樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

京都に都鳥はいますか?

2011年11月28日 | 野鳥

先週の土日、大阪市自然史博物館でフェスティバルが開催され、日本野鳥の会京都支部も出展したのでお手伝いに行ってきました。昨年に続いて2度目。 

前回よりも規模は小さくなりましたが、双眼鏡メーカー、図鑑出版社、主に大阪の自然観察団体など55のブースが出展。京都支部は京都御苑と比叡山の野鳥情報を発信したり、私が当ブログでご紹介した干拓田のシギやチドリの動画を放映しました。

 

 

 

今回のフェスティバルの呼び物の一つは「鳥くん」。と言っても、私はその存在を知らなかったのですが、「魚くん」の向こうを張ったキャラクターが来ていました。

もともとは作曲家で、ジャニーズ系のタレントに曲を提供する一方、野鳥の世界では写真家としても知られているようで、当日は「魚くん」と同じように被り物をつけて、ミニコンサートと「野鳥撮影講座」をやってました。

 

 

 

当ブースでも、いろんな方に説明したり、逆に大阪近辺の情報を教えていただいたり、意外な方との出会いがありました。あるバードウォッチングの初心者に、「京都に都鳥はたくさんいるんですか?」と質問されて、一瞬固まりました。

名前からいえばそう思われても不思議ではないですが、「都鳥」はユリカモメの古名で、鴨川にたくさんいるのでそう呼ばれたようです。ややこしいことに、ミヤコドリという別の鳥がいるので混同しがちです。その方も、ミヤコドリ(下の写真)が京都にいると思われていたようです。

 

 

ミヤコドリ photo by Bjørn Christian Tørrissen

 

 

昔の「都鳥」=現在のユリカモメ

 

ミヤコドリは海岸の河口に渡来することが多いので、その方には「多分、京都には来たことがないと思います」と答えました。後で調べたら、やはり京都府ではミヤコドリは観察されていませんでした。

誰がこの鳥をミヤコドリと名づけたか分かりませんが、罪作りなネーミングですね。

 

 

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卓球と木

2011年11月24日 | 木とスポーツ

一応男なので、妻と対戦して負けるスポーツはないのですが、卓球だけは勝てません。中学・高校と卓球部だった経験は、40年後も男と女の力の差を超えます。

この卓球は想像以上に木と関係が深いです。まず、卓球台は木製。パーティクルボード製のものが多いようですが、高級品にはカツラの板を使うそうです。

 

 

 

ラケットも素材の85%は天然木というルールがあって、ヒノキやキリのほか、ヤナギ、マツ、ウォルナット(クルミ)などが用いられるそうです。

下の写真は妻のラケットですが、木口を見ると基材はヒノキのようです。木の種類によって軽さや反発力が違うので、選手たちは材質にこだわるのでしょうね。

 

 

 

意外なことに、ボールも実は木からできています。

ボールがセルロイド製であることはご存知と思いますが、そのセルロイドは樟脳、つまりクスノキの樹脂から製造されます。

 

 

 

現在は廃れましたが、セルロイドは昔の日本の重要な産業で、各地にクスノキを植林し、樟脳の生産も専売公社が管理していました。

樟脳といえば虫除け剤のイメージが強いですが、生産量としてはセルロイド用の方が多かったはずです。写真や映画のフィルム、人形、万年筆、めがねフレームなどセルロイドの用途は幅広かったのですが、燃えやすいとか製造工程で危険が伴うといった理由でプラスチックに切り替わりました。

卓球のボールもロンドンオリンピック以降はプラスチックに切り替わるそうです。

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ヤマガラと大阪人

2011年11月21日 | 木と鳥・動物

しばらく前の話ですが、庭のエゴノキの実が全部きれいになくなりました。ヤマガラがやってきて、1カ月ほどかけて食べ尽くしたのです。 

 

 

エゴノキの実

 

見ていると、クチバシにはさんだ実を家の横の電線へ運んで食べています。この鳥は行儀がよくて、食料採取の場と食事の場所を分けています。餌台でも、スズメはその場で食べるのに、ヤマガラは近くの枝に持ち運んで食べます。

 

 

 

以前、栃の森の木の実を試食したレポートで、エゴノキの実は有毒なので食べなかったと書きました。果皮にエゴサポニンが含まれていて、昔は実をすり潰して川に流し、魚を仮死状態にして獲ったそうです。

