樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

イギリスの国鳥選挙

2018年06月28日 | 野鳥
意外なことに、バードウオッチング発祥の地イギリスでは長年国鳥が制定されていませんでした。ところが、2015年の国会の総選挙に合わせて国鳥の選挙が行われました、
候補となる鳥を10種類ノミネートし、それを国民がオンライン投票するという仕組み。ノミネートされたのは、メンフクロウ、クロウタドリ、アオガラ、ハイイロチュウヒ、カワセミ、コブハクチョウ、ツノメドリ、アカトビ、ヨーロッパコマドリ、ミソサザイ。
結果は、1位ヨーロッパコマドリ、2位メンフクロウ、3位クロウタドリ…。ヨーロッパコマドリは34%もの得票率で圧勝したそうです。以下はYouTubeにあるRobin(ヨーロッパコマドリ)。



日本のコマドリとは姿かたちもさえずりも違います。また、生態もかなり違うようで、現地では庭仕事で土を掘るとこの鳥が虫を捕るために近くに寄ってくるので、Gardener’s Friend(庭師の友だち)と呼ばれているとか。日本のコマドリが住宅の庭にやってくることはまずないでしょう。
ちなみに、メンフクロウが2位に入ったのは、この鳥が大好きな子どもたちが学校を通じて大量投票したからだそうで、その組織票がなければクロウタドリが2位になっていたそうです。
ついでながら、日本の国鳥はキジ。選挙ではなく、1947年に日本鳥学会が選定しました。キジは狩猟鳥にもなっていて、日本は国鳥を撃ち殺してもとがめられない珍しい国です。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鳥獣保護区

2018年06月21日 | 野鳥
私が栃の森に通い始めたのは22年前。この森を鳥獣保護区に指定するための調査に同行したのがスタートでした。私自身はあまり役に立っていませんが、1年間の調査のおかげで鳥獣保護区に指定され、下のような看板が立てられました。



20年後の今年、その後の変化を確認するために、京都府から再び調査を依頼されました。野鳥生息調査は毎回自主的にやっていることなのでほぼいつもどおりですが、この受託調査では、比較のためにもう1カ所別の場所(対照区)を調べなければなりません。そして、環境や植生の調査も必要です。私は聴覚が衰えたので野鳥は他のメンバーに任せて、環境・植生調査を担当しています。
6月10日の訪問時、オオルリがあちこちで鳴いていました。過去の調査データを確認したわけではないですが、少なくともオオルリに関しては、この20年間で減ってはいないように思います。



ミソサザイも相変わらず元気で、数が減ったとは思えません。下の動画の前半と後半は別個体。後半の個体はオオルリの声を聞いた後、思い出したように自分もさえずり始めてオオルリの声にかぶっています。



カラ類は少し数が減ったように思いますが、この日はヒガラが家族連れで姿を見せてくれました。親離れが近いようで、1羽の幼鳥が自力で虫を食べていました。



この20年間での大きな変化は、前回の記事にも書いたように鹿の食害による笹の壊滅。林床部の藪を利用するウグイスやコルリ、ヤブサメなどはほとんどいなくなりました。つまり、鳥獣保護区の中で獣が増え過ぎて環境を破壊するという矛盾が生じているのです。
鹿だけでなく猪や猿による農業被害も頻発していて、鳥と獣を分けて保護区を設けるべきではないかという議論も起きているようです。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鹿と森

2018年06月14日 | 木と鳥・動物
週末、また栃の森に行ってきました。前回の訪問から2週間しか経っていませんが、林内の花景色は一変していました。
前回満開だったサワフタギに代わって、今回はオオバアサガラが満開。あちこちで群生するこの木が一斉に開花していました。



この森では10年ほど前からオオバアサガラが激増しました。原因は、鹿。その食害によって、笹や他の樹木の幼木は壊滅状態ですが、オオバアサガラには有毒物質(サポニン)があるため鹿は忌避します。その結果、下の写真のように、林床部にはオオバアサガラの幼木だけが残るということになります。



「このままではオオバアサガラの純林になるのでは」と心配になりますが、自然の営みはそれほど単純ではないようです。他に食べるものがなくなったからか、鹿はそのオオバアサガラの樹皮にまで食指を伸ばしました。
下の写真は、樹皮を食べられて枯れたオオバアサガラの林。葉には毒があるのに樹皮にはないということでしょう。



群生するオオバアサガラが一斉に開花する様子は壮観ですが、単純には喜べない複雑な思いが走ります。
オオバアサガラの次に多かったのがヤマボウシ。自生する場所によって、花(正確には総包片)の大きさに差があるのは何故でしょう。



マタタビも葉を白くしていました。虫を集めるために白化するということは、花の役割を果たしているんですね。猫を興奮させるのは中枢神経を刺激する成分が含まれているからだそうです。



鹿、猫と続いたので、次は猿。林道や林内にはサルナシの花が咲いていました。キウイフルーツと同じ仲間なので、いつも「秋に実が成ったら食べよう」とねらっているのですが、猿が先に獲ってしまうので口にしたことがありません。しょうがないですね、この森の主は私たちではなく彼らですから。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

森は鳥の幼稚園

2018年06月07日 | 野鳥
5月末の栃の森では鳥もいろいろ観察できました。まず、この日もあちこちから声が聞こえてきたミソサザイ。日本で最も小さい鳥なのに、大きな声でさえずります。



繁殖シーズンとあって、巣立ちしたばかりの可愛い幼鳥や家族づれも見られました。下の動画はシジュウカラの幼鳥。文字通りくちばしが黄色く、後頭部には産毛が残っています。小さい声で親鳥を呼んでいるようです。



キバシリも現れました。最初は1羽だけでしたが、次々に集まってきて合計4羽。親鳥2羽、幼鳥2羽の家族でしょう。兄弟か姉妹か、2羽が戯れるようにからんでいました。



嬉しいことに、アカショウビンもすぐ近くに現れました。私たちが歩くコースの左手で鳴いていた個体がすぐ近くの木に飛んできて止まり、頭上からあの独特の声が聞こえてきます。同行メンバー6人のうち2人はチラッと姿を見たようですが、私は確認できませんでした。
「せめて声だけでも」と思って、風景を被写体にして収録したのが以下。頭上の個体と、もう1羽の別の個体が鳴き交わしています。



このほか、前夜のキャンプ中にヤイロチョウが鳴いたり、珍しく林内をオオタカが鳴きながら飛んだり、いろいろ楽しませてくれました。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする