樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

将軍の命を左右した木

2014年11月27日 | 木と歴史
宇治でもイチョウが黄金色に染まっています。下の画像は宇治名木百選の一つ、JR新田駅のイチョウ。説明パネルには「樹高19m、幹周2.6m」とあります。こんなイチョウを見ると源実朝を連想します。
鎌倉幕府の三代将軍・源実朝は、建保7(1219)年に鶴岡八幡宮に参拝した際、イチョウの木陰に隠れていた僧侶・公暁(くぎょう)に襲われて命を落とします。このときまだ27歳。しかも、公暁は実朝の甥です。



一方、実朝の父・源頼朝は、木に隠れて命拾いしています。
『源平盛衰記』によると、治承4(1180)年、頼朝は石橋山の戦いで平氏軍に敗れ、敵に追い込まれて万事休す。たまたま大きな倒木があったので、その洞に隠れて八幡大菩薩に祈念します。
追っ手がその洞に弓を突っ込んでかき回します。弓が頼朝の鎧に当たって音がした瞬間、1羽の山鳩が洞から飛び立ちました。「中に人がいれば鳩がいるはずはない」と、追っ手は引き返しました。
頼朝は木に隠れたおかげで命を長らえたわけです。正確には木と鳥に命を助けられ、その後鎌倉幕府を開いて初代将軍に就きます。
父は木に隠れて命拾いし、子は木に隠れた刺客に命を奪われたわけです。
この頃の史実は物語としては面白いですが、兄(頼朝)が弟(義経)を殺そうとしたり、甥が叔父を殺したり、恐ろしい世界です。
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都心の絶滅危惧種

2014年11月24日 | 街路樹・庭木
10月に京都市内に出向き、京阪電車の「祇園四条」駅を降りて地上へ出た時、妙な樹があるのに気づきました。葉は対生で3出複葉、実が鈴なりに成っています。カエデの仲間であることは分かりましたが、こういうタイプのカエデは関西では見かけません。
「メグスリノキかな?」と思いながら、とりあえずデジカメで撮って帰宅後に調べたら、ミツデカエデでした。



京都府のレッドリストを見ると、準絶滅危惧種に指定されていて、「府内では分布域は広いが、群生することはなく、個体数は少ない」と書いてあります。
私自身は初めて出会う樹。なぜ、こんな都心にこんな珍しいカエデが植えてあるのか、不思議です。何か由来があるのでしょうか。
どんなふうに紅葉するのか知りたくて、先日また見てきました。紅葉ではなく黄葉(おうよう)です。



こんな都心に唐突に絶滅危惧種を植えるのはどうかと思いますが、ツリーウォッチャーを自称しながら、いつも通っている場所なのに今まで気がつかなかった私自身もどうかと思います。
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日本発祥の鳥

2014年11月20日 | 野鳥
前回ご紹介した西海功さんの講演は、種の分類という点で興味深かったのですが、種の進化というか拡散という点でも面白いものでした。DNA解析によって、その鳥がどこで発生し、どこへ拡散していったかが分かるのです。
例えば、ハヤブサの仲間チョウゲンボウは世界に15種類ほどいるようですが、そのルーツは日本のチョウゲンボウだそうです。



もう一つ驚いたのはカケス。この鳥も日本が発祥で、奄美大島でルリカケスになり、東南アジア→中東→ヨーロッパ→ロシア・シベリアと巡り巡って、最後に北海道のミヤマカケスになった可能性が高いとのこと。
形態的にはカケスはルリカケスよりもミヤマカケスと近縁ですが、違うんですね。日本にはカケスの先祖とその末裔が生息しているわけです。
もう一つ意外なことに、ヤマシギの発祥も日本とのこと。フランスのジビエ料理のイメージが強いので、何となくユーラシア発祥の鳥かなと思っていましたが、日本(ヤマシギ)→奄美大島(アマミヤマシギ)→東南アジア→中東・ユーラシアと拡散したそうです。



西海さんは、「それだけ日本列島は鳥が多様な地域であった」とおっしゃっていました。チョウゲンボウやカケス、ヤマシギをもっと大事にしないといけないですね。
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マガモとカルガモは同一種?

2014年11月17日 | 野鳥
先日ご紹介した日本野鳥の会全国総会ではいろんな報告や講演が行われました。その中で最もインパクトがあったのはDNA解析の話。
一昨年、鳥の分類方法がそれまでの形態や声など外的な基準からDNAデータに変更され、図鑑など鳥の資料は全部作り直し。バードウォッチャーの頭も大混乱です。
その張本人、DNA解析の日本の第一人者である国立科学博物館研究主幹・西海功さんの講演です。
いちばん驚いたのは、マガモとカルガモのDNAは全く同じという話。西海さんによると、「種が分化してまだ時間が経っていない。あるいは、両種が交雑して遺伝子が溶けてしまったと考えられる」とのこと。
遺伝子的にはマガモとカルガモは同一種なのです。しかし、DNA解析の数値は「基準」ではなく「目安」であり、種の分類はその他の総合的な知見によって判断するそうです。
マガモとカルガモほどではないものの、カッコウとツツドリもDNA上ではほとんど差異がないそうです。2種のDNAが1.6%以上違う場合は原則的には別種として扱うのですが、カッコウとツツドリの差異は0.3%。
下の動画はツツドリですが、遺伝子的にはカッコウでもあるわけです。



