樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

木質バイオマス

2012年07月30日 | 木の材
先日、京都の環境NPOが開催したセミナーに参加してきました。そのタイトルは、「100%再生可能へ!欧州のエネルギー自立地域」。
再生可能エネルギーの先進国ドイツとスイスの事例を、それぞれの国に在住する日本人ジャーナリストが報告するというセミナーです。
樹木マニアとして関心があったのはドイツにおける木質バイオマス。林業地で木材を搬出した後に残る枝や倒木を「林地残材」と言いますが、これを薪やペレット、チップなどの燃料にしたのが木質バイオマス。ドイツではかなり効率的にその有効利用が進んでいるようです。


施業林ではないですが、近くの森にある林地残材

逆に、林地残材を回収し過ぎたために、森の栄養分が減少し、次の樹木が育たないという弊害も出ているとか。それを防ぐために、伐採した木の先7cmは切り捨てて森に残すというルールが決められたそうです。日本ではそこまで有効利用されていないでしょう。
木質バイオマス以外の再生可能エネルギーにも興味があって参加しましたが、驚いたのはスイスの事例。都市部にある未利用エネルギーの活用が進んでいて、例えばゴミ焼却場の排熱は地域暖房として有効利用することが義務付けられているそうです。さらに、生(なま)電気暖房、つまり電気ストーブとかエアコンなど電気で直接熱を得る暖房は使用禁止とか。
「ヨーロッパの人々は環境意識が高いからそんなことが実現できるんだな」と思っていましたが、そうではないそうです。モチベーションは、やはりお金、経済。
原油や天然ガスをアラブ諸国やロシアから買えばお金が外に出ていく。その金を自分たちの国や地域で回るようにすれば地域経済が潤い、雇用も生まれるという考え方なのだそうです。
モチベーションが経済という意味では同じかも知れませんが、原発で痛い目に遭っていながら凝りもせずに同じエネルギーを選ぼうとするどこかの国と違って、2歩も3歩も先を行っています。
ちなみに、昨日京都で行われた反原発デモに参加してきました。東京では毎週金曜日に行われているそうですが、そのきっかけをつくった関西電力の管内に住む私たちが連帯しないと申し訳ないと思って…。


関西電力京都支店前を周回するデモ


最もインパクトのあるコスチュームの参加者。彼は東京のデモにも参加したそうです。

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サッカーと鳥

2012年07月26日 | 野鳥
初めて実物を見て度肝を抜かれた鳥がいくつかあります。その一つがサンコウチョウ。
事前に図鑑で知ってはいたものの、目とクチバシがコバルトブルーの鳥が異様に長い尾羽をヒラヒラさせながら飛んでいる姿を見た時は、「日本にこんな鳥がいるのか!」と衝撃を受けました。
先日、その鳥に久しぶりに会えました。



木の葉で少し隠れていますが、さえずりも収録できました。



この声が「月日星ホイホイホイ」と聞こえるので「三光鳥」。和名もなかなかですが、Paradise Flycatcherという英名も魅力的です。
このサンコウチョウが、あるサッカーチームのシンボルマークになっています。サッカー王国・静岡県のジュビロ磐田。しかも、ご丁寧に鳴き声の月と日と星も描かれています。採用の理由は、静岡県の県鳥がサンコウチョウだから。



私はサッカーに無関心ですが、調べてみると、鳥をマークやキャラクターに採用しているチームがけっこうあります。
北から、コンサドーレ札幌(シマフクロウ)、ベガルタ仙台(イヌワシ)、アルビレックス新潟(ハクチョウ)、東京ベルディ(コンドル)、横浜マリノス(カモメ)、ファジアーノ岡山(キジ)、サガン鳥栖(カササギ)など。実在の鳥ではないですが、地元の京都サンガも鳳凰と不死鳥をマークやキャラクターに使っています。
そもそも日本サッカー協会のシンボルマークが3本足のカラス。80年ほど前に制定されたそうですが、その由来はよく分からないそうです。



3本足のヤタガラスは熊野那智大社のシンボルで、日本のサッカーの生みの親である中村寛之助が熊野地方出身だからという説や、平安時代の蹴鞠の名人・藤原成通が技の奉納に訪れたからという説もあるようです。
サッカーと鳥、意外にも深いつながりがあります。中でも、鳴き声まで描かれているジュビロ磐田のサンコウチョウは、バードウォッチャーの好感度が最も高いのではないでしょうか。
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うるさい鳥

2012年07月23日 | 野鳥
美しい声で鳴く鳥はたくさんいますが、そうでない鳥もけっこういます。濁った声のカケス、けたたましいコジュケイ、どこに行っても「ピーヨピーヨ」とうるさいヒヨドリ。そして、夏になると河川敷で「ギョギョシ、ギョギョシ」とさえずるオオヨシキリもその仲間。



