樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

温暖化と野鳥 part-2

2018年08月09日 | 野鳥
7月に「温暖化と野鳥」と題して、気温上昇によって野鳥が減少したり絶滅する話をしましたが、逆に個体数が増える種類もいます。
例えばイギリスでは、北海の水温上昇によってプランクトンや魚の種類が替わったために、それを食べていたミツユビカモメが20年間に70%も減少した反面、アマサギやセイタカシギなど120種もの鳥がイギリス国内で繁殖するようになったそうです。温暖化によって、生息域が北上したわけです。
また、アラスカでは温暖化によってシロハヤブサやホンケワタガモの繁殖が危ぶまれる反面、ミヤマシトド、ツメナガホオジロなどはその恩恵を受けて個体数が増えているとのこと。
日本でも、コハクチョウが増えたのは温暖化の影響であるという研究が発表されています。動画は6年前に湖北で撮影したコハクチョウ。



コハクチョウの日本への渡来数は1975年の1,745羽に対して2008年は40,485羽。33年間に23倍にまで増えています。
その要因を探るために、研究チームは繁殖地(シベリア)・中継地(北海道)・越冬地(新潟県)の3地点で個体数を記録し、気温や降雪量の変化を調査。最高気温が33年間に繁殖地で約3.8℃、中継地で約1.5℃、越冬地で約2.6℃上昇していることを把握しました。
そして、各地点の最高気温が高いほど成鳥の生存率が高くなり、繁殖地ではひなが多く育ち、日本への幼鳥の渡来数も増える傾向があることを解明しました。
研究者は、「繁殖地と春の渡りの中継地の気温が高く、越冬地の降雪量が少ないと、翌年の越冬数が増えることが示唆される。越冬地の降雪量が減れば、水田などで餌を採りやすくなるだろうし、中継地や繁殖地の気温上昇は生息に十分な餌を早くから得ることを可能にする」と分析しています。
野鳥が減少したり絶滅するのは寂しいですが、かといって温暖化の影響で数が増えるのは単純には喜べません。
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シンボルとしての鳥

2018年08月02日 | 野鳥
私はツイッターをやりませんが、Twitter社のシンボルマークは鳥。日本ではツイッターに投稿することを「つぶやく」と言うようですが、twitterは本来「さえずる」という意味です。



創業当時のマークは右でしたが、2012年に左に変更されました。この鳥にも名前があって、2代目(左)の名はTwitter Birdで、先代(右)の名はLarry Bird。これはNBA(プロバスケットボール)の選手の名前で、Twitter社の創業者がファンだったからと言われています。そのラリー・バードには冠羽がありますから、モデルはヒバリでしょうか。
多くの写真家やバードウオッチャーがカメラや双眼鏡でお世話になっているキャノンにシンボルマークはなく、ロゴタイプ(特定のフォント)だけですが、内部的に使っている社章はワシです(下左)。同社のフェイスブックによると、「キヤノングループでは、社章デザインを(2013年)4月1日より『レンズを想起させるデザインの円形の社章』から『鷲の社章』へと一新しました」。
1937年に創立した当時の社章はワシでしたが、その後円形の社章に変更され、創立75周年の2013年に再びワシに戻したわけです。ラグビーのトップリーグに所属するキャノンのチームの名前も「キャノン・イーグルス」で、マーク(右)に描かれているのはワシ。

 

意外なことに、カレーや胡椒のメーカー「エスビー食品」も鳥に由来します。同社は1930年に太陽と鳥を図案化した「ヒドリ」を商標にしました。「社運が、日が昇る勢いであるように、また鳥が自由に大空をかけめぐるように、自社製品が津々浦々まで行き渡るように」という願いを込めたそうです。
当時の社名は日賀志屋(ひがしや)でしたが、1949年にマークの太陽と鳥(Sun & Bird)のイニシャル「S&B」から「エスビー食品」に社名変更しました。当時の商標(下)を見る限り、モチーフはハトのようです。

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リニア新幹線とブッポウソウ

2018年07月26日 | 野鳥
リニア新幹線に関連する長野県南部のトンネル工事が7月中旬から中断されています。理由は、県の天然記念物ブッポウソウ。5月下旬に2組の営巣を確認したものの6月20日ごろにいなくなったのは、大きな音が出るクレーンや夜間の照明のせいではないかと地元の保護団体が報告したからのようです。
このニュースを知って、そのブッポウソウは以前観察した個体ではないかと思いました。3年前の5月末、いつもの3人で南信州へ鳥見ツアーに出かけました。大した鳥果が得られないまま失望して帰路についた途中、想定外の場所でブッポウソウに遭遇しました。しかも、ペアリングの真っ最中。
そのときに撮影したのが以下の映像。場所は、天竜川に掛かる大きな橋。当時すでに工事車両用の道路建設が始まっていました。



