樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

コブ

2011年01月31日 | 樹木

散歩しながら街路樹や庭木を観察したり、森に出かけてツリーウォッチングしていると、時々コブのある樹に出会います。「樹には何故コブができるのだろう?」と疑問になって、手元にある樹木医の本を紐解いてみました。 

コブの原因にもいろいろあって、一つはホルモンの異常。ある菌が樹体内に侵入するとホルモンが異常生長して、その部分が膨れるというもの。樹木にもホルモンがあるんですね、知らなかった。

もう一つは病気。ある細菌が侵入すると正常な細胞がガン化して増殖し、その部分だけ膨らむというもの。人間のガンと同じく、あちこちに転移するそうです。

私のフィールド栃の森でも、所々にコブのある樹があります。しかも、コブのある樹木がある範囲に集中している場所がいくつかありました。多分、最初に病気に冒された1本から感染して周囲に広がったのでしょう。

 

 

コブだらけのブナ

 

また、全くコブのない個体もあれば、上の写真のようにコブだらけの個体もあります。ガンがあちこちに転移したのでしょう。そして、私が観察した限りでは、コブがあるのはブナとミズナラに限られていました。

先日、大阪のある通りで、コブのあるシラカシが3本続いて植えられている街路樹を発見。多分、植木業者のバックヤードで感染が広がって、次々に病気になったシラカシがまとめてここに運ばれて植えられたのでしょう。

 

シラカシのコブ

 

 庭木ならクレームの対象になるかも知れませんが、街路樹としてはコブがあろうがなかろうが商品価値としては変わらないというか、誰も気にしないということでしょう。

 ブナもミズナラもシラカシもブナ科の樹木。以前お伝えしたように、この仲間はナラ枯れにもやられていますが、ガンに冒されやすいのかも知れません。

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校歌の木

2011年01月27日 | 木と歌

かなり前に書きましたが、私の小学校の校庭にはポプラが植えてあって、校歌にも「♪~ポプラ並木の 五輪が丘に 鐘が響くよ 楽しいな~」と歌われていました。その後に卒業した中学や高校、大学の校歌には木は登場しません。 

 

宇治植物公園のポプラ並木

 

先日読んだ本に、甲子園によく登場する高知商業高校の校歌には「レバノン杉」が歌われていると書いてありました。レバノン杉はピラミッドや宮殿の建築、船などに使われた有用材ですが、「日本の学校の校歌になぜ中近東の木が?」と不思議に思って調べてみると、2番が以下のような歌詞でした。

♪~天にそびゆる喬木を レバノン山の杜に伐り

舟を造りて乗り出でし フェニキア人のそれのごと

商業高校なので、商業民族として知られるフェニキア人を歌ったのではないかと言われています。私の小学校の校歌のチマチマした歌詞に比べて、何と壮大な世界観でしょう(笑)。

阪神タイガースの藤川球児もこの歌を歌いながら成長したわけです。この歌詞に因んで、校庭にはレバノン杉が植えてあるそうです。

 

新宿御苑のレバノン杉の林

 

レバノン杉が見られる場所は日本には数ヶ所しかありません。上の新宿御苑のレバノン杉は、仕事で東京に出張した際にどうしても見たくて寄り道したときのもの。

ちなみに、日産のカルロス・ゴーンさんはレバノン人だそうです。私世代の人には懐かしい歌手・ポール・アンカも。そう言われれば、顔立ちが欧米系民族とは違いますね。

 

 レバノン杉の葉

 

以前ご紹介しましたが、京都大学ではクスノキがシンボルになっていて、ロゴマークにも描かれていますし、校歌にはクスノキが歌われています。

♪~緑吹く 楠の葉風に 時の鐘  つぎて響けば

 

 

京大の時計台前にあるクスノキ

 

校歌を調べていて意外なことが分かりました。東京大学には校歌がないそうです。東大だけでなく、旧帝国大学のうち校歌があるのは京都大学と北海道大学だけで、東北大学、名古屋大学、大阪大学、九州大学にもないそうです。

母校じゃないのでどうでもいいけど、知らなかったなあ~。

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古代のクラプトン

2011年01月24日 | 木と楽器

3世紀頃の日本を綴った『魏志倭人伝』に、人が死ぬと、嘆き悲しむ喪主の周りで歌舞飲酒すると書いてあるそうです。当時の葬式では歌ったり踊ったりしたわけです。 

そのためには音楽が必要で、それを奏でた楽器の一つが琴だろうと推測されています。各地の古墳からさまざまな琴が発掘されているからです。 

滋賀県守山市でもヒノキやスギで作った琴が5台出土しました。守山市立埋蔵文化センターに行った際、現物は見られませんでしたが、ワークショップで再現したものを見せてもらいました。

 

 

ヒノキで復元した古代の琴

 

