樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鳥の別名

2021年11月25日 | 野鳥
バードウォッチャーの特に初心者の間で人気が高いカワセミには「飛ぶ宝石」という別名があります。その由来は漢字で「翡翠」と書くからでしょうが、この文字は宝石のヒスイを意味するのではなく、元々カワセミのために作られた漢字です。2文字のいずれにも「羽」があるのはそのためですし、「翡」は雄のカワセミ、「翠」は雌のカワセミを表します。
つまり、「翡翠」はカワセミが先で、それに例えて後から宝石のヒスイを意味するようになり、別名として先祖返りしたわけです。そのカワセミの鮮やかな色に連動してでしょうか、青緑色のブッポウソウには「森の宝石」という別名があります。下の動画は2012年の四国ツアーで撮影した「森の宝石」。



また、当ブログでも度々ご紹介しているセイタカシギは「田園の貴婦人」とか「水辺の貴婦人」と呼ばれています。「水辺のバレリーナ」という別名もあるようです。スラリとした体形と優雅な動きがその由来でしょう。
一方、タゲリの別名は「冬の貴婦人」。ピンと立った冠羽が高貴な女性がかぶる帽子飾りのように見えたり、メタリックグリーンの羽衣が高級なドレスを連想させるからでしょう。下の動画は3年前に隣の市の田園で撮影した「冬の貴婦人」。



鳴き声から付けられた別名もあります。コヨシキリは「草原のジャズシンガー」。かわいい声で「ピピピピョピョ、ピュチャピリリリリ…」などと多彩なメロディで長くさえずるので、ジャズの好きなバードウォッチャーが名付けたのでしょう。
その連想からか、ミソサザイには「森のジャズシンガー」という別名があります。小さな体なのにハリのある大きな声で複雑なメロディを森に響かせます。下の動画は5年前に栃の森で撮影した「森のジャズシンガー」。



以上のような美称とは逆に、蔑称の別名もあります。タカの一種ノスリは、昔は「まぐそだか」とか「くそとび」と呼ばれていたそうです。主にネズミを捕獲するノスリは、鷹狩りに役に立たないのでこんな名前を与えられたのでしょう。確かに、猛禽らしい眼力(めぢから)や精悍さには欠けますが、気の毒な別名です。

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宇治周辺の野鳥

2021年11月18日 | 野鳥
私が住んでいる地域は文化活動が活発です。20数年前に引っ越してきた際、その旺盛さに感心しました。活動の拠点となる集会所の利用率も7割以上。つまり、365日中260日程度は何かの催しで使っているのです。
さすがに、ここ2年ほどはコロナで活動できなかったものの、地域の年史の編集には私も深く関わり、昨年11月に第3号を発行した上に、第1号と第2号の復刻版も印刷して住民に配布しました。
週末からは、2年ぶりに文化祭が始まります。地域の住民の絵画や書道、クラフトなどの作品、子供たちの夏休みの自由研究の作品なども展示されます。
私も役員として毎回ポスターを作成したり、飾り付けのお手伝いをするのですが、野鳥の動画を出品することにしました。前回はノートパソコンで展示したものの、容量不足で短いものしか披露できず、画面も小さかったので、今回は自宅のDVDプレーヤーを持ち込んで集会所の大型テレビにつないでエンドレス再生することにしました。
そのコンテンツが以下。これまで当ブログでご紹介した動画のうち、宇治周辺で撮影したものを編集しました。



文化祭は作品展示だけではなく、囲碁大会、グランドゴルフ大会、輪投げ大会、演芸発表会も開催されます。日曜日に行われる歩こう会には、夫婦二人で初参加するつもりです。
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秋の色part-2

2021年11月11日 | 樹木
10月の栃の森行は「秋の色」と題して木の実をご紹介しましたが、11月の森歩きのテーマはやはり紅葉。ほぼ北陸に位置する森なので、下界に比べると季節が1カ月ほど先に進んでいます。今年は紅葉が遅れているようで、例年はピークを過ぎた頃に野鳥調査に入るのですが、今回はちょうどピークを迎えたところ。樹種によってはすでに落葉したものもありますが、紅葉や黄葉が十分楽しめました。
まず、林内の様子。トチノキやブナはほぼ落葉していますが、所々に赤や黄の葉が見えます。



