樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

ようやくシギチ観察

2021年08月26日 | 野鳥
長雨のせいでなかなか近くの干拓地へ出かけられなかったのですが、ようやく夏らしい日差しが戻ってきたので、日焼け覚悟でシギ・チドリ観察をスタートさせました。
まず、鳥が羽を休める休耕田が今年はどこにあるかを確認するために、だだっ広い干拓地を一巡。減反政策が終了して休耕しても補助金がもらえなくなったので、休耕田が次々にネギ畑や飼料用水田に代わって、鳥の居場所が少なくなってきました。食糧自給率向上という意味では喜ばしいのでしょうが、バードウォッチャーとしては寂しい状況です。
そんな中、まず発見したのはアオアシシギ。干拓地の中を流れる川の中州で7羽が群れていました。



この鳥は本来は渡り鳥(旅鳥)で、春と秋(今ごろ)に日本を通過するのですが、ここでは冬や初夏にも目撃されているので、多分、留鳥化しているのだと思います。全国的にもそういう例があるようです。これも温暖化のせいかな?
2回目となる昨日のラウンドでは、セイタカシギに出会いました。しかも、最初のポイントで4羽を発見した後、別のポイントで6羽を発見。昨年もセイタカシギが多かったのですが、その傾向が続いているようです。



鳥たちが思い思いに餌を食べたり、羽を休めたり、羽繕いしているのを見ていると、気持ちが(元々おだやかですが)さらにおだやかになります。時間と天気が許す限り、今シーズンも干拓地巡りをしようと思います。

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この地球に鳥は何羽いるか?

2021年08月19日 | 野鳥
世界に約1万種の鳥がいることは分かっていますが、全部で何羽いるかについては、カウント不能なため定かではありません。ところが、今年5月にオーストラリアのある大学の研究チームが、アメリカの学術誌に世界に生息する鳥の数を、全種類の92%にあたる9700種それぞれの数とともに発表しました。
3つの科学団体が保有するデータと、鳥類学で有名な米国コーネル大学が運営するグローバルな鳥情報サイト「eBird」のデータを用い、さまざまな数式モデルを駆使して推定しています。原論文を見ると、かなりのボリュームのテキスト(もちろん英語)といくつかの数式モデル図(下はその一部)で構成されています。



それによると、地球上にいる鳥の数は500億~4280億羽。数字に1桁の幅があるのは、鳥が移動する範囲が広くて不明瞭であったり、世界の多くの地域で科学的データが不足しているため。こういう試みは過去にはなかったようで、世界で初めて一定の科学的根拠をもって地球上の鳥の数が推定されたわけです。
種類別にみると、最も多いのはイエスズメで16億羽。日本のスズメとは別種で、私もアメリカで見ましたが、目の周りが黒いので「目つきの悪いスズメだな」という印象でした。


イエスズメ(Public Domain)

以下、ベスト10は、ホシムクドリ13億羽、クロワカモメ12億羽、ツバメ11億羽、シロカモメ9億5000万羽、キタメジロハエトリ9億羽、ミツユビカモメ8億1500万羽、ハマヒバリ7億7100万羽、セグロアジサシ7億1100万羽、サバンナシトド5億9900万羽となっています。ハマヒバリやサバンナシトドなど日本での珍鳥は、世界では珍しくも何ともない鳥ということです。


ハマヒバリ(Public Domain)

一方、「日本には鳥が何羽いるのだろう?」と気になって調べてみましたが、そういうデータはないようです。ただ、スズメについては都市鳥研究家の三上修さんが推定値を発表し、次のように書いています。
「2008年の繁殖期における日本本土のスズメの成鳥個体数は,およそ1,800万羽と推定できた.成鳥 1つがいあたり,秋までに 3羽の若鳥が生存すると仮定すると,秋には4,500万羽ということになる」。
また、“鳥の国勢調査”と呼ばれる全国鳥類繁殖分布調査で「数の多い鳥ランキング」が発表されており、全国の合計推定値ではなく限られた調査地で確認された実数ですが、多い順に、ヒヨドリ、ウグイス、スズメ、ハシブトガラス、ホオジロとなっています。やっぱり、ヒヨドリが幅をきかせているんですね。

