樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

ハトが托卵?

2013年09月30日 | 野鳥
文房具やお香で知られる「鳩居堂」という老舗が京都にあります。創業が1663年ですから、今年でちょうど350年。現在は銀座や横浜、東京スカイツリーにもお店があるようです。
この「鳩が居る」という屋号には何かいわれがありそうなので調べてみました。
同社のwebサイトよると、現在地(寺町・本能寺前)で薬種商を始めたとき、創業家の家紋が「向い鳩」であったことから、ある儒学者が中国最古の詩集『詩経』の一編にある「維鵲有巣、維鳩居之」から命名したとのこと。


鳩居堂のマークは家紋の「向い鳩」

漢詩の意味は、「カササギの巣があり、そこに鳩が居る」。鳩は巣づくりが下手なのでカササギの巣に住んでいる、つまり「借家住まい」という意味だそうです。
その後、4代目がある人に「100年以上自分の店舗で営業しているのに、借家住まいという屋号はおかしいではないか」と尋ねられました。返答に困った主人が、親交のあった儒学者・頼山陽に相談すると、以下のような答えが返ってきました。
「家も国も自分一代で成ったものではなく、先祖代々受け継いできたもの。いわば先祖の家に借家住まいしている。国家や商売が衰え滅びるのは、それを忘れて自分のものと思い、過ちを犯すからである。先祖からの預かり物だと思えば決して疎かにせず、つぶれることもない。鳩居堂はその名の如く、店を自分のものと思わず慎み深くやっているからこそ繁盛している」。
さすが頼山陽、うまいこといいますね。


京都本店の店舗。これも借家ということですね。

ところで、同社のwebサイトには「カササギの巣に託卵する鳩に、「店はお客様のもの」という謙譲の意を込めたものです」という一文がありますが、ハトが托卵することはあるのでしょうか。
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国章の木

2013年09月26日 | 木と文化
日本では法令で国章が定められておらず、慣例として皇室の家紋である菊の花が使用されているほか、総理大臣や政府は五七の桐を事実上の国章にしています。



以前、国旗に樹木を使用している国としてカナダとレバノンをご紹介しましたが、日本と同じように国章に樹木を使用している国があるかどうか調べてみました。
ヨーロッパ諸国やその植民地であった国は、オリーブやオーク(ナラ)、ゲッケイジュを使う例が多いです。その代表としてイタリアの国章をピックアップしました。左がオリーブ、右がオークです。



南の国や中近東ではヤシが目立ちます。下はフィジー諸島共和国。盾の中の左上はサトウキビ、右上はココヤシ、左下はオリーブをくわえたハト、右下はバナナ。フィジーにオリーブは自生しないと思いますが、ここにもヨーロッパの影響が残っています。



ブラジルの国章には、期待どおりコーヒーが描かれていました。左が赤い実をつけたコーヒーの木、右はタバコの葉。
ちなみに、ブラジルという国名も樹木に由来します。ポルトガルがブラジルに侵入したとき、赤い染料が採取できる木を発見して「パウ・ブラジル(赤い木)」と名づけたのが始まりだとか。



私が最も気に入ったのはベリーズの国章。ベリーズはメキシコの南に位置する小国です。
周囲を取り囲むのは50枚のゲッケイジュの葉。イギリスからの独立運動が1950年に始まったことに由来するそうです。
盾の上に描かれている樹はマホガニー。高級家具に使用される木材です。盾の中の左右には斧や鋸など木材を伐採したり加工する道具が描かれています。左右の人間もその道具を持っています。船は多分、木材輸出を意味しているのだと思います。



さらに、下のリボンに書いてある“SUB UMBRA FLOREO”は、ラテン語で「木陰で栄える」という意味の国の標語。すべてのモチーフが樹木がらみで、一つ一つに意味があるいい国章ですね。
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台風と鳥

2013年09月23日 | 野鳥
台風18号は日本全国に大きな被害をもたらしましたが、密かに台風を待っている人もいます。サーファーと珍鳥派のバーダー。
サーファーは大波を、バーダーは台風が運んでくる珍しい鳥を期待しています。あるバーダーは台風18号が京都府を通り過ぎた日の午後、珍鳥がよく現れる干拓田に出かけたそうです。
その干拓田はわが家から近く、今の時期はシギやチドリがやってくるので、私も時々出かけます。先日はオグロシギが1羽入っていました。台風が連れてきたのでしょう。