これは、ミネカエデ。中央の葉が長く尖っているのが特徴です。



ミネカエデよりもさらに長く尖っているのはコミネカエデ。



黄色く色づくのはウリハダカエデ。場所によっては赤く染まることもありますが、ほとんどは黄葉です。



いちばん鮮やかに赤くなるのはハウチワカエデ。この樹は花も赤い。アントシアニンが多いのでしょうか。



森とキャンプ地をつなぐ林道。往路は早朝で薄暗いので、林道の写真はいつも復路に撮ります。



いつもは三脚をセットした望遠レンズ付きの一眼レフを担いで歩くのですが、今回は新たに購入したコンパクトデジカメだけ持って歩きました。年のせいか4~5kgの機材を担いで12~13km歩くのがつらくなってきたので、思い切って軽装にしました。
上に紹介したような風景や樹の写真は問題ないのですが、鳥の動画がどこまで撮影できるのかテストする意味もありました。たまたまオオアカゲラが登場してくれたので、撮ってみました。



30倍ズームで距離的には問題ないですが、三脚なしなので当然ながら画面が不安定です。そのほかマニュアルフォーカスできない、露出が調整できないなどいろいろ問題はあります。でも、体は楽でした。いつもは6人の同行メンバーの中で歩くのが一番遅いのに、今回は仲間に「速いな~」と言われるほど。そして、森から帰ると2~3日足腰が疲労していますが、今回は回復が早かった。
コースの途中には崖っぷちを歩く所もあって、三脚を担いでいるとバランスを失うこともあって危ないので、今後はコンデジだけにしようと思います。
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ドラマで流れる鳥の声

2021年11月04日 | 野鳥
テレビドラマや映画を見ていると、例えば冬のシーンでカッコウの声が流れて違和感を覚えることがあります。ドラマの製作者に鳥の知識がないと、こういうちぐはぐなことになります。
時期的なズレだけでなく、地域的なズレずれも発生します。あるサイトで元日本鳥類保護連盟理事の柳澤紀夫さんが「よくテレビドラマで京都の背景にオナガが鳴いている場面がありますが、自然ではありえない状況です」と指摘しています。
オナガは東日本に生息する鳥で、徐々に生息域を拡大しているものの京都府内ではまだ確認されていないので、声が聞こえることはありません。下は私が野鳥の会のイベントで千葉県に行った際に撮影したオナガ。関東ではヒヨドリ並みによく見られる鳥ですが、関西で見ることはありません。



ある時代劇ファンのバードウォチャーのブログによると、シーンによって使われる鳥の声が決まっていて、夜、盗賊や刺客が登場する時はゴイサギの「ゴワッ」、危険が迫っている時はアリスイの「ツィークィー」やカケスの「ギャー」が多いと解説しています。その一方、「よくできたドラマでも真冬の枯野に行々子(オオヨシキリ)のけたたましい鳴き声が響いたりして、膝が抜けることもある」と書いています。
下はオオヨシキリのさえずり。夏の河川敷で撮影しました。冬には鳴かないどころか、そもそも日本にいません。



一般的に、NHKは時代考証だけでなく、こうした鳥の考証も行き届いているようです。私は見ていませんが、2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』の「決戦!桶狭間」で、早朝のシーンにトラツグミの声が流れたそうです。桶狭間の戦いは永禄3年5月19日(1560年6月12日)なので、トラツグミの「ヒョー、ヒョー」という不気味な声が聞こえるのは妥当です。
その一方、同じく大河ドラマの『真田丸』でガビチョウの声が流れたそうです。野鳥録音の第一人者・松田道生さんによると、この外来種が日本に移入されて各地で声が聞こえるようになったのは数十年前のことなので、真田幸村が活躍した時代にはありえないとのこと。
時期的なズレ、地域的なズレ、時代的なズレ…。私のような者に突っ込みを入れられないように、ドラマ製作者はバードウォッチャーにチェックしてもらった方がいいですね。
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