DNAがほとんど同じなのにカッコウとツツドリが別種として扱われるのは、やはり声が違うからでしょう。姿はよく似ていますが、あの声はとても同じ種とは思えません。
DNA解析によって、種の違いだけでなく種の進化も明らかになります。この話も面白かったのですが、長くなるので次回にします。
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火の木

2014年11月13日 | 木と言葉
クリスマスツリーに使われるモミの英名は、Fir(ファー)。これはFire(火)に由来するそうで、ヨーロッパでは火を起こすのにモミを使っていたからとのこと。
ドイツ語でモミをTanne(タンネ)と言うのも、「火」を意味するTanに由来するようです。


ヨーロッパで火起こしに使われたモミ

日本の「ヒノキ」も同じ由来で「火の木」と呼ばれるようになった、という説があります。一見もっともらしいですが、ある言語学者はこれを否定しています。
現在は「檜」も「火」も発音は「hi」ですが、古代日本では「檜」は「hi」、「火」は「fi」と発音したので「火の木」から「ヒノキ」にはならないというのです。
樹木に限らず鳥でも花でも語源説のほとんどは推定で、科学的には証明できません。「ヒノキ=火の木」の単純な推定も、言語学という科学によって否定されたわけです。
英語の「Fir=Fire」もそういう単純な推定なのでしょうか。でも、ドイツ語でも火に由来するようですから「ヒノキ=火の木」よりは信憑性が高いですね。
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20年ぶりの谷津干潟

2014年11月10日 | 野鳥
週末の2日間、日本野鳥の会の全国総会に出席するため幕張へ行ってきました。その帰り、せっかくの遠出なので、一駅離れた谷津干潟へ寄り道してきました。総会は今回が初めてですが、谷津干潟は2回目。


谷津干潟の全景

過去のフィールドノートをひっくり返して調べると、1994年8月14日~16日、2泊3日で東京の大井野鳥公園、千葉県の谷津干潟、船橋海浜公園へ鳥見ツアーに来ています。ちょうど20年ぶりです。
ここで大型のシギを初めて見た記憶があるのでノートを見てみると、ホウロクシギとダイシャクシギを初めて見たと書いています。「自分では見分けられないけど、地元の人に教えてもらった」とも。
時期的にはシギのシーズンは終わっていますが、数種類のシギやチドリがのんびりと餌を食べています。
総会出席が目的なので三脚は諦めましたが、カメラを持参したので、手持ちでフェンスに固定して撮ってきました。



京葉線の車窓からはアマゾンや楽天の巨大な物流センターが見えました。この20年間で周囲の風景は大きく変わったようですが、谷津干潟にはそんな時間とは別の時間が流れているようでした。
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鳥は何日飛び続けられるか?

2014年11月06日 | 野鳥
渡り鳥は何千キロも飛びます。最も飛行距離が長いのはキョクアジサシで、名前のとおり北極から南極まで渡ると言われています。もちろん、途中何カ所かで休憩しながら渡っていくのでしょう。
中には休憩なしで一気に渡る鳥もいます。2007年にアメリカのある研究機関が、アラスカで繁殖する数羽のオオソリハシシギに発信器を装着して人工衛星で追跡調査したところ、1羽のメスがニュージーランドまでの12,000kmを一気に渡ったそうです。
途中、水分や栄養分を補給した形跡はなく、ニュージーランドに到着したときは体重が半分以下に減っていたとのこと。これが鳥の無着陸飛行の最長記録だそうです。


12,000kmを一気に渡るオオソリハシシギ

渡りに要した時間は9日間。その間、休まず・飲まず・食わずで飛び続けたわけです。にわかには信じられませんが、それが自然の驚異ということなんでしょう。
飛行機でさえ9日間も飛び続けるのは不可能だろうと思って調べたら、1986年にアメリカのボイジャーという飛行機が無着陸・無給油で世界一周したという記録があります。航続距離は40,212km、要した時間は9日間と3分44秒。
距離は違いますが、航続時間が飛行機もオオソリハシシギも9日間というのが面白いですね。
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鵜飼いに恋した夏

2014年11月03日 | 野鳥
NHKで宇治を舞台にしたドラマが放映されます。地元ではけっこう盛り上がっていて、JR宇治駅には大きな番組告知が描かれています。



伊藤淳史演じる宇治市の職員が、葱那汐里演じる女性鵜匠に恋するというストーリーで、そのタイトルが『鵜飼いに恋した夏』。NHK-BSプレミアムで11月12日(水)の午後10時~11時に放映されます。
私がよくウロウロしている宇治川周辺や中州公園、つまり鵜飼いの拠点が舞台になっています。わが町内にある小学校でも地元の生徒たちが演技して撮影されたり、宇治市役所のシーンでも実際の職員がエキストラ出演しているようです。
応募はしませんが、一般のエキストラ募集の貼り紙も出ていました。
このドラマのヒロインのモデルは、宇治川の女性鵜匠・澤木万里子さんかな。下の鵜飼ショーも彼女が担当しています。



今年7月にご紹介しましたが、宇治川の鵜飼いに使われているウミウが繁殖してヒナが育つというアンビリーバブルな出来事があったばかり。今回のドラマも併せて注目度が高まっています。その若いウミウもこのドラマに出演するとか。
ドラマの舞台になってロケ撮影が行われるという事態は、京都市なら日常茶飯事で珍しくも何ともないでしょうが、宇治では一生に一度くらいの椿事でしょうね(笑)。
みなさん、見てくださいね。ドラマのサイトはこちら
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