樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

炭焼き

2009年12月28日 | 森林保護
今年最後の森林ボランティアに参加してきました。今回の楽しみは、炭の掘り出し。
8月に間伐した木を10月に炭焼き釜で焼き、そのまま寝かせて2ヶ月後にようやく取り出すのです。炭焼き釜と言っても、ドラム缶を地中に埋めた簡易式。10月の炭焼きには参加できませんでしたが、他のメンバーは徹夜で火の守をしていました。


(地中に埋めたドラム缶の炭焼き釜。これは竹炭)

土を掘り返すと、4つの釜から真っ黒に焼きあがった竹炭と木炭が出現。ベテランメンバーがテスターで通電させて品質をチェックします。電気がよく通るほどいい炭なのだそうです。同じ釜なのによく通電するものとしにくいものがあります。材料にバラつきがあるということでしょうか。


(テスターで品質チェック)

木炭の材料はウバメガシではなく間伐した雑木なので、焼き上がった炭はとても軽く、打ち合わせても備長炭のような金属的な音はしません。
本物の炭焼き釜は700℃~800℃になるそうですが、ドラム缶式ではせいぜい400℃くらいなので備長炭は無理とのこと。それでもバーベキューなどには使えるので、会員に配られました。初めての炭作り体験はなかなかおもしろかったです。


(1釜でこれだけの炭が焼けました。これは木炭)

この日のもう一つの作業は、門松作り。森の中の作業所前に1対と、福祉施設にプレゼントする小さい門松を2対作りました。葉牡丹や生花はシカに食べられるので、作業所のものは竹と松以外は造花。それでも、立派な門松ができました。


(プレゼント用のミニ門松)

(高さ1.7mくらいの門松)

さて、新春を迎える準備ができましたので、当ブログもお正月休みとさせていただきます。今年も1年間ご愛読いただきありがとうございました。来年は7日から再開しますので引き続きお付き合いください。では、皆様よいお年を…。
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木のチーム名

2009年12月24日 | 木とスポーツ
以前、鳥の名前のスポーツチームをご紹介しました。「でも、まさか木の名前のスポーツチームはないだろう」と思っていたら、今年そんなチームがデビューしました。
アメリカでアメフトの新興リーグが誕生したのですが、その中にカリフォルニア・レッドウッズというチームがあります。Redwoodはセンペル・セコイヤの通称で、北米西部の山中に自生するスギの仲間。100メートル以上に成長する世界一高い樹木です。カリフォルニア州の誇りとしてチーム名に採用したのでしょう。


(California Redwoodsのロゴ。モチーフは樹皮かな?)

アメフトファンのツリーウォッチャーとしては嬉しい話ですが、この新興リーグ、8チームでスタートする予定が昨年の不況で大幅に縮小されて4チームのみ。いつまで続くのやら、心もとない船出です。


(関西森林総研の植物園にある本物のレッドウッド)

日本にも木の名前のチームがあるのだろうかと調べたら、ありました。まず、J1復帰を果たした「セレッソ大阪」はスペイン語で「桜」。大阪市の花であることがネーミングの理由のようです。


(セレッソ大阪の本拠地、長居競技場にあった看板)

同じくJリーグの「ヴァンフォーレ甲府」は、フランス語のvent(風)+foret(林)の造語で、武田信玄の風林火山に由来するそうです。しかも、ロゴには山梨県の県花フジザクラがあしらってあります。


(ヴァンフォーレ甲府のロゴ)

まだあります。バレーボールのチャレンジリーグ(Vリーグの2部)に「熊本FOREST LEAVES」というチームがあることを発見。熊本が「杜の都」であること、選手やスタッフを1枚1枚の葉に見立てたことからのネーミングだそうです。


(熊本フォレストリーブスのロゴ)

今までサッカーもバレーボールも興味なかったですが、これからはこの3チームを応援することにします。
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鹿退治

2009年12月21日 | 森林保護
鳥と樹を観察するために通っている「栃の森」では近年シカが増え、その食害によって下層植生(=薮)が消滅しつつあります。約15年間野鳥の調査を続けていますが、薮で繁殖する鳥は10年ほど前から激減しました。ウグイスにいたっては、以前は記録するのが面倒なほど出現したのに現在はゼロ。


(地面近くの植生は壊滅状態)