昔の人はオオヨシキリをその鳴き声から「行々子」と呼んでいましたが、「仰々しい」というニュアンスも含めていたのではないでしょうか。しかも、この鳥は夜中にも鳴きます。
「行々子」は俳句では夏の季語。例えば、芭蕉には次の1句があります。
能なしの眠たし我を行々子
「何の能もない上にただ眠たいだけの私に、オオヨシキリが鳴きたてる。お願いだから静かに寝させておくれ」というような意味らしいです。
この句は『嵯峨日記』に収められているので、当時の嵐山周辺ではオオヨシキリがたくさん繁殖していたのでしょう。芭蕉にとっては、昼も夜も鳴いて安眠を邪魔するうるさい鳥だったわけです。
一茶も次の俳句を残しています。
行々子大河はしんと流れけり
こちらは、オオヨシキリのうるさい声と静かに流れる川を対比させた句。
夏の暑い日差しが照りつける河川敷ではヨシが緑色に茂り、その中から「ギョギョシ、ギョギョシ」の声が聞こえる。その横で、川の水は音もなくゆったりと流れている。そんな風景が思い浮かびます。
オオヨシキリの声は確かにうるさいですが、その鳴き方には愛嬌があって、私は嫌いではないです。
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ファッションと鳥

2012年07月19日 | 野鳥
アメリカにオーデュボン協会という自然保護団体があります。日本でいえば「日本野鳥の会」ですが、会員数ではあちらの方が1桁多いです。この協会のシンボルマークはダイサギ。



ダイサギをはじめ白いサギは、繁殖期になるとレースのような美しい羽で身を飾ります。19世紀のアメリカでは、この飾り羽が女性の帽子や洋服などのファッション材料として高価で取り引きされたため、ダイサギが乱獲されました。
その結果、個体数が95%も減少。それを防ぐために全米に保護運動が拡大し、オーデュボン協会が設立されるきっかけになりました。マークの由来もここにあります。
下は今年の4月末に撮ったダイサギ。腰にレースのような飾り羽があります。



ファッションと野生動物との関係では、最近は毛皮がやり玉に上げられ、不買運動が広がっています。あのレディー・ガガも「毛皮を着るくらいなら裸で歩く」と、彼女らしい過激な表現で反対しています。
その一方、象をシンボルマークにしたHUNTING WORLDというバッグのブランドがあります。象を撃ち殺すことを看板に掲げているわけで、私は以前から「無神経なブランドだな」と嫌悪しています。自然や野生動物を保護しようという考えを少しでも持っている人は絶対買わないでしょうね。

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『ビッグボーイズ』

2012年07月16日 | 野鳥
以前ご紹介した、バードウォッチャーが主人公の映画『ビッグボーイズ』を観てきました。
私はシニア料金(1000円)で入場できますが、前売り券(1300円)を買うと非売品のパンフレットがもらえるというので、そうしました。


非売品のパンフレット(B5版・16ページ)

昔は観る映画すべてのパンフレットをコレクションしていましたが、今はもうやめたので、手にしたのは久しぶりです。映画のパンフレットで最も値打があるのは、撮影の裏話を記したプロダクションノート。
しかし、このパンフレットにはあまりおもしろい話が書いてありません。気温が-29℃のユーコン(カナダ)から44℃のフロリダまで100カ所のロケーション撮影をわずか55日で完了させたとか、監督が「野鳥観察と映画製作は似ている」と言ったとか、いまいちの内容でした。
以前にも少しご紹介しましたが、仕事も家庭も放り出して、1年間全国を飛び歩いて700種類以上の鳥を見るというストーリー。言わば、バードウォッチャーの夢が繰り広げられる映画です。
中には、たった1種類の珍鳥を見るためにヘリコプターをチャーターするシーンもあります。うらやましいというか、あきれるというか。いずれにしてもバードウォッチャー必見の作品です。
私は原作も読み、字幕なしのDVDも観たのでストーリーは分かっているのですが、それでも楽しめました。映画としてもそこそこの出来だと思います。
映画館のロビーでは「日本野鳥の会大阪支部」による野鳥写真のパネル展示が行われていました。



初日の第1回上映でしたが、入場者は意外に少なく40人程度。やはり中高年が多いです。
シネマート心斎橋では日本野鳥の会の会員証を提示すると、一般1,800円が1,000円に割引になります。しかも、同伴者も1,000円で、何人でも可。あまり使う機会のない会員証なので(笑)、こういうときに活用しましょう。
シネマート心斎橋のwebサイトはこちら。上映は7月27日まで。

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木の実木のまま

2012年07月12日 | 樹木
先週末、いつものように栃の森に行ってきました。前回に続いて雨でしたが、野鳥の生息調査が主目的なので中止はしません。
その調査は他のメンバーに任せて、私は例によって樹木観察。花の季節がほぼ終わったので、今回はその後の結実に注目して観察しました。
一般的には、花ならサクラやツバキなど目立つもの、実ならウメやミカンなど食べられるものしか認識されていませんが、どんな樹にも花と実があります。
例えば、エゾユズリハ。名前の通り、葉に注目が集まる樹木ですが、ちゃんと実が成っています。