現在私たちが知っている琴は中国にルーツがあり、正確には「筝」と書きますし、材質もキリです。一方、古墳から出土する日本の琴は上のような熊手のような形で、材質もほとんどがスギ、ヒノキ、モミなど針葉樹。中国原産のキリはこの時代にはまだ日本へ移入されていなかったはずです。

アコースティックギターやバイオリンの表板に使われるのもマツやヒノキの仲間ですから、弦楽器と針葉樹は相性がいいのかも知れません。

古墳からは琴だけでなく、演奏者の埴輪も出土しています。その一つが下の写真。確かに両手で琴を弾いています。

 

                  

ここから先は私の推測ですが、こういう埴輪があるということは、専門の琴奏者がいたということでしょう。プロあるいはセミプロのプレーヤーがいて、葬式があれば招かれて、嘆き悲しむ喪主の横で琴を鳴らし、参列者が踊る伴奏をしていたはずです。

今で言えば、そして私の好みで言えば、エリック・クラプトンみたいなミュージシャンが葬式で演奏してくれるわけです。いいですね~。

 

 

私のクラプトン・コレクション、CDと書籍

 

ジャズにのめり込んでいた頃、妻に「僕が死んだら、葬式でこの曲を流して欲しい」と頼んでいた曲があります。キャノンボール・アダレイの『アラバマに星は落ちて』。

今頼むとすれば、クラプトンの『River of Tears』かな? どちらも葬式にふさわしい暗い曲  しっとりしたバラードです。

みなさんには、自分の葬式で流して欲しい曲はありますか?

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日本最大の書店

2011年01月20日 | 木と作家

バブリーな頃は、まとまったお金が入ると本屋さんに行って、欲しい本を片っ端から買って、重い紙袋を提げてウキウキしながら帰るというのが密かな贅沢でした。

今はまとまったお金が入ることもなくなって(笑)、本は基本的に図書館で借りるか、高価な新刊本は図書館に購入希望を出して読むので、あまり買わなくなりました。それでも、「大阪に日本最大の書店がオープンした」というニュースを聞くと、気になって出向いてしまいます。

最も賑やかな繁華街・梅田の一角に安藤忠雄設計による21階建てのビルが建ち、その地下1階から7階の全フロアがMARUZEN & JUNKUDO。フロア面積2060坪、蔵書数200万冊の日本最大級の書店だそうです。

 

 複合ビル「チャスカ茶屋町」の7階までが書店、その上はホテルやマンション

 

2つの大手の本屋さんが1つの店に?」と不思議でしたが、調べてみると、丸善もジュンク堂も大日本印刷に買収されて子会社になっているんですね。将来的には統合されるのでしょう。

仕事の打合せの合間だったのでウロウロせずに樹木コーナーへ直行。京都・河原町のジュンク堂も樹木関係の本が充実していますが、それ以上のラインナップです。

 

ここ全部が植物コーナー。その約1/3が樹木や森の本

 

見学だけのつもりでしたが、やっぱり目の前にあると欲しくなって、図書館にはなさそうなマニアックな本を3冊だけ買いました。

『万葉の樹木さんぽ』は万葉集に歌われた樹木や木材の話。『森と樹木と人間の物語』はヨーロッパの民話や神話に出てくる樹木の話。『アセビは羊を中毒死させる』は森林インストラクター・渡辺一夫さんの樹木のウンチクシリーズ第2弾。それに、いよいよプレイオフが始まったので、アメフトの雑誌も買いました。

 

 

ところが、帰ってネットで調べたら、大阪市立図書館に3冊とも蔵書がありました。ショック。でも、3冊とも「貸出中」だったので、「まっ、いいか~」。

まだ読んでいませんが、立ち読み段階ではいろいろ面白い話が書いてあるようなので、またブログで紹介しますね。

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一羽ユリカモメ

2011年01月17日 | 野鳥

京都の冬の風物詩の一つは鴨川のユリカモメ。餌を与える人がいることもあって、毎年多数が集まります。 

「大阪鳥類研究グループ」の情報によると、20051月に鴨川で捕獲されて脚に「黄色SE」のカラーリングを付けたユリカモメが、その年の12月、つまり一旦シベリアに帰って夏を過ごした後、東京都の隅田川で発見されたそうです。

そして2006年の12月には再び鴨川や関西の海岸で、20071月には三重県津市の海岸で、さらに昨年の暮れにはまたまた鴨川で発見されたそうです。下はその時の写真。

 

 

大阪鳥類研究グループからいただいた写真。黄色のSEのリングが見えます

 

ユリカモメは宇治川にもやってきます。平等院沿いの塔ノ島から宇治大橋にかけて、川面に浮かんだり、浅瀬で羽を休めたり、観光客が与える餌に群がったりしています。先日カウントしたら、約140羽いました。

 

 