ここを研究林にしている京都大学は、シカの食害が生態系に及ぼす影響を検証するため大規模な調査を行っています。先日、その中間報告会が開催されたので友人と2人で聴講してきました。
さすが京大、シカの食害と植物の関係のみならず水質や水生昆虫、アリへの影響など研究発表は7件。シカが草や幼木を食べる→土壌が弱る→雨で土が流出する→水質が変わる→水生昆虫が変わるという複合的な自然改変が進んでいるようです。


(異様に増えているオオバアサガラ)

私の興味は樹木との関係。以前も書きましたが、いろんな幼木が食べられる反面、オオバアサガラやテツカエデなど特定の樹木はやたらに増えています。「鹿が好む樹と嫌う樹があるからだろう」という推測を確かめるために質問すると、「スギや常緑樹は食べない。オオバアサガラの葉には有毒物質サポニンが含まれている」とのこと。しかし、それ以上の傾向は不明のようです。
そう言えば、以前ご紹介した森の牧場でも牛はスギやヒノキ、ツバキは食べないと言っていました。


(シカが食べないテツカエデの葉)

しかし、同じ針葉樹でもハイイヌガヤは食べ尽くされてほぼ壊滅状態。舌にチクチク刺さるはずなのに、ハイイヌガヤは食べてスギは食べないのはなぜか。テツカエデを食べないのはなぜか。疑問は残ったままです。
この鹿の肉を商品として流通させ、経済効果によって鹿を減らそうという試みが行われています。その一つが、地元の猟師と京都大学が協力して商品化した「鹿カレー」。さらに、京大のレストランでは「鹿肉フェア」を開催し、カツレツとキーマカレーをメニューにしています。


(鹿肉を使ったレトルトカレー、1個700円)

鹿の報告会に参加する前に鹿を食べておこうと、友人と2人で入店。カツレツは売り切れなのでキーマカレーをいただき、帰りにはレトルトカレーを8個買い占めて鹿退治してきました。
アメリカでヘラジカを食べたことはありますが、ニホンジカは初めて。レトルトカレーは肉片を鼻先で嗅ぐと牛肉とは違う匂いがしますが、口に入れるとカレーの香辛料でクセが消え、普通の肉としておいしく食べられました。キーマカレーは、ちょっと期待はずれ。


(鹿肉と豆のキーマカレー、714円)

なお、シカが増えて食害が広がるのも自然の推移で、人為的に駆除するべきではないという意見もあります。
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木に宿る仏

2009年12月17日 | 木と宗教
先月、友人から招待券をいただいて「円空・木喰展」を観てきました。木喰(もくじき)は昨年の春に別の会場で観て ご紹介もしました が、円空は初めて。
木喰と同じように、民衆のために仏像を彫りながら全国を旅した人物で、生涯に12万体の仏像を彫ったと言われ、5000体以上が現存するそうです。


(ポスターの上が円空、下が木喰の仏像)

木喰と同じような仏像を想像していましたが、実際に観てびっくり。自由奔放というか、前衛的というか、「300年以上も昔の日本にこんなとんがった彫刻があったのか!」と衝撃を受けました。
例えば、1枚の木の表面と裏面に違う像を彫ったリバーシブルの仏像や、下の写真のように樹皮がついたままの幹に目や口を刻んだ仏像もあります。その飛躍した着想には何度ものけ反りそうになりました。(撮影禁止なので図書館で借りた本の写真を撮影してご紹介します)


(1674年作の御法神像、91.4cm。まるでモダンアート)

有名な仏師が彫る仏像はヒノキかクスノキと決まっていますが、円空は木の種類を選ばず、しかも朽ちた木や曲がった木、切り株まで使っています。「すべての木には仏が宿っている」という考えがあったからだそうです。


(1674年作の観音像。58.7cm)

上の写真のように、木の生地をそのまま生かした仏像もあります。下の写真の不動明王像は、頭のうしろの木目をそのまま炎として表現しています。こういう彫り方を「生成り」と呼ぶそうですが、むしろ「木成り」と書いた方が分かりやすいですね。


(1680年作の不動明王立像。88.5cm)

木喰は「微笑仏」と呼ばれるように柔和な表情が特徴ですが、円空はこの自由奔放さが魅力なんでしょう。仏像には無知な私ですが、円空のパワーには圧倒されました。
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環境フェスティバル

2009年12月14日 | 森林保護
京都府は毎年今頃、環境保護団体や環境ビジネス関連の企業を一堂に集めて「環境フェスティバル」を開催します。野鳥の会も毎回出展し、5年ほど前までは私もブースでお手伝いしていました。その後ご無沙汰していましたが、今回久しぶりに足を運びました。目的は鳥ではなく木。


