樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

赤い葉への疑問

2020年04月30日 | 樹木
久しぶりに樹木の話題です。1カ月ほど前、あらためて樹木を勉強し直そうと、書店で『樹木博士入門』という本を買いました。その中に、以前から疑問に思っていたことの答えが書いてあってスッキリしました。
その疑問というのは、「赤い葉はどうやって光合成するのか?」。葉が赤いということは葉緑素がないということですが、葉緑素なしに光合成はできないはずで、光合成ができなければ樹木は成長できないはずです。
その本によると、「一見赤く見えるけれど、赤いのは繊毛で、葉っぱそのものは緑」とのこと。早速、近くにあるアカメガシワの新葉で確認しました。赤い葉の表面を爪で削ると、確かに緑色の葉の表面が出てきました(写真右下の葉)。



しかし、赤い葉はほかにもいろいろあります。例えば、生け垣によく使われるカナメモチ(アカメモチ)は、今ごろ赤い新葉で覆われますが、この葉には繊毛がありません。まるっきる赤い葉です。赤くなるのは新葉だけなので、奥にある常緑の葉が光合成するのでしょうか。



もっと分からないのは、園芸品種の赤いカエデ。下の写真はご近所の庭にあるカエデですが、すべての葉がずーっと赤いままです。人工的につくられた樹木ですが、それにしても光合成なしには成長も更新もできないはずです。



アカメガシワなど落葉樹の新葉については、赤いのは繊毛だけということで納得できましたが、赤い葉への疑問はまだ残ったままとなりました。

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連雀

2020年04月23日 | 野鳥
今年はレンジャクの当たり年で、2月末にヒレンジャクの大群をご紹介しましたが、今度はキレンジャクの群れが自宅近くに現れました。
外出先から帰宅した妻が、「すぐそこのナンテンの生け垣のところに、ヒヨドリより小さい鳥がたくさんいる」と言うので、すぐに双眼鏡を持って出ると、予想どおりキレンジャクが30羽ほど電線に止まっていました。
しばらく観察した後、カメラを持ち出して撮影しました。ナンテンの実はほとんど食べ尽くし、今度はクロガネモチの木に群がっては、また電線に戻ってきます。
翌日も同じ場所でウロウロしていました。そして、2日後の昨日、私の部屋のすぐ前の電線に4羽が止まりました。居ながらにしてキレンジャクが見られるとは!



これまで、ヒレンジャクの群れの中に数羽交じっているのを見る程度でしたが、キレンジャクだけの群れに遭遇するのは初めて。電線に並んで止まっている様子は、まさに「連雀」です。
10年ほど前、ヒレンジャクの小群がわが家のクロガネモチを食べに来たことがありますが、自宅でレンジャクを見るのはそれ以来。幸せな気分で一日過ごせました。
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どこまで鳥に近づけるか

2020年04月16日 | 野鳥
新型コロナウイルス感染防止のために人と距離をおくことを「ソーシャルディスタンス」というようです。以前、当ブログで鳥と人の距離についてご紹介した「フライトディスタンス」に似ています。今回はその話題の2回目。
私たちバードウォッチャーは、「もう少し近寄って見たい」と2~3歩前へ出た途端に飛ばれてしまうという失敗を何度も繰り返しています。この鳥と人の距離が「フライトディスタンス」。元々はハンターの用語のようです。
科学系のバラエティ番組『所さんの目がテン!』がスズメとカラスで実験しました。人間が徐々に近づくと、スズメが5mで飛び去ったのに対してカラスは3m。ところが、棒を持って近づくとスズメは6m、カラスは11mに伸びました。カラスは人間の攻撃性を認識して距離を変えたわけです。
学術的な調査も行われていて、多摩川での調査によると、ヒバリ、カワセミなど小型の鳥は距離が短く、ダイサギ、カルガモなど大型の鳥は長いという結果でした。大きい鳥は機敏さに欠け、飛び去るのに時間がかかるからと推測されています。
ヤマガラはフライドディスタンスが短い鳥で、ほとんど警戒心がなく人間に近づいてきます。



もちろん、環境によっても異なり、人間の生活圏に近い所では距離が短く、そうでない所は長いようです。ヤマガラもそうですが、鳥が人慣れするということでしょう。
逆に、人が全くいない環境ではそもそも鳥に警戒心がないので、フライトディスタンスがゼロということもあるようで、ガラパゴス諸島でフィンチ(アトリ類)を研究した鳥類学者の著書『ガラパゴスのフィンチ』には、次のような話が記されています。
「フィンチはわれわれの肩でも腕でも頭でも、どこへでもとまる。あるフィンチを捕まえて測定していたら、別のフィンチが2、3羽飛んで来て、腕にとまってその様子を見ていたよ。双眼鏡で海の方を見ていたら、ノスリが帽子にとまったこともあった」。
そんな所でじっくりバードウオッチングしてみたいですね、双眼鏡なしで。
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鳥の寿命

