樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

映画三昧

2020年08月27日 | 野鳥
最近、よく映画館に行ってます。この1カ月で4本見て、来週は見逃した作品を宝塚まで追いかけて見に行き、その後も京都のミニシアターで1本見る予定です。
そのうちの1軒で、コロナで苦境に立たされた関西のミニシアターを支援するTシャツを買いました。裏には13の映画館のロゴがプリントされていて、このうち5つはよくお世話になっているミニシアターです。



一般的には映画館は感染リスクが高いと思われているようですが、平日は観客もまばらで、館内で声を出すことはないので、私は感染リスクは低いと思っています。
今月見た4本のうち1本は鳥の映画『グランド・ジャーニー』。フランス南部の自然保護区で人工ふ化させたガンをノルウェーまで運び、少年が軽飛行機で一緒に飛んで渡りのコースを教えるというストーリーです。



ある野鳥保護家が行った実話に基づくフィクションで、本人が脚本を担当しています。実際の話を、少年がガンと一緒に空を飛ぶという童話『ニルスの不思議な旅』のように脚色した作品で、映画の中で主人公の少年がお気に入りの鳥に名付けた「アッカ」はこの童話に登場するガンの名前ですし、途中で着陸した町で名前を尋ねられた少年は「ニルス」と答えます。
バードウォッチャーにとっては、人間を親と認識して必死についてくるかわいい雛や、軽飛行機の横を飛ぶガンの姿など見どころが多く、フランスへ導いたガンが今度は自力でノルウェーの湖に戻ってくるラストシーンでは感極まります。
フランスでは昨年の興行成績ベスト10にランクされるヒット作になったそうです。日本では日本野鳥の会、WWFジャパン、日本自然保護協会、日本国際湿地保全協会が後援して公開されました
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日本初の探鳥会

2020年08月20日 | 野鳥
1934(昭和9)年6月2日~3日、日本野鳥の会の創設者・中西悟堂によって、富士山の裾野で日本初の探鳥会が挙行されました。悟堂は愛鳥思想の普及を国民運動として盛り上げるため、鳥類学者だけでなく社会的な影響力を持つ文化人にも広く声をかけました。詩人の北原白秋、言語学者の金田一京助・春彦親子、民俗学者の柳田国男、さらに新聞社や放送局の関係者なども招待し、総勢約40人が参集しました。



金田一春彦が「私はそういう会に参加したのは、その時一回だけである」と書いているように、文化人のほとんどは鳥に関心があるわけではないので、いきなりバードウォッチングを教えても楽しめません。そんな参加者でも鳥に興味を持てるよう、悟堂は周到に準備します。
姿が見えない時は声で楽しませたり、鳥を呼び寄せるため、口笛などで鳥の声をまねする名人を招きました。また、富士山の野鳥に詳しい現地の案内人も数名呼び寄せました。参加者が全員集まるまでの間の余興として、レコードでブッポウソウの声を聞かせたり、案内人に富士山の鳥の話をさせたりもしています。
下見も念入りで、金田一春彦は次のように記しています。「中西先生は、こういう人たちの期待に応えようと、前日、前々日から出張して、付近の山道をまわり、どこに何の鳥の巣があり、卵がいくつあるというようなことを確かめておられた。また、名士といっても強健な人、足弱の人、鳥について玄人はだしの知識のある人、ほとんど無知の人がある。そういうバラエティーを考えて、案内のコースを、三通りも四通りも考えておく慎重さだった」。
こうした準備のおかげで参加者はそれぞれに楽しんだようで、キビタキやセンダイムシクイのさえずりに耳を傾ける者、声を音符で記録する者、鳥の巣をスケッチする者、植物図鑑を取り出して草花を調べる者もいたとか。現在私たちが実施している探鳥会のスタイルは、この日本初の探鳥会がベースになっているわけです。
蛇足ながら、『待ちぼうけ』『この道』などの童謡を作詞した北原白秋(下)は意外にも酒好きで、前夜の宿で中西悟堂をつかまえて夜中1時頃まで飲んでいたそうです。


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おいしいものは脂肪でできている

2020年08月13日 | 野鳥
以前、鳥が好む木の実の色は、冷温帯地域では赤、暖温帯地域では黒という記事を掲載しましたが、鳥は色だけで木の実を選んでいるわけではないようです。ある研究者が、冬の市街地で鳥が集まる木の下に種子トラップを置き、糞とともに排出される種子を6年間採取して調べたところ、果実が熟す順番とは関係なく、毎年食べられる順番が決まっていることが判明しました。
クスノキ(実の色は黒)がいちばん早く、次いでトウネズミモチ(灰色)、ナンキンハゼ(白)、最後にクロガネモチ(赤)の順で、それらの脂肪分を分析したところ、クスノキが最も豊かで、最も少ないのがクロガネモチでした。その研究者は次のように書いています。
「鳥が選択した理由として果実の脂肪分が考えられる。野外観察でも、冬期に平野部に移動してきた鳥は最初にクスノキ科のクスノキやヤブニッケイなどの脂肪を多く含んだ果実や、アカメガシワのように種子のまわりに脂肪が付着しているものを食べ、脂肪の少ないクロガネモチなどは、ほかの果実が食べつくされた後に食べにやってくる」。
下は脂肪分の多いナンキンハゼの実を食べるイソヒヨドリの雌。



また、ある鳥類学者によると、アフリカに生息するヤシハゲワシは猛禽でありながら木の実を主食にしているそうで、食べるのはアブラヤシ、つまり、脂肪分に富んだ果実。さらに、南米に生息するアブラヨタカも果実食で、名前のとおり脂肪分の多い木の実を食べているとのこと。
「おいしいものは糖と脂肪でできている」というCMがありましたが、鳥の世界も同じようです。
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田んぼ巡り

2020年08月06日 | 野鳥
「そろそろ来てるかな?」と思って、昨日1年ぶりに近くの干拓地にシギ・チドリ観察に出かけました。コロナ禍で半年ほど野鳥の会の探鳥会を実施していないのと、調査も雨で中止になったため双眼鏡を使うのが久しぶりで、慣れるのに少し時間がかかりました。
まずは予想どおりのアオアシシギ。しかも9羽の小群。昨年も同じエリアにずーっと9羽がまとまっていたので、同じ群れかもしれません。というか、この干拓地ではアオアシシギが越冬しているので、ひょっとすると9羽がそのまま留鳥化したとも考えられます。本来は日本には春と秋に渡来する鳥ですが、全国的に越冬例や留鳥化した例があるようです。



今年初めてのシギ・チドリ観察なので、干拓地の環境変化にも注視しました。鳥は水を張った休耕田で採餌するのですが、最近は水田が九条ネギの畑になったり、減反政策が終了したため休耕田が少なくなる傾向が続いています。「去年よりさらに休耕田が減っただろうな」と予想していましたが、意外にも新しい休耕田ができていて、枚数も面積も昨年より多くなっていました。
その一つで、コチドリがのんびりとくつろいでいました。農耕地という2次的な自然環境ながら、鳥たちがこうして自由に平和に過ごしているシーンを目にすると、何ともいえない安堵感が得られます。



バードウォッチングの楽しみは人それぞれですが、私自身は、野鳥が本来いるべき場所にいて、何の脅威もなくくつろいでいる姿を眺めながら一体感に浸れるのが一番の醍醐味です。
休耕田が増えたので、今年は昨年以上に田んぼ巡りして、その醍醐味を味わう機会が増えそうです。日焼けは覚悟の上ですが、熱中症には注意しないと…。
コメント (2)
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