樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鳥の色-②

2012年01月30日 | 野鳥

前回、餌の色が体色に表れるフラミンゴをご紹介しましたが、鳥の色のもう1つの仕組みは「構造色」と言うそうです。

例えば、シャボン玉自体には色がないのに表面に虹のような色が表れます。あるいは、CDDVDの表面も角度によって虹色が見えます。

あれと同じことが鳥の羽で起きていて、羽そのものには色がないのに、羽毛の微細な構造によってさまざまな色に見えるのだそうです。

例えば、マガモの頭。下の動画を見ていただくと、角度によって鮮やかな緑色になったり、紫がかって見えたり、黒くなったりします。

 

 

 

羽毛に色がついているわけではなく、光の働きによって発する色なので、光の角度や強さによって緑や紫に見えるわけです。

構造色は緑~青~紫系統の色に多く、カワセミのコバルトブルーやオオルリの青、ブッポウソウの緑などもこの仕組みで発色しているそうです。

下のカワセミは、頭や翼のコバルトブルーは構造色、腹のオレンジは前回ご紹介した色素(メラニン)による色ということでしょう。

 

 

 

構造色にもいくつかタイプがあって、ある研究者によるとクジャク型とハト型があるそうです。クジャクの羽の緑~青~紫は全部構造色のようです。

構造色は羽毛の微細な構造によって発色しているので、例えば違法飼育されたオオルリなどは鳥籠による磨耗でその構造が破壊されて、美しい青が消えて黒っぽくなるそうです。

鳥というか、自然は不思議ですね~。構造色はチョウにもあるようです。

 

 

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鳥の色

2012年01月26日 | 野鳥

鳥は熱帯魚と並んで最も色鮮やかな動物ですが、驚くべきことに、体内には色素がほとんどないそうです。正確に言うと、黒~褐色系のメラニンとオレンジ~茶色系統のメラニンの2つの色素しか持っていないらしいです。 

では、なぜあんなにカラフルなのか? 

鳥が色を表現する仕組みは2つあって、1つは餌の色が体に表れる場合。その典型がフラミンゴ。湖などでβカロチンを含んだスピルリナという植物プランクトンを食べるため、その色素が体に蓄積し、もともと白い体色がピンクに染まるそうです。

 

 

アンデスフラミンゴ(画像はパブリックドメイン)

 

ということは、野生ではない、動物園などで飼われているフラミンゴはスピルリナを食べないのでピンクにならないのか?という疑問が湧いてきます。

答はYES。動物園では普通はドッグフードを与えていて、そのままではピンクになりません。ピンクのフラミンゴにする場合は、ニンジンなどに含まれているβカロチンを餌に混ぜるそうです。

面白いことに、ヒナを育てるために親が自分の消化物(フラミンゴミルク)を与え続けると、白いヒナはだんだんピンクに染まり、逆に親鳥は徐々にピンク色が抜けて白くなるそうです。

北原白秋の童謡『赤い鳥小鳥』に、「♪~赤い鳥 小鳥 なぜなぜ赤い 赤い実を食べた~」という歌詞がありますが、あながち間違いではなかったわけです。

下は、センダンの実を食べるムクドリ。クチバシや脚が黄色いのは、この実のせいでしょうか。

 

 

 

ムクドリが食べるのはセンダンの実だけではないので、体色とは関係ないようです。

もう1つの色の仕組みについては、後日ご紹介します。

 

 

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心配

2012年01月23日 | 野鳥

ジョウビタキをはじめ「ヒタキ」と名がつく鳥が日本に78種類います。ジョウビタキの「カッ、カッ」という声が火打石の音に似ているので「火焚き」と呼ばれた、というのが定説です。 

では、ジョウビタキの「ジョウ」は何か? 能で老人役がかぶる白髪頭の面を「尉(じょう)」と呼ぶので、この鳥の白髪まじりの頭を指したという説があります。

 

 

 

私の頭もしばらく前からジョウビタキみたいになってきました。

それだけならいいのですが、最近はだんだん少なくなってきました。このまま進行すると、いつかハゲワシの仲間に入りそうです。

 

 

ケープハゲワシ(画像はパブリックドメイン)

 

ちなみに、死肉を貪る鳥を一般的に「ハゲタカ」と言い、数年前に瀕死の日本企業を買い漁るアメリカファンドをそう呼びましたが、「ハゲタカ」という名の鳥はいません。いるのは「ハゲワシ」です。

というようなことはどうでもよくて、心配なのは私の頭。できることなら、ジョウビタキからハクトウワシに進みたいです。

 

 

ハクトウワシはアメリカの国鳥(画像はパブリックドメイン)

 

お願い、髪様!

