樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

リニア新幹線とブッポウソウ

2018年07月26日 | 野鳥
リニア新幹線に関連する長野県南部のトンネル工事が7月中旬から中断されています。理由は、県の天然記念物ブッポウソウ。5月下旬に2組の営巣を確認したものの6月20日ごろにいなくなったのは、大きな音が出るクレーンや夜間の照明のせいではないかと地元の保護団体が報告したからのようです。
このニュースを知って、そのブッポウソウは以前観察した個体ではないかと思いました。3年前の5月末、いつもの3人で南信州へ鳥見ツアーに出かけました。大した鳥果が得られないまま失望して帰路についた途中、想定外の場所でブッポウソウに遭遇しました。しかも、ペアリングの真っ最中。
そのときに撮影したのが以下の映像。場所は、天竜川に掛かる大きな橋。当時すでに工事車両用の道路建設が始まっていました。



実は、このニュースを朝のワイドショーで紹介するので京都支部のホームページに掲載しているブッポウソウの映像(上とは別)を使わせてほしいという問い合わせが、東京の某テレビ局からありました。著作者は私なのでOKしましたが、恥ずかしながらそのときまでこのニュースを知りませんでした。ボンヤリしていてその放送も見逃しました。
リニア新幹線については、地下水脈の遮断、大量な仮置き土砂の土砂崩れ、ゼネコンの談合などいろいろ問題があるようで、日本野鳥の会も『野鳥』誌で特集を組んで疑問を呈しています。
ブッポウソウを撮影した大きな橋では、イワツバメも営巣していました。しばらく撮りっ放しにしたファイルを編集したのが以下の映像。イワツバメのアパートみたいでしょ?



リニア新幹線とは別に、北陸新幹線の延伸計画では、私がよく鳥見に行く近くの干拓地がルートになっています。工事が始まる頃には私はこの世にいないでしょうが、ここを利用するたくさんの鳥たちはどうなるのだろうと心配しています。
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温暖化と野鳥

2018年07月19日 | 野鳥
西日本豪雨や連日の猛暑は地球温暖化による現象と思わざるを得ません。鳥の世界でも同様の異変が起きているのではないかと思って調べてみたら、やはり憂慮すべき事態になっていました。
身近なところでは、ウグイスの初音が最近の50年で約1か月早くなっているという報告が九州で上がっています。さえずりが早くなるということは繁殖活動が早くなるということ。イギリスでは1971~1995年の24年間で、65種類の野鳥のうち20種類で産卵時期が平均9日間早くなっているそうです。
産卵時期が早くなるということは、ヒナに与える餌にも影響が出てきます。新潟では、ソメイヨシノの開花時期よりもコムクドリの繁殖時期の早期化のスピードが2倍ほど早いため、ヒナに与えるサクランボが不足しているとのこと。ヒナが食べ盛りなのに、サクランボがまだ十分に実っていないわけです。
下は近くの探鳥地で撮ったコムクドリ。京都府内は通過するだけで繁殖はしませんが、ソメイヨシノの葉につく虫を食べています。



コムクドリは繁殖成功率の低下には至ってないようですが、ヨーロッパのマダラヒタキは繁殖時期と餌である昆虫の発生時期がずれたために、個体数が顕著に減少しているそうです。
フランス国立自然史博物館は、「温暖化によって国内の野鳥の一部が絶滅するかもしれない」という論文を2008年に発表しています。
アメリカの野鳥保護団体オーデュボン協会も、「温暖化がこのまま進むと今世紀末までに北米に生息する野鳥の半数314種が絶滅するおそれがある」という衝撃的な報告書を2015年に発表しました。
同協会の会長は「鳥類は人間に警告を発しています。温暖化の抑制や生息地保護のために今すぐ何かすべきだと警告する“炭鉱のカナリア”なのです」と語っています。
日本で絶滅が危惧されるのはライチョウ。温暖化は水平方向だけでなく垂直方向の環境変化ももたらします。平均気温が1℃上昇すると森林限界が154m上昇し、それ以下の標高のライチョウの縄張りが消滅すると仮定すると、個体数は平均気温が1℃上昇すると10%、2℃上昇すると50%、3℃上昇すると80%減少すると推定されています。
そして、3℃上昇すると御嶽山と乗鞍岳のライチョウは絶滅し、南アルプスでも35羽にまで減少するとのこと。
下は私が撮ったわけではないですが、乗鞍岳のライチョウ親子。温暖化が続くと、彼らは絶滅するわけです。



