樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

紅一点

2011年12月29日 | 木と言葉

大勢の男性の中に女性が一人いる状態を「紅一点」と言います。

この言葉の出典は11世紀の中国の詩人・王安石の次の作品だそうです。

万緑叢中紅一点 (ばんりょくそうちゅうこういってん)

動人春色不須多 (ひとをうごかすしゅんしょくはおおきをもちいず)

意味は、「人を感動させる春の景色は多くのものを必要としない。見渡す限りの緑の中にただ一つ紅い花があればそれでいい」。

この詩のタイトルは「石榴(せきりゅう)」、つまりザクロ。

 

 

 

ザクロの花は6月頃に咲きます。初夏、新緑が茂ってあたり一面緑色の風景の中で、真っ赤な花が咲いているシーンを歌ったのでしょう。何となくイメージが湧いてきます。

そのザクロの花が女性ということは、男は緑の葉っぱということですよね。ということは、紅一点とは逆に、大勢の女性の中に男が一人いる状態は「緑一点」と言うべきなんでしょうね。

一度でいいから「緑一点」を体験してみたい。

 

今年も当ブログに1年間お付き合いいただき、ありがとうございました。お正月は5日から始めますので、来年もよろしくご愛読ください。

では、みなさま、良いお年をお迎えください。

 

 

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沈黙の冬

2011年12月26日 | 野鳥

先日、久しぶりに京都御苑へ鳥見に出かけました。目的は冬鳥。

ところが、例年なら探すまでもなく現れるツグミやシロハラ、ビンズイ、アトリなどがいません。カメラを持ち歩いたものの、ほとんど使わずじまいでした。

しょうがないので府立植物園に移動しましたが、ここでも冬鳥はさっぱり。留鳥のイカルと漂鳥のアオジを撮影しただけでした。

 

 

 

この日はたまたま韓国の大統領が京都御苑内の迎賓館に来ていたようで、大勢の警察官がウロウロしたり、ヘリコプターが飛び回ったり、右翼団体のアジテーションが流れて騒然としていました。

そのせいで鳥が隠れたわけではなく、野鳥の会が11月に行った定例探鳥会でも冬鳥はシロハラ1羽、ビンズイ2羽という状況だったようです。私が御苑と植物園で見た冬鳥もシロハラ1羽のみ。

全国的に冬鳥が少ないようで、特に小鳥の渡りが異常のようです。

 

 

 

環境保護運動が盛んになるきっかけとなったレイチェル・カーソンの『沈黙の春』には、次のようなくだりがあります。

「鳥たちは、どこへ行ってしまったのか。(略)春がきたが、沈黙の春だった。いつもだったら、コマドリ、ズグロマネシツグミ、ハト、カケス、ミソサザイの鳴き声で春の夜は明ける。(略)だが、いまはもの音一つしない」。

カーソンはこれらの異変から、DDTなどの農薬が環境を悪化させていることを突き止めます。

これをなぞって言えば、今年は「沈黙の冬」。冬鳥の繁殖地で何か異変があったのではないでしょうか。ちょっと不安です。

「今年は山の木の実が豊作だから里に下りてくるのが遅れている」という見方もあるようです。そうであればいいのですが…。

 

 

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日本最小の葉っぱ

2011年12月22日 | 樹木

このブログを始めたのは20065月。その2回目の記事は「日本最大の葉っぱ」でした。一般的に言われるホオノキではなく、「広い意味ではバショウ、単葉ではキリ、複葉ではトチノキかオニグルミ」と書きました。

5年半後、「逆に最も小さい葉っぱは何の樹だろう?」と疑問になってきました。すぐに思い浮かんだのは、庭にあるドウダンツツジとイヌツゲ。

 

 

紅葉が鮮やかなドウダンツツジ

 

イヌツゲは先日訪れた栃の森でも数少ない常緑樹として確認しました。写真のように、幅1cm程度の小さな葉がいっぱい生えています。櫛や将棋の駒に使われるツゲも同様に小さいです。

