樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

タマシギは本当に一妻多夫か?

2018年12月27日 | 野鳥
8月30日の「一妻多夫」10月4日の「タマシギのハーレム」でご紹介したように、数少ない一妻多夫の例として日本ではタマシギが知られています。沖縄のミフウズラや渡り途中に立ち寄るヒレアシシギ類も一妻多夫のようですが、関西で繁殖が観察できるのはタマシギのみ。
ところが、タマシギは一妻多夫ではないという研究報告もあります。滋賀県と愛媛県で調査した山階鳥類研究所の米田重玄さんは次のように指摘しています。
タマシギは繁殖期間が3月下旬から9月頃までと長い一方、約1か月半でヒナを育て上げるので、1シーズンに何回か繁殖する。メスは産卵した後は子育てをオスに任せて次のオスに求愛するが、オスも最初のヒナを育て上げた後は別のメスとつがいを形成する。
そして、「オスも何回かメスを変えて繁殖するため、私は一妻多夫とは言えないのではないかと思っています。むしろ産卵前3~4日から産卵中の4日間はずっとつがいで過ごすことからこの期間は厳密な一夫一妻制の繁殖生態をしていると言えます」と書いています。
以下の動画は3年前に近くの干拓地で撮影したペアですが、他の鳥とは逆にメスが派手・オスは地味という外見もあって、私たちは「タマシギ=一妻多夫」という固定概念に囚われていますが、それは間違いということです。



正確にいえば、1回ごとの繁殖では厳密な一夫一妻、年間でみた場合、メスの視点では一妻多夫、オスの視点では一夫多妻。種全体で考えれば多夫多妻ということになります。
人間の尺度で鳥の配偶形態を一夫一妻とか一妻多夫、多夫多妻と決めることに無理があるのかもしれません。それほど鳥の生態は複雑ということでしょう。
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バードストライク

2018年12月20日 | 野鳥
野鳥保護の世界で「バードストライク」といえば、風力発電の風車に鳥が巻き込まれる事故を指しますが、ここでは飛行機に衝突する鳥の話。
2009年1月、USエアウェイズのエアバスが乗員乗客155名を乗せてニューヨークのラガーディア空港を離陸しました。その2分後、高度3200フィートでカナダガンの群れに衝突。両方のエンジンが停止したため高度が維持できず、機長は市街地への墜落を避けてハドソン川に不時着させます。
結果的に全員が無事だったことから「ハドソン川の奇跡」と呼ばれ、後にクリント・イーストウッド監督、トム・ハンクス主演で映画にもなりました。



こうした深刻な事故が発生していないのでほとんど知られていませんが、日本でも飛行機によるバードストライクは数多く発生しています。国交省が発表した「バードストライクデータ」によると、2016年の鳥衝突件数は1626。
空港別に離着陸1万回当りの衝突件数をみると、佐賀空港31.5件、出雲空港21.7件、北九州空港20.8件となっています。佐賀空港が圧倒的に多いのは、シギ・チドリ類が集結する有明海に面しているからではないでしょうか。月別にみても、8月190件、9月179件、7月175件、10月156件と渡りの時期に重なっています。


画像はPublic Domain

鳥種別では、ツバメ143、トビ85、ヒバリ59、チドリ54、カモメ26、チョウゲンボウ17などとなっていますが、機長や空港管理者による報告なので同定の精度に疑問があり、半数以上の905件が鳥種不明です。
バードストライクによって鳥は命を落とすことになりますが、飛行機にもダメージがあります。2016年は、引き返しや目的地変更など飛行ルートの変更が22件、離陸中止15件、航空機の損傷40件。
こうしたトラブルを防ぐため、バードパトロールを実施している空港もあります。その効果は大きく、離着陸1万回当りの件数で比較すると、バードパトロールを導入していない空港が10.02であるのに対し、導入している空港では4.03と半分以下になっています。野鳥保護団体の会員としては全ての空港でバードパトロールを導入していただきたいものです。
なお、日本でもバードストライクをテーマにした映画が製作されています。綾瀬はるか主演の『ハッピーフライト』。上記の『ハドソン川の奇跡』と違ってコメディタッチですが、航空業界の内幕が分かってなかなか楽しめます。

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ウソつきな鳥

2018年12月13日 | 野鳥
最近読んだ本に、ウソをつく鳥のことが書いてありました。しかも、身近なシジュウカラの事例。
シジュウカラは、ハイタカなど天敵が現れると「ジージー」という警戒音を発して仲間に知らせます。その声を聞いた仲間は飛び去って、捕食を免れます。



ところが、餌が少ししかないときやおいしい餌があるときは、この習性を利用して、ハイタカが現れたわけでもないのに警戒音を発して仲間を追い払い、餌を独り占めするというのです。
そういえば、小鳥の群れを観察しているとき、こちらが驚かせていないのにバタバタと飛び去ることがあります。鳥がウソをつくというのは、面白い発見です。
カササギの事例も紹介してあります。この鳥は一夫一妻制で、オスは自分のなわばりに侵入する他のオスやメスを追い払うのですが、つがい相手のメスが見ていないときや自分の声が届かない所では、侵入してきたメスにプロポーズするそうです。
自分の子孫を少しでも多く残そうというDNAの仕業でしょうが、人間の浮気に似ていて面白いですね。
私はカササギのようなことをしたことはありませんが、シジュウカラのようなウソをついた覚えはあります(笑)。
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獣の痕跡

2018年12月06日 | その他
週末、今年最後の栃の森へ…。宇治や京都は紅葉のピークでしたが、林内はすでに冬景色。寂寞とした落葉広葉樹林の魅力を満喫しながら歩いてきました。



森の入口にあるスギ林でクマ剥ぎを発見。周囲を見回すと3か所あります。写真にある斜めの筋はクマの歯型。ツキノワグマはスギやヒノキの甘い樹液をなめるために樹皮を剥がすそうです。



そして3kmほど歩いたあたりで、今度はクマの糞を発見。数日経過しているようで、カビが生えています。



この森には20年以上、回数にして120回以上通っていますが、クマに遭遇したのは1回のみ。糞を発見したのも数回です。
途中、写真のような足跡もありました。梅の花のような形はタヌキとのこと。



さらに歩くと、またしても獣の糞を発見。落とし主はテンかな? 本来は肉食ですが、植物の実も食べるものの種は消化しないので残るらしい。



尾籠な話が続いたので、お口直しに可愛い鳥もご紹介しておきます。50羽ほどのマヒワの群れが一生懸命採餌していました。



マヒワが食べていたのは、ツルアジサイの種のようです。



この森は22年前に野鳥生息調査を実施した結果、鳥獣保護区に指定されました。そして、今年は20年後の経過を記録するために再び調査しています。私たちは鳥専門ですが、文字通り「鳥獣保護区」なので多様な獣の痕跡も見られます。



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