樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

世界文化遺産?

2015年07月09日 | 木造建築
九州を中心とした8エリア23の史跡が「明治日本の産業革命遺産」として世界文化遺産に登録されます。
軍艦島が注目されていますが、同じ長崎のグラバー邸も登録されるようです。選定理由は、日本最古の木造洋風建築。


グラバー邸(画像はパブリック・ドメイン)

この家の主、トーマス・グラバーは武器商人として幕末の日本にやってきて、造船や炭鉱などの産業を通じて日本の近代化に貢献したほか、国産ビール(現在のキリンビール)の育ての親とも言われています。
故郷のスコットランドにもグラバー邸(実家)が残っていて、「スコティッシュ・サムライ」という碑が掲げてあるようです。
グラバーはなぜか、日本からサワグルミの幼木を2本スコットランドに持ち帰って植えています。そのうちの1本は現在、巨木に育っているとか。
サワグルミは実は採れませんが、幹が真っ直ぐに伸びて、下から見上げると頼もしい樹形です。それが気に入ってグラバーはわざわざ故郷に持ち帰ったのではないでしょうか。



それはともかく、日本最古の木造洋風建築がなぜ世界文化遺産として認定されるのか、私には理解できません。グラバー邸以外にも、今回の23の史跡の中には「この程度で世界文化遺産?」と首をかしげるものがあります。
実は、わが家の近くにもそんな世界文化遺産があります。宇治上神社です。日本最古の神社建築ですが、小さな本殿と拝殿だけのせせこましい田舎の神社ですよ。地元の住民でありながら、「これが世界文化遺産?」と気恥ずかしくなります(笑)。


宇治上神社の本殿。国宝は分かりますが、これで世界文化遺産?

○○最古の木造洋風建築とか○○最古の宗教施設なんて、世界各国どこにでもあるはず。「日本文化遺産」なら分かりますが、「世界文化遺産」とは口幅ったい。
これだけ世界文化遺産が乱発されると、値打ちがなくなって、そのうち誰も見向きしなくなるのではないでしょうか。
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京都の木づかい

2015年03月26日 | 木造建築
意外かも知れませんが、京都市は林業都市です。もともと「北山杉」という伝統産業がある上に、平安時代から都に木材を供給していた北桑田郡京北町が京都市に編入されたことで一挙に林業都市の様相を帯びてきました。
そういう背景から、京都市は木材の地産地消に積極的に取り組んでいます。例えば、市内の屋外広告物に京都産の木材を使えば助成金を出してくれます。京都市は厳しい景観条例を定めていますが、景観の維持と木材の地産地消の一石二鳥を狙っているわけです。
そして、昨年12月には、京都産の木材をたっぷり使った上京区役所の新庁舎がオープンしました。ご覧のように、屋外はもちろん屋内のフロア、壁面、家具まで木、木、木…。


外観


1階のロビー


1階の受付コーナー


2階の廊下~受付

やわらかい印象があって、用が終ってもしばらく居続けたいような雰囲気。これまでの役所のイメージとは全く違う素晴らしい空間です。
木材だけではなく、間伐材でつくったチップを燃料とするペレットストーブも設置してあります。暖房として使うと同時に普及・啓発の意味があるようです。



見学しながら、何度も「上京区民がうらやまし~な~」と思いました。宇治市にもこういう施設をつくってほしいですが、宇治には林業がないから無理でしょうね。
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宇治の観光がピンチ

2013年08月12日 | 木造建築
宇治市の観光客数は年間約500万人。京都市の10分の1です。
ところが、昨年の秋から急激にその数が減っています。宇治観光のドル箱、平等院鳳凰堂が屋根の葺き替え工事のため、9月から内部拝観を停止しているからです。12月の拝観者数は前年比6割減の37%。
工事は来年3月まで続きます。私は散歩コースの大吉山から毎日無料拝観していましたが、現在は写真のように工事用の素屋根に覆われて見られません。



加えて、宇治のもう一つの世界遺産である宇治上(うじがみ)神社も、今年の2月から屋根の檜皮葺のリニューアル工事が始まり、同じく工事用の素屋根で覆われています。
写真の拝殿は今年末に完了しますが、引き続き本殿の葺き替え工事で来年末まで、合計約2年間も素屋根に隠れるわけです。



