樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

久しぶりのトモエガモ

2022年12月29日 | 野鳥
11月の宇治川探鳥会では、みなさんににコウライアイサを見ていただいて盛り上がりました。そして、12月の探鳥会ではトモエガモの雄を発見。コウライアイサほど珍しくはないですが、宇治川でトモエガモの、しかも雄が見られることはまれで、参加者は再び盛り上がっていました。
双眼鏡ではなかなか見つけにくく、望遠鏡に入れてお見せしても鳥がすぐ動くので、その場で20分ほど時間を費やして全員に見ていただきました。11月の探鳥会で雌を数羽確認しましたが、雄は岩の陰に隠れていたか、あるいはエクリプスで雌のような色だったので見逃したのかもしれません。
翌日、カメラを持参して現地で撮ったのが以下の動画です。



トモエガモを間近で見るのは私も久しぶり。雄は顔に黄色と緑の巴模様があり、脇に白い縦線があるのが特徴です。
20年以上前は、この宇治川の山奥にある喜撰山ダムがトモエガモの越冬地で、大群が見られたようです。その名残で飛来したのかもしれません。いずれにしても、コウライアイサやトモエガモが来年も飛来してくれるとうれしいですね。
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コウライアイサが帰って来た

2022年12月22日 | 野鳥
11月末に宇治川で探鳥会を開催するので、2日前に下見をしました。例年に比べるとカモ類の到着が遅れていて、「鳥が少なくて探鳥会では苦労しそうだな~」と思っていましたが、上流部でコウライアイサを発見! 今年1月20日の記事「正月の珍鳥騒動」でご紹介したように、正月に宇治川に飛来し、京都府では過去に1例しか記録がない珍しい鳥なので連日フォトグラファーが押し寄せ、堤防脇には名古屋ナンバーや多摩ナンバーも並ぶようになりました。その個体が舞い戻ってきたようです。
私が発見した日はフォトグラファーは1人もいなかったので、まだ知られていないようでした。そして探鳥会当日、コウライアイサがいた上流部へ向かったものの、ドラゴンボートの練習船が侵入してきたため、水鳥が下流方面へ飛んでしまって見られませんでした。
しょうがないので、一旦終了した後、希望者を連れて下流部のポイントに行くと、コウライアイサがいました。参加者は大喜びで、スコープを覗いたり、写真を撮ったりしていました。


コウライアイサを観察する参加者

その後、フォトグラファーが集まるようになり、1週間後には平日にもかかわらず30人ほどがカメラを構えていました。そして、ネット上にも宇治川のコウライアイサが掲載されるようになったので、私自身もこうして公表することにしました。
その後の情報では、私よりも先に発見した方がいて、ツイッターで拡散されたようです。探鳥会の2日後、フォトグラファーがまだ数人しかいない日に私が上流部で撮影した動画が以下です。昨季よりも光の条件もよく、至近距離で撮影できました。



2年連続でコウライアイサが飛来したので、ひょっとすると来季もやってくるかもしれません。そうなると、宇治川はコウライアイサの定期的な越冬地ということになります。それはそれでうれしいことですが…。
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淡路島で鳥見

2022年12月15日 | 野鳥
「淡路島に行ったことがない」と妻が言うので、先週、全国旅行支援を利用して1泊2日で出かけてきました。妻を温泉施設に放り込んで、その間に私はバードウォッチングに精を出すといういつものパターン。


明石海峡大橋

1日目は和歌に詠まれたシロチドリを探して海岸を歩きましたが空振り。沖にウミアイサがいるのを確認しただけでした。2日目は、野島断層保存館を見学する妻と別れて、県立淡路島公園へ。
広大な公園の中にある池を丹念に探して、向こう岸の木陰にオシドリを発見。しばらく倒木の上で眠ったまま動かないので、池を半周して戻ってくるとようやく水面に出てきました。



