樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

団塊世代とスズメ

2013年11月28日 | 野鳥
先々週、龍谷大学で鳥類学者・樋口広芳氏(東京大学名誉教授)の公開講座が行われたので聴講してきました。
学生が主な対象なためかカラスとスズメが題材ということで、最初はあまり期待しなかったのですが、話が鳥と人間社会の関係に及ぶにつれて興味深くなってきました。


樋口広芳先生

その一つが、最近人間の手に乗って餌を採るスズメが増えてきたという事実。野生でありながら人の手に乗る鳥は私はヤマガラしか知りません。
散歩コースの大吉山にもスズメ、ヤマガラ、メジロ、シジュウカラ、キジバトが普通にいますが、ヒマワリの種を置いた手に乗ってくれるのはヤマガラだけで、スズメはもちろん他の鳥は見向きもしません。



ところが、2005年頃から手乗りスズメが急速に増えているというのです。しかも、東京、横浜、大阪、福岡など都市公園で…。
スズメは身近な野鳥ですが、意外に警戒心が強く、人間が2メートルほど近づくと飛んで逃げます。そのスズメが手乗りするとは信じられませんが、写真も見せていただきました。
なぜ都市公園で手乗りスズメが増えたかについて、樋口先生は次のような仮説を立てています。
2005年は団塊世代がリタイヤし始めた年。公園でゆったり時間を過ごす高齢者が増え、餌を与えるようになったため、スズメが人に慣れて、手乗りスズメが現れたというもの。
科学的に立証するのは難しいでしょうが、あり得ないことではないですね。だとすると、人間社会の変化が野鳥の生態に影響を及ぼす典型的な事例です。
しかし、私も団塊世代ですが、大吉山のスズメは手乗りしてくれません。餌台に置いたヒマワリの種や地面にこぼれたアワは食べますが、私が近づくと逃げます。



もっと多くの団塊世代が集まらないとダメなのかな?(笑)
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カホン

2013年11月25日 | 木と楽器
久しぶりに楽器の話です。以前から、「カホン」という楽器が気になっていました。木の箱に穴をあけただけの打楽器で、最近演奏する人が増えているようです。
楽器屋さんでは見たことありますが、実際に演奏されているのは見たことありません。ところが、先日大阪のある公園で数人のグループが練習していました。



写真のように、箱の上に座って手で叩くだけのシンプルな楽器です。見た目よりもいい音で、遠くまで響きます。
私も打楽器が大好きで、小さい頃はお祭りの太鼓を、高校ではバンドでドラムを叩いていましたし、大人になってからもラテン系のロックを聴いたりしていました。
練習の演奏を聞いているだけでウキウキしてきます。断って写真を撮っていると、彼らがパンフレットをくれました。
それによると、発祥はペルーで、「カホン(Cajon)」とはスペイン語で「箱」とか「小さなタンス」の意味。
ペルーに連れて来られたアフリカ人たちが太鼓を叩いて踊っていたところ、反乱を恐れたスペイン人が太鼓を禁止したため、船の積み荷の箱を叩き始めたのが始まり。その後、フラメンコのギタリストであるパコ・デ・ルシアが、ペルーを訪れた際に出会って持ち帰ったことから欧米に広まったとのこと。



帰宅後にさらに調べると、予想通り木の種類によって音が違うようです。特に打面の板材によって音質が変わるそうです。
例えば、バーチ(カバ)は音に丸みがあり、よく振動するので独特の残響音。メイプル(カエデ)は高音域で、音の立ち上がりがパワフル。オーク(ナラ)は図太い音。
カバやナラが楽器に使われることは少ないでしょうが、カエデはバイオリンの裏板にも使われます。また、ギターやバイオリンの表板に使われるスプルース(トウヒ)もカホンに使われるそうで、やはり楽器に向いた木は絞られてきます。音響特性など音との相性がいいんでしょうね。
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レインボーツリー

2013年11月21日 | 街路樹・庭木
関西は紅葉のピークを迎えています。モミジもきれいですが、私が最も美しいと思うのはモミジバフウ。日本には自生しませんが、街路樹によく使われています。
宇治市内の道路にはなぜかこの樹が多く、市役所~文化センター~運動公園のメインストリートのほか、あちこちに植えてあります。
この樹の魅力はカラフルなところ。葉の色を指折り数えると、緑、黄緑、黄、肌色、オレンジ、赤紫、赤と7色ほどあります。


緑~黄緑~黄


黄~肌色~赤紫


黄~オレンジ~赤

「モミジバフウ」の名のとおり、フウの仲間(マンサク科)です。この樹にはいろんな別名があり、日本では「アメリカフウ」とも呼ばれます。
英名はAmerican Sweetgum。甘い樹液を出すからのようです。その樹液は食品の香料やタバコのフレーバーに使われます。
アメリカでの別名は、Alligator Tree。樹皮にワニの背中のような小さいコブがたくさんできるからです。また、葉が5裂であることからStar Leafed Treeとも呼ばれます。
いろいろな別名に加えて、私は勝手に7色の葉からRainbow Treeと名づけることにしました。
ところが、その7色の変化が楽しめる一番いい時期なのに、ほとんどのモミジバフウが剪定されています。私が撮影した並木の隣でも、剪定業者が作業をしていました。