ブドウみたいでおいしそうでしょ?
先月に開花のピークを迎えていたヤブデマリも、装飾花が散り、本来の花は結実して小さな緑色の実を膨らませていました。



前回初めて撮ったホオノキの花も、3週間後の今回は花弁を落として実になっていました。ホオノキなどモクレン科の樹木は植物史的に最も古い樹木で、結実方法も珍しいようです。



気になったのは、若いまま落ちている実が多いこと。下の画像はトチノキの若い実。本来ならピンポン玉くらいになってから落ちますが、パチンコ玉くらいの小さな実があちこちに散乱していました。



木に成ったままの木の実は下の写真のようにわずかです。



オニグルミも、通常なら鈴なりに成るのに、ご覧のようにまばらです。今年の秋は木の実が少なく、森の動物や冬鳥たちが苦労するのではないかと心配になりました。



「木の実木のまま」などとオヤジギャグを言ってる場合ではないかも。

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木ムリエ

2012年07月09日 | 木の材
検定ブームがまだ続いているのでしょうか、「木力(もくりょく)検定」というWebサイトを見つけました。樹木マニアとしては、当然トライしなければなりません。
初級と中級があり、それぞれ20問が出題されます。初級で14問以上正解すれば「木ムリエ」、中級で14問以上正解すれば「ウッドコンシェルジュ」の称号が与えられます。
私は初級では17問正解。「木ムリエ」を自称できるわけです。「中級も大したことないだろう」とタカをくくって挑戦したものの、えらく難しい。
木造建築の法律や大工さんの技術などかなり専門的な問題があって、とても歯が立ちません。結局7問しか正解できず落第。「ウッドコンシェルジュ」にはなれませんでした。
Web版に加えて書籍版もあるというので、意地になって即アマゾンに注文。こちらは100問あります。



「正解が50問以下なら、恥ずかしくてこのブログも閉鎖」と悲壮な決意でチャレンジしたところ、結果は73問正解。何とか面目が保て、ブログも継続できることになりました(笑)。
出題は「木力検定委員会」。20人の学者や専門家で構成され、吟味して問題が作成されているので、かなり本格的な検定です。
Web版にチャレンジしてみようと思う方はこちらでどうぞ。

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若いツバメ

2012年07月05日 | 野鳥
3年前に京阪電車の宇治駅を「ツバメの楽園」としてご紹介しましたが、今年は「関西の駅のツバメの巣を調査しよう」という呼び掛けがあったので、それに応じて久しぶりに観察してきました。
ツバメの巣は4個あり、そのうち2個でそれぞれ3羽のヒナが確認できました。その一つが下の動画。コシアカツバメの巣も6個ありましたが、うち2個はスズメが使っていました。



さて、ツバメと言えば、女性にとって年下の愛人を「若いツバメ」と表現します。なぜだろうと思って調べたら、おもしろいことが分かりました。
大正時代に日本の女性解放運動をリードした平塚らいちょうが若い画家と親しくなり、運動グループの中で問題になりました。気の弱いその画家は自分をツバメに例えて、「池の中で水鳥たちが仲良く遊んでいるところに、一羽の若いツバメが飛んできて大騒ぎになりました。池の平和のために若いツバメは飛び去ります」という手紙を残して実家に帰りました。
この一件以来、年下の男性の愛人を「若いツバメ」と呼ぶようになったそうです。
その後、平塚らいちょうは「ツバメなら春になれば帰ってくるでしょう」と返事を出し、彼を呼び戻して二人は共同生活を始めたとか。平塚は先進的な考えを持つ女性でしたから、普通の結婚ではなく事実婚を実践したのでしょう。
なお、「らいちょう」という名前は「雷鳥」とも書きます。気高く美しいライチョウに憧れてペンネームにしたということです。
ライチョウとツバメが恋人になったわけですが、実際の鳥の世界ではライチョウが生息するような高山にいるのはアマツバメでしょうね。

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JAZZとクチナシ

2012年07月02日 | 木と歌
近所にある世界文化遺産の宇治上神社には、境内が狭いにもかかわらず、なぜかクチナシが5~6株植えてあります。いつもはその枝に観光客がおみくじを結びつけるのですが、花が咲く今の時期は「触らないでください」という札がぶら下げてあります。


宇治上神社のクチナシは一重

このクチナシの花をシンボルにした歌手がいます。以前も一度取り上げたことのある女性ジャズシンガー、ビリー・ホリデイ。
彼女はステージに立つとき、いつもクチナシの花を髪飾りにしていたそうです。レコードジャケットにも、クチナシの花を髪に差した写真がよく使われています。


ビリー・ホリデイが飾ったクチナシは八重

ビリー・ホリデイがなぜクチナシの花を髪飾りにするようになったかについては諸説あります。その一つは、出番直前にカール用のコテで左側の髪を焦がしてしまったので、一緒に楽屋にいた歌手(カーメン・マクレエ)が急遽クラブの花売り娘からクチナシを買って髪飾りにしたという、身も蓋もないもの。
一方、クチナシの花言葉が「私は幸せ」なので、差別や麻薬で苦しんだ彼女がそうありたいと願って飾ったという、身も蓋もある説もあります。
単に、あの芳香をかぎながら歌いたかったからかも知れませんね。

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