 

 

 

さらに考えると、「葉っぱの面積としては広葉樹よりも針葉樹の方が小さいのではないか?」という疑問が湧いてきます。計測するまでもなく、ドウダンツツジやイヌツゲよりもマツやスギの葉の方が表面積としては小さいはず。

「その針葉樹の中でも、最も小さい葉は何だろう?」と考えて思いついたのがヒメコマツ。「小さい松」にさらに「姫」まで付いた、いかにも小さい樹です。

散歩コースにある禅寺に「宇治名木百選」のヒメコマツがあるので撮ってきました。

 

 

 

 

五葉松なので51セットの葉ですが、おそらくイヌツゲよりも小さいでしょう。

日本最小の葉は、広葉樹ではドウダンツツジ、イヌツゲ、ツゲ、針葉樹ではヒメコマツというのが私の結論です。

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猛禽

2011年12月20日 | 野鳥

日本野鳥の会会員としてはあるまじき発言ですが、正直にカミングアウトすると、野鳥観察の際に邪魔になる鳥が3種類います。

一つはトビ。特にタカの渡りを観察する際、よく似ているので双眼鏡で追いかけると、「な~んだトビか」とがっかりさせられることが1日に何度もあります。分類上はタカの仲間ですが、ホークウォッチャーの気持ちの中では除外されているようです。

一応猛禽ですが、主な餌は死んだ魚とか小動物。狩りをしないので、飛び方が愚鈍というかノンビリしていて精悍さに欠けます。トビが好きというバードウォッチャーはまずいないでしょう。

ところが先日、その愚鈍なトビを見直すシーンに遭遇しました。干拓田の電柱で、猛烈な勢いで鳥の羽根をむしっているのです。

 

 

 

ハヤブサがドバトの羽根を撒き散らすシーンは何度も目撃していますが、トビのこんなシーンは初めて。「トビじゃなくてノスリか?」とも思いましたが、尾羽の形はやはりトビです。

また、犠牲になった鳥も最初はまだ生きているように見えました。しかも、その鳥をよく見ると、ドバトよりも明らかに大きい。

何を食べているのかを知りたくて、撒き散らした羽根を拾い集めたのが下の写真。その場では「ケリだろう」と推測しました。

 

 

 

後日、図書館に羽根を持ち込んで同定を試みましたが、羽根図鑑にはケリが掲載されていません。姿の図鑑をいくつか参考にしましたが、先が黒くなっている中央の2枚はケリの尾羽ではないでしょうか。

ケリはトビより敏捷なので普通なら捕獲されることはないはず。ケガか病気で動けないところを襲われたのかも知れません。

この猛烈なシーンを見て、「トビもやっぱり猛禽なんだな~」と見直しました。「今まで舐めていてごめんね~」。

邪魔になるもう2種類は、どのフィールドに行っても「ピーピー」とうるさく鳴くヒヨドリと、こちらが見たい鳥を追いかけて逃がしてしまうカラス。バードウォッチャーのエゴですが、内心そう思っている人は多いのではないでしょうか。

 

(昨日、投稿したつもりが、下書きのままになっていました。失礼しました。)

 

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ビワとヘソ曲がり

2011年12月15日 | 木と作家

妻が友だちからビワの花をもらってきたので玄関に飾っています。友だちの家には大きなビワの樹があるとか。花を嗅ぐとニッキというかシナモンのような香りがします。

以前お伝えしたように、「屋敷内にビワがあると病人が絶えない」「庭にビワがあると身内に死人が出る」など不吉な言い伝えがあって、地方によってはビワを忌み嫌うようです。

 

 

玄関に飾ったビワの花。後ろはわが家の守り神シマフクロウ。

 

童話作家の坪田譲治も若い頃、庭にビワの樹を植えたところ、近所の人から「縁起が悪い」と注意されたそうです。しかし、それに反発した坪田はビワを抜かずにそのまま育て、「ビワの不吉さに負けてなるものか」と発奮し、後に日本を代表する童話作家になったそうです。