別の日にスコープと双眼鏡を持参して調査したところ、「黄色PP」のカラーリングを付けた個体を発見。研究グループに報告しました。

 カモメの仲間は目つきが悪いので好きになれませんが、このユリカモメだけは嘴や脚が赤くて可愛いし、顔も愛嬌があるので見ていて飽きません。

餌付けに群がる集団や浅瀬で休む一群がいる一方で、1羽で川面に浮かんで何かを啄ばんでいるヤツがいました。一匹オオカミならぬ一羽ユリカモメ。

 

 

眺めているうちに、組織を離れて一人で仕事をしている我が身が二重写しになって、何だかいとおしくなってきました。人が与えてくれる餌(給料)に頼らず、自分ひとりで餌を探して食べているユリカモメ…。お互いに頑張ろうな!(笑)

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知ったかぶりカイツブリ

2011年01月13日 | 野鳥

日本最大の湖・琵琶湖は昔は「鳰(にお)の海」と呼ばれていたようです。鳰(にお)とは水鳥のカイツブリのこと。昔から琵琶湖にはカイツブリがたくさん生息していたからでしょう。滋賀県の鳥にも指定されています。

 

 

琵琶湖じゃなく近くの池で撮ったカイツブリ

 

その滋賀県で「知ったかぶりカイツブリ」というキャラクターが大ブレイクしています。ローカル局BBC(びわ湖放送)でアニメが放映されたり、あちこちのイベントに着ぐるみが登場したり、CDDVDが発売されています。その中で私が気に入っているのは、キャラクターが歌う「告白の唄」。

京都の人は滋賀県を見下す傾向があります。東京の人が埼玉県や千葉県を見る目に近いのでしょう。それを逆手にとって、秀逸な自虐ソングに仕上げているのです。

例えば、「♪~滋賀県に入ると快速電車は普通電車と同じです」とか、「♪~世界のニュースのBBCもびわ湖放送と思ってた」など。これをカイツブリのキャラクターが歌うのです。

 

 

以前、はなわというタレントがベースギターを弾きながら佐賀県の自虐ソングを歌っていましたが、あれの滋賀県版。ローカルな地名や事柄がネタになっているので関西以外の人には意味不明かも知れませんが、関西人には大受けするはず。

 

 

今年のNHK大河ドラマ「江(ごう)」も滋賀県が舞台ですし、今年は滋賀県民にとっては逆襲の年ですね、カイツブリと上野樹里で。

宇治市も京都市の弟分的存在ですから、京都市VS滋賀県という関係性は似たようなもの。自虐ソングを作って、宇治市の鳥カワセミに歌わせようかな~。

♪~小学校の水飲み場で蛇口をひねるとらお茶が出てきます… (これ本当なんですよ)

♪~地下鉄の駅は「六地蔵」だけです…

 

知ったかぶりカイツブリのwebサイトはこちら

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プラスチックのような木

2011年01月10日 | 木の材

前回ご紹介した「木の町KYOTOフォーラム21010」で、岐阜大学がおもしろい技術を展示していました。木を高圧の蒸気で圧縮して変質・変形させることで、木材の用途を拡大しようという試みです。 

例えば下の写真は、左が高圧蒸気で圧縮した桐材のスライス、右はそれを型にはめて変形させたもの。

 

 

薄い木片がトレイになるのです。これが実用化されれば、プラスチックのトレイや容器を木製に切り替えることができます。 

この技術は一部ですでに実用化されていて、NTTドコモが発表した木製の携帯電話に採用されているそうです。また、以前ビクターが木製のスピーカーを商品化したことをご紹介しましたが、現在この技術を使って新たに試作されているそうです。

 

 

スピーカーとして変形させることも可能

 

スライスを変形させるだけでなく、丸太をそのまま高圧蒸気で変形させれば、切ったり削ったりせずに角材を生産することも可能で、さらに、下の写真のように複雑な変形もできるそうです。

 

つる細工みたいですが木です

 

また、スギなど軟質の木材を硬化させて強度を高めることもできるそうです。この技術がもっと普及すれば、木材が石油系樹脂に取って代る可能性もあります。科学っておもしろいですね~。

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木の町KYOTOフォーラム

2011年01月06日 | 木のイベント

1223日に「木の町KYOTOフォーラム21010」というイベントが、地元の放送局KBS京都で行われたので行ってきました。テーマは「木材の有効利用と地産池消で地球と地域の元気を取り戻そう!」。要するに京都府産木材の消費拡大をアピールする催しです。
屋外の会場では、薪割り体験、北山杉の間伐材で作った迷路、バイオマス燃料を使った足湯など、いろいろ工夫をこらしたコーナーがありました。


薪割り体験コーナー


木の迷路


足湯コーナー

ホール内では歌やお笑いのステージのほか、さまざまな木工品のブースが並んでいます。クリスマス直前だったので、ホール中央には