樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

夏は来ぬ

2012年04月30日 | 野鳥
カモなど水辺の冬鳥はほとんど見かけなくなりました。今年の冬、数が少なかったツグミも、春先から目につくようになり、今もまだウロウロしていますが、そろそろ北へ帰る頃です。
この冬のツグミに関する調査では、関東では例年どおり、山地では例年より多く、関西でも標高の高い地域では例年どおりとのこと。また、各地とも木の実は豊作だったそうです。
これらのことから、山に餌が豊富にあったために、ツグミの南下が遅れ、関西では少なかったものの、2月下旬から目につき始めたということのようです。


この冬は珍鳥扱いだったツグミ(4月13日撮影)

そのツグミと入れ替わるように、南から夏鳥がたくさん渡ってきました。バードウォッチャーにとっては、早くも「夏は来ぬ」です。
今日はいつものようなウンチクはなしで、最近撮った夏鳥の動画をご覧ください。まずは夏鳥の定番、オオルリ。



続いて、オオルリのメス。オスは名前の通り鮮烈な青が魅力ですが、メスもつぶらな目がかわいいですね。



夏鳥のもう一つの定番はキビタキ。



いろいろな情報から判断すると、ツグミとは逆に、今年は夏鳥の到来が早く、しかも数が多いようで、嬉しい限り。


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庭の巣箱にシジュウカラ

2012年04月26日 | 野鳥
野鳥が活発に動く時期なので、樹木の話はしばらくお休みして、鳥の話題を続けます。
昨年の秋、3~4年ぶりに庭に巣箱を掛けました。その後、特に注意することもなく放っておいたのですが、今年になってもシジュウカラの姿を見かけないので、「気に入らなかったのかな」と思っていました。
ところが、先日2階の窓から何気なく庭を見た時、シジュウカラが巣箱に入る瞬間を目撃。しばらく観察していると、入れ代わり立ち代わり出入りしています。
すぐにカメラをセットし、録画したままその場を離れました。21日と25日の2回、1時間ずつ録画。25日の一部が下の動画です。



親鳥が巣箱に入った回数は、21日が10回、25日が9回。出る時に、ヒナの白い糞をくわえていることもあります。
21日は枝に止まって数秒で巣箱に入りましたが、25日は上の動画のように、枝でしばらく待ってから入るようになりました。ヒナが成長したので、警戒時間が長くなったのでしょうか。
過去にも何度か巣箱で繁殖した形跡がありましたが、その頃はカメラを持っていなかったので、特に気にすることもなく放置していました。でも、実際にシジュウカラがこうして庭の巣箱を利用してくれると、嬉しいですね。
「わが家の庭にも巣箱を…」という方のために、私が知っているコツをお教えします。
掛ける時期は秋から冬。この時期に小鳥は巣に適した場所を探すそうです。猫が登れないように下に枝のない木を選んで、雨を避けるためにやや下向きに掛けます。方角は北向きがいいそうです。
私はカシワの木に掛けましたが、シジュウカラにとっては目隠しになる常緑樹の方が安心かも知れません。ヒナが巣立った時の止まり木になるように、巣箱の前に枝があった方がいいと思います。
私が使った巣箱は日本野鳥の会オリジナルですが、直径3cm程度の(2.8cmと指定している本もあります)の穴があれば、手づくりのものでも大丈夫です。
秋になったら掛けてみてください。
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ガングロ

2012年04月23日 | 野鳥
1週間ほど前、近くの田園で数羽のノビタキがウロウロしていました。関西では旅鳥で、春と秋に通過します。
今の時期、オスは夏羽に変わって顔が黒くなっています。「顔黒(ガングロ)のノビ太君」と呼ぶバーダーもいます。



半年前、同じ田園で撮った冬羽のノビタキが次の動画。顔黒ではないので、同じ種類とは思えません。



夏を迎える前に顔黒になる鳥がもう1種います。下の動画は昨年12月に鴨川で撮った冬羽のユリカモメ。全身が白いので、気品が感じられます。



ユリカモメの「ユリ」の語源にはいくつかの説がありますが、私はこの白い首を開花前の白百合に見立てたのではないかと思っています。それほど優雅な印象があります。だから、昔は「都鳥」と呼ばれたのではないでしょうか。
一方、次の動画は、つい最近大阪の淀川で撮った夏羽のユリカモメ。優雅な鳥が一変して、ヒョウキンな鳥になってしまいます。



でも、私はガングロのユリカモメの方が好きです。美しいものよりヒョウキンなものに魅かれるのは、関西人だからかな?
夏に顔黒になる鳥は、この2種のほかにオオジュリンやズグロカモメがいます。