ヤマガラはその毒にやられないのか不思議でしたが、彼らは実は食べないで、種の中身だけを食べているようです。

家の周りを掃除していたら、電線の下に写真のようなものがいっぱい落ちていました。ヤマガラが食べ残したエゴノキの実の種の殻です。

 

 

 

わざわざ毒のある食材を好んで、その毒のある部分を除いて一部分だけを食べる。人間がフグを食べるのと同じですね。

私はフグを好んで食べませんが、大阪の人はフグが大好きで、忘年会と言えば「てっちり」。大阪人はヤマガラに似ているんですね。

 

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国宝と世界遺産

2011年11月17日 | 木造建築

前回ご紹介したヨーロッパの木造建築はいずれも世界遺産。うちの近所にある宇治上神社も現存する日本最古の神社建築ということで、平等院とともに世界遺産に登録されています。国宝にも指定されています。

宇治上神社にはいつもわずかばかりのお賽銭で願い事を3つも4つもお頼みして、その多くを叶えていただいているので、恩を仇で返すようですが、世界遺産というのはちょっとおこがましい気がします。

 

 

宇治上神社の本殿(国宝)

 

だって、小さな本殿と拝殿があるだけのせせこましい神社ですよ。おそらく、日本で(世界でも)いちばん小さくて無名の世界遺産だと思います。

みなさんも知らなかったでしょう? 前回のルーマニアやロシアの木造教会に比べても迫力ないでしょう? 

 

 

神社は小さいのに「世界文化遺産」の石碑は大きい(笑)

 

宇治上神社より金閣寺の方がよっぽど有名ですが、金閣寺は世界遺産に登録されているものの、国宝ではありません。理由は、一度全焼して再建されているから。炎上する前は国宝でした。

再建は世界遺産の基準では○なのに、国宝の基準では×ということのようです。

 

 

(画像はパブリックドメイン)

 

ユネスコも以前は「再建したものは偽物」という認識だったようですが、そうなると木造建築物の多くが偽物ということになり、アジアの伝統的な建築物が登録できなくなるので、再建でも認めようという方針に変わったとか。それをリードしたのは日本の文化庁で、奈良で国際会議を開いて認めさせたようです。

世界遺産では再建を認めさせておいて、国宝では再建を認めないというのは矛盾すると思いますが、どうなんでしょう。

 

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石の国の木造建築

2011年11月14日 | 木造建築

建築物について「日本は木の文化、ヨーロッパは石の文化」と対置されます。また、世界最古の木造建築(法隆寺)があるために、「日本の木造建築はヨーロッパより優秀」と思いがちです。

しかし、ヨーロッパの木造建築もあなどれません。たとえば、ルーマニアの木造教会。

 

 

ルーマニアのマラムレシュにある木造教会 photo : Oswald Engelhard

 

これ、全部、木ですよ。法隆寺の屋根は瓦ですから土ですが、こちらは屋根も壁も内装も木。材料はモミだそうです。形もモミを表現しているとか。

しかも、この村では墓も木製で、やはりモミ。日本の墓は石ですから、「木の文化」度では負けています。村の周辺にはこんな教会が8棟も建っているそうで、高いものは54mといいますから、日本一高い木造建築の東寺とほぼ同じです。

次は、ロシアのキジ島にある木造教会。3棟とも木造ですが、特に左の聖堂はロシア正教ならでは玉ネギ型のドーム屋根が特徴です。

 

 

左から顕栄聖堂、鐘楼、生神女庇護聖堂の3棟の木造教会 photo : A. Jungierek

 

300年ほど前に再建されたので法隆寺ほど古くないですが、驚くべきことに釘は1本も使われていないそうです。

 

 

 顕栄聖堂 photo : A. Jungierek

 

いかがですか、法隆寺や東大寺に勝るとも劣らないでしょう? いずれも世界遺産に登録されています。

恐るべし、石の国の木造建築。

なお、画像はクリエイティブコモンズのライセンスのもとに利用許諾されたものを掲載しました。

 

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錦秋

2011年11月10日 | 樹木

週末、栃の森に行ってきました。「たくさんの紅葉が見られるだろう」と予想していましたが、森の中に足を踏み入れると、紅葉というよりも黄葉。

いつもなら真っ先に赤くなるハウチワカエデもほとんどが黄色いまま。オオモミジ、ウリハダカエデ、コミネカエデなど紅葉するはずのカエデ類も黄色の方が目立ちます。

下のヤマモミジも本来なら赤く染まるはずですが、9割が黄色。森全体の緑と黄色と赤の比率もちょうどこれくらいの感じでした。

 