さらに、大阪や神戸からやってきたフォトグラファーに聞くと、種類名は伏せますが、私が見たこともない鳥が4種類も入っているとのこと。珍鳥派バーダー(あるいは珍鳥派フォトグラファー)には台風18号は恵みの風だったようです。
その一方、この台風は襲来前にこの干拓田にいた鳥をどこかへ連れ去ってしまいました。2週間ほど前にはツルシギがいたのですが、台風後は姿を見せません。京都府内の出現状況を調べるとそれほど珍しい種類ではないようですが、私は初めて見る鳥です。



そう言えば、昨年ご紹介したバーダーが主人公の映画『ビッグボーイズ』でも、嵐が去った後に鳥を見に行くシーンが描かれていました。アメリカでも事情は同じのようですね。
チョウとかトンボなど昆虫観察が趣味の人にとっても荒天はチャンスなのでしょうか。
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もったいない

2013年09月19日 | 街路樹・庭木
台風18号が来る前、庭木が電線を切らないように剪定しました。伐った枝はこれまではゴミに出していたのですが、昨年から燃料として再利用されています。
わが家から少し離れたTさんのおばあちゃんが、毎日2回、手押し車とともに近くの農園にやってきて農作業をします。そのおばあちゃんが、「お風呂の焚きつけに使うから、樹を散髪(剪定のこと)したら枝をちょうだい」と申し出てくれたのです。ガスだけでなく薪でもお風呂が焚けるそうです。
家の横に置いておくと、勝手に持って帰ってくれるので、手押し車に載せやすいように、葉を全部ちぎって、コンパクトに束ねました。


おばあちゃん御用達の剪定枝

宇治は昨年8月に集中豪雨に見舞われました。Tさんの家も床上浸水で家財道具がダメになったのですが、娘さんが汚れた家具を捨てようとすると、「まだ使えるから捨てない!」と駄々をこねたそうです。
水害で汚れた家具を捨てずに使う。よその家が剪定した枝をお風呂の燃料にする。おばあちゃんの「もったいない」は筋金入りです。私もモノは使い尽くす方ですが、まだまだ甘いです。
このおばあちゃんを「近所のワンガリ・マータイさん」と呼ぶことにしました。でも、逆ですね。こっちが本家だから、マータイさんを「ケニアのTさんのおばあちゃん」と呼ぶべきですね。
ところで、先日の台風18号は京都府全域に大きな被害をもたらしました。わが町内も去年と同じように、山から出た水が道路にあふれ、T字路やその前のお宅のガレージに泥が堆積。早朝から町内総出で、土嚢を積んだり、泥を搬出したり、けっこう大変でした。


土嚢で山からの水を遮断

一方、おばあちゃんの町内は全く被害がなかったようで、雨が上がるといつものように手押し車で農園にやってきました。
剪定のことを伝えると、「葉っぱも肥料になるからちょうだい」とのこと。ちょうど泥の運搬に使った一輪車があったので、農園まで葉っぱを運んであげました。
おかげで枝も葉っぱも全部きれいに再利用されることになりました。
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吉田兼好と中西悟堂

2013年09月16日 | 野鳥
高校時代、吉田兼好の『徒然草』に感銘を受けました。特に「命長ければ恥多し。長くとも四十に足らぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ」の言葉に憧れ、「僕も40歳までに死のう」と決意しました。しかし、四十路を20年以上過ぎた現在、まったくその兆候が見られません(笑)。
その『徒然草』に、バードウォッチャーというか日本野鳥の会の会員の心に響く以下のような文章があることを最近になって知りました。
「養ひ飼ふものには、馬牛。繋ぎ苦しむるこそいたましけれど、なくてかなはぬものなれば、いかがはせん。犬は、守り防ぐつとめ、人にも勝りたれば、必ずあるべし。(中略)
その外の鳥獣、すべて用なきものなり。走る獣は檻にこめ、鎖をささえ、飛ぶ鳥はつばさを切り、籠に入れられて雲を恋ひ、野山を思ふ愁、止む時なし。
その思ひ、我が身にあたりて忍びがたくは、心あらん人、是を楽しまんや。
生を苦しめて目を喜ばしむるは、桀・紂が心なり。王子猷が鳥を愛せし、林に楽しぶをみて、逍遙の友としき。捕へ苦しめたるにあらず。
凡そ、「めづらしき禽、あやしき獣、国に育はず」とこそ、文にも侍るなれ」。

