樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

THE BIG TREES

2009年08月31日 | 木と作家
1ヶ月前に還暦を迎えました。特に感慨はありませんが、嬉しいのは1000円で映画館に入れること。その恩恵に浴して、最近よく映画を観に行っています。
以前はいっぱしの映画マニア気取りで、パンフレットをコレクションしたり、監督別の作品リストを作ったりしました。
その熱はもう冷めましたが、今は樹木に熱くなっているので、ある店のDVDコーナーで「THE BIG TREES」というタイトルが目に止まり、「巨大スギを伐採する男の物語」という説明文につられて買ってしまいました。
主演のカーク・ダグラス以外、監督も女優も初めて聞く名前。手元の監督事典や女優事典で調べても載っていません。「カーク・ダグラスだけが売りのB級映画だろう」と期待せずに観ました。

             

林業で成功したカーク・ダグラスがクエーカー教徒の神聖な森に目をつけ、そこにある巨木を強引に伐採する。しかし、ある女性教徒に恋心を抱き、最終的にはその森を守る側に立つというストーリー。
B級ながらそれなりにハラハラドキドキもあり、ロケーションやセットにもリアリティがあります。特に、巨木を切り倒すシーンは圧巻。
説明文には「アメリカ杉」とありますが、画面を見るとレッドウッドのようです。北米大陸の西部に生育するヒノキ科の樹木で、別名センペル・セコイヤ。樹高が100m以上にもなる世界一高い樹として知られています。

             
          (森林総合研究所にあるセンペル・セコイヤ)

映画では樹齢300~400年と思われる巨木が次々に伐採されます。多分、ハリウッドに近い山林で撮影したのでしょう。「映画のためにこんな巨木を何本も切り倒していいの?」と思いながら見ていました。
木をテーマにした映画としては他に『木靴の樹』というイタリアの作品があります。こちらは’78年のカンヌでグランプリを獲ったA級ですが、まだ観ていません。できれば映画館で観たいので、名画館でラインナップされるのを楽しみにしています。
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木材偽装

2009年08月27日 | 木の材
お米、牛肉、鰻、竹の子などの食品から再生紙やマンションにいたるまで、ここ数年の間にさまざまな偽装が発覚しました。あまり知られていませんが、木材の世界でも偽装が横行しています。中には公然というか、偽装が当たりまえの商品もあります。
その筆頭がサクラ材の家具。材木業界でサクラと言えばヤマザクラのことですが、家具業界ではサクラ=カバが常識です。家具売場に並んでいる“サクラ”の和ダンスやテーブルは、実際にはダケカンバやミズメ(いずれもカバノキ科)で作られているのです。家具の世界では、何の後ろめたさもなく、当然の専門知識として通用しているようです。

       
           (わが家にも“サクラ”のタンスが一竿あります)

もう一つはすり粉木。サンショウの木で作ったものが最高と言われますが、以前ある山国の道の駅で「サンショウのすり粉木」として売っているのを見たら、サンショウはサンショウでもカラスザンショウでした。
前から「すり粉木にできるほど太いサンショウの木があるのかな?」と疑問に思っていたので、そのカラクリを知って「なるほど!」と納得しました。サンショウもカラスザンショウもミカン科サンショウ属ですが、客は「あのサンショウのすり粉木」と思って買うでしょう。被害はなくても一種の偽装ですね。

             
        (カラスザンショウ。幹や枝に鋭いトゲがあります)

もう一つ私が疑っていたのは南天の箸。みなさんの中にも「南天の箸」と思い込んで毎日使っておられる方があるかも知れませんが、これもよく考えれば箸を大量に生産するほど太いナンテンは入手困難です。
実際に使われている材はイイギリ。全く別種ですが、ナンテンに良く似た赤い実をつけるのでナンテンギリという別名があります。「南天の箸」にはイイギリのほか輸入材もたくさん使われているようです。

       
          (イイギリ。秋に赤くなる実はナンテンにそっくり)

また、櫛や判子などには「本ツゲ」と記してあります。わざわざ「本ツゲ」と断るのは、単なる「ツゲ」は偽物のツゲだからです。多くの場合は「シャムツゲ」で、日本のツゲとは縁もゆかりもない木です。
似たような木材偽装は他にもあって、「いずれ社会問題になるんじゃないかな~?」と密かに危惧しています。
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木のコスメ

