樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

ホオジロガモ作戦

2016年01月28日 | 野鳥
野鳥の会京都支部では、前回ご紹介したような野外で鳥を見る会のほかに、事務所で鳥に関する勉強会というか室内例会を開催しています。先日は、「野鳥と映画」というテーマで私が担当しました。
当ブログでこれまでにご紹介したヒッチコックの『鳥』をはじめ『いそしぎ』『終身犯』『カッコーの巣の上で』『ビッグボーイズ』『バードマン』、『バードピープル』などを題材にしました。
007シリーズも、原作者のイアン・フレミングがバードウォッチャーで、鳥類学者ジェームズ・ボンドを主役の名前にしたことは以前ご紹介しましたが、第17作『ゴールデンアイ』がなぜホオジロガモ(英名Goldeneye)というタイトルなのかは不明でした。
室内例会のために調べを進めているうちに、その理由が分かりましたのでご紹介します。



イアン・フレミングはバードウォッチャーであると同時に、戦争中はイギリス海軍の諜報部員でした。しかも、ジェームズ・ボンドのような最前線のスパイではなく、作戦を計画し指揮する上層部だったようです。
1943年、スペインがドイツに味方しそうな状況の中、大西洋と地中海をつなぐジブラルタル海峡を封鎖されるとイギリス海軍が不利になるため、事前に海峡を確保する作戦をフレミングが立案。「ゴールデンアイ作戦」と名づけて自ら指揮しました。結局、スペインがドイツ側につかなかったため、この作戦は中断されました。
ここから先は私の推測ですが、ジブラルタル海峡は潜水艦が行き交う海の要所なので、潜水ガモであるホオジロガモを作戦名に付けたのではないでしょうか。ドイツの潜水艦を描いた映画『Uボート』でも、ジブラルタル海峡から地中海に入ろうとしたものの連合国の船が多くて果たせなかったというストーリーでした。
ホオジロガモは英名どおり、目が金色です。



戦後、フレミングはジャマイカに別荘を建て、そこで007シリーズを執筆するのですが、その別荘にGoldeneyeという名前をつけています。単にホオジロガモが好きだったからなのか、「ホオジロガモ作戦」を忘れないためなのか。いずれにしても、原作者のそんな想いを留めるために、映画『007 ゴールデンアイ』の制作者はホオジロガモをタイトルにしたようです。
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クロジに会いに行こう

2016年01月21日 | 野鳥
昨年10月から毎月1回宇治で平日探鳥会を開催しています。これまでの3回は宇治川沿いで水鳥を観察しましたが、4回目となる1月14日(木)は私の散歩コースである大吉山を歩きました。狙いはクロジです。
京都市周辺でクロジがほぼ確実に見られる探鳥地は2~3カ所しかないようで、その一つが大吉山。「クロジに会いに行こう」をキャッチフレーズに、会員誌やホームページでお知らせしました。
当日の参加者は過去3回とほぼ同数の15人。探鳥会にはちょうどいい人数です。3日前の下見ではいつもの場所にクロジがいましたが、当日はメスが2~3羽チョロチョロするものの、肝心のオスが現れません。
「必ず出てくる」と自信があったので、しばらく待っているとオスが2羽登場。しかも、参加者のすぐ近くでしばらくじっとしているので、全員がじっくり観察できました。


クロジ観察中のみなさん

キャリアにもよりますが、クロジを見た人はそう多くないはず。参加者に「クロジを今日初めて観た人は?」と尋ねたら、9人の方が手を挙げられました。半分以上の方がクロジデビューされたわけで、担当者としては一応の責任が果たせて一安心。


以前、大吉山で撮影したクロジ

帰路のシイ林は鳥が少ないので、急きょツリーウォッチングに変更。タラヨウの裏の裏に枯れ枝で文字を書いて、「葉書の語源になった木です」とご紹介しました。



解散後、妻と時々訪れる抹茶カフェにお誘いしたところ8人が参加。宇治らしいアフターバードウォッチングを楽しみました。
その中に東大阪市在住の女性がおられて、「宇治のホテルに1泊して参加しました」とのこと。これまで何度も探鳥会を担当しましたが、前泊して参加された方は初めて。頭が下がるほどありがたいお話でした。



