樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

「岩絡み」と「山鳴らし」

2011年07月28日 | 木と言葉

今年は栃の森を訪れる度に花のピークに遭遇します。前々回はミズキ、前回はツルアジサイ、そして今回(710日)はイワガラミが満開でした。

9年前、静岡県に鳥見ツアーに出かけた際、名前のとおり岩に絡んでいるのを見たことがありますが、栃の森ではほとんどの場合木に絡んでいます。その姿がツルアジサイとよく似ていているので遠目では区別できませんが、ツルアジサイは花弁(装飾花)が4枚に対してイワガラミは1枚。開花時期も少し遅れます。

 

 

イワガラミ

 

イワガラミが満開の栃の森を出てキャンプサイトまでの林道で、ヤマナラシの葉が風にそよいでいる光景に出会いました。ヤマナラシの葉は微風でもヒラヒラそよぎます。動画で隣のミズメの葉の動きと比較しながら撮ってみました。

 

 

 

ヤマナラシの葉柄(葉と枝をつなぐ軸)は長くて、断面が上下方向に楕円形なので、わずかな風でも左右に揺れます。その葉と葉がぶつかって「カラカラ」と音を立てるので、「山鳴らし」と名づけられたそうです。

「岩絡み」にしても「山鳴らし」にしても、昔の人の命名のセンスには脱帽します。私も仕事で商品のネーミングを考えることがありますが、こういう観察眼から生まれる命名には説得力があります。

その一方、ヤマナラシと比較したミズメの別名は「ヨグソミネバリ(夜糞峰榛)」。その由来は不明ですが、枝の皮をはぐと漂うサロンパスの臭いが昔の人には悪臭だったのかも知れません。

この手の命名としては、草本にも「ヘクソカズラ(屁糞鬘)」とか「オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢)」があります。上品系・下品系いずれにしても、そのネーミングの着想や言葉の力に私は面白味を感じます。

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宇治市の鳥

2011年07月25日 | 野鳥

「宇治市民としては、やっぱりカワセミを撮っておかないと」と使命感に燃えて(笑)、近くの宇治川のポイントへ出かけました。カワセミは宇治市の鳥なのです。

その鮮やかなコバルトブルーから「飛ぶ宝石」と呼ばれ、この鳥に感動してバードウォッチングを始める人も多いようです。私が撮ったのは成鳥のオス(多分)。川面の光が反射して、レフ板のようにカワセミを照らしています。

 

 

 

この場所は実は、カワセミよりもヤマセミのポイントとして有名で、平日でも数人の写真家がカメラを構えています。私も撮ってきました。

ヤマセミは魚を獲るために川に飛び込みますが、この日は水浴びをするために何度もダイビングしていました。この動画でも一旦飛び出して、川で水浴びして、すぐに戻ってきます。暑い日だったので、熱中症対策だったのかも知れません。こちらは若鳥のようです。

 

 

 

夏鳥の季節になるといつも不思議に思うのは、カッコウ、ホトトギス、ツツドリ、ジュウイチは同じ仲間なのに鳴き声が全く違うこと。それでもこの4種は姿かたち、大きさ、色はほぼ同じです。

それに対して、カワセミ、ヤマセミ、アカショウビンの3種は、同じ仲間なのに鳴き声も大きさも色も違います。共通するのはシルエットくらい。

でも、バードウォッチャーや野鳥写真家の間で最も人気が高いのはこのトリオでしょう。そのうちの2種がほぼ同じポイントに現れる宇治川は恵まれた環境なんでしょうね。

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埼玉県の見識

2011年07月21日 | 森林保護

先日、鳥獣保護区の調査で京都府南部の山へ行ってきました。私の役目は鳥ではなく樹木のチェック。

住宅地から23km離れた小高い山で、頂上には展望台が設けられ、近くの住民がハイキングに訪れるような自然公園です。調べて愕然としたのは、あまりにも外来種や園芸品種が多いこと。「こんな山の中にわざわざナンキンハゼやシダレヤナギを植えなくてもいいのに」とため息が出てきました。

 

 

街路樹によく使われるナンキンハゼは中国原産

 