温暖化をテーマにしたドキュメンタリーではホッキョクグマの悲痛な姿が描かれますが、それと同じ状況に日本のライチョウも追い込まれているわけです。
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鳥のコーラス

2018年07月12日 | 野鳥
北信州ツアーの後半です。2日目は奥志賀高原のペンションに宿泊。例によって朝4時に宿を出て、4年前にも訪れた雑魚川へ。前回もそうでしたが、ここは鳥影が濃く、コーラスを浴びるには最高のポイント。
以下の動画は目の前のシラカバ&ダケカンバ林を被写体にして、そのコーラスを収録したもの。特にコルリの密度が高く、前から2個体、背後から3個体の声が聞こえてきます。クロジも多く、コルリとさえずりを競っているようです。「ホイーチヨチヨ」と鳴くのがクロジ、「シシシシ…」の前奏の後「ジョリジョリ」と鳴くのがコルリです。



私は難聴気味で、この数年は日常生活にも支障が出ていたののと、鳥の声をしっかりキャッチしたいので、ツアーの1週間前から補聴器を利用し始めました。今回のツアーでその効果をテストしたところ、結果は二重丸。外すと鳥の声が遠くなり、つけると近くから聞こえます。コルリの声が同時に5個体も聞こえたのは補聴器のおかげでしょう。
このポイントは声は多彩で豊富ですが、姿はなかなか見られません。同行メンバーがようやく発見したコルリも、「どこ? どこ?」と探している間に隠れてしまいました。代わりにアカハラが道路に出てきてくれました。



朝7時に宿にもどって朝食をいただいた後、最後のポイント信州大学自然教育園へ。ここのハイライトはエゾムシクイ。補聴器のおかげか、「ヒーツーキー」という独特の高音も聞こえました。
繁殖しているようで、藪の中から出て餌を取ってはすぐに戻るという行動を繰り返していました。その時間が短いので動画には収められませんが、3人のオジサンとじっくり遊んでくれました。
そろそろタイムリミットなので駐車場へもどろうとすると、前方に猿の群れが出現。念のため近くの施設の階段に退避しましたが、なかなか途切れません。じゃれ合っている若い猿、子猿を連れた母猿、2頭の猿にノミ取りさせているボス猿など、約80頭の群れに取り囲まれました。



猿のおかげで、予定より1時間遅れて北信州を去ることになりました(笑)。
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北信州ツアー

2018年07月05日 | 野鳥
週末、いつもの3人で恒例の鳥見ツアーへ行ってきました。昨年はスケジュールが合わずに実行できなかったので2年ぶり。
今回は、4年前に訪れて印象が良かった北信州。2泊3日で前回とほぼ同じ探鳥地を歩きました。最初に着いた木島平スキー場では、繁殖中のニュウナイスズメに遭遇。餌をくわえた親鳥とまだ産毛が残る幼鳥が電線に止まっていました。



1日目は、前回鳥が濃かったカヤの平高原の森の入口にあるロッジに宿泊。朝4時に森に入ってコーラスを聴きました。アオジ、クロジ、ウグイス、ヒガラ、キビタキなどのさえずり加えて、遠くからカッコウ、ホトトギスの声も届きます。
シラカバとブナの森をしばらく歩くと、すぐ近くにクロジが登場。声と姿をじっくり堪能させてくれました。



一旦ロッジに戻って朝食を済ませ、再び森へ。アカハラ、コルリ、コガラの声を聞いたり、上空を飛ぶノスリを見たり、至福の時間を過ごしました。
森の奥に2羽のアカゲラを発見。片方が餌を与えたので親子かなと思いましたが、映像で確認すると雌雄でした。



午後は、長野県と群馬県の県境にある渋峠へ。しかし、前回はカッコウやキクイタダキが観察できましたが、今回はウソが登場したりルリビタキの声が聞こえたくらいで大きな収穫はなし。なぜか車の往来が激しく、鳥の声が聞こえにくい。諦めて、次の探鳥地・奥志賀高原へ向かいました。
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