2020年04月09日 | 野鳥
探鳥会に参加された初心者から「鳥の寿命は何年くらいですか?」と尋ねられることがありますが、野鳥には人間社会のように年齢を記録するシステムがないので正確には答えられません。ただ、生息調査のために捕獲して足環(標識)をつけた鳥が、再捕獲されて年齢が判明する事例がたくさん残っています。
山階鳥類研究所は、1961年~2015年に標識を付けて放鳥した鳥のうち、回収記録が得られた鳥についてその長寿記録を発表しています。それによると、最も長生きした鳥はオオミズナギドリ。


オオミズナギドリ

京都府の冠島で1975年5月16日に標識を付けて放鳥された個体が、2012年1月26日に約4000km離れたボルネオ島で保護されたそうです。36年8カ月生きたわけです。しかも、標識を付けたのは島に戻ってきた時で、オオミズナギドリは4歳以上で繁殖のために生まれた島に帰ってくるので、この個体の年齢は40歳以上ということになります。
以下、長寿ベスト5を列記すると、アホウドリ(34年4カ月)、コアホウドリ(33年1カ月)、ウミネコ(32年10カ月)、オオハクチョウ(23年1カ月)。すべて水鳥です。
陸の鳥では、ハシブトガラス(19年4カ月)、フクロウ(19年)、オオタカ(18年8カ月)となっており、いずれも大型の鳥が長生きするようです。


アホウドリ

一方、世界最高齢はコアホウドリ。1956年にアメリカ領のミッドウェー環礁で標識された個体が、その46年後の2002年に再捕獲されました。しかも、その足環を付けた生物学者によって再捕獲されたそうです。そんな偶然もあるんですね。
その時点で51歳だったようですが、その後も生き続けます。驚くべきことに、そんな高齢にもかかわらず、繁殖能力を備えており、『ナショナルジオグラフィック』が2018年の記事で「67歳のコアホウドリが産卵、記録を更新」と紹介しています。現在も生きているとすれば、69歳ということになります。
ちなみに、1956年に足環をつけた学者も長寿で90歳を超えても現役でしたが、そのコアホウドリよりも先に98歳で亡くなったそうです。
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8400種類の鳥を見た女性

2020年04月02日 | 野鳥
私の鳥見歴は30年。これまで北海道に3回、沖縄に1回、そのほか信州、四国、九州など各地に出かけ、仕事で1カ月渡米したりサイパンへ旅行した際もついでにバードウォッチングしてきました。その私のライフリスト(生涯に見た鳥の種類)は約350種類。珍鳥を積極的に追いかけないので、鳥見歴の割には少ないと思います。
驚くべきことに、生涯に8400種類の鳥を見た女性がいます。名前はフィービ・スネツィンジャー。1931年にシカゴで生まれた彼女は、34歳の時に野鳥観察を始めますが、当時はそれほど熱心なバードウォッチャーではありませんでした。
そして、40代後半で末期のがんと診断され、医者から余命1年の宣告を受けます。ところが、彼女は療養生活ではなく、普通の生活ができる間は野鳥観察を続けようと、米国各地をはじめ世界各国へ出かけて野鳥を観察。いつしか単なるバードウォッチャーではなく、アマチュア鳥類学者として、特に亜種に関する膨大な観察記録を残すようになり、その多くはその後独立種として再分類されました。
しかし1999年、野鳥観察のために訪れていたマダガスカルで、乗っていた車が横転して即死。がんではなく事故で亡くなったわけです。余命1年と宣告されて18年後、68歳の時でした。彼女が残した回顧録が下。


描かれている鳥は、彼女が鳥見を始めるきっかけになったキマユアメリカムシクイ

タイトルの『Birding on Borrowed Time』は、“神様がくれた余分な人生で野鳥観察” というような意味のようです。残念ながら邦訳はされていません。
彼女のライフリスト8398種は当時の世界記録だったそうですが、現在はその上があるようです。いずれにしても、世界に生息する鳥は9000種類とか1万種類といわれていますから、そのほとんどを見ているわけです。
フィービさんには子供が4人いて、そのうちの3人が鳥類研究者になっているとのこと。お母さんの背中を見て育ったということでしょう。
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