樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

人が食べる実と鳥が食べる実

2017年10月26日 | 木と鳥・動物
10月初旬の連休、5カ月ぶりに栃の森に行ってきました。林内は実りの季節。さまざまな木の実が成っていました。
今年はクリが豊作のようで、地面にはいっぱいイガが落ちていました。人間が食べるのは大きな実が成る栽培品種ですが、森の中のクリはネズミやリスなど小型哺乳類が食べるようです。カケスやヤマガラなどドングリが好きな鳥も食べるかもしれません。



下はヤマボウシの実。これは人間も食べられます。食感はマンゴー、味はリンゴに似ていますが、細かい種がジャリジャリしてたくさん食べようとは思いません。叶内拓哉さんの『野鳥と木の実ハンドブック』によると、「鳥にとっては喜んで採食するほどおいしくはないようで、オナガやムクドリが少し食べる程度」だそうです。



ミズキの実も成っていました。図鑑には「赤い果軸と黒い実の2色効果で鳥を呼び寄せる」と書いてあって、地面にはすでに鳥が食べた後の果軸がいくつか落ちていました。叶内さんの図鑑によると「鳥が好んでよく食べる木の実のベスト5に入る種類」。



コースの途中、20羽ほどのアトリの群れが木の実をつついているのを発見しましたが、遠いので双眼鏡では樹種が特定できません。実の形やつき方から「ヤシャブシかな?」と思いましたが、帰宅後に画像を拡大して確認したところミズメのようです。



ヤシャブシはハンノキ属、ミズメはカバノキ属ですが、同じカバノキ科。属は違いますが、よく似た実をつけます。ミズメの実は堅果なので、アトリが食べているのは実というよりも種でしょう。そろそろ京都御苑にも来ているようですが、カエデ類の種を食べているようです。アトリは「渇き物」が好きなんですね。
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キツツキとアメフト

2017年10月19日 | 野鳥
野球もサッカーも見ませんが、アメフトだけはテレビで観戦しています。このスポーツはコンタクトが激しいので選手はフルフェイスのヘルメットをつけていますが、それでも脳しんとうに見舞われることが多く、アメリカのプロリーグでも大きな問題になっています。その脳しんとうを防ぐために、キツツキの頭の構造にヒントを得た防具が開発されています。
キツツキは餌を食べる時だけでなく、コミュニケーションのために猛スピードで木をたたきます。下は日本最小のキツツキ、コゲラの採餌シーンですが、結構激しく木をつついていて、人間なら頭が痛くなりそうです。



ある研究によると、繁殖期のキツツキは1日1万2000回、1秒に18〜22回も木をつつくそうで、頭を激しく前後させることで1200ガルもの力が頭にかかっているとのこと。にもかかわらず、キツツキが脳しんとうを起こさない理由の1つは、長い舌。
キツツキの舌は、根元が眉間にあり、脳を上から巻いて喉~クチバシに出てくるのですが、木をつつくときは舌で脳を締め付け、頸動脈をつまむことで脳の血液量を増やし、それをクッションにして脳を保護しているそうです。
その原理を生かして、アメフト選手の首を軽く絞めて頸動脈をつまみ、脳しんとうを防ぐのが新開発の防具。下の動画は英語ですが、映像だけで意味は分かります。



FDA(米国食品医療品局)の認可を得るために、現在は試作や検証を重ねているようですが、開発されればスポーツ用だけでなく、チャイルドシートやシートベルトにも応用されるかもしれないとのことです。
脳しんとうではありませんが、私が応援するチーム(グリーンベイ・パッカーズ)のクオーターバックは先週、鎖骨を骨折して今季絶望。それまで4勝1敗と調子良かったのに、今シーズンはプレイオフも難しそう。
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シギの密度

2017年10月12日 | 野鳥
1年前、「TPPと野鳥」「ラーメンと野鳥」という記事で、近くの干拓地の休耕田がネギ畑に変わるので今後はシギやチドリがいなくなるのではないかと書きました。
その予測は一面では当たっていました。9月初旬に行った京都支部の観察会では、シギやチドリがほとんど見られませんでした。徒歩圏内に休耕田がなくなったため、毎年見られたアオアシシギやタカブシギ、さらにはコチドリさえ記録なし。幸い、アカエリヒレアシシギが現れたので参加者には一応満足していただけましたが、来年以降は開催が難しい状況です。
その一方で、数少ない休耕田にさまざまなシギやチドリが集中するという新しい傾向もみられました。干拓地の北エリアにある3枚続きの休耕田には、タマシギの家族4羽、タカブシギ1羽、アオアシシギ1羽、タシギ7羽、セイタカシギ2羽に加えてシマアジも2羽入っていました。



また、南エリアの1枚の休耕田では、アオアシシギ4羽、コアオアシシギ1羽、タカブシギ5羽、イソソギ1羽、タシギ3羽が仲良く採餌していました。



すでにご紹介したエリマキシギとオグロシギは東エリアの2枚続きの休耕田で撮影したものですが、ここにはアオアシシギやタカブシギ、ヒバリシギ、トウネンもいました。数少なくなった休耕田のうち、餌の条件が良いところにシギやチドリが集まって、密度が高くなったようです。
どこかの国の大統領が異民族を排斥したり、どこかの党の代表が候補者を排除する人間の世界と違って、鳥たちは種類が違っても同じ休耕田で仲良く生きています。
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岡本太郎とカラス

2017年10月05日 | 野鳥
「芸術は爆発だ!」で知られる岡本太郎は自宅兼アトリエでカラスを飼っていました。その理由についてエッセイで次のように書いています。

私は動物を飼うことは、どだい、あまり好きでない。変に人間になれた、愛玩用の動物のいやたらしさ、人間のために作られて、人間の気に入るようなポーズを心得ている。人間的な卑しさ。
ところがわがカラスは、かなり人になれているのだが、しかし毅然として人間と対決している。自分の立場をはっきりとっているという感じだ。かわいがられるときは、平気でかわいがられるが、決して媚びることはしない。そこが私にはたいへん魅力だ。


誰でも知っている岡本太郎の作品といえば大阪万博のシンボル「太陽の塔」でしょうが、あのモデルはカラスなのだそうです。



岡本太郎の秘書であり養女でもある岡本敏子さんが『太郎さんとカラス』という本を出しています。内容は、太郎自身のエッセイや対談、敏子さんのエッセイなどカラスや自然に関するテキストと、太郎とカラスの2ショット写真。
その中に、ある人が太郎に「どうしてあんなものを思いつかれたのですか?」と尋ねたら、「太陽の塔? あれはカラスだよ」と答えたというエピソードが記されています。
「カラスを飼っていらしゃるそうですね?」と聞かれると、「飼ってないよ、一緒にいるだけだ」と答えたとか。鎖をつないで凧揚げのように飛ばしながら散歩したり、逃げないように羽を切っていたそうですから、客観的には飼っていたわけですが、この芸術家の主観としては「一緒にいた」ということなのでしょう。敏子さんも次のように書いています。

ほんとうに、飼主とペットという、愛着だの、もたれあい、慣れあいの気配は、そこには全然なかった。双方、毅然として、独立自尊、誇り高く、だが孤独者同士の共感が通じあう。見ていても、いいなあと思わせる素敵な関係だった。



「ガアガア」と鳴くので「ガア公」と名づけたらしいので、種類はハシボソガラスでしょう。写真を見てもそのようです。
以前、ピカソがフクロウを飼っていたことをご紹介しましたが、インパクトの強い画風や立体作品も多く手掛けたことなど、東西の天才芸術家2人には共通点があるようです。
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