こちらのオシドリ夫婦は仲良く一緒に行動していますが、私たち夫婦は別行動(笑)。でも、それ以外の時間はずーっと一緒でした。
池の周りの道を歩くと、木の間からホシハジロの小群が浮かんでいるのが見えました。まだペアリングの時期ではないので、こちらは雄ばかり。多分、雌は少し離れたところにいるのでしょう。



淡路島には仕事で一度訪れたのと、高知県への鳥見ツアーの際に2回通り過ぎただけで、今回のような旅行は初めてでしたが、温泉などの観光施設が多彩な上に、玉ねぎだけでなく食べ物も豊富で、見どころの多い魅力的な島でした。
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冬の干拓地

2022年12月08日 | 野鳥
夏から秋、3日に1度の頻度でシギ・チドリ観察に出かけた干拓地ですが、その後はご無沙汰しておりました。先日、寒いながら天気がいいので、「猛禽類でも…」と思って久しぶりに回ってきました。
行くと必ず出会えるチョウゲンボウ(小型のハヤブサ)を双眼鏡で追っていると、やや大きい猛禽が視界に入りました。最初はハヤブサかな?と思いましたが、オオタカのようです。チョウゲンボウが逃げ去った後の空をゆったりと旋回してくれました。



その後、同じくタカの仲間のノスリを発見したのですが、警戒心が強く、追いかけると逃げるの繰り返しなので諦めました。
別のエリアで鳥を探していると、ムナグロが1羽いました。渡り鳥なので、この時期にこの場所にいるはずはないのですが、南へ帰りそびれたのか、病気やケガをかかえているのか、いずれにしてもここで越冬するようです。



ムナグロと同じ田んぼの中に、タヒバリを確認。それほど珍しい鳥ではないですが、私自身が冬にこの干拓地へ来ることが少ないので、久しぶりの出会いでした。小さな発見なのに、なぜか嬉しかった。



この干拓地は、シギ・チドリのシーズンでなくても、来れば何か思いがけない出会いがあるので、これからも寒さに負けないで双眼鏡とカメラをぶら下げて出かけようと思います。
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カフカが描く鳥

2022年12月01日 | 野鳥
ある朝目覚めたら自分が虫になっていたという代表作『変身』など、「シュール」「不条理」と形容されるカフカ文学。世界中にファンが多く、『変身』に刺激されて小説を書き始めたガルシア・マルケス(1982年ノーベル文学賞受賞)をはじめ、日本の安部公房、倉橋由美子などにも影響を与え、村上春樹にいたっては『海辺のカフカ』という長編を書いています。
そのカフカに『禿鷹(はげたか)』という、文庫本2ページの超短編があります。「それは禿鷹だった。足を抉(えぐ)りにくる。靴も靴下も食い破られた。くり返し襲ってくる」という書き出し。いわば、猛禽に襲われて死ぬまでの実況中継です。
死ぬ間際に、自分が流した血の海でハゲタカが溺れるのを見て「私はほっと安堵した」で終わります。自分を殺す相手が死ぬのを見て安心するという心理は分かるような気がします。そのあたりがカフカらしい。


カフカ(1883~1924)(Public Domain)

もう一つ「こうのとり」という作品もあります。こちらも4ページ程度の超短編。書き出しは、「夕方、家にもどってくると、部屋の真ん中に大きな卵があった」。
その卵をかえしてヒナに餌を与える代わりに、成鳥になったら背中に乗せて南へ連れて行くという契約書を交します。コウノトリのヒナが嘴にインクをつけてサインするところがかわいい。そして、幼鳥に飛ぶことを教えているシーンで物語は終わります。
カフカは生前「悪夢を書きちらしただけ」と謙遜していたようですが、まさに夢に出てくるような荒唐無稽(こうとうむけい)な世界がカフカ文学の魅力。鳥をテーマにした2作品をあえて意味づけすれば、自分の死に際を描く救いのない『禿鷹』に対して、もうすぐ南の国へ飛んで行けるという希望で終わる『こうのとり』というところでしょうか。
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