樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

建築物ウクレレ化保存計画

2011年09月29日 | 木と楽器

以前、高知県に面白い人がいて400種類もの木でスプーンを作ったことをご紹介しましたが、大阪にも負けず劣らず面白い人がいます。

解体される家をウクレレにして残すという活動をしているアーティスト、伊達伸明さん。先日、その伊達さんとギターデュオ・ゴンチチの片割れであるチチ松村さんのトーク&コンサートが大阪で開かれたので行ってきました。

 

 

左が伊達さん、右がチチ松村さん

 

伊達さんは京都市立芸大で木工を学んでいたときに楽器づくりに目覚め、卒業後は建築物そのものを楽器にすることに挑戦。その後、バブルの頃に古い建物が次々に解体されるのを目にして、楽器にして残せないかと考え、ウクレレを作ることを思いついたそうです。

たとえば次のウクレレは、2002年の大阪・中座の火災で類焼したバー「路」のウクレレ。表板はカウンターの天板、ネックはカウンターに取り付けてあったバー、ヘッドはインテリアの丸い刳り物を使っています。

 

 

ヘッド

 

作品に触れないので写真はないですが、裏板はカウンターの腰板で、お客さんの荷物をぶら下げる金属のホックがそのままついています。指板だけは別誂えのコクタン。

次は、新世界厚生会館のウクレレ。終戦後は引き上げ兵の一時宿泊所、その後は簡易宿泊所や民宿として使われてきた建物の正面玄関の扉で作ってあります。

 

 

 

表板は扉の蹴込板、側板とネックは扉の枠木、ヘッドは表札。写真はないですが、裏板は扉の窓ガラスで、ご丁寧に中には当時のカーテンも張ってありました。

ステージでは伊達さんが各ウクレレの経緯を説明しながら、チチ松村さんがそれを演奏するというスタイル。どれも音がちゃんと出ていました。このウクレレは裏板のガラスのせいか、ギターでいうドブロみたいな響きでした。

次の派手な1本は通天閣歌謡劇場のもの。リニューアルされる際に廃棄された建材やディスプレイを使っています。

 

 

 

表板はステージの上の壁紙と「通天閣歌謡劇場」の切文字の「天」、側板はステージの腰板、裏板は柱を剥いだ木材。出演者の看板札で作ったヘッドには、ステージの飾り物もついています。

いや~、世の中には面白い人がいるもんですね。

すでに60本以上のウクレレが完成していて、個人の家を解体する場合も1件約20万円でウクレレにして残してくれるそうです。

希望者は伊達さんのサイト「建築物ウクレレ化保存計画」までどうぞ。

コメント (2)

漁夫の利

2011年09月26日 | 野鳥

最近通っている干拓田にオグロシギが7羽やってきました。私がこの鳥を初めて見たのは、ちょうど20年前のこの場所、時期も全く同じ9月中旬。当時のフィールドノートには「クチバシがピンク、オグロシギ?」とメモしています。その時の感動は今も忘れていません。

2年後の93年にも同じ場所で、94年には東京の大井野鳥公園で、97年には北海道の濤沸湖で見たと記録していますが、記憶にありません。やっぱり初めて出会った時の印象がいつまでも残るんですね。

動画では7羽がそろって忙しく餌を食べています。これから東南アジアやオーストラリアへ渡るための栄養を蓄えているのです。この鳥はミミズなどの虫のほか、タニシや貝類をよく食べるようです。

 

 

 

二者が争っている隙に第三者が労せずに獲物を得ることを「漁夫の利」と言います。中国の故事に由来しますが、これには前段があります。

貝が殻を開けていると、シギがその肉をつついた。貝は殻を閉じてシギのクチバシを挟んだ。そのまま両者が譲らず膠着状態のところに漁夫がやってきて、貝とシギの両方を手に入れた、というのが本来のストーリー。正確には「鷸蚌(いつぼう)の争い、漁夫の利」と言うそうです。鷸は「しぎ」、蚌は「どぶがい」のこと。

 