実は、このニュースを朝のワイドショーで紹介するので京都支部のホームページに掲載しているブッポウソウの映像(上とは別)を使わせてほしいという問い合わせが、東京の某テレビ局からありました。著作者は私なのでOKしましたが、恥ずかしながらそのときまでこのニュースを知りませんでした。ボンヤリしていてその放送も見逃しました。
リニア新幹線については、地下水脈の遮断、大量な仮置き土砂の土砂崩れ、ゼネコンの談合などいろいろ問題があるようで、日本野鳥の会も『野鳥』誌で特集を組んで疑問を呈しています。
ブッポウソウを撮影した大きな橋では、イワツバメも営巣していました。しばらく撮りっ放しにしたファイルを編集したのが以下の映像。イワツバメのアパートみたいでしょ?



リニア新幹線とは別に、北陸新幹線の延伸計画では、私がよく鳥見に行く近くの干拓地がルートになっています。工事が始まる頃には私はこの世にいないでしょうが、ここを利用するたくさんの鳥たちはどうなるのだろうと心配しています。
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温暖化と野鳥

2018年07月19日 | 野鳥
西日本豪雨や連日の猛暑は地球温暖化による現象と思わざるを得ません。鳥の世界でも同様の異変が起きているのではないかと思って調べてみたら、やはり憂慮すべき事態になっていました。
身近なところでは、ウグイスの初音が最近の50年で約1か月早くなっているという報告が九州で上がっています。さえずりが早くなるということは繁殖活動が早くなるということ。イギリスでは1971~1995年の24年間で、65種類の野鳥のうち20種類で産卵時期が平均9日間早くなっているそうです。
産卵時期が早くなるということは、ヒナに与える餌にも影響が出てきます。新潟では、ソメイヨシノの開花時期よりもコムクドリの繁殖時期の早期化のスピードが2倍ほど早いため、ヒナに与えるサクランボが不足しているとのこと。ヒナが食べ盛りなのに、サクランボがまだ十分に実っていないわけです。
下は近くの探鳥地で撮ったコムクドリ。京都府内は通過するだけで繁殖はしませんが、ソメイヨシノの葉につく虫を食べています。



コムクドリは繁殖成功率の低下には至ってないようですが、ヨーロッパのマダラヒタキは繁殖時期と餌である昆虫の発生時期がずれたために、個体数が顕著に減少しているそうです。
フランス国立自然史博物館は、「温暖化によって国内の野鳥の一部が絶滅するかもしれない」という論文を2008年に発表しています。
アメリカの野鳥保護団体オーデュボン協会も、「温暖化がこのまま進むと今世紀末までに北米に生息する野鳥の半数314種が絶滅するおそれがある」という衝撃的な報告書を2015年に発表しました。
同協会の会長は「鳥類は人間に警告を発しています。温暖化の抑制や生息地保護のために今すぐ何かすべきだと警告する“炭鉱のカナリア”なのです」と語っています。
日本で絶滅が危惧されるのはライチョウ。温暖化は水平方向だけでなく垂直方向の環境変化ももたらします。平均気温が1℃上昇すると森林限界が154m上昇し、それ以下の標高のライチョウの縄張りが消滅すると仮定すると、個体数は平均気温が1℃上昇すると10%、2℃上昇すると50%、3℃上昇すると80%減少すると推定されています。
そして、3℃上昇すると御嶽山と乗鞍岳のライチョウは絶滅し、南アルプスでも35羽にまで減少するとのこと。
下は私が撮ったわけではないですが、乗鞍岳のライチョウ親子。温暖化が続くと、彼らは絶滅するわけです。



温暖化をテーマにしたドキュメンタリーではホッキョクグマの悲痛な姿が描かれますが、それと同じ状況に日本のライチョウも追い込まれているわけです。
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鳥のコーラス

2018年07月12日 | 野鳥
北信州ツアーの後半です。2日目は奥志賀高原のペンションに宿泊。例によって朝4時に宿を出て、4年前にも訪れた雑魚川へ。前回もそうでしたが、ここは鳥影が濃く、コーラスを浴びるには最高のポイント。
以下の動画は目の前のシラカバ&ダケカンバ林を被写体にして、そのコーラスを収録したもの。特にコルリの密度が高く、前から2個体、背後から3個体の声が聞こえてきます。クロジも多く、コルリとさえずりを競っているようです。「ホイーチヨチヨ」と鳴くのがクロジ、「シシシシ…」の前奏の後「ジョリジョリ」と鳴くのがコルリです。