現代語訳すると、
「馬や牛は、その力なしでは人間が暮らせないので、繋いで苦しめるのはしょうがない。犬は家を守る能力が人間より勝っていから飼うべきである。
しかし、その他の鳥や獣はすべて飼う必要がない。走る獣を檻に閉じ込め、鎖に繋ぎ、空飛ぶ鳥の翼を切り、籠に入れてしまうと、雲を恋しがり、野山を思い焦がれる。
その気持ちを自分に置き換えて忍びがたいと思うなら、心ある人は飼って楽しむなんてできないはずだ。
生きものを苦しめて自分の目を喜ばせるのは、桀や紂(殷時代の2人の暴君)と同じ。王子猷(風流を愛した中国の文人)は鳥を愛したが、林に遊ぶのを見て、散歩の友と愛した。捕らえて苦しめたのではない。
およそ「珍しい鳥、貴重な獣は、国内で飼わない」と昔の文献にも書いてある」。

この思想は、「野にあるものは野にあるように」と唱えて日本野鳥の会を創設した中西悟堂と全く同じです。
たまたまですが、その吉田兼好が居を構え、墓もあるお寺が、日本野鳥の会京都支部の事務所のすぐ近くにあります。


吉田兼好の墓がある長泉寺の門前には「兼好法師旧蹟」の石碑

中西悟堂に先んずること600年も前にこういう思想を紡ぎ出した吉田兼好は、さすが私が憧れただけのことはあります。両者の共通点は僧籍にある文人。バックボーンはやはり仏教なんでしょうね。
さて、「40歳までに死ぬのが望ましい」と私に教えてくれた兼好法師ですが、自分自身は69歳まで生きました。私もまだ焦らなくていいですね。
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枝垂れ

2013年09月12日 | 樹木
「柳」と言えば普通は「枝垂れ柳」を思い浮かべます。最近は人気が衰えて街路樹には使われなくなりましたが、昔は『銀座の柳』という歌がヒットしたくらい街路樹の代表でした。
原産は中国ですが、平城京跡からシダレヤナギの種子が発掘されていて、日本の街路樹の第1号は本種のようです。
京都にもその頃に植えられたと伝わる枝垂れ柳があります。六角堂というお寺の境内に枝垂れ柳を植えたのは遣隋使の小野妹子。中国から持ち帰って、そのまま植えたのかも知れません。もちろん、現在の樹はその末裔でしょうが。


六角堂の枝垂れ柳

また、桜にも枝垂れがあり、京都のお花見のシンボルは円山公園の枝垂れ桜。有名な福島県の三春滝桜も枝垂れです。
この「枝垂れ」はなぜ発生するのか? 気になって調べてみました。
通常の樹木は、枝の根元の細胞が重力に逆らって、広葉樹の場合は上に引っ張り上げるように、針葉樹の場合は下から支えるように育つそうです。
ジベレリンという植物ホルモンの作用でそうなるのですが、このホルモンが不足すると枝垂れになるわけです。


宇治のお花見も中州公園にある枝垂れ柳が代表

ヤナギやサクラだけでなく、ウメ、モモ、カエデ、ツバキなどにも枝垂れがあります。観賞用の樹種だけでなく、クリ、カツラ、ブナ、シラカバ、エゴノキ、さらに針葉樹のマツ、トウヒ、ツガなどでも枝垂れがあるそうです。京都府立植物園にはシダレエンジュが展示してあります。
ヤナギにしてもサクラにしても、日本人は枝垂れが好きなんじゃないでしょうか。枝が空に張り出しているよりも、風にゆらゆら揺られている姿に風情を感じる感性があるのかも知れません。
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婦唱夫随