これではせっかくのカラフルな紅葉も台なし

葉が落ちると厄介だからその前に伐ろうということのようですが、それならなぜモミジバフウを植えるの? 行政のやることは無粋です。
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夜の鷹

2013年11月18日 | 野鳥
ヨタカという鳥がいます。「夜鷹」と書きますが、タカの仲間ではなく、分類上は「ヨタカ目ヨタカ科」に1種だけ存在する変わった鳥です。
以前「木の絵本」としてご紹介した宮沢賢治の『よだかの星』はこの鳥が主人公ですが、物語の中でも、本当のタカから「名前を変えろ」と迫られています。
名前のとおり夜行性で、昼間は眠っていることが多いようです。私がある場所で見たときも、ずーっと睡眠中。全く動かないので動画撮影の意味がなく、静止画で撮りました。



面白いことに、この鳥はアメリカでもNighthawk(夜のタカ)と呼ばれています。そして、nighthawkという単語には、「夜更かしする人」とか「夜に悪いことをする人」という意味があるようです。
シルベスタ・スタローンが刑事役で登場する『ナイトホークス』という映画がありました。アッと驚くラストシーンが印象的な作品でしたが、タイトルはこの意味でしょう。
日本でも江戸時代、夜に路上で客をひく娼婦を「夜鷹」と呼びました。名前もそうですが、夜間にウロウロする怪しいイメージも日米共通のようです。ヨタカにとっては迷惑な話でしょうが。
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抜け雀

2013年11月14日 | 野鳥
京都市美術館で開催中の「竹内栖鳳展~近代日本画の巨人」を観てきました。地元の画家ということもあるのでしょうか、平日の午前中にもかかわらず、かなりの数の入場者でした。
美術展を観覧するとき、最初から全作品をじっくり観ると疲れるので、まず会場をさーっと歩いて概観してから、気になる作品を何点か絞ってじっくり観るようにしています。
今回、足が止まったのはやはりライオン。中でも目を奪われたのは、金屏風に墨一色で描かれた『獅子図』。他のライオンもそうですが、「ゴロゴロ…」という喉が鳴る音や獣の匂いまで伝わってくるような迫力でした。
竹内栖鳳はさまざまな動物を描いていて、ライオンのほかトラ、ゾウ、キツネ、ネコなども出品されていました。タカ、ゴイサギ、コサギ、カラス、ウグイスなど鳥も描いていますが、栖鳳といえばスズメでしょう。


「喜雀図」のアップ(今回の出品作とは別の作品)

栖鳳はスズメの絵をたくさん描いていますが、目指していたのは知恩院の『抜け雀』。狩野信政が紅白の菊の上に数羽の雀を描いたものの、飛び去って絵から消えたと言われている襖絵です。
以前ご紹介したように、落語にも、画家が描いた襖絵のスズメが絵から抜け出して飛び回る「抜け雀」という演目があります。多分、この知恩院の襖絵をネタにしたのでしょう。
栖鳳がこの落語を聞いたかどうか分かりませんが、写実の極みとして『抜け雀』を目標にしていたわけです。
写実を目指して油絵を描いていた高校時代、クラスの女の子に「写実的な絵にどんな意味があるの? 写真を撮れば済むじゃない」と問われて悩みました。以来、写実的ではない絵を観たり描いたりするようになり、「写実的な絵は技術さえあれば誰でも描けるから価値がない」と考えるようになりました。
しかし、栖鳳の写実画を観て、「そんな簡単に片づけられるものではない」と思いました。一時ブームになったスーパーリアリズムとも違って、「鬼気迫る写実」とも言うべきリアリズム…。すごい画家です。
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偽装

2013年11月11日 | 木の材
ホテルやレストランの食材偽装が連鎖的に拡大しています。男のシェフが作った「おふくろの味」は違法か、いつも同じ内容の「シェフの気まぐれサラダ」は偽装かなど、笑える話も取り上げられています。
4年前、米や牛肉、鰻などの偽装が話題になったときにも「木材偽装」として記事にしましたが、木の世界でも偽装が横行しています。
「偽装」というよりも「常識」として扱われているのが、実際はダケカンバやミズメなどのカバ材なのにサクラ材として売られている家具類。消費者はサクラ(=ヤマザクラ)の木が使われていると思っていますが、家具業界では「サクラといえばカバのこと」が常識のようです。


左はヤマザクラ、右はその偽装に使われるミズメ

そのほかサンショウ(実はカラスザンショウ)のすりこ木、ナンテン(実はイイギリ)の箸、ツゲ(実はツゲとは無縁のシャムツゲ)の櫛や判子など木材偽装はいろいろあります。
また、「ベイスギ」と呼ばれるアメリカからの輸入材はスギではなくヒノキ科クロベ属の木、「ベイマツ」もマツではなくトガサワラ。しかし、クロベをスギ、トガサワラをマツと言い換えたところで販売上優位になるとは思えないので、これらは意図的な偽装とは言えないかも知れません。
京都の北山杉、奈良の吉野杉、秋田杉など有名産地の木材も怪しいようです。無名の産地で伐採したスギをこうした有名産地経由で販売したり、吉野の業者が秋田で良質のスギを購入して「吉野杉」として売る例もあるそうです。
どこからが偽装で、どこまでは許されるのか。食材と同じく木材の線引きも難しいですが、木材業界では「偽装問題が自分たちの業界に飛び火するのではないか」と戦々恐々なのではないでしょうか。残念ながら、食材や木材だけでなくこういう偽装はあちこちで行われているんでしょうね。
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Bird & Berry Watching