 

 

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桐箱

2012年01月19日 | 木の材

日本ではタンスを一棹、二棹と数えます。これにはおもしろい由来があります。タンスが普及する以前の江戸時代は、長持の下に車をつけた「車長持」が一般的でした。火事になるとそのまま運び出せるからです。

ところが、明暦の大火で誰もが車長持を引っぱり出したために、路地が塞がって大惨事が発生。幕府は、江戸、大阪、京都の三都で車長持の製造を禁止しました。その後、タンスが普及しはじめ、火事の際には棹を通して持ち運べるタイプが主流になり、一棹、二棹と数えるようになったそうです。

タンスと言えば、材はキリ。私の推測ですが、棹を通して持ち運ぶ以前の長持やタンスはスギやケヤキ製だったと思います。正倉院の長持もスギです。人間が持ち運ぶことになって、軽いキリ材に切り替えられたのではないでしょうか。

キリは日本の木材で最も軽く、比重は0.20.4くらい。燃えにくいという特性は、2次的なものだったのでしょう。

キリはタンス以外にも、大切な掛軸とか陶磁器を保管する箱にも使われます。わが家にも、桐箱に入った由緒のありそうな焼物が1個だけあります。

 

 

 

白州正子は『木』というエッセイ集で、明治時代に茶道具など国宝級の作品を持ち出した欧米人は桐箱を無用と見なして全て焼いてしまった、と書いています。西洋には木の箱に入れて保管するという習慣がないのでしょうか。

キリには軽い、燃えにくいに加えて、収縮しにくいという特性があります。これによって隙間のない箱を作ることができるので、内部は外気の温度や湿度の変化を受けにくいそうです。

物を保存するには湿度を一定に保つことが大切だそうですが、軽い木材ほど調湿性(湿気を吸ったり吐いたりして湿度を一定に保つ作用)が高いので、貴重な物を保存する箱にはキリが最適なわけです。

欧米人もそのことにようやく気づいて、例えばボストン美術館は作品を保管する桐箱を京都の指物師に大量に発注しているそうです。

 

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The Sandpiper

2012年01月16日 | 野鳥

私の世代には懐かしい映画『いそしぎ』がテレビで放映されました。以前から、「イソシギがどんなかたちで登場するのかな?」と気になっていたのでじっくり見ました。 

エリザベス・テイラー演じる画家がカリフォルニア海岸の家で、羽が折れたシギを手当てしたり、治るまで家で放し飼いにしたり、自由の象徴として伏線に使われたり、けっこう重要な役で出演しています。

原題の『The Sandpiper』を日本の映画会社が辞書で調べて「いそしぎ」と名づけたのでしょう。私の英和辞書にも「いそしぎ、くさしぎ類のしぎ」と書いてあります。実際には、sandpiperはシギ類の総称で特定の種類を意味しないようです。

イソシギは宇治近辺でもよく見られます。

 

 

 

しかし、映画をよく見ると、出演しているのはイソシギではないようです。第一、イソシギはアメリカには生息しません。

目を凝らしてよく見ると、どうもハマシギのようです。ハマシギならカリフォルニアにも分布します。下の動画は、昨年近くの干拓田に1羽だけ迷い込んできたハマシギ。

 

 

友情出演はオグロシギ

 

というようなマニアックな詮索は横に置いて、映画のタイトルとしては『いそしぎ』と『はましぎ』、どっちがいいでしょう。磯と浜の違いですが、砂浜のイメージが出る『はましぎ』の方がよくないですか?

作品よりも主題歌の『The Shadow of Your Smile』が有名で、アカデミー主題歌賞を受賞しています。私もよく耳にしてメロディは覚えていますが、その歌詞の中に「あなたは折れた羽を治してやろうと1羽のいそしぎを手にしていた」という一節があることは知りませんでした。

 

 

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スギ花粉症

2012年01月12日 | 木と医薬

明治天皇のお墓がある桃山御陵へ冬鳥を探しに出かけましたが、ツグミもシロハラもジョウビタキもルリビタキも不在。もう今年の冬の小鳥探しはあきらめました。

しょうがないのでツリーウォッチングに切り替えたら、スギの花が目につきました。2年前まで花粉症は他人事でしたが、現在は人並みに鼻や涙が出るようになったのでちょっと不気味。