(野鳥の会は恒例のブローチづくりや巣箱づくり)

最初に目を引いたのは廃材を再利用した家具。産廃処理の会社が元・家具職人の社員の特技を活かして、解体家屋から出る廃材をリサイクルするために始めた事業とのこと。
古民家に使われている木材は良質のものが多く、その職人さんによると「木材に寿命はありません。築100年以上の家屋に使われていた廃材でも削れば中はきれいなもの。それに木材は古くなるほど硬くなります」。年数が経つほど強度が増すのは確かなようで、法隆寺の心柱は建築後1300年の現在が最も強度が高いと言われています。


(産廃企業のブースに展示された再生家具)

もう一つ注目したのは、あるNPOによる「はじめての椅子」展。わが子の1歳の誕生日にプレゼントしたい椅子を京都産の木材を使って作ろうというコンテストで、思い思いの可愛い椅子が並んでいました。お遊びコーナーにはたくさんの木片が用意され、子どもたちが自由に積み木で遊んでいます。


(「はじめての椅子」展の出品作)

(積み木コーナー)

また、ある木材組合のブースでは、木材の含水率を計る機械を触らせてもらいました。同じ板でも表と裏で含水率が違うんですね~、知らなかった。


(ワンタッチで木材の含水率が計れるメーター)

木とは関係ないですが、最も驚いた展示は電気自動車。下の写真は大正6年に島津源蔵(島津製作所の2代目社長・日本電池の初代社長)がアメリカから輸入した自動車で、自社製の鉛蓄電池を積んで社用車として30年間愛用していたそうです。



しかも、長らく本社ロビーに展示されていたものを復活させることになり、今年の5月に走行可能な電気自動車として修復したとのこと。現在、ハイブリッドカーの次のエコカーとして電気自動車が期待されていますが、京都では90年前にすでに走っていたんですね~、知らなかった。
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コントラバス

2009年12月10日 | 木と楽器
日本最大の楽器メーカー・ヤマハはバイオリンとビオラとチェロは製作していますが、コントラバスは作っていません。そのトップメーカーは、意外にも宇治市にあります。
以前から製造現場を見学したいと思っていたところ、仕事場にお邪魔しなくても見られる機会ができました。ヒガシ弦楽器製作所の代表者・東澄雄さんが宇治市の技能功労者として表彰され、その会場で実演されるというので見に行ってきました。



大きなコントラバスの裏板を足で抱え、小さな鉋で削っておられる姿はいかにも職人。部分によって4~5ミリから8~9ミリの厚さに削り分けるそうです。
ベニヤ合板による30万円くらいのものから、100万円以上の本格的なものまで、6人の職人さんで月に30台~40台生産されるとか。


(100万円クラスの本格派)

木材マニアとしては材質が気になるところで、バイオリンと同じく、表板はドイツトウヒ(スプルース)、裏板と側板はイタヤカエデ、指板はコクタンだろうと予想していました。しかし、東さんに尋ねると、表板はアラスカ産のスプルースとのこと。ヨーロッパにはコントラバスに使えるだけの大きなスプルースがないそうです。


(表板はアラスカ産スプルース)

裏板や側板、ネックは普通のカエデ。イタヤカエデは硬過ぎるそうで、何カエデかまでは分かりませんが、日本産のカエデということですから北海道あたりに自生する大径木のカエデでしょう。指板のコクタンはバイオリンと同じ。
よく似た楽器なのに、大きさが違うために使用する木材も微妙に異なることが新たな発見でした。


(東さんの道具)

実際に弾いて音を披露された息子さんに素朴な疑問をぶつけたところ、クラシックで使うコントラバスとジャズで使うウッドベースは全く同じとのこと。一方は弓で、一方は指で弾くので、プレーヤーの調整方法は違うそうです。


(バイオリンのルーツ、ビオラダガンバも製造されています)

当日、技能功労者として表彰されたのは17人。宇治ですから製茶はもちろん、左官、造園、大工、理美容など職種もさまざま。その中でも 楽器製造というのは珍しい職種です。
ヒガシ弦楽器製作所のwebサイトはこちら
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仏像とガンダム