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「正直の神様」の嘘

2012年04月19日 | 野鳥
毎年1月25日に大阪の天満宮で「鷽替(うそかえ)神事」という奇妙な行事が行われます。
参拝客がウソという鳥の絵札が入ったお守りをもらった後、「替えましょう、替えましょう、嘘を真に替えましょう」と言いながら、お互いに交換し合います。
去年1年間についた嘘を、ウソに託して罪滅ぼしするわけです。交換した回数が多いほどご利益があるとされています。


本殿の前でお守りを交換し合う参拝客

交換会が終わり、お守りの封を開けて中に金色の鷽鳥が入っていると賞品が進呈されるという仕組み。似たような行事は各地の天満宮で催されているようで、絵札ではなく木彫りの鷽鳥を使う神社もあります。
大阪天満宮の説明によると、天神さん(=菅原道真公)は「学問の神様」であると同時に「正直の神様」でもあり、鷽鳥が天神さんの愛した梅の木に縁が深いために始まった神事だそうです。


鷽鳥神事のお守り。左の袋の中に右の鷽鳥が入っています

しかし、この「鷽替神事」には3つの嘘があります。
まず、ウソという鳥名の語源は「嘘」ではありません。ウソは「うそ吹く」という言葉があるように「口笛」の古語で、「フィー、フィー」と口笛のような声で鳴くことに由来します。
2つめの嘘は、お守りの絵。下の写真の実物と比べると、シルエットは似ていますが、色が全く違います。絵札のような鳥は、少なくとも日本にはいないです。



3つめは、梅の木に縁があるという嘘。ウソは桜の芽を食べる習性があって、各地の桜守りには嫌われる存在。桜には縁がありますが、梅には特に縁はないです。
目くじら立てるつもりはないですが、「正直の神様」の神事がこんな嘘だらけでいいのでしょうかね~(笑)。



なお、私は今シーズンはウソの動画や写真が撮れなかったので、いつもコメントをくださる札幌のguitarbirdさんにお借りしました。2枚目の写真は庭で撮影されたそうです。庭にウソが来るなんて、うらやましいですね。

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ミツマタ

2012年04月16日 | 木と歴史
少し前になりますが、散歩コースの花寺でミツマタの花が満開でした。
この木は中国原産で、紙の材料として日本に移入されたようです。英名はOriental Paper Bush、「東洋の紙の低木」。和紙にはこのミツマタのほか、コウゾやガンピも使われています。


名前の通り枝が三本に分かれています

洋紙の耐用性が100年程度であるのに対し、和紙は1000年以上持つとか。実際に、正倉院に最古の和紙である戸籍が残っていて、そこには大宝2年(702)と記されているそうです。
長持ちする理由は繊維の長さ。洋紙の原料であるパルプの繊維は、針葉樹で平均2.2ミリ、広葉樹で1.02ミリ。一方、ミツマタの繊維は3.2ミリ、ガンピは5.0ミリ、コウゾは7.3ミリ。繊維が長いと絡む部分が多いので、それだけ強い紙になるそうです。
ちなみに、世界最古の紙は中国の甘粛省で出土した地図で、紀元前150年頃のものらしいです。その素材も多分ミツマタでしょう。東洋の紙は2000年以上の耐用性があるということですね。
日本の紙幣には和紙が使われていますが、それを印刷している国立印刷局の周囲にはミツマタが植えてあるそうです。
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梅にウグイス

2012年04月12日 | 野鳥
今年、私がウグイスの初音を聞いたのは2月下旬でした。
あの「ホーホケキョ」は昔から日本人の心を強く捉えていたようで、清少納言も『枕草子』に次のように書いています。
「ウグイスは声もいいし、姿形もあんなに高貴で美しい。でも、宮中で鳴かないのはどういうわけだろう。10年ほど御所にお勤めしているのに、声を聞いたことがない。トビやカラスに見入ったり聞き入ったりする人はいないのに、ウグイスの声に聞き惚れるのは、春だけ鳴くからですね」。
声についての記述に異論はないですが、ウグイスの「姿形が高貴」というのは腑に落ちません。下の動画を見ていただければ分かりますが、ウグイスはチョコマカとよく動く落ち着きのない鳥で、「高貴」とは言い難いです。典型的なさえずりではないですが、声も入っていますのでお聴きください。



もう一つ気になるのは、以前から当ブログで指摘しているメジロとの混同。清少納言はこうも書いています。
「御所には紅梅があって、ウグイスが通うのにふさわしい木なのにやってこない。庶民のみすぼらしい家の何てことはない梅の木では、うるさいくらいに鳴いているのに」。
動物食のウグイスは梅の蜜を吸わないので、好んで梅の木にやってくることはないはず。蜜を吸うために梅の木によくやってくるのはメジロ。
それに、ウグイスは動画のように藪の中にひそんでいることがほとんどで、木の枝など目立つ場所にはあまり出てきません。
メジロと混同して「梅にウグイス」という固定観念ができあがったために、メジロの体色を「ウグイス色」と名づけた。また、歩くと「キュルキュル」と鳴る廊下を「ウグイス張り」と言いますが、「キュルキュル」と鳴くのはメジロ。色でも音でもウグイスとメジロが混同されていると私は考えています。
清少納言に限らず昔の文筆家や歌人は、ほかの鳥についてもステレオタイプなイメージだけで書いているようなところがあって、「本当に鳥のことを知ったうえで書いているのだろうか?」と疑問になることがあります。