しかも後年になって、自宅の一部を開放して子どもの図書館「びわのみ文庫」を開館。さらに童話雑誌『びわの実学校』を創刊し、作品を発表すると同時に後継者を育てたそうです。自身も『ビワの実』という作品を残しています。

どちらかと言えば私もそうですが、坪田譲治という人はヘソ曲がりですね~。注意されても樹を抜かないところまでは私もやりかねませんが、こだわり続けて自分の仕事のシンボルにするとは、筋金入りのヘソ曲がりですね。

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かわいいハンター

2011年12月12日 | 野鳥

1カ月前、よく鳥を見に行く干拓田で子ども対象のワークショップが行われ、野鳥観察の担当として参加しました。

催しの名前は「田んぼ探検隊」。子どもたちに農業や田園環境の重要性を知ってもらう目的で年5回開催され、最終回として自分たちが植えて収穫した米の試食と野鳥観察が行われました。

もう一人の鳥仲間が事前に干拓田で見られる鳥を説明した後、実際に田んぼに出かけて観察しました。ハクセキレイやモズ、カワラヒワなど何でもない鳥でも、子どもたちは大喜び。鳥よりも子どもたちの反応を見ている方が面白かった。

 

 

 

すぐ近くをオオタカが飛んだり、杭にチョウゲンボウが止まったり、私自身もそれなりに楽しめました。チョウゲンボウについて、事前説明で「小動物を捕獲するハンター」と紹介したのですが、スコープで観察したある男の子は「かわいい目をしているから、ハンターには見えへん」。

後日、干拓田に出向いて撮影したのが下のチョウゲンボウ。ハンターには見えませんか?

 

 

 

私が初めて野鳥観察会に参加したのもこの干拓田。22年前、まだ野鳥の会に入る以前に、ある新聞社が主催した探鳥会でした。そのとき、担当者が突然、空を指差して「チョウゲンボウだ!」と叫びました。

初めて耳にする名前で、人の名前のような妙な響きが心に残りましたが、どんな鳥かは分かりません。担当者の様子と声の大きさから、珍しい鳥であることだけは分かりました。

その後バードウォッチングにのめりこみ、逆に人に「チョウゲンボウだ!」と教える立場になるとは、当時は考えもしなかったです。

 

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落葉広葉樹林の中の常緑樹

2011年12月08日 | 樹木

週末、栃の森へ今年最後の観察&野鳥調査に出かけました。

あいにくの雨で、前夜の車泊でもルーフをたたく雨音に何度も眠りを妨げられました。「雨が止めば一眼で動画を…」と目論んで三脚を背負いましたが、結局使わずじまい。主にコンパクトデジカメで樹木を撮ってきました。

ここは落葉広葉樹の森。葉が散った後は常緑の植物が目立つので、今回は常緑樹に注目しました。

 

 

冬枯れの林内

 

落葉広葉樹林とはいえ、スギは多いです。林道周辺に植林されているほか、森の中にも自生や研究用の植樹があります。

スギは日本特有種で植物学的には11種ですが、このあたりのスギには地域的な特性があって特に「裏スギ」と呼ばれています。「裏日本のスギ」という意味でしょう。

 

 

自生の裏スギ

 

シカの食害で林床のササは壊滅状態。それでも斜面のあちこちに緑色の植物が生えているので、登って確認するとシダとアセビ。シダはどうか知りませんが、アセビは有毒なのでシカの食害を免れたわけです。奈良でも、シカが食べないのでアセビの純林ができています。

 

 

斜面でわが物顔のアセビ

 

ユズリハも目立ちました。枝の下の方にある古い葉が落ち、順次新しい葉に譲ることが名前の由来。年度や世代の交代を意味するめでたい葉なので、お正月の鏡餅に飾られます。

子どもの頃、年末になると、裏山でユズリハとウラジロの葉を取ってくるよう祖母に頼まれたことを思い出します。

 