2009年12月07日 | 木と宗教
大阪の百貨店で開催された仏像の展示販売会に行ってきました。と言っても、目的は仏像ではなく、客寄せに展示されている木彫りのガンダム。
今年の春、放送30周年を記念して東京のお台場に等身大(18m)のガンダムが建てられたそうで、40才前後の男性には懐かしいでしょう。木彫りのガンダムはその100分の1の20cmくらいですが、仏師がガンダムを彫ったというのが面白い。


(木彫りのガンダム)

版権をクリアするためにディテールも原作に忠実に仕上げたそうです。値段は意外に安く、50,400円。材はダンボク。初めて聞く名前なので調べたら、シベリアで産出されるポプラだとか。
会場には他にも懐かしいキャラクターが並んでいました。ゴジラやキングギドラは恐竜らしい皮膚や歯など細かい部分も丁寧に彫ってあります。


(精巧に彫られたゴジラ)

(彫るのが難しそうなキングギドラ)

ゴジラやキングギドラは記憶にありませんが、はっきりと映画を見た覚えがあるモスラも展示してありました。1961年に封切られたそうですから、約50年前。双子の歌手のザ・ピーナッツが小人に扮して「♪モスラ~や、ドンガッタ~」と意味不明の歌を歌っていましたっけ。


(モスラは蛹も彫ってあります)

この3怪獣はいずれもケヤキ材で、値段は315,000円。細工が細かい分、ガンダムよりも高いのでしょうね。
こういう懐かしいキャラクターを仏像と一緒に展示するのはなぜでしょう。多分、40代以上の人たちがそろそろ仏壇を作ってご先祖を祀る時期になったからではないでしょうか。仏師自身にとっても懐かしいモチーフだからかも知れません。



本来の展示目的の仏像も紹介しておきます。上の聖観音菩薩像はツゲ材で168,000円。怪獣より少し小さい程度ですが、値段は半分です。怪獣は手間がかかるのと版権代が含まれているからでしょうか。
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目白張り

2009年12月03日 | 木造建築
以前、近くのお寺にある鶯張りの廊下をご紹介しました。人が歩くと音が鳴って侵入者を防ぐという武家屋敷特有の造りです。「あの仕組みはどうなっているのかな~」と思っていたところ、二条城で見られると知って行って来ました。


(二条城は世界遺産)

国宝の二の丸御殿は重厚な造りや豪華な欄間、狩野派の障壁画など見応えのあるものばかり。大勢の人が歩くので、廊下は常にキュルキュルと鳴っています。
「ウグイスというよりヒヨコに似ている」とある観光客。「なるほど、ピヨピヨとも聞こえるな~」と感心しながらもバードウォッチャーとしてのプライドが湧いてきて、もっと正確に識別しようと耳を澄ませた結果メジロと同定しました。人や敵が近づくと、メジロはこんな警戒音を出して仲間に知らせます。


(二の丸御殿は国宝)

花札の「梅にウグイス」は「梅にメジロ」の間違い、ウグイスの体色はウグイス色ではなく茶色でメジロの体色がウグイス色、というのはバードウォッチャーの常識。昔の人はウグイスとメジロを混同していたようなのです。
それと同じく、キュルキュルと鳴くメジロをウグイスと思い込んで「鶯張り」と名づけたのであって、本来は「目白張り」というのが私の新説。しかも、侵入者が近づいたときの警報をメジロの警戒音に例えたのではないでしょうか。(ちょっと穿ち過ぎかな?)


(二の丸御殿の外廊下))

撮影禁止の内部を見学した後、外の廊下に潜り込んでチェック。その仕組みを見て驚きました。廊下の板と根太は釘で固定せず、下の写真のように金具で引っ掛けてあるだけ。板に体重が掛かるとわずかに上下し、木が擦れて音が鳴るようにしてあるのです。
廊下の板には金具の爪を引っ掛ける小さな溝が彫ってあります。板1枚に2ヶ所の溝を彫り、専用の金具で爪を掛け、根太とゆるやかに固定する。撮影したのは外廊下で、見学で歩いたのは内廊下。二重の廊下すべてにこんな手間のかかる細工がしてあるのです。恐るべし、日本の技!


(鶯張りの仕組み)

内部を歩いているとメジロ(?)の声が聞こえると同時に、築後400年の今でもヒノキの香りが漂っています。石やレンガの建築物では音や臭いを生かすことはできないはず。この御殿は強度や耐久性という構造上の特性だけでなく、人間の聴覚や嗅覚も計算して造られていることに気づきました。恐るべし、木造建築!
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