宇治上神社は「日本最古の神社建築」がウリで国宝や世界遺産に選定されているためか、工事用建屋の足場も鉄パイプではなく、すべて丸太です。どういう構造になっているのか分かりませんが、柱も立てずに拝殿を外側からすっぽり覆っています。
平等院も同じく足場はすべて丸太。文化財修復の技術を継承するため、丸太と針金だけで幅55m、奥行き42m、高さ17.5mの足場が築かれています。
使われているスギの丸太は5000本。足場を組むだけで70日かかったそうです。昔の木製の電柱も再利用されているとか。
たまたま重なったようですが、平等院と宇治上神社の2つの観光資源がこういう状態なので、宇治の観光産業はかなりピンチです。
そんな中、宇治に最も多くの人が訪れる「宇治川花火大会」が先日開催されました。例年は17万人程度ですが、今年は金曜日ということもあって21万人の人出だったようです。わが家から徒歩5分の場所でよく見えるので、今年も観覧してきました。



みなさんに宇治に来ていただきたいのですが、そんな訳で今はお勧めできません。再来年には平等院も宇治上神社も新しい屋根で美しい姿を見せますので、ぜひ来てくださいね。
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壁面木化

2013年08月01日 | 木造建築
昼も夜も暑い日が続いています。わが家は、普段は夫婦別々の部屋で寝るヤマドリ夫婦ですが、今の時期は冷房や除湿の効いた部屋で一緒に寝るオシドリ夫婦です。
郊外の住宅地ですらこうですから、都心部にお住まいの方はヒートアイランド現象でもっと寝苦しいのではないでしょうか。
そのヒートアイランド対策として、ビルの壁面を木のパネルで覆うという実験が大阪で行われているというので見てきました。
ビルには「壁面木化で都会熱をクールダウン」という旗が掲げてあります。数年前、「壁面緑化」が話題になりましたが、その木材バージョンということでしょう。



この6階建ての「大阪木材会館」は鉄筋コンクリート造のテナントビルですが、その南側の外壁約500㎡が特殊加工を施したスギのパネルで覆ってあります。実験だからでしょうか、パネルは縦格子、横格子などさまざまでモザイクのよう。色も黒っぽいものから黄色いものまでいろいろ使ってあります。
実験を進めているのは、「国産材を活用したヒートアイランド対策協議会」という産官学共同の組織。その研究者によると、木材はコンクリートに比べて熱容量が小さく、日中の熱をため込まず、夜間の放熱がないのでヒートアイランドによる熱帯夜を抑制する効果があるそうです。コンクリートの壁面よりも最大で5℃低いという結果も出ています。
壁面木化のもう一つのメリットは工事が簡単なこと。すでにあるコンクリートのビルの外壁を木のパネルで覆うだけですから、素人目にも簡単そうです。また、壁面緑化のようなメンテナンスが不要という点もメリットのようです。
都心のビルやマンションに応用すれば、熱帯夜が和らいで、夏場もヤマドリ夫婦が増えるのかな?
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大型木造ビル

2013年06月27日 | 木造建築
2カ月ほど前、NHKの「クローズアップ現代」で大型木造ビルが都心部で次々に建設されているという話題を放送していました。
その中で取り上げられたのが、横浜市に建築中の大型商業施設「サウスウッド」。建築面積約3,000㎡、延床面積約1万㎡という巨大な木造建築で、地下は駐車場、1~2階はショップフロア、3階は学校や病院のフロア、4階はオフィスフロアという本格的な複合ビルです。
番組では今年3月に竣工した「大阪木材仲買会館」も紹介していました。たまたま、私がよく行く大阪市中央図書館の近くなので見学してきました。



こちらは、地上3階、建築面積457㎡、延床面積1,093㎡と小規模ですが、都心部にこうした大型木造ビルが建ったのは50年ぶりだそうです。
それを可能にしたのが、2010年に施行された法律。CO2を固定する環境素材として木が見直され、公共建築物の木造化を進めるために制定されたそうです。国産木材の利用促進という目的もあるはずです。
もう一つは、耐火・耐震性能の高い木質建材が開発されたこと。NHKなので社名も商品名も伏せていましたが、調べてみると竹中工務店が開発した「燃エンウッド」。
3層構造になっていて、外側が燃えても第2層のモルタル層で燃焼を食い止め、中心部は燃えずに強度を維持するという仕組みです。
使われているのは国産のカラマツ。スギよりも強度が高いため、都心部の大型施設に必要な9mスパンの建築にも使えるとのこと。
横浜の「サウスウッド」には、この「燃エンウッド」の柱が56本、梁が114本使われているそうです。


「大阪木材仲買会館」のエントランスは内装も木材

コピーライターとしては「燃エンウッド」というネーミングに物足りなさを感じますが、こういう木造ビルのオフィスで仕事がしたいですね~。
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鬼に訊け