実は、私が所属する森林ボランティアの活動拠点である森林公園にもアメリカハナミズキやモクレン、ニワウルシなどが植えてあります。また、活動の一環として、野鳥観察小屋の前にピラカンサを植えたりしています。

見かねて、4月の総会では「森林公園に外来種を植えるべきではない」と生意気な意見を述べました。

 

 

最近問題になっているニワウルシも中国原産

 

街路樹によく使われているハリエンジュは、環境省が「要注意外来種」に、日本生態学界が「侵略的外来種ワースト100」にリストアップしています。繁殖力が強く、日本本来の生態系を撹乱する恐れがあるからです。移入されたのは明治時代ですが、100年以上経った今頃になってそのことが判明したわけです。

100年経たないとどんな影響が出るか分からないような外来種を、都市公園や庭はともかく、自然公園に植えるべきではないと私は思っています。琵琶湖にブラックバスを放すのと同じような危険性があるからです。

 

 

「アカシア」の別名を持つハリエンジュは北米原産

 

「そういう考えは偏狭かな?」と思っていたところ、埼玉県も同じ意見のようで、緑化用の樹木に関する厳しい基準を設けています。ハリエンジュ、ニワウルシ、トウネズミモチ、ピラカンサなどの外来種だけでなく、ヤツデ、カクレミノ、シュロ、オオシマザクラなど南方系の日本在来種もブラックリストに載せています。

また、アメリカハナミズキはヤマボウシに、マロニエはトチノキに、トウネズミモチはネズミモチに、ハクモクレンはコブシに、ボダイジュはシナノキに代替するよう勧めています。いずれも前者が外来種、後者が同じ仲間の在来種です。

さらに、植えるべき樹種をリストアップし、どんな場所にどんな樹を植えるべきかという指針を掲げています。

京都府も、いやすべての都道府県もこの埼玉県の見識を持つべきです。ハリエンジュやブラックバスのように、自然の中にはびこってからでは遅いですから。

埼玉県の自然環境課のページはこちら

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木の料理

2011年07月18日 | 木と飲食

今年、スペインの料理学会で「世界で最も影響力のあるシェフ20人」に日本人が選ばれました。その成澤由浩(なるさわよしひろ)さんのレストランでは、木を使った料理が食べられるそうです。

例えばパンは、白神山地で集めた天然酵母を使って、クリの木の粉を混ぜて焼くそうです。またスープは、森の土を炒めて湧き水を加え、長時間煮出して濾過した「土のスープ」。

さらに、木の皮を利用した器に、鹿肉の生ハム、木の実や果物のソースなど火を一切使わない料理を盛り合わせた「森の料理」が供されるそうです。デザートは、飛騨高山で採取されたニオイコブシ(=タムシバ)の芽を刻んで入れたアイスクリーム。

 

 

雑誌で紹介された「森の料理」

 

水にもこだわりがあって、湧き水にスギやナラを削った木片を浸した「森のエッセンス」が出てくるとか。

こういう話を聞くと自分でも試したくなります。先日、栃の森に行った際、デイパックにコップを忍ばせて奥まで歩き、せせらぎの水で試しました。近くに落ちていたスギの枝を削って、木片を入れない場合と入れた場合の水の味や香りをテストしてみました。

 

 

 

木片を入れなくても甘みのあるおいしい水でしたが、木片を入れて10分ほど経ってから飲むと、爽やかな香りが加わっていました。敢えて言うなら、大根を切ったときの匂い。味も少し甘みが増したように感じました。

「木と飲食」については一つのカテゴリーを設けていろんな話をご紹介してきましたが、料理としてここまで森や木にこだわって、しかもこんな著名なシェフが作っているというのは初めてです。東京へ行く機会があれば、ぜひこのレストランに行ってみたいです。

「レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ」のwebサイトはこちら

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動物虐待

2011年07月14日 | 野鳥

先日、仕事で宇治川の鵜飼を撮影しました。以前もご紹介しましたが、宇治川には2人の女性鵜匠がいます。

一人は「鳥が大好きで鳥といっしょに仕事がしたい」という澤木万里子さん。すでに10年のベテランです。もう一人は「長良川の鵜匠になりたかったけど、女性には門戸が開かれていないので宇治に来た」という岐阜県出身の江崎洋子さん。