私は難聴気味で、この数年は日常生活にも支障が出ていたののと、鳥の声をしっかりキャッチしたいので、ツアーの1週間前から補聴器を利用し始めました。今回のツアーでその効果をテストしたところ、結果は二重丸。外すと鳥の声が遠くなり、つけると近くから聞こえます。コルリの声が同時に5個体も聞こえたのは補聴器のおかげでしょう。
このポイントは声は多彩で豊富ですが、姿はなかなか見られません。同行メンバーがようやく発見したコルリも、「どこ? どこ?」と探している間に隠れてしまいました。代わりにアカハラが道路に出てきてくれました。



朝7時に宿にもどって朝食をいただいた後、最後のポイント信州大学自然教育園へ。ここのハイライトはエゾムシクイ。補聴器のおかげか、「ヒーツーキー」という独特の高音も聞こえました。
繁殖しているようで、藪の中から出て餌を取ってはすぐに戻るという行動を繰り返していました。その時間が短いので動画には収められませんが、3人のオジサンとじっくり遊んでくれました。
そろそろタイムリミットなので駐車場へもどろうとすると、前方に猿の群れが出現。念のため近くの施設の階段に退避しましたが、なかなか途切れません。じゃれ合っている若い猿、子猿を連れた母猿、2頭の猿にノミ取りさせているボス猿など、約80頭の群れに取り囲まれました。



猿のおかげで、予定より1時間遅れて北信州を去ることになりました(笑)。
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北信州ツアー

2018年07月05日 | 野鳥
週末、いつもの3人で恒例の鳥見ツアーへ行ってきました。昨年はスケジュールが合わずに実行できなかったので2年ぶり。
今回は、4年前に訪れて印象が良かった北信州。2泊3日で前回とほぼ同じ探鳥地を歩きました。最初に着いた木島平スキー場では、繁殖中のニュウナイスズメに遭遇。餌をくわえた親鳥とまだ産毛が残る幼鳥が電線に止まっていました。



1日目は、前回鳥が濃かったカヤの平高原の森の入口にあるロッジに宿泊。朝4時に森に入ってコーラスを聴きました。アオジ、クロジ、ウグイス、ヒガラ、キビタキなどのさえずり加えて、遠くからカッコウ、ホトトギスの声も届きます。
シラカバとブナの森をしばらく歩くと、すぐ近くにクロジが登場。声と姿をじっくり堪能させてくれました。



一旦ロッジに戻って朝食を済ませ、再び森へ。アカハラ、コルリ、コガラの声を聞いたり、上空を飛ぶノスリを見たり、至福の時間を過ごしました。
森の奥に2羽のアカゲラを発見。片方が餌を与えたので親子かなと思いましたが、映像で確認すると雌雄でした。



午後は、長野県と群馬県の県境にある渋峠へ。しかし、前回はカッコウやキクイタダキが観察できましたが、今回はウソが登場したりルリビタキの声が聞こえたくらいで大きな収穫はなし。なぜか車の往来が激しく、鳥の声が聞こえにくい。諦めて、次の探鳥地・奥志賀高原へ向かいました。
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イギリスの国鳥選挙

2018年06月28日 | 野鳥
意外なことに、バードウオッチング発祥の地イギリスでは長年国鳥が制定されていませんでした。ところが、2015年の国会の総選挙に合わせて国鳥の選挙が行われました、
候補となる鳥を10種類ノミネートし、それを国民がオンライン投票するという仕組み。ノミネートされたのは、メンフクロウ、クロウタドリ、アオガラ、ハイイロチュウヒ、カワセミ、コブハクチョウ、ツノメドリ、アカトビ、ヨーロッパコマドリ、ミソサザイ。
結果は、1位ヨーロッパコマドリ、2位メンフクロウ、3位クロウタドリ…。ヨーロッパコマドリは34%もの得票率で圧勝したそうです。以下はYouTubeにあるRobin(ヨーロッパコマドリ)。



日本のコマドリとは姿かたちもさえずりも違います。また、生態もかなり違うようで、現地では庭仕事で土を掘るとこの鳥が虫を捕るために近くに寄ってくるので、Gardener’s Friend(庭師の友だち)と呼ばれているとか。日本のコマドリが住宅の庭にやってくることはまずないでしょう。
ちなみに、メンフクロウが2位に入ったのは、この鳥が大好きな子どもたちが学校を通じて大量投票したからだそうで、その組織票がなければクロウタドリが2位になっていたそうです。
ついでながら、日本の国鳥はキジ。選挙ではなく、1947年に日本鳥学会が選定しました。キジは狩猟鳥にもなっていて、日本は国鳥を撃ち殺してもとがめられない珍しい国です。
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鳥獣保護区

2018年06月21日 | 野鳥
私が栃の森に通い始めたのは22年前。この森を鳥獣保護区に指定するための調査に同行したのがスタートでした。私自身はあまり役に立っていませんが、1年間の調査のおかげで鳥獣保護区に指定され、下のような看板が立てられました。



