樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鳥類学とノーベル賞

2019年10月31日 | 野鳥
昨年の本庶佑さん(生理医学賞)に続いて、今年は吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞されます。バードウオッチャーとしては、「野鳥の研究でノーベル賞を受賞した人はいないのかな?」と気になります。
多くのバードウオッチャーも知りませんが、“鳥類学者のノーベル賞”と呼ばれる賞があります。1967年に国際鳥類保護会議(ICBP)が設けた「デラクール賞」。ノーベル賞のように毎年授与されるわけではありませんが、第4回(1977年)に山階鳥類研究所を創設した山階芳麿博士が受賞しています。
では、本当のノーベル賞を受賞した鳥類学者はいないのでしょうか?
実は、一人だけいます。1973年、オーストリアの動物学者コンラート・ローレンツが、カール・フォン・フリッシュ(ミツバチの研究者)とニコ・ティンバーゲン(イトヨの研究者)の3人で共同研究した「個体的および社会的行動様式の組織化と誘発に関する発見」でノーベル生理医学賞を受賞しています。


ハイイロガン(Public Domain)

ローレンツは鳥類学というよりも動物行動学が専門ですが、自宅でハイイロガンを飼い、鳥は卵からかえって最初に目にした相手を親と認識する「刷り込み」を提唱したことで知られています。
その著書『ソロモンの指輪』を読むと、興味深い鳥の習性や驚くべき事実が記されています。例えば、自宅で多くの鳥や動物を放し飼いにしていたので、奥さんは幼い娘がワタリガラスなどに襲われてケガしないように、鳥ではなく娘を檻に入れて育てたそうです。



ローレンツは上述の“鳥類学者のノーベル賞”デラクール賞も受賞しています。というよりも、この賞が創設された1967年(第1回)の受賞者がローレンツ。その6年後に本当のノーベル賞を受賞したわけです。いわば、ノーベル賞を2回受賞した動物学者です。
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栃の森の動物たち

2019年10月25日 | 野鳥
前回、栃の森の木の実をご紹介しましたので、今回は動物編です。
まず、いつものキャンプ地に向かう途中、麓の集落でイノシシの子供2頭に出合いました。イノシシ自体もそうですがウリ坊に出合うのは久しぶり。
小川が増水しているためにルートを迂回しましたが、その林道でスギの熊剥ぎを発見。しかも、5~6本連続して皮がはがされています。



林内ではミズキに熊剥ぎの痕がが多いですが、ここではスギが狙われています。ミズキやスギの内皮は甘いのかな?
同じ林道でサワガニを発見。本人は威嚇しているようですが、可愛いですね。



もちろん鳥も観察しました。まず、ノビタキ。京都府では春と秋に見られる旅鳥で、これから南へ帰るところです。



冬鳥もすでに大群がやってきました。この森では鳥獣保護区の調査も兼ねているのですが、対照区の調査でアトリらしき30羽ほどの群れを確認しました。
また、栃の森でもマヒワの100羽ほどの群れに遭遇。もうすぐ、京都市内にも降りてくるはずです。
一足早く冬を感じる森歩きでした。

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木の実を探して

2019年10月17日 | 樹木
3連休の後半、3カ月ぶりに栃の森へ行ってきました。台風19号のために一旦は中止し、予約したレンタカーもキャンセルしたのですが、東へそれたので予定通り決行となりました。
京都府南部は風も雨も大したことはなかったものの、栃の森周辺は雨が多かったようで、いつものコースにある小川が増水して渡れないので迂回しました。
時節柄、木の実に注視して歩きましたが、今年は不作のようでほとんど目立ちません。ツキノワグマが京都市内まで降りてきたのも、山の餌が少ないからでしょう。
例年、鮮やかな色で目を楽しませてくれるサワフタギも、写真のように実付きがまばら。落果したわけではなく、ほとんど結実していないようです。



迂回した林道を歩くのは約10年ぶり。いつもと風景が違うので新鮮でした。その道に赤い実が点々と落ちていて、仲間から「これ何の実?」と質問されましたが、即答できなかったので帰宅後に調べたらアオハダでした。



当日は雨が降ったり止んだりのうっとおしい天気で、傘を差したりしまったり、カメラのカバーを付けたり外したり…。ようやくナナカマドの実を見つけた時はガスっていて、スッキリしない画像になりました。



エゾユズリハも例年にくらべると実が少なく、林道脇に株がたくさんあるのに、実は探さないと分からないくらい。



そんな中、なぜかサワシバだけはたくさんの実をつけていました。シデ類の実は動物の餌にはならないので、森の住人たちは誰も喜ばないでしょうが…。

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タマシギのミニ・ハーレム

2019年10月10日 | 野鳥
干拓地のほとんどの農耕地で水が抜かれたので、今季のシギ・チドリ観察は終了です。年々休耕田が減少し、鳥たちには不利な環境になってきました。そのためか、昨年は1枚の休耕田でタマシギが3組繁殖したので、「タマシギのハーレム」と名付けて当ブログでもご紹介しました。
その傾向は今年も継続していて、1枚の休耕田に2組が繁殖しているところを目撃しました。



タマシギは一妻多夫という珍しい習性を持ち、子育ても雄がします。この休耕田では1羽の雌が2羽の雄とつがい、2組の家族が同居していたわけです。昨年の3組とは規模が小さくなりましたが、他のバードウオッチャーの話によると、同じく2組が繁殖した休耕田がほかにも2カ所あったようです。
規模は小さくなったミニ・ハーレムが3カ所存在していたわけです。それだけ、繁殖にふさわしい場所が少なくなったということでしょう。
来年はどうなるのか? ちょっと心配です。
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ミ二・ホットスポット

2019年10月03日 | 野鳥
相変わらず、調査を兼ねて近くの干拓地でシギ・チドリ観察を続けています。昨年、1枚の休耕田に多くの種類の鳥が集まったので、私が勝手に「ホットスポット」と名付けて当ブログや野鳥の会の会報で報告しました。
今年はその休耕田が水田に戻ってホットスポットはなくなったのですが、先日、別の休耕田に数種類の鳥がいるのを発見しました。いわば、ミニ・ホットスポット。
まずは、トウネン。小さいシギで、チョコマカと動く姿がかわいらしいです。



ムナグロも1羽入っていました。幼鳥なので和名のように胸は黒くないですが、英名Golden Ploverの由来を納得させるように、体全体が金色がかっています。



ムナグロの動画の最後に映っていたのはコチドリとセイタカシギ。「田園の貴婦人」と呼ばれるセイタカシギは今年初めて。今シーズンはセイタカシギの飛来が少なく、「今年は合えないかな」と半ば諦めていましたが、ようやく遭遇できました。



周囲に誰もいない田園で、一人でのんびり、じっくり鳥を眺めていると、時間が経つのを忘れます。至福のひとときを過ごしました。
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