 

 

 

この日は澤木さんが鵜舟に乗って、約50人の観客に鵜飼を披露しました。鵜飼の鵜はウミウで、ペリカンの仲間であることなどを説明されていました。

ちょうどその日、三重県桑名市の「上げ馬神事」で馬を虐待した容疑で係員が書類送検されたというニュースが流れました。本番前のバックヤードで、馬を興奮させるために足で蹴ったり、棒で叩いたりしたそうです。

しかし、坂道を一気に駆け上って壁を越えるという本番の方が苛酷で、失敗して転げ落ちたり、ケガする馬もいます。以前から指摘されていたのか、今年は壁の高さを2mから1.5mに下げたそうです。

そのニュースを見て、「同じ伝統行事である鵜飼も広い意味では動物虐待ではないのか?」と疑問になりました。首に紐をつけて、獲った魚を人間が横取りするわけですから、虐待ではないにしてもいじめみたいなものです。

もちろん鵜匠はウミウに愛情を持って接しています。下は準備の映像ですが、鵜は喉を親指で撫でてやると落ち着くそうで、その撫で方も鵜匠の技の一つらしいです。

 私の鳥仲間は、タカを飼い慣らして芸を披露する鷹匠には批判的ですが、鵜飼を批判する声は聞きません。

 

 

 

さらに広げて考えれば、上げ馬神事に比べれば、意図的に興奮させて最終的には剣で刺し殺す闘牛の方が罪深いのではないか? アメリカのロデオはどうなんだろう? 鞭でたたいて走らせる競馬は? と次々に疑問が湧いてきます。

また、漁業以外の釣りは無益な殺生ではないか? とも思います。キャッチ&リリースを免罪符にする人がいますが、例えば山にトラバサミを仕掛けて、鹿がかかっているのを見て喜んだ後、罠を外して逃すのと同じで、最も残酷な動物虐待でしょう。釣り針の傷跡から菌が侵入して魚が病気になるという話も聞きます。

神戸に、珍しい鳥を飼い慣らして、客が餌を与えたり、腕にフクロウを止まらせたりする「花鳥園」という観光施設があります。「野の鳥は野に」をモットーとする日本野鳥の会の会員から見れば、とんでもない施設です。

でも、教育的機能を有する施設として動物園を認めるなら、同じ位置づけて許容すべきなのかも知れません。

人間と動物の関係、愛護と虐待、どこで線を引けばいいのか分からなくなってきました。

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源平

2011年07月11日 | 樹木

今年の4月、近所で白い花と赤い花を同時に咲かせている桜を発見しました。園芸品種でしかあり得ませんが、ネットで調べたところ予想どおり「源平桜」という名前でした。

源氏(白)と平家(赤)の旗の色から、昔の人は白と赤の組み合わせを「源平○○」とネーミングしたので園芸品種の名前にも多いようです。

 

 

源平桜(今年4月撮影)

 

野生種で白と赤の花を同時に咲かせる樹木はハコネウツギくらいでしょう。別名はやはり「ゲンペイウツギ」。

この源平の花に関して疑問が湧いてきました。最初から最後まで白あるいは赤なのか? 途中から白が赤に、または赤が白に変色するのか? 

その疑問を解くために、近くのお家の庭にあるハコネウツギを定点観測してみました。以下、時系列に並べます。

 

 517

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 522

 

予想したとおり、蕾は白く、開花してから赤く変化するようで、そのスピードにバラつきがあるので、一見すると白い花と赤い花が同時に咲いているように見えるわけです。源平桜は定点観測を思いつく以前に散ってしまいましたが、下の写真のように花の一部が赤かったのは、白から赤への変色過程でしょう。

 

 

花の色が時期によって変化する身近な樹種、アジサイについても近所で定点観測して色の変化を記録してみました。

下のように、約10日間で白→青紫→赤紫へ変化しました。ゲンペイウツギと違って、花がほぼ一斉に変色するので青と赤の混在は見られませんが、花色が変わるという意味では同じ現象です。

 

 610 616 621

「土が酸性なら青い花、アルカリ性なら赤い花が咲く」と思っている人が多いようですが、そんなに単純ではないようです。最初から最後まで赤または青という個体もあれば、上の写真のように変色する個体もあります。アジサイの花言葉「移り気」はこの変色に由来します。さらに、わが家の庭にあるアジサイ(墨田の花火)は年によって白や青、赤に変わります。

以前にもご紹介したように、アジサイの色を決定する要因は科学的には解明されていません。園芸品種はDNAレベルで改質されているので、法則が一定しないのかも知れません。

話を源平に戻して、NHKの「紅白歌合戦」も昔風に「源平歌合戦」に変えた方がよくないですか? 