2013年11月07日 | 木と鳥・動物
鳥と木の実を観察するために、家から25kmほど離れた森林公園へ行ってきました。
現地に到着するなり目を引いたのは、小さな赤い実が鈴なりのソヨゴ。この樹は葉の付け根にサクランボのような実を1個ずつつけるので、個数は少ないはず。こんなに多くの実を見るのは初めてで、最初は別の樹かと思いました。



叶内拓哉さんの『野鳥と木の実ハンドブック』によると、「鳥が食べているところを私は見たことがない。見た目にはおいしそうでも、鳥にはまずいのだろうか。私も口に入れたことがないので味はわからない」。
叶内さんに代わって試食しました。トップテイストは青臭み、セカンドテイストは苦味。予想どおりの味でした。
ソヨゴの次に目立ったのが、コシアブラ。ちょうど緑色から黒に変化する途中です。



ウコギ科なのでクセのある苦い味だろうと予想しつつ、1粒口に入れました。トップテイストは酸味、セカンドテイストは苦味。しかも強烈で、前歯で少し噛んだだけで口いっぱいに苦味が広がります。若葉は天ぷらにして食べますが、実はとても食べられるものではありません。
花で目立ったのはクサギ。赤紫の可憐な花ですが、名前のとおり葉をちぎって嗅ぐと臭いです。嫌な臭いというよりも、ビタミン剤のような臭い。



今回の主目的は、カラスザンショウの実を食べにやって来るムギマキ。バードウォッチングを始めた頃にビギナーズラックで目撃して以来ご無沙汰している珍しい鳥で、再会を期待したのです。



このカラスザンショウの実は鳥に人気で、叶内さんによると、「渡り途中のムギマキやキビタキなどヒタキ類がよく採食することは有名。(中略)とにかくいろいろな鳥が採食にやって来て、鳥が好む木の実のベスト5に数えられることは間違いない」。
しかし、合計3時間待ったものの、ムギマキとの23年ぶりの再会は果たせませんでした。代わりにキビタキの若鳥がやってきて慰めてくれました。



この場では樹に近づけず実を試食できなかったので、帰宅後に家の近くにあるカラスザンショウの木の下で落果を探して口に入れてみました。ミカン科なので苦くはないだろうと予想していました。
サンショウの風味とほのかな甘みがあります。ピリッとした辛みはありません。例えるなら、リンゴにサンショウの粉末をかけて食べたような感じ。果肉はほとんどありませんが、癖になりそうな味でした。
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日本野鳥の会京都支部の父

2013年11月04日 | 野鳥
『遠野物語』を著し、日本の民俗学を切り開いた柳田國男は、子どもの頃から鳥が大好きだったらしく、『野鳥雑記』というエッセイに次のように書いています。
「私は子供の頃の一冬、兄にねだって薩摩芋を一俵買ってもらって、朝々その薯を一つずつ火に焼いて、半分は目白に、半分は自分で食って暮していたことがある」。
メジロは焼き芋も食べるんですね。
また、鳥が食べそうな赤い実が成る樹をいろいろと庭に植えて観察。ガマズミは人気がない、絵画ではナンテンにヒヨドリが付き物なのにやって来ない、ウメモドキにはいろんな鳥が集まるのでたくさん買い集めて植えたと記しています。


柳田國男(著作権保護期間満了の画像)

また、家の近くの松林に集まる野鳥についても書いています。
「春の末にはエナガが来る。コガラが来る。秋も暮れんとする頃には、以前は野外に出てしか聴かなかったカワラヒワの群が、終日ギイキリキリと啼いて遊び、時にはその透きとおった羽根が日に照らされて見える」。
柳田國男は熱心なバードウォッチャーだったわけです。野鳥への関心は終生続いたようで、中西悟堂が「日本野鳥の会」を設立した際には、北原白秋らとともに発起人に加わっています。
また、私が所属する日本野鳥の会京都支部は全国で最も早く設立された支部ですが、ここにも柳田國男が関わっています。
日本野鳥の会設立2年後の1936年(昭和11)1月19日、京都日出新聞(現京都新聞)で「京都野鳥講演会・映画会・座談会」が開催され、関西支部(京都支部の前身)が結成されました。その席にいたのが中西悟堂(40歳)と柳田國男(60歳)。
日本民俗学の父であると同時に、わが支部の父でもあるわけです。
ちなみに、「余り一人で飛びまわるのも百舌鳥のようでいけない。百舌鳥は私なども実は嫌いだ」と書いています。単独行動のモズに嫌悪感を持つほど寂しがり屋だったようです。
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