2012年05月28日 | 木造建築
「法隆寺の柱を鉋で削ると、1300年後の今でもヒノキの香りがする」。ある本のこの記述は、私にはインパクトがありました。
樹木関係の本は、植物学系、森林学系、木材系などたくさん読んでいますが、その多くは学者が書いたもの。木に関する学問的知識や情報を伝える内容です。
ところが、法隆寺の宮大工の棟梁であった西岡常一さんの本は、冒頭の一文のように、木を使う職人の生の感覚が記されています。学問系の本にはない、木に対する実感が綴られていて大変魅力的です。数少ない著書やインタビュー集はもちろん、西岡さんの一番弟子である小川三夫さんの本も読みました。
その西岡棟梁のドキュメント映画が上映されたので観てきました。タイトルは『鬼に訊け』。



「木は生長の方位のまま使え、東西南北はその方位のままに」。つまり、山の北側に生えていた木は建物の北側に使え、しかも(柱に使う時は)同じ向きで立てろ。
これは、法隆寺の宮大工に代々伝わる口伝の一つ。西岡棟梁個人の実感だけでなく、こういう秘伝の技も、いちいち「なるほどな~」と納得することばかり。
「社殿堂塔の用材は木を買わず、山を買え」という口伝もあります。木は生えている環境で質や癖が決まるので、木材を見て買うのではなく、実際に山に入って判断せよという意味です。
実際、西岡さんは薬師寺の塔を建てる際、日本では入手できないヒノキの大木を確保するために台湾の山へ出向いています。
こうした口伝は著書ですでに知っていましたが、映画には西岡さんの木に対する考え方や、大工としての経験からにじみ出る含蓄のある言葉がいろいろ収録されていて、「なるほど」と納得しどおしでした。
意外だったのは、マニアックな映画館で上映されたマニアックな映画なのに、予想以上に観客が多かったこと。もう亡くなりましたが、西岡棟梁のファンは結構いるんですね。

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木造建築の火災実験

2012年03月08日 | 木造建築

先日、つくば市で3階建ての木造校舎の火災実験が行われました。

「公共建築物木材利用促進法」が制定され、校舎などに国産木材を使おうという機運があるのですが、現在の建築基準法では2階建てしか許可されません。それを緩和するために実物大の木造3階校舎を建て、その耐火性を検証しようというのです。

国交省、大学、ハウスメーカーの産官学共同の研究チームが、軸組工法(Aブロック)と枠組壁工法(Bブロック)の2つの工法で、延べ2260㎡の校舎を設計・建設。実験では、1階の職員室に点火されました。その様子が以下の動画。

  

 点火から1時間15分後にはAブロックのうち、防火壁とBブロックに挟まれた区画が丸ごと倒壊。その10分後にはBブロックの一部、さらに9分後にはBブロックのほとんどが倒壊し、1時間36分後には防火壁が崩れ落ちたそうです。

使用された主な木材はスギ集成材とカラマツ集成材。校舎の建築費は3億円だそうです。その額に驚きましたが、調べてみると、実験のためにいろんな装置やシステムを組み込んでいるようです。

一応、火災発生後1時間もてば準耐火構造ということになるようですが、1時間15分というのは微妙な数字ですね~。確証を得るために、もう一度実験するそうです。

このニュースを見て、私は黒澤明の映画『乱』を思い出しました。城が炎上するラストシーンのために、実物大の城を建てたのです。建築期間は4カ月、建築費はなんと4億円! 今回の実験棟のさらに上をいくわけです。

その炎上シーンを背景に主役が放心状態で階段を降りてくるのですが、撮り直しがきかない1発勝負。主演の仲代達矢は、失敗すれば4億円がパーというプレッシャーの中で演技したのです。映画俳優にならなくてよかった~(笑)。

黒澤監督は『赤ひげ』の時も、薬箪笥の外側しか映らないのに、すべての引き出しに薬を入れさせたという逸話が残っています。撮影へのこだわりは尋常ではないですが、それにしても、わずか1~2分のシーンのために4億円かけて城を建てる? 映画監督にならなくてよかった~(笑)。

 

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国宝と世界遺産

2011年11月17日 | 木造建築

前回ご紹介したヨーロッパの木造建築はいずれも世界遺産。うちの近所にある宇治上神社も現存する日本最古の神社建築ということで、平等院とともに世界遺産に登録されています。国宝にも指定されています。

宇治上神社にはいつもわずかばかりのお賽銭で願い事を3つも4つもお頼みして、その多くを叶えていただいているので、恩を仇で返すようですが、世界遺産というのはちょっとおこがましい気がします。

 

 

宇治上神社の本殿(国宝)

 

だって、小さな本殿と拝殿があるだけのせせこましい神社ですよ。おそらく、日本で(世界でも)いちばん小さくて無名の世界遺産だと思います。

みなさんも知らなかったでしょう? 前回のルーマニアやロシアの木造教会に比べても迫力ないでしょう? 