 

 

実際に貝がシギのクチバシを挟んで離さない現象はあるようで、私が読んだ本にはハマグリがオオハシシギのクチバシをはさんだままぶら下がっている写真が載っていました。

中国の故事のモデルがオオハシシギかオグロシギかは不明ですが、20年ぶりに同じ場所で再会したオグロシギは日本画のように優雅な姿で、あらためて感動を与えてくれました。

コメント (2)

ダイエットした木

2011年09月22日 | 街路樹・庭木

京都市の川端通りの中央分離帯に異様に細長い木が植えてあります。車から初めて見たときは樹種が不明でしたが、しばらくして「例のアレではないか?」と気づきました。後日、確認のために撮影に行くと、やっぱりアレでした。

 

 

川端通りの丸太町以北の並木

 

元の樹形をご存知の方は驚かれるでしょうが、これはケヤキです。ケヤキは街路樹によく使われますが、上に伸びるほど枝が横に広がって、信号機を隠してしまいます。特にケヤキの並木道で有名な仙台市では交通の障害になっていたようです。

そこで、品種改良で横に広がらないケヤキをつくったのです。「武蔵野1号」とか「2号」という名前で各地に植えられていますが、ダイエットし過ぎた女性のようで、私には不健康に見えます。

下の写真はダイエット前の本来のケヤキの並木。トンネル状になってこちらの方がいい雰囲気ですが、信号機が見えなくなって安全上の問題があるのも事実。

 

 

京都の洛西ニュータウンのケヤキ並木

 

でも、それならわざわざ品種改良なんかしなくても、信号機を隠さない樹形の木を植えればいいのに・・・と私は思います。たとえば、三角形の樹形になるメタセコイヤとか枝を横に張らないポプラとかいろいろあるはずです。

食糧生産のためならしょうがないですが、信号機が見える・見えないといった程度の人間の都合で自然の摂理をいじくりまわすことには若干抵抗を感じます。

 

 

コメント (6)

千鳥と遊ぶ智恵子

2011年09月19日 | 野鳥

高村光太郎の詩集『智恵子抄』の中に「千鳥と遊ぶ智恵子」という1篇があります。

人つ子ひとり居ない九十九里の砂浜の

砂にすわつて智恵子は遊ぶ。

無数の友だちが智恵子の名をよぶ。

ちい、ちい、ちい、ちい、ちい――

砂に小さな趾(あし)あとをつけて

千鳥が智恵子に寄つて来る。

「千鳥」と言えば、私はコチドリを想起します。今の時期、近くの干拓田に行くと、必ずその可愛い姿を見せ、チョコマカと動いて微笑ませてくれます。

 

 

 

でも、この詩の舞台は海岸なので、内陸性のコチドリではないはず。「では、どんなチドリだったのだろう?」と気になって、私なりに推測してみました。

海岸の砂浜で群れを作るチドリと言えば、シロチドリ、ハマシギ、トウネンあたり。詩の中に「両手の貝を千鳥がねだる。智恵子はそれをぱらぱら投げる。」という一節があって、この3種は主に貝を食べるので、この点でも矛盾しません。

次に、「ちい、ちい」という鳴き声を手がかりに、手元にある鳥のCDを聴き比べて候補を絞りました。シロチドリとハマシギは「ちい、ちい」というよりも「ぴい、ぴい」。「ちい、ちい」に近いのはトウネンです。よって、智恵子が遊んだのはトウネンであると結論づけました。

トウネンは海岸だけでなく内陸にもやってくるので、近くの干拓田でも見られます。少数ですがここでも群れていることが多いです。

 

 

 

詩は以下のように続きます。

群れ立つ千鳥が智恵子をよぶ。

ちい、ちい、ちい、ちい、ちい――

人間商売さらりとやめて、

もう天然の向うへ行つてしまつた智恵子の

うしろ姿がぽつんと見える。

シギやチドリの声には哀愁があるので、心を病んでいる智恵子のこのせつない姿が余計に物悲しく見えます。

コメント (2)

びっくりドンキーは偉い!