2013年09月09日 | 野鳥
近くの干拓田で今年もタマシギが繁殖しています。この鳥はかなり変わっていて、一妻多夫である上に、メスは子育てせずオスだけが子どもの世話をします。
一妻多夫でオス親のみが子育てする鳥はタマシギのほかにアメリカイソシギとアメリカレンカクなどがいるそうですが、タマシギがこの2種と違うのは雌雄別色であること。しかも、他の雌雄別色の鳥とは逆に、メスが派手、オスが地味。こんな鳥は世界中を探しても他にいないでしょう。
南西諸島に生息するミフウズラも一妻多夫・オス親のみの子育て・雌雄別色ですが、オスとメスの色の差はそれほど顕著ではありません。
タマシギの雌雄逆転は行動にも表れていて、メスが主導的に動き、オスはその後に従うという「婦唱夫随」型。先日も干拓田でタマシギのペアを見ていたら、メスの後をオスがトボトボと歩いていました。
下の動画の最後のシーンでは、メスが近くにいたオオジシギを威嚇しています。



雌雄の役割がなぜ逆転したのか、気になって調べてみましたが、よく分かりません。いくつか仮設があるようですが、まだ決着していないようです。
オス親のみが子育てする一夫一妻の鳥もいて、ニュージーランドの国鳥キウィもこのタイプ。タマシギ、ミフウズラ、アメリカイソシギ、アメリカレンカク、キウィに共通するのは、歩行性と地上営巣。飛ぶよりも歩く方が得意で、巣も地上に作ります。
もう一つの共通点は早成性。つまり、ヒナの生育が早いこと。これらの要因が複雑にからみあって、タマシギみたいな変わった鳥が生まれたのでしょう。
わが家は子どもがいないので子育てに関しては何とも言えませんが、行動パターンは「婦唱夫随」が多いような気がします。タマシギのオスを見ていると、「同病相哀れむ」に似た感情が湧いてくるのは多分そのせいです(笑)。
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楢と柏

2013年09月05日 | 樹木
雑木林のような庭にしたくてコナラを2本植えました。その後、関西の雑木林では見かけませんが、葉の出方が面白いのでカシワを1本加えました。
このコナラとカシワ、そして同じくブナ科の落葉樹ミズナラとナラガシワは名前も葉の形もよく似ています。下の写真は左からコナラ、ナラガシワ、カシワ。ナラガシワは森林総研関西支所の樹木園でいただきました。



大きさに差はありますが、シルエットが類似しています。
ややこしいことに、これらのグループは親和性が高いためにハイブリッドが生まれやすく、似たような樹木があちこちで発生しているようです。
例えば、上の3種からは以下のようなハイブリッドが生まれています。
コナラ×ナラガシワ→オオバコナラ
ナラガシワ×カシワ→ホソバガシワ
コナラ×カシワ→コガシワ
これにミズナラが加わると、さらにややこしくなります。


ミズナラの葉(栃の森で撮影)

ミズナラと上の3種のハイブリッドは以下のとおり。
ミズナラ×コナラ→ミズコナラ
ミズナラ×ナラガシワ→ナラミズガシワ
ミズナラ×カシワ→カシワモドキ
もう、何が何だか分からない、名前も覚えられない混沌に陥ります。
私はフィールドでこれらのハイブリッドを見たことはありませんが、ただ気づかないだけかも知れません。
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禽将棋

2013年09月02日 | 野鳥
ほとんどの方がご存知ないと思いますが、将棋の一種に「禽将棋」というゲームがあります。駒の名前がすべて鳥という、バードウォッチャーにとってはうれしい将棋です。
図のように、盤のマスは7×7。将棋の「王将」に相当するのが「鵬(おおとり)」、「金」や「銀」に相当するのが「鶴」、そのほか「雉」と「鶉」と「鷹」が並び、「歩」に相当するのが「燕」です。



「王将」と同じく「鵬」は全方向に1マス動けます。また「燕」も「歩」の動きと同じく前へ1マスのみ。その他の駒も種類ごとに独自の動きができますが、将棋の動きとは異なります。「鶉」は右と左で動きが違うのも特徴。
成駒もあります。例えば、「燕」が相手の陣地に入ると「隼」に成り、動き方も変わります。面白いのは「鷹」が相手陣地に入ると「(クマタカ)」に成ること。
禽将棋は江戸時代の将棋の名人が考案したそうですが、当時からタカの中でもクマタカは別格扱いされていたということですね。
下は今年の5月に某所で目撃したクマタカ。



禽将棋の存在は私も全く知らなかったのですが、『世界のゲーム事典』によると、1980年代にイギリスで「Tori Shogi」のセットが売られていたとのこと。ネットで調べるとアマゾンで盤と駒のセットを売っています。
私はこういうゲームに関心がありませんが、興味のある方は検索してみてください。
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