 

ユズリハは葉の軸が赤いのが特徴

 

ソヨゴも見つけました。宇治周辺の山にはたくさん自生していますが、この森にあるとは意外。縁が波打つ特徴的な葉と赤い実が雨に濡れていました。最近、庭木としても人気が高い樹種です。

 

 

赤い実が一粒ずつ成るソヨゴ

 

もうひとつはイワウメヅル。いつも休憩する場所にオニグルミの巨木があって、それに巻きついています。ちょうど小さな赤い実が熟して、地面にもいっぱい落ちていました。

 

 

オニグルミの巨木に巻き付くイワウメヅル

 

このほか、クロマツ、イヌツゲ、ヒサカキ、ヤドリギなどの常緑樹がありました。

最後に、おまけ。同行の友人が防水のハンディカメラを一脚にセットして、せせらぎの中を撮影した動画です。防水カメラは水中はもちろん、雨も気にせず撮影できるので怖いものなしですね。

この森の川ではヤマメやイワナも見られますが、これはアブラハヤです。

 

 

 

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一夫多妻

2011年12月05日 | 野鳥

以前、タマシギという鳥は一妻多夫で、子育てもオスが担当することをご紹介しました。野鳥の結婚形態は多様で、逆に一夫多妻制の鳥もいます。

そのうちの1種・セッカは日本でもっとも多妻な鳥で、ある調査では1羽のオスが11羽のメスとつがいになったそうです。

 

 

一夫多妻のセッカ

 

そのオスは18個の巣を作ってメスに求愛したそうですから、打率は6割。多くのセッカがこうした一夫多妻である一方、メスを1羽も獲得できないオスも3割ほどいるそうです。

世界に生息する野鳥の9割が一夫一妻制とのことですが、タンチョウのように終生同じペアの一夫一妻制もあれば、毎年相手を換える一夫一妻制もあります。仲のいい夫婦の象徴・オシドリも毎年つがい相手が換わります。

ちなみに、人間の世界では120人の女性と結婚した男性がケニアにいるそうです。

私はもちろん厳格な一夫一妻制です。

 

 

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都会の街の森づくり

2011年12月01日 | 樹木

少し前ですが、ある林業関係のシンポジウムに参加しました。3人のパネラーの報告のうち、東京都港区の取り組みが興味深かったのでご紹介します。

港区といえば赤坂、六本木などがある東京のど真ん中で、森も林もありませんが、日本の森林や林業を守り、CO2を削減するための制度を今年の10月にスタートさせました。

制度の名前は「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」。区内で5,000m2以上の建築物を建てる場合、1m2につき0.001m3の国産木材を使うよう建築主に促し、その使用計画書を提出させて認証を与えます。0.001m3で★、0.05m3で★★、0.01m3で★★★の認証を発行します。

しかも、使用する木材の産地も決まっていて、港区が提携する全国20数ヵ所の林業地の木材や間伐材を使用しなければなりません。

 

 

この制度によって建てられた港区立の学校

 

★の数で「環境にやさしい建築物」をアピールできる以外、建築主には何のメリットもなく、罰則規定もありませんが、徐々に浸透しつつあるようです。

もともとは、「森も林もない都会にも日本の森林を守る活動ができないだろうか」という発想からスタート。港区はマンションやオフィスビルが次々に建てられる建材の一大消費地なので、その立場から国産木材の利用促進を図ろうということになったそうです。

普通の森林保護は供給サイドである林業地での運動ですが、林業地のない消費サイドがそれをサポートするという新しい試みです。

 

 

 

「いま、全国の都市部の自治体がこのモデルが成功するかどうかに注目し、後に続くか否かを決めようとしています。建築主の強い抵抗がありますが、意地でも成功させます」。パネラーである担当者は強い決意でそう言いました。区長も同じ思いだそうです。

こういう頑張りが何かを変えていくんでしょうね。港区以外にも早くこの制度が広がるといいな。

 

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