2009年08月24日 | 木と美容
女優の真矢みきがTVCMで「茶のしずく」という美顔石鹸を勧めています。美顔や美肌には全く興味ないですが、お茶由来という点に引っ掛かりました。お茶も木ですし、お茶の本場・宇治の住民としても気になります。
「茶のしずく」は福岡県のメーカーが鹿児島県産の茶葉を使って生産しているようですが、宇治にも同じような商品を作っている会社があります。商品名は「抹茶石鹸」。緑茶にはカテキンやビタミンC、アミノ酸などの成分が含まれていて、美肌・保湿・UVカット・肌の若返り効果があるとか。

       
             (「抹茶石鹸」。泡立て用のネット付き)

ネット通販が主で店売りはしていませんが、地元のスーパーに販売コーナーがあるのでミニサイズを買って妻に試してもらいました。「泡が細かくて、洗顔した後肌がしっとりする」とのこと。私も試しましたが、泡がクリーミーです。

       

このメーカーは石鹸だけでなく、抹茶エキス入りのスキンケアクリーム「宇治の花」や、緑茶のカテキンを使った化粧水なども作っています。

       
            (抹茶エキス入りクリーム「宇治の花」)

お茶に限らず樹木由来のコスメティックはけっこうあります。資生堂は椿油を使った女性用シャンプーを大ヒットさせましたし、男性用にはヒノキの香りがするオードトワレを発売していす。
また、女性ならご存知でしょうが、「ヒノキ肌粧品」というブランドもあります。ヒノキ科の樹木から採取したヒノキチオールという成分を使って、18種類ものコスメティックをラインナップしています。
さらに最近は、シラカバの樹液を使ったスキンケア商品も発売されています。飲料としてのシラカバ樹液は飲んだことありますが、美肌効果もあるそうです。
そう言えば、昔「桃の花」というスキンクリームがあって、私も子供の頃使いました。現在も販売されていますが、ネーミングのみで桃の成分が入っているわけではないようです。
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与作

2009年08月20日 | 木と歌
先月も今月も森林ボランティアに参加しました。主な作業は間伐。
間伐した木のうち、太いものは宇治市植物公園のベンチに、中くらいのものは炭焼きに、枝はイベント用の木工材料にするとのことで、運搬や加工も手伝いました。
ベンチ用のヒノキの丸太は皮付きのまま放置しておくと虫に喰われてしまうので、樹皮をはがします。ベテランは野菜の皮むき器の親分みたいな道具を使いますが、私は鎌。それでもコツが分るとけっこうスムーズに皮がむけます。

       
                  (ヒノキ丸太の皮むき)
       
          (皮をむくとモダンアートのような虫喰いの跡が…)

炭焼き用の木は、炭作りよりも間伐材の利用が目的なので、樹種は選びません。炭に適したコナラやアカマツもありますが、ヤマモモやソヨゴなど「こんな木を炭にするの?」という木も集めました。どんな炭になるのか、冬の炭焼き作業が楽しみです。

       
              (炭焼き用の間伐材。樹種は雑多)

伐採作業ではベテランは大ノコやチェーンソーを使いますが、新米の私は剪定用の小さいノコで細い木を伐ったり、枝を伐り分ける程度。正しい伐り方や安全な立ち位置、斜面での作業方法などを教えてもらいながら少しずつ慣れている段階です。
それでも、ひたすら木を伐っていると気分は木こり。頭の中に自然と北島三郎の歌が流れてきます。♪与作は木を伐る~ ヘイヘイホ~…(笑)。

       
              (枝はイベントで使う木工材料に)

暑い中ヘルメットに長袖で作業するので着替えが2枚必要なほど汗をかきますが、木に囲まれて暮らすこの歌の世界は私にとっては一つの憧れなので、月に1度でも与作になれるのは嬉しいです。♪こだまはかえるよ~ ヘイヘイホー……
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日本一低い山

2009年08月17日 | 樹木
日本の最高峰は3,776メートルの富士山ですが、最低峰(?)をご存知ですか?
日本一低い山は大阪市にある天保山で、高さは4.53メートル。45.3じゃないですよ、4.53。冗談みたいですが、国土地理院が正式に測定して、現地に三角点もあり、1/25,000の地形図にも掲載されています。
富士山の場合2,700メートル以上は森林限界で木は生えていないそうですが、日本で最も低い山にはどんな樹木が生えているのか気になって見てきました。

       
                (日本最低峰の三角点)

場所は大阪港。海遊館やサントリーミュージアムがあるあたりです。もともとは大型船が入港できるように安治川を浚渫した土砂を積み上げた人工の山。その工事が行われたのが江戸時代の天保年間だったのでこの名前になりました。

             
       (国土地理院による案内板と周囲に植えられたウバメガシ)

当時は20メートルほどの高さがあり、桜や松が植えられ、茶店も並ぶ観光スポットだったようで、安藤広重の浮世絵にも描かれています。
ところが幕末にロシアの船が大阪港に現れたので、河口を守る砲台を建設する際に山が削り取られ、さらに地盤沈下によって標高が下ったとのこと。

       
      (サルスベリの背景は港に架かる橋。山よりも橋の方が高い!)

現在は公園になっていて、小さな案内板と三角点があるのみ。周囲には丸く刈り込まれたウバメガシが4~5株あり、サルスベリとハナゾノツクバネウツギ(別名アベリア)が白い花を咲かせていました。

       
        (公園によく植えられる園芸品種ハナゾノツクバネウツギ)

残念ながら、標高4.53メートルの日本最低峰は全くの人工的な植栽でした。考えてみればあたりまえですね、海に隣接した公園の地面がそのまま山頂なんですから。
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菩提樹

2009年08月13日 | 木と宗教
「ボダイジュ」と聞いて何を連想しますか?
「♪泉に添いて 茂る菩提樹…」というシューベルトの歌曲を思い出す人もいるでしょう。ここで歌われているボダイジュは、ドイツ語でリンデンバウム、植物学上ではセイヨウシナノキ。ヨーロッパに自生する落葉広葉樹です。

              
           (万博公園で撮影したセイヨウシナノキ)
       
                   (セイヨウシナノキの葉)

「お釈迦さんが悟りを開いた樹」と思う人もあるでしょう。日本のお寺にボダイジュが植えてあるのはこのためです。リンデンバウムと同じシナノキ科の仲間で、植物学上の名前もそのまま「ボダイジュ」。日本の自生種ではなく、中国から移入された樹木です。

       
               (近くのお寺に植えてあるボダイジュ)
              
                  (ボダイジュの葉と実)

ところが、正確に言うとお釈迦さんが悟りを開いたのはインドボダイジュ。似たような名前ですが、こちらはクワ科。仏教の世界では神聖な樹ですが、熱帯でしか生育しないため、仏教が中国に伝わった段階で葉の形が似ているシナノキ科のボダイジュに代わり、そのまま日本に移入されたようです。
昨年、龍谷大学のセミナーに参加した際、そのインドボダイジュを見つけました。さすが仏教系の大学。温室ではなく屋外でしたが、立派に育っていました。

              
             (龍谷大学にあるインドボダイジュ)
       
          (インドボダイジュの葉。シナノキの葉に似ている?)

お釈迦さんは2500年ほど前、ブッダガヤという村のこの樹の下で悟りを開いたわけです。7世紀にその場所を訪ねた三蔵法師は、「樹高は12~15m。まだ青々としており、人々が香料入りの水やミルクを根元に注いでいる」と記しているそうです。
ブッダガヤには現在もその子孫のインドボダイジュがあり、世界中から巡礼者が訪れるとか。龍谷大学には「ブッダガヤ原産」と明記した看板がありましたから、同じ子孫かも知れません。
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松が嫌いな神様

2009年08月10日 | 木と宗教
神戸の繁華街・三ノ宮から徒歩5分くらいの場所に生田神社があります。タカラジェンヌや関西の有名人が挙式する神社として有名で、最近では藤原紀香と陣内智則の結婚式で全国に知られました。

       
                 (生田神社の社殿)

この生田神社では松がタブーになっています。1200年前、生田川が氾濫した際に境内の松が倒れて社殿が壊れ、「松は水に弱いので、今後は境内では松を忌むように」という神のお告げがあったからだそうです。現在も境内には松を1本も植えず、お正月の門松も杉を代用しているとか。
古来、松は神の寄り代(天から降りてくる階段みたいなもの)と考えられ、ほとんどの神社には松が植えられています。能舞台の背景に松が描かれているのもこのためです。その松を嫌う神様というのは珍しいのではないでしょうか。

       
              (「生田の森」にあるご神木はクスノキ)

実際に歩き回ってチェックしてきましたが、確かに境内にも裏手の「生田の森」にもマツはありません。多いのはクスノキ、ツバキ、スギ、竹など。
ところが、ヒマラヤスギが植えてあるのを私は見逃しませんでした。本殿の近くに3本、松尾神社の分社に6本、駐車場の隅に1本、けっこう大きな樹がありました。
ヒマラヤスギは名前を見ればスギ科のようですが、植物学的にはマツ科。日本の自生種ではありませんが、この神様が大嫌いなマツの親戚です。

       
               (駐車場の隅のヒマラヤスギ)

アカマツやクロマツでなければOKということでしょうか。それにしても、松をタブー視する神社があるというのは、私にはとても興味深いことでした。
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総長カレー