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里帰り桜

2012年04月09日 | 木と歴史
日本からアメリカのワシントンに桜の苗木が贈られて今年でちょうど100年。テレビでも報道されましたが、現地では100周年記念の大々的な「桜祭り」が行われ、日本からAKB48も参加したとか。
贈られた苗木は、穂木は東京の荒川堤の桜並木から取り、台木は植木の産地として高い園芸技術を持っていた兵庫県伊丹市の東野村で作られたそうです。
ポトマック河畔の桜並木が世界的な名所になったため、それを感謝して、苗木贈呈90周年の際に全米州議会が、ワシントンの桜から採取した苗木を日本に贈りました。
そのうちの何本かが伊丹市の公園にあると知って、先週の金曜日に行ってきました。あいにく小雨模様で、花もまだ1分咲き程度。


桜の下には「日米友好の桜」という説明看板が立っています

伊丹市では「里帰り桜」と呼ばれて市民に親しまれているようです。また、今年は「日米友好の桜100周年記念」のさまざまなイベントが行われました。
そもそも「アメリカに桜を」という声は、来日経験のある学者や作家から上ったようです。日本の桜の美しさに感動し、何とかアメリカに移植したいという声が高まり、当時のタフト大統領夫人が運動を先導して実現したという経緯があります。
伊丹の東野村に発注された台木の数は1万5千本。その中からソメイヨシノ1800本をはじめ、12品種のサクラ約3000本が選別され、1912年 2月14日に横浜を出て、3月27日にワシントンに到着しました。


僅かに開花した「里帰り桜」

以前にもご紹介しましたが、その桜の返礼としてアメリカから贈られたのがアメリカハナミズキ。戦争中に「敵国の木」という理由で多くは伐られたようですが、その後の追跡調査で数本の原木が残っていることが判明しています。

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時代おくれの鳥

2012年04月05日 | 野鳥
関西では今年は冬鳥が少なく、京都御苑でも例年なら探すまでもなく見られるビンズイが、歩き回らないと見られませんでした。下の動画も@京都御苑ですが、2回目の訪問(2月)でようやく撮れました。



このビンズイによく似た鳥にタヒバリがいます。私もそうでしたが、初心者には識別できないほどそっくり。そのタヒバリは近くの干拓田に冬鳥としてやってきますが、地味な色で冬の田んぼに溶け込んでいるので目につきません。
名前は「田雲雀」ですが、ヒバリの仲間ではなく、ビンズイとともにセキレイの仲間。この鳥の別名は、ツチヒバリ、クサヒバリのほかタスズメ、タホオジロなど、いずれも他の鳥に例えた名前です。姿も目立たないし、名前も借り物の地味~な鳥です。



タヒバリを見ていると、『時代おくれ』という歌を思い出します。河島英五の歌ですが、作詞は阿久悠。「♪目立たぬように、はしゃがぬように~」とか「♪似合わぬことは、無理をせず~」とか「♪飾った世界に流されず~」という歌詞がタヒバリにはぴったり。「♪時代おくれの鳥になりたい~」と歌っているようです。
私も若い頃は「地味な人生は送りたくない」と思っていましたが、いつの頃からか「目立たぬように、地味に生きよう」と思うようになりました(笑)。
もう北へ帰ったでしょうが、何だかタヒバリに親近感が湧いてきました。

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南下する桜前線

2012年04月02日 | 樹木
そろそろ各地で「桜祭り」が開催される時期。当地でも恒例の「宇治川桜祭り」が今週末に行われますが、開花が間に合わないのではないでしょうか。
ソメイヨシノはまだですが、ヒカンザクラは宇治でもすでに満開です。赤紫の花が釣鐘のように下向きに咲く、ちょっと個性的なサクラです。



このサクラは沖縄に自生しますが、現地では春ではなく冬の象徴とのこと。沖縄では立春の頃が最も温度が低く、この頃にヒカンザクラが咲くので厳冬期の花なのだそうです。
しかも、本土では桜前線が南から北上しますが、ヒカンザクラはまず北部のヤンバル地域に咲き始め、名護、那覇と徐々に南に移るそうです。また、山頂から麓へと順に開花するらしいです。
ヒカンザクラは「緋寒桜」と書きますが、よく似た名前の「彼岸桜」という品種もあってまぎらわしいので、専門家の間では「カンヒザクラ」と呼ぶようになっているそうです。

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