休みが木曜日である上に東大阪にはいい観察地がないので、木曜日に京都方面で行われる自然観察会に時々前泊して参加されるとのこと。嬉しかったので、「今後この探鳥会は必ず木曜日に開催します」と言ってしまいました(笑)。
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黒い葉

2016年01月14日 | 樹木
昨年の12月初旬に栃の森を歩いたとき、一面に黒い葉が落ちている場所がありました。まるで黒い絨毯を敷いたようです。



「ミズキの落葉だな」と思いましたが、それにしては数が多いので、よく見るとツルアジサイの葉。普通、ツルアジサイの落葉は褐色ですが、なぜかこの一帯は黒く変色しています。


ツルアジサイは普通に紅葉すると褐色

なぜだろう? 不思議になって調べてみましたが、よく分かりません。ただ、一般的にクロロフィルが葉に残っている状態で葉をちぎると黒変するという現象があるそうです。
そういえば、下の写真のように緑色からいったん褐色に変わるのではなく、いきなり黒変している落葉もあります。



私の推測ですが、このあたりは地形的に風が強く、紅葉する以前に強風で緑色のまま葉がちぎられたために、黒く変色したのではないでしょうか。
当ブログでも何度か紹介しましたが、ミズキやハリギリの葉も黒くなります。これらは、落葉前に葉の中に残っている栄養分を回収しないまま落葉するので黒くなるそうです。


ミズキ


ハリギリ

つまり、ミズキやハリギリは生態的な要因で葉が黒変し、ツルアジサイは環境的な要因で黒変するということのようです。
面白いですね~。ツリーウォッチングをしていると、いろいろ勉強になります。
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ガンカモ調査

2016年01月07日 | 野鳥
明けましておめでとうございます。本年もよろしくご愛読ください。
さて、毎年1月はガンカモ調査の時期。環境省が各都道府県に依頼し、京都府の場合は日本野鳥の会京都支部が受託して、府内全域の川・池・海を会員が手分けして調査します。
私の担当はこれまで淀競馬場の池だけでしたが、今年は北部(日本海側)の会員が調査に参加できなくなったため、南部の会員が3チームに分かれて遠征することになりました。私の故郷でもあるので、京都府で最もカモの数が多い天橋立(阿蘇海)と丹後半島の東側を担当することにしました。
もちろん1人では無理ですから、栃の森の調査メンバー3人に助っ人をお願いして、4日に行ってきました。ありがたいことに、メンバーの1人が事前に2回も下見をしてくれたおかげで、調査はスムーズに進みました。
阿蘇海は12カ所のポイントに分けて調査。2,800羽をカウントしました。昨年より500羽増えています。嬉しかったのはコハクチョウが記録できたこと。
一昨年の年末に近所の仲間と遠征したときは不在で、昨年のガンカモ調査でも記録されていませんが、今回は2羽を確認。そのうちの1羽を調査の合間に撮影してきました。



午前中で阿蘇海を終え、午後は丹後半島へ。カモの数は少ないものの、移動距離が長くて大変です。それでも頼もしい助っ人のおかげで4時頃には終了しました。
合計で3,200羽のカモをカウントしました。最も多いのはマガモで1,100羽。今回はなぜかオナガガモが多く、昨年の3倍の630羽。全国的な傾向を反映しているのか、気になるところです。
波打つ海面をスコープで凝視しながらカモをカウントするので、2人のメンバーが船酔い状態に陥りました。私は鈍感なのか、いいかげんにしか見ていなかったのか、大丈夫(笑)。


最終の調査ポイント

日本海側の調査は終了しましたが、いつもの淀競馬場と近くの池の調査がまだ残っています。淀競馬場では7年前にオオハクチョウを発見し、京都府南部では珍しい記録となりました。今年はどうかな? 週末の調査が楽しみです。
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