「スギ花粉症は日本特有」と言われますが、スギ自体が日本固有の樹なので当然。でも、北海道と沖縄には分布しないので、この2地域ではスギ花粉症はありません。

その代わり、北海道民はシラカバ花粉症に悩まされているようです。沖縄は最近、花粉症を逃れて長期滞在するヤマトンチュが増えているとか。

 

 

 

欧米では150年以上前から花粉アレルギーが知られていましたが、「日本には存在しない」と言われていたそうです。ところが、昭和38年に栃木県の日光でスギの花粉症が発見されました。

日光といえば日本一の杉並木がありますが、その花粉でしょうか?

日本は国土の67%が森林で、その19%がスギの人工林。戦中戦後に木材の需要増を予想して一生懸命植林した結果、国土の12%がスギ林になってしまいました。

そのスギが成長して花粉をつける樹齢になったので、国民の多くが花粉症に悩むという事態になっているわけです。

スギ花粉症は国の誤った植林政策が原因だとして、静岡の住民12人が6000万円の賠償を求めて訴訟を起こしたそうです。結果は知りませんが、スギ花粉症の要因は大気汚染や体質の変化にもあるようですから、勝訴は難しいのではないでしょうか。

 

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鴛鴦の契り

2012年01月09日 | 野鳥

この冬も宇治川にオシドリがやってきました。一応カモの仲間ですが、繁殖期は山の中にいるちょっと変わったカモです。 

冬になると宇治川の上流のあちこちで数羽~数十羽の群れを作って、ドングリを食べながらのんびりと過ごしています。

 

 

 

オシドリは仲のいい夫婦の象徴ですが、実際には毎年ペアの相手が変わります。それなのに何故「おしどり夫婦」と言われるのかについては、以前の記事をご覧ください。

そこでご紹介した中国の故事が出所でしょうが、日本にも似たような伝説が残っています。「弓矢で射たオスを持ち帰ったら、夫を慕うメスが家にやってきた」とか、「オスを射ると、メスは夫を思うあまり自らのクチバシで腹を刺して後を追う」など…。

オシドリの漢字から「鴛鴦の契り(えんおうのちぎり)」とも言うようです。「鴛」はオス、「鴦」はメス。

下の動画のように、鴛と鴦は一緒に行動します。それを見た人間が「夫唱婦随」とか「夫婦円満」というイメージを勝手に膨らませたのでしょう。

 

 

 

オシドリに限らず他のカモもペアで行動しますが、姿が派手で注目度が高いので夫婦仲のシンボルにされたのではないでしょうか。

うちですか? もちろん典型的な「鴛鴦の契り」ですよ。

 

 

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007と鳥

2012年01月05日 | 野鳥

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお付き合いください。 

新年の第1回は鳥の話題です。

イギリスの人気スパイ映画007シリーズに『ゴールデンアイ』があります。ピアース・ブロスナンが初めてジェームス・ボンド役を演じた作品です。

この「ゴールデンアイ」は鳥の名前で、日本名はホオジロガモ。欧米人は目の金色に、日本人は頬の白さに着目して名づけたわけです。

そのホオジロガモが京都の鴨川に来たというので見に行ってきました。主に海に生息するカモで、内陸部に来ることはあまりありません。

 

 

 

目の金色も頬の白さも「なるほど!」でしょ?

007に戻りますが、主役のジェームス・ボンドは実在の人名で、アメリカの鳥類学者です。

原作者のイアン・フレミングがバードウォッチャーで、主人公の名前に悩んでいた時、たまたま机の上にジェームス・ボンド博士の『西インド諸島の鳥類』という図鑑があったので、その著者の名前を拝借したのだそうです。

イアン・フレミングはホオジロガモが好きだったようで、執筆活動をする別荘を「ゴールデンアイ」と名づけていました。その別荘でフレミングとボンド博士が対面し、シリーズ最新刊をプレゼント。添え書きは「本物のジェームス・ボンドへ」だったそうです。

私はショーン・コネリー版の007はすべて見ましたが、後半のシリーズはテレビで見たくらい。『ゴールデンアイ』もテレビで2度見ましたが、映画の中にホオジロガモが登場したかどうかは覚えていません。

 

(以下1月6日追記)

 

 

007の主役名決定のきっかけとなったジェームス・ボンド博士の『西インド諸島の鳥類』 。

左下にJames Bondと記してあります。

 

 

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