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殿下はバードウォッチャー

2021年08月12日 | 野鳥
前々回、アメリカのカーター大統領を中心にバードウォッチャーの政治家をご紹介しましたが、王族の中にもバードウォッチャーがいます。
今年4月に99歳で亡くなったイギリスのエディンバラ公フィリップ殿下もその一人。


1953年のエリザベス2世の戴冠式でのフィリップ殿下(Public Domain)

海軍に入隊した頃はスズメとカモとカモメしか知らなかったものの、1956年と1959年の「ロイヤル・ヨット・ブリタニア」(イギリス連邦をヨットで回る航海)で、ヨットの周りを飛ぶ海鳥に魅了されて写真を撮影するようになりました。そして、1962年には世界中の海で撮影した海鳥の写真集『ブリタニアの鳥』(下)を刊行しています。



その一方、イギリスの紳士の常としてハンティングにも熱心で、英連邦内ではバードウォッチャーとしてよりもハンターとして有名だったようです。鳥は撮影する対象ではあるものの、保護という視点はなかったのでしょうか。にもかかわらず、WWF(世界自然保護基金)の会長や英国鳥類学の支援団体のパトロンを務めていました。
日本の皇族も鳥類学やバードウォッチングに深く関わっています。山階鳥類研究所を設立した山階芳麿は昭和天皇の従弟(いとこ)。三大図鑑の一つ『日本鳥類大図説』を著した清棲幸保も皇族出身です。
高円宮妃殿下は野鳥写真家で、これまで2冊の写真集(下はそのうちの1冊)を発行するほか、写真展を5回開催しています。



また、現天皇の妹である礼宮内親王はバードウォッチャーとして知られ、皇族を離脱した現在は黒田清子(さやこ)として山階鳥類研究所に勤務しています。
バードウォッチングを始めた頃、周りから「高貴な趣味ですね」と言われたことが何度かありましたが、こういう背景があるんですね。
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謎のツバメ群舞

2021年08月05日 | 野鳥
今の時期、夕方になると京都府南部のツバメ数万羽が集結する場所が宇治川にあります。それを見るために毎年観察会を開いていましたが、コロナのため昨年は中止。今年も京都府にまん延防止等重点措置が適用されたので、8月1日の会員向け、私が担当する8日の一般向けとも中止になりました。
しょうがないので、以前ご紹介したオンライン探鳥会として会員に楽しんでもらうため、先日撮影に出かけました。その中から当ブログ用に編集したのが以下の動画。



「ツバメのネグラ入り」と呼ばれる現象で、全国各地にネグラがありますが、なぜこの時期にヨシ原に大群が集まるのかは謎です。南へ帰るために安全を期して大群になるという説、どこに餌がたくさんあるか情報交換するために集まるという説、いろいろありますが、結局は「ツバメに聞いてみないと分からない」。
宇治在住の会員が5~6名集まって毎年カウント調査をしています。夕方はご覧のようにツバメがグルグル乱舞してカウントできませんが、早朝の飛び出し(ネグラ立ち)は一方向に流れるので、4時半に集合して1人が50メートルほどの間隔を担当してカウントします。その調査もコロナで昨年、今年とも中止。10年前、調査の最中にカメラを置いて後方を撮りっぱなしにした映像が以下。



5時前になると、ヨシ原で目覚めたツバメが「グジュグジュ、グジュグジュ」と鳴き始め、最初は50羽ほどの群れがあちこちで飛び出し、それが徐々に100羽、500羽、1000羽単位の大群になって流れるように飛んでいきます。それを、おおまかに300とか1000、上の映像のようなピーク時には2000、3000とカウントしながら各担当分を合計して数を算出します。
多い年は5万羽以上、少ない年は2万羽くらい、年によって、あるいは調査日によっても数は違いますが、観察会で初めてご覧になった方は必ず「スゴ~イ!」と感動されます。他の探鳥会と違って鳥の当たり外れがなく、ツバメの大群は必ず現れるので、担当者としては安心して開催できる観察会なのですが、中止になって残念でした。
コメント (4)
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