2009年08月06日 | 木と飲食
カレーマニアの間ではよく知られた存在のようですが、京都大学の前総長はカレーが大好きで自らオリジナルカレーをプロデュースしました。その名も「総長カレー」。
小麦粉を使わずに香味野菜と9種類の香料とトマトで仕上げたソースに、リンゴとバナナで甘みを、ココナッツミルクでコクを加えたビーフカレーです。
学生食堂で名物になったため、レトルトパックを発売したところ2年たらずの間に10万食が売れたとか。私も以前いただいたことがあり、知り合いのカレーマニアにプレゼントしたら絶賛していました。
前回ご紹介した火起こしイベントの会場が京大だったので、オリジナルの「総長カレー」を食べに学生食堂に行ってきました。注文したのはステーキカレー。

       
              (総長カレーを使ったステーキカレー)

トマトを使っているせいかハヤシっぽい酸味があり、しかもスパイシーという独創的な味です。ステーキカレーは787円。レトルトパックの値段(630円)に比べると割安です。
私の学生時代の学食と違って店内もおしゃれで、白衣のウェイターがサービスしてくれますが、全てのメニューが昔の学食並みに大変リーズナブルでした。
この学生食堂の名前は「カンフォーラ」。クスノキの学名です。クスノキは京大のシンボルになっていて、ロゴマークにも描かれ、学歌にも「緑吹く 楠の葉風に 時の鐘 つぎて響けば…」と歌われています。その歌詞どおり、京大を象徴する時計台の前にクスノキの大木が立っています。


       
                  (時計台とクスノキ)

「カンフォーラ」はラテン語ですが、オランダ語では「カンフル」。ダメになりかけたものを回復させるとき比喩的に「カンフル剤を打つ」と言いますが、クスノキから採取した樟脳から強心剤を精製したのでこう呼ばれるようになったそうです。
また、クスノキ科の樹木は香りがいいので料理によく使われます。肉料理に葉を使うゲッケイジュも、香り付けに使うシナモンやニッキも、爪楊枝の材料クロモジもクスノキの仲間。総長カレーにもゲッケイジュの葉が使われているのではないでしょうか。
カレーマニアはぜひ総長カレーをお試しください。通販サイトはこちら
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火の木

2009年08月03日 | 木と歴史
古代人のように木で火を起こそうという面白いイベントがあったので参加してきました。
講師は自ら「野人」と名乗り、「火起師(ひおこし)」という聞き慣れない肩書きを持つ大西琢也さん。北米、アフリカ、ヨーロッパの各大陸最高峰で火を起こしたり、「国際火起こしコンクール」で13秒という記録で優勝するなど珍しい経歴を持っています。

       
         (道具は上から火錐杵、火錐臼、木屑を受ける枯葉)

一般的に「火を起こす木だからヒノキ」と言われます。しかし、古代の「はひふへほ」の発音には2通りあり、「火」はFi、「檜」はHiで両者に共通性はない、という言語学者の説に私は納得しています。
そのことを大西さんに確かめたら、実際に使うのはヒノキではなくスギで、遺跡から発掘される火錐臼(ひきりうす)もスギやタブノキが多いそうです。
一方、火錐杵(ひきりきね)はキブシ、ウツギ、アジサイの3種類。錐のように回転させるので真っ直ぐな枝が必要だそうです。遺跡からはクルミやシノダケなどその地域で入手できる杵が発掘されるとのこと。

       
               (大西さんが使う火錐杵は3種類)

座学の後、大西さんの実演を見てから、参加者が4人ずつのグループに分かれてチャレンジしました。手順は、臼の溝で杵を回転させて木屑を作る → 摩擦熱で木屑に火種が生れる → 火種を麻の繊維にくるむ → 息を吹きかけて火を大きくする → 麻の繊維を手で振り回して発火させるというもの。

       
       (杵を錐のように回転させると煙が出ます。ここまでは簡単)

しかし、実際にやってみるとそう簡単ではなく、4人で何度も交替しながら杵を回すものの、煙は出るのになかなか火になりません。20分くらい続けてようやく火起こしに成功。中には30分以上やっても発火できないグループもありました。

       
           (枯葉に受けた木屑の火種を麻の繊維で包む)

大西さんによると木で火を起こすのは世界共通で、ミクロネシアのように年輪のない木がある地域では、回転させるのではなく前後にこすりつけて発火させるそうです。年輪が引っ掛からないので、そんな方法が可能なのでしょう。樹種によって発火方法が異なるというのは興味深いことでした。

       
                (生れて初めて木で起こした火)

60年生きてきて、木で火を起こしたのは初めて。古代人になったようで、なかなか感動的でした。
大西琢也さんのウェブサイトはこちら
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