20年後の今年、その後の変化を確認するために、京都府から再び調査を依頼されました。野鳥生息調査は毎回自主的にやっていることなのでほぼいつもどおりですが、この受託調査では、比較のためにもう1カ所別の場所(対照区)を調べなければなりません。そして、環境や植生の調査も必要です。私は聴覚が衰えたので野鳥は他のメンバーに任せて、環境・植生調査を担当しています。
6月10日の訪問時、オオルリがあちこちで鳴いていました。過去の調査データを確認したわけではないですが、少なくともオオルリに関しては、この20年間で減ってはいないように思います。



ミソサザイも相変わらず元気で、数が減ったとは思えません。下の動画の前半と後半は別個体。後半の個体はオオルリの声を聞いた後、思い出したように自分もさえずり始めてオオルリの声にかぶっています。



カラ類は少し数が減ったように思いますが、この日はヒガラが家族連れで姿を見せてくれました。親離れが近いようで、1羽の幼鳥が自力で虫を食べていました。



この20年間での大きな変化は、前回の記事にも書いたように鹿の食害による笹の壊滅。林床部の藪を利用するウグイスやコルリ、ヤブサメなどはほとんどいなくなりました。つまり、鳥獣保護区の中で獣が増え過ぎて環境を破壊するという矛盾が生じているのです。
鹿だけでなく猪や猿による農業被害も頻発していて、鳥と獣を分けて保護区を設けるべきではないかという議論も起きているようです。
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鹿と森

2018年06月14日 | 木と鳥・動物
週末、また栃の森に行ってきました。前回の訪問から2週間しか経っていませんが、林内の花景色は一変していました。
前回満開だったサワフタギに代わって、今回はオオバアサガラが満開。あちこちで群生するこの木が一斉に開花していました。



この森では10年ほど前からオオバアサガラが激増しました。原因は、鹿。その食害によって、笹や他の樹木の幼木は壊滅状態ですが、オオバアサガラには有毒物質(サポニン)があるため鹿は忌避します。その結果、下の写真のように、林床部にはオオバアサガラの幼木だけが残るということになります。



「このままではオオバアサガラの純林になるのでは」と心配になりますが、自然の営みはそれほど単純ではないようです。他に食べるものがなくなったからか、鹿はそのオオバアサガラの樹皮にまで食指を伸ばしました。
下の写真は、樹皮を食べられて枯れたオオバアサガラの林。葉には毒があるのに樹皮にはないということでしょう。



群生するオオバアサガラが一斉に開花する様子は壮観ですが、単純には喜べない複雑な思いが走ります。
オオバアサガラの次に多かったのがヤマボウシ。自生する場所によって、花(正確には総包片)の大きさに差があるのは何故でしょう。



マタタビも葉を白くしていました。虫を集めるために白化するということは、花の役割を果たしているんですね。猫を興奮させるのは中枢神経を刺激する成分が含まれているからだそうです。



鹿、猫と続いたので、次は猿。林道や林内にはサルナシの花が咲いていました。キウイフルーツと同じ仲間なので、いつも「秋に実が成ったら食べよう」とねらっているのですが、猿が先に獲ってしまうので口にしたことがありません。しょうがないですね、この森の主は私たちではなく彼らですから。

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森は鳥の幼稚園

2018年06月07日 | 野鳥
5月末の栃の森では鳥もいろいろ観察できました。まず、この日もあちこちから声が聞こえてきたミソサザイ。日本で最も小さい鳥なのに、大きな声でさえずります。



繁殖シーズンとあって、巣立ちしたばかりの可愛い幼鳥や家族づれも見られました。下の動画はシジュウカラの幼鳥。文字通りくちばしが黄色く、後頭部には産毛が残っています。小さい声で親鳥を呼んでいるようです。



キバシリも現れました。最初は1羽だけでしたが、次々に集まってきて合計4羽。親鳥2羽、幼鳥2羽の家族でしょう。兄弟か姉妹か、2羽が戯れるようにからんでいました。



嬉しいことに、アカショウビンもすぐ近くに現れました。私たちが歩くコースの左手で鳴いていた個体がすぐ近くの木に飛んできて止まり、頭上からあの独特の声が聞こえてきます。同行メンバー6人のうち2人はチラッと姿を見たようですが、私は確認できませんでした。
「せめて声だけでも」と思って、風景を被写体にして収録したのが以下。頭上の個体と、もう1羽の別の個体が鳴き交わしています。



このほか、前夜のキャンプ中にヤイロチョウが鳴いたり、珍しく林内をオオタカが鳴きながら飛んだり、いろいろ楽しませてくれました。
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