 

 

多分、気温が下がりきらなかったために、黄色く変色したまま止まったのでしょう。

赤く染まっているのは下のヤマボウシくらい。

 

 

 

木の葉の色づきは赤や黄色だけではありません。ブナやトチノキは褐色になりますし、下のように黒く変色する樹種もあります。

 

 

雨に濡れて黒光りするハリギリの葉

 

ミズキも黒葉

 

また、以前にもご紹介しましたがコシアブラは白く変色します。白葉するのはこの樹だけと思っていましたら、今回もう一つ白く変色する樹を見つけました。ウワミズザクラです。

サクラの仲間は赤や褐色に変わりますが、温度が高かったためか、白からピンクに変色していました。

 

 

コシアブラ

 

ウワミズザクラ

 

赤や黄色、褐色、黒、白、それに常緑樹の緑が混在するから「錦秋」という言葉が生まれたのでしょうね。

最後に、栃の森の錦秋を動画でお伝えします。森の中にある湿原の周囲の風景です。

 

 

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「うがい」は「鵜飼」

2011年11月07日 | 野鳥

宇治川にカワウが増えてきました。留鳥ですが冬になると数が多くなるようです。

翼を広げて休憩しているカワウの姿をよく見ます。カモなど他の水鳥は脂分を羽にこすりつけて防水処理しますが、ウの仲間は脂分の分泌が十分ではないので、水に濡れた後はよく乾燥させないと溺れるからだそうです。水鳥としては決定的な弱点ですね。

ウはことわざや慣用句にもよく登場します。たとえば、よく理解しないまま納得することを「鵜呑み」と言いますし、逆に、納得いくまでよく調べることを「鵜の眼、鷹の眼」と言います。

 

 

翼を広げて乾かすカワウ

 

最近知ったことですが、私たちが風邪の予防として喉を洗う「うがい」は、鵜飼に由来するそうです。捕えた魚を飲み込まずに吐き出す様子にたとえて名づけたのでしょう。

漢字表記は「嗽」ですが、1444年(文安元年)に成立した国語辞典「下学集」には「鵜飼(うがい)嗽(くちすすぎ)也」と書いてあるそうです。「うがい」という言葉ができるまでは、「くちすすぎ」と表現していたわけですね。

しかし、語源の説はどこまでいっても推測に過ぎず、古書に記されているとしても、それが正しいかどうかは立証できません。私はこの手の話はいつもは眉に唾をつけて聞いていますが、この「うがい」は他に考えようがないので90%の確率で信用します。

宇治川には鵜飼もあることですし…。

 

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都心の幸せな木

2011年11月03日 | 街路樹・庭木

最近、仕事で大阪の心斎橋周辺を歩く機会が増えました。高級ブランドの店やレストランなどが建ち並ぶ賑やかな界隈です。その周辺で幸せな木をいくつか見つけたのでご紹介します。

ひとつは、老舗のうどん屋さんの軒先に立つクスノキ。樹高が高くなったので、軒にコの字型のくぼみをつけて成長させています。

 

 

 

もうひとつは、老舗のすき焼き屋さんの店先に立つシダレヤナギ。こちらは軒に丸い穴があけてあり、その穴を幹が突き抜けています。うどん屋さんの屋根は瓦葺き、こちらの屋根は銅葺きです。

老舗の温かい思いが伝わってきて、「樹木を大切にするお店はきっとお客さんも大切にするんだろうな~」と感じました。

 

 

 

老舗ではありませんが、テナントビルの前にも似たような木がありました。エントランススペースの屋根を突き抜けて、2本のクスノキが延びています。

 

 

 

いずれも、伐ってしまえば済むところを、コストや手間をかけて樹木を大切に育てています。新しい店がオープンしたり、閉店したり、効率優先で街の表情が次々と変わる一方、こうして何十年も大切に守られている木もあります。

都心ではすぐに伐採される木が多いでしょうが、これらの木は幸せ者です。

 

いつもは朝にアップするのですが、今日は都合で夜になってしまいました。定期的にご覧いただいている読者のみなさん、申し訳ありませんでした。

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