耳で鳥を探しますが、フードをかぶると鳥の声が聴こえません。耳の位置に小さい穴を開けて、頭は濡れないけど音は聴こえるフードがあれば嬉しいです。
また、ゴアテックスは腕を振って歩くと脇で生地が擦れて「シュッ、シュッ」と音がします。これが鳥の声と紛らわしくて、バードウォッチャーには雑音です。擦れても音のしないパーカーは無理でしょうか?
世間では森ガールや山ガールが増えているようですが、私が所属する森林ボランティアグループや野鳥の会では「ガール」は見かけないないな~(笑)。
森ガール、山ガールの次に鳥ガールがトレンドにならないかな?


鳥ガールにお勧めのバードウォッチング用ベスト(ダメか?)
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木を噛む

2010年10月14日 | 木と飲食
今はあまり口にしませんが、若い頃はよくチューンガムをクチャクチャやっていました。最近はキシリトール入りのガムが主流になっているようですが、そのキシリトールもガムも樹木から作られています。
日本チューインガム協会のホームページによると、ガムの原料は中米原産のサポティラという樹の樹液を煮詰めて作った天然チクル。その他に、東南アジアに自生するアカテツ科やキョウチクトウ科、クワ科、トウダイグサ科に属する樹木から採取した樹脂もガムベースに使うそうです。樹木由来ではない合成樹脂もあります。


ロングセラーのこのガムには天然チクルが入っているようです


最近はキシリトール入りガムが主流

一方、キシリトールはシラカバの樹液から抽出するそうです。カシやトウモロコシの芯からも抽出できるようですが、量的にはシラカバが優れているとか。
このキシリトール、甘味は砂糖と同程度ですが、清涼感があることと、口の中で発酵せず微生物の繁殖を抑制するので、お菓子やガム、歯磨きの甘味料として使われています。ロッテのホームページによると、最近のキシリトールガムは、微生物の繁殖を抑えるだけではなく、溶け出したカルシウムを再石灰化して歯を強くする働きがあるそうです。


シラカバの樹皮

下は、以前東急ハンズの北海道フェアで買ったシラカバ樹液100%の「森の雫」。多分、この中にもキシリトールが含まれていたのでしょう。樹液の糖度は1%程度なので、ほとんど甘さは感じませんでした。



先日、ナショナルジオグラフィックから「アマゾンで木を食べる新種のナマズが発見された」というニュースが発信されました。「え~!」とびっくりしましたが、よく考えれば、人間もチューインガムとかシナモン、抹茶など木を食べているわけですから驚くことはないですね。
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ブナは本

2010年10月11日 | 木と言葉
ドイツ語ではブナをbuche(ブーフ)と言い、それによく似たbuch(ブーハ)は「本」を意味するそうです。また、アングロサクソン語ではブナをbok(ブク)、本をbec(ベク)と言い、スウェーデン語にいたってはブナも本もbok(ブク)だそうです。
つまり、ヨーロッパの言語ではブナ=本になっているのです。なぜか?


ブナの葉

理由の一つは、大昔の神様。古代ケルト人の間ではブナの木の神様「ファグス」を崇めていたそうです。私の名前のfagus(ファーガス)はブナの学名ですが、同じ発音です。また、古代ローマの神・ユピテルも、ブナの木の神様なんだそうです。
そして、もう一つの理由は占いと文字。鉄器時代、木の棒や木片に質問を書いて占い師に占ってもらうという習慣があり、それにブナが使われたので、文字を書いたもの(本)=ブナになったらしいです。
ちなみに、木に書かれたのはルーン文字で、それが後にアルファベットになったとか。


ブナの樹皮は滑らかなので文字が書きやすい?

ヨーロッパ大陸にはそれだけブナの森が広がっていたということでしょう。
以前ご紹介したように、ロシアではシラカバの樹皮に文字を書いたそうですが、木と文字の関係は以外に深いんですね。


というようなことが書いてあるbok
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ハープ

2010年10月07日 | 木と楽器
宇治市の隣・宇治田原町に在住するハープ奏者のコンサートが京都市内で開かれたので行ってきました。よくテレビで夢心地になるシーンに使われるあの神秘的な音は、やっぱり木が生み出すんだろうな~と以前から関心があったのです。
あまり一般的な楽器ではないので、さすがのヤマハも製造していませんが、意外にもハープの専門メーカーが日本にあります。福井県の永平寺の近くにある青山ハープは、専用のホールを保有し、東京と大阪に営業所を持つほどの会社です。
そのホームページによると、本体の木材はウォールナット(クルミ)またはメープル(カエデ)。ウォールナットは柔らかい音、メープルは硬い音に仕上がるそうです。


ロビーコンサートでのハープ(弦を張った下側の部分が共鳴箱)

本体はクルミ材かカエデ材と分りましたが、サウンドボックス(共鳴箱)の材質は違うはずです。青山のサイトには説明がないのでいろいろ調べると、高級品のサウンドボックスには低音域部分にスプルース(トウヒ)、高音域部分はマホガニーが使われているようです。
低い音を共鳴させるには柔らかい針葉樹が、高い音を共鳴させるには硬い広葉樹がいいということなのでしょう。
バイオリンも表板はトウヒ、裏板や側板はカエデ、ピアノも共鳴板はトウヒ、ボディはカエデです。この2種は弦楽器には欠かせない木材なんですね。音響特性に優れているということでしょう。
下の写真は今年の2月に訪れた大阪音楽大学の博物館で撮影したもの。18世紀後半にフランスで製作されたハープです。材質は不明ですが、多分サウンドボックスはヨーロッパトウヒでしょう。



アイルランドのある大学には、15世紀の吟遊詩人が使っていたハープが展示してあって、本体はオーク(ナラ)、サウンドボックスはヤナギ(ポプラ)、弦は真鍮だそうです。
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トーテムポール

2010年10月04日 | 木と文化
森林ボランティア「フォレスター宇治」の活動でトーテムポールを作りました。春に材料の間伐材を伐り出して乾燥させ、7月に彫刻、8月に着色、9月に建立という長期計画です。
直径約20cm、高さ約3mの丸太4本に、各班がそれぞれのモチーフを描きました。本場のトーテムポールの木材はレッドシダー。北米大陸の北西沿岸に分布するヒノキ科の樹木です。私たちが使ったのは日本のヒノキ。
本物のトーテムポールにはワタリガラスやワシなどの鳥、クマやサーモンなどが彫ってありますが、私たちのトーテムポールにはカワセミ(宇治市の鳥)や、なぜかアンパンマンも彫ってあります(笑)。


7月の彫刻作業

彫刻作業にも参加しましたが、ヒノキのいい香りを嗅ぎながら、ノミと木槌を使って彫っていると、だんだんのめり込んでいきます。木の香りにつつまれて木工に没頭するという、私にはとても幸せな時間でした。
その時は内心「作品としてはイマイチだな~」と思っていましたが、着色するとそれらしく見えます。


トーテムポールにアンパンマン

このトーテムポールとは別に、宇治市にはたくさんのトーテムポールが並ぶ場所があります。姉妹都市であるカナダのカムループス市はアメリカ先住民族の文化が色濃く残る街で、トーテムポールもたくさん立っているらしく、姉妹都市締結10周年記念の2001年に10本のトーテムポールを製作し、植物公園の前の道路に立てたのです。その道も「カムループス通り」と名づけられました。


10本のトーテムポールが並ぶカムループス通り

先輩の話では、この10本の丸太も「フォレスター宇治」が切り出して提供したヒノキの間伐材だそうです。これだけ縁が深いのだから、トーテムポールで宇治の町興しをしたらどうだろう?
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