 

 

神社は小さいのに「世界文化遺産」の石碑は大きい(笑)

 

宇治上神社より金閣寺の方がよっぽど有名ですが、金閣寺は世界遺産に登録されているものの、国宝ではありません。理由は、一度全焼して再建されているから。炎上する前は国宝でした。

再建は世界遺産の基準では○なのに、国宝の基準では×ということのようです。

 

 

(画像はパブリックドメイン)

 

ユネスコも以前は「再建したものは偽物」という認識だったようですが、そうなると木造建築物の多くが偽物ということになり、アジアの伝統的な建築物が登録できなくなるので、再建でも認めようという方針に変わったとか。それをリードしたのは日本の文化庁で、奈良で国際会議を開いて認めさせたようです。

世界遺産では再建を認めさせておいて、国宝では再建を認めないというのは矛盾すると思いますが、どうなんでしょう。

 

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石の国の木造建築

2011年11月14日 | 木造建築

建築物について「日本は木の文化、ヨーロッパは石の文化」と対置されます。また、世界最古の木造建築(法隆寺)があるために、「日本の木造建築はヨーロッパより優秀」と思いがちです。

しかし、ヨーロッパの木造建築もあなどれません。たとえば、ルーマニアの木造教会。

 

 

ルーマニアのマラムレシュにある木造教会 photo : Oswald Engelhard

 

これ、全部、木ですよ。法隆寺の屋根は瓦ですから土ですが、こちらは屋根も壁も内装も木。材料はモミだそうです。形もモミを表現しているとか。

しかも、この村では墓も木製で、やはりモミ。日本の墓は石ですから、「木の文化」度では負けています。村の周辺にはこんな教会が8棟も建っているそうで、高いものは54mといいますから、日本一高い木造建築の東寺とほぼ同じです。

次は、ロシアのキジ島にある木造教会。3棟とも木造ですが、特に左の聖堂はロシア正教ならでは玉ネギ型のドーム屋根が特徴です。

 

 

左から顕栄聖堂、鐘楼、生神女庇護聖堂の3棟の木造教会 photo : A. Jungierek

 

300年ほど前に再建されたので法隆寺ほど古くないですが、驚くべきことに釘は1本も使われていないそうです。

 

 

 顕栄聖堂 photo : A. Jungierek

 

いかがですか、法隆寺や東大寺に勝るとも劣らないでしょう? いずれも世界遺産に登録されています。

恐るべし、石の国の木造建築。

なお、画像はクリエイティブコモンズのライセンスのもとに利用許諾されたものを掲載しました。

 

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杣(そま)

2011年06月16日 | 木造建築

忍者で有名な甲賀という町が滋賀県にあります。ここで行われていた新名神高速道路の工事の現場から、古代に伐採・加工された巨木がたくさん出土しました。そのうちの1本が展示されているという地元の資料館へ行ってきました。

 

 

 

展示されているのは樹齢約220年のスギ。年輪年代法によって飛鳥時代の664年秋に伐採されたことが判明しています。根元の方には斧の刃痕がくっきり残っています。

鼻を近づけて匂いをかぐと、ほのかにスギの臭いがしました。当たり前なんですが、1000年以上も昔に伐られた木なのに、まだその香りを失わないことが私には驚異です。

 

 

鋭い鉄斧の痕

 

この地域は奈良時代に杣(そま)が置かれたところ。杣とは、建築材を供給する製材拠点。東大寺が経営する「甲賀杣」のほか有力な寺院直営の杣がこの一帯に集中していたそうです。

当時の書物には、東大寺の増改築用木材を甲賀で製材して筏に組み、野洲川→琵琶湖→瀬田川→宇治川→木津川→奈良へ運搬したと書いてあるとか。

出土したのは奈良時代よりもさらに古い飛鳥時代に伐採された木材ですから、甲賀はかなり古い時代から日本の建築材の一大供給地だったのでしょう。

また、甲賀は江戸時代には前挽鋸(まえびきのこ)の主産地だったようです。前挽鋸とは、木材を縦に挽いて柱や板に加工する大きなノコギリ。資料館にはその展示もありました。

 

 

前挽鋸の展示コーナー

 

飛鳥時代からの杣の伝統が、江戸時代まで継承されたということでしょう。甲賀は忍者だけでなく、「甲賀大工」や「甲賀木挽(こびき)」など杣人(そまびと)でも有名だったわけです。

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