2011年09月15日 | 木と飲食

環境関係の本を読んでいたら、エコに積極的な企業としてハンバーグレストランの「びっくりドンキー」を採り上げていました。

店によっては地中熱ヒートポンプを利用した空調システムでエネルギー使用量を通常のエアコンの1/3に抑えたり、水環境の悪化を防ぐために食器洗いに無リン洗剤を使っているそうです。

また、食器の一つとして、果実が採れなくなったマンゴーの老木や、北海道のシラカバの間伐材を使った木皿を使い、しかも傷がつくと塗りなおしてリユースしているとのこと。その木皿が見たくて、近くの店に行ってきました。

 

 

ワンプレートランチはその木皿で供されます

 

この程度のことは他の企業でもやっているでしょうが、さらに店から出る生ゴミをバクテリアで粉末にする処理機を126店舗に設置し、有機肥料として自家利用するほか、廃油をバイオディーゼル燃料にリサイクル。一部の地域では家庭の廃油も受け付けているそうです。

 

 

完食して木皿をじっくり拝見

 

また、こうした技術やノウハウを生かして、レストラン事業とは別に、温泉熱を利用した給湯・暖房システムや工場などの排熱を利用した省エネシステム、省エネの設計・施工なども環境事業も立ち上げています。

これを知るまでは、廃材やトタン板を打ち付けたバラック小屋風の“変な店”と思っていましたが、お見それしました。これからは時々利用させていただきます。

 

 

 

マンゴーもシラカバも木材は見たことないので、出された木皿がどっちのものかは分かりませんでした。

コメント (2)

舌を噛みそうな鳥

2011年09月12日 | 野鳥

近くの干拓田にちょっと珍しい渡り鳥がやってきました。まずは「水辺の貴婦人」と呼ばれるセイタカシギ。スリムな体と赤くて長い脚で優雅に動くのでこの別名がついたのでしょう。

 

 

 

東京湾にある野鳥公園には1年中生息しているので私も見に行きましたが、関西の内陸部で見られる機会は少ないです。この個体はオスですが、それでも「水辺の貴婦人」と呼びたい気品があります。

もう一つはアカエリヒレアシシギ。すでに冬羽なので、名前と違って襟は赤くないです。本来は海上のルートを飛んで東南アジア~シベリアを旅するので、内陸部でこの鳥が見られるのは珍しいです。

「アカエリヒレアシシギ」は舌を噛みそうな名前。早口言葉で3回繰り返すと「アカエリヒレハラホロ・・・」になりませんか?

 

 

 

そのアカエリヒレハラホロ・・・よりももっと舌を噛みそうなのはコアオアシシギ。以前ご紹介した「青脚鴫」の小型という意味です。人によって違うのかも知れませんが、私には日本の野鳥の中で最も発音しにくい名前です。

アオアシシギはよく見られますが、コアオアシシギは少なく、この広い干拓田でも今年は1羽しか発見されていないようで、運よく撮影することができました

 

 

 

それではみなさん、「コアオアシシギ」を早口言葉で3回繰り返してみてください。

コメント (8)

カツラの香り

2011年09月08日 | 街路樹・庭木

台風12号は広い範囲に甚大な被害をもたらしました。宇治は雨は大したことなかったですが、強い風が2日半吹き続けました。

こういう台風に備えて、ちょうど1週間前、わが家のシンボルツリーであるカツラを伐採しました。大好きなカツラを伐ることには抵抗があったのですが、屋根よりも高く伸びて、7月の台風ではかなり揺れていました。

倒れることはないでしょうが、すぐ前には電線が、横には光回線の引込み線が張られていて、もし線が切れたら近所に迷惑がかかるし、インターネットが使えなくなるので、泣く泣く伐ったのです。

 

 

伐採前

 

 

伐採後

 

10年ほど前に植えた時は小さな若木でしたが、伐った幹や枝がガレージいっぱいになるほどの量。「ホントに光と水と二酸化炭素だけでこんなに成長するのかな?」と改めて樹木の不思議を感じました。