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アカショウビンとミソサザイ

2011年07月07日 | 野鳥

fagusさん、最近のブログ、鳥の動画ネタが多いから『樹樹日記』というタイトルを変えた方がいいんじゃないの?」と知人から突っ込まれましたが、ひるむことなく本日もいきます(笑)。

初夏の栃の森にバードウォッチャーとして期待するのは、やはりアカショウビン。南から渡ってくる赤い鳥で、日本ではかなり深い山に入らないと見聞できません。私が初めて見たのは20年ほど前、やはりこの森でした。

前回も今回も動画に収めようとカメラをかついで歩きましたが、残念ながら姿は見られませんでした。でも、鳴き声は何度か聞こえました。そのうちの一つをお聴きください。「キョロロロロ~」と音程が下がるのが特徴です。映っているのは前回ご紹介したハクウンボク。

 

 

 

姿は見られなくても、この声を聴くだけでバードウォッチャーは幸せになります。

そんなウキウキした気分でさらに奥へ歩いていくと、今度はミソサザイがさえずっていました。しかも、「ビデオで撮ってくれ」と言わんばかりに、長い間近くで鳴き続けています。

 

 

 

ミソサザイは日本で最も小さい鳥の一つ。体長(嘴の先から尾羽の先まで)わずか1011cm。それなのに大きな張りのある声で朗々と鳴きます。

多くのバードウォッチャーもそうでしょうが、私たちはこの鳥を「ミソサザイ」と呼ばずに「ミソ」と略します。「味噌」ではなく「小さい」という意味のようです。この森ではいつも見聞できる鳥ですが、この日は特に多く11羽が記録されました。

なお、この森は現在このコースからの入林が禁止されていますが、私たちは野鳥調査のために許可を得て入林しています。

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雲が落ちる

2011年07月04日 | 樹木

6月初旬に栃の森へ行ったときはミズキが満開でしたが、その2週間後に再訪したときはハクウンボクがピークを迎えていました。漢字で書くと「白雲木」。エゴノキの仲間ですが、エゴノキよりも花が大きく、密集して咲くので白い雲に例えたのでしょう

せせらぎの横に立つ1本からはその白い雲がたくさん落ちて、水に浮かんで花筏になっていました。得意の動画(笑)でどうぞ。

 

 

 

ミズキを紹介した「森の花園」でも同じようなことを書きましたが、今まで15年以上通ってこれほどたくさんのハクウンボクの花に出会ったのは初めて。と言うか、この森にこんなにたくさんのハクウンボクがあること自体、知りませんでした。

いつものコースを歩いていると、あっちに白い花、こっちの斜面にも白い花という具合に、行くとこ行くとこでハクウンボクがその存在をアピールしていました。

 

 

ハクウンボクの花のアップ

 

もう一つ見事だったのはツルアジサイ。巻きつかれているミズナラやトチノキにとっては迷惑な存在でしょうが、白い花がいっぱい咲いて、そのあたりだけひときわ明るくなっています。

 

 

 

このほか、6月初旬には開花していなかったのに、今回咲いていたのはウツギ、サルナシ、オオバアサガラ、コアジサイなど。2週間で森の中は初夏から夏へ変化したようです。

 

 

サルナシ

 

 

コアジサイ

 

5時にキャンプサイトを出発して折り返し地点に到着したのが1020分。ちょうど霧が立ち込めて幻想的な光景になりました。ここにも白い雲が落ちてきたわけです。

一人だったら心細いでしょうが、この日はいつものメンバーが全員そろっていたので安心でした。

 

 

 

なお、この森は現在このコースからの入林が禁止されていますが、私たちは野鳥調査のために許可を得て入林しています。

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