 

 

カツラの残骸

 

これを細かく切って束ねて23日放っておくと、家の周りに甘い、綿飴のような匂いが立ち込めました。20mほど離れてもそれと分かるほどで、家の中まで漂ってきます。

カツラの葉が紅葉したり落葉すると甘い匂いがすることは知っていましたが、青葉でも乾燥すれば匂いを発するようです。

 

 

メジロの巣もありました

 

この甘い匂いの正体は、マルトールという物質だそうです。麦芽糖に熱を加えて焦がすと生成されるとか。だから綿飴の匂いと同じなんですね。

ケーキやお菓子、歯磨き剤の香料としても使われる天然化合物で、ネットで調べると、この甘い匂いを配合した「カツラ」という香水も販売されています。伐ったカツラからマルトールを取り出せば香料として売れたのに、もったいないことをしました。

カツラは小さくなりましたが、今年の秋には再び残った葉が甘い匂いを漂わせてくれるはずです。

コメント (2)

鳥の名の鳥

2011年09月05日 | 野鳥

前々回、アオアシシギとムナグロを例にして色の名前を持つ鳥のことを書きましたが、シギやチドリの中には鳥の名前を持つ鳥が多いことに気づきました。

例えば、次のヒバリシギ。ヒバリのようなシギという意味でしょう。そう言われれば、ヒバリに似た地味な鳥です。同じように、ウズラシギというシギもいます。

 

 

 

次の動画はタカブシギ。漢字で書くと鷹班鴫、タカのような模様があるシギ。この干拓田では、アオアシシギに次いでよく見られる中型のシギです。

 

 

 

そして、この干拓田の名物であるツバメチドリ。名前の通り、ツバメに良く似たチドリです。ほとんどのシギやチドリが水のある休耕田にいますが、この鳥は乾いた畑にいることが多いです。

 

 

 

このほか、イカルチドリという鳥もいます。外見は似ていませんが、命名の由来は小鳥のイカルでしょう。

鳥の名前を持つ鳥は以上5種のほかにキジバト、カラスバトがあります。なぜか、シギ・チドリとハトに集中しています。

コメント (3)

スプーンの森

2011年09月01日 | 木の材

高知県に面白い人がいて、369種類もの木を使ってコーヒースプーンやカレースプーンを作りました。それを地元の林業NPO84プロジェクト」が「木の種類‐スプーンの森‐」という冊子にしました。

その冊子がまた、全長10メートルの蛇腹折りという面白い形態。私も釣られて注文しました。家の廊下に広げて撮ったのが下の写真。往復してもまだ余っています。

 

 

 

作者のフクドメさんは、知り合いの人が作ったタンナサワフタギのスプーンに触った時に電気が走ったそうです。その象牙のような触り心地に心を奪われてスプーン作りを始めたとのこと。木の枝をナタで削り、ムクノキの葉で磨いてツヤを出すという方法で作っています。

それにしてもハンパじゃない数です。私が今までにツリーウォッチングした木の種類は、多分369種類もないと思います。

冊子を見ると、日本の自生種だけではなく、ワシントンネーブルとかフェイジョアなど外来種もあります。また「にいたかなし」とか「おきつ」など、聞いたこともなく、図鑑にも載っていないような木もあります。おそらく地方名でしょう。

 

 

 

スプーンは五十音順に並んでいて、たとえば上のページは左から、さわぐるみ、さわしば、さわふたぎ、さんごじゅ、さんしゅゆ、さんしょう、さんぽうかん、しきみ、しじみばな、しだれやなぎ。

「木の種類」というタイトルどおり木材図鑑としても使えますが、こういうものは「何かに使える」というよりも、ただ「面白い!」というだけで価値があるのだと思います。

84プロジェクトの「84」は高知県の森林面積比率が84%であることに由来します。高知県は林業県としても知られていますが、なかなか面白い人が多いですね。

84プロジェクトの「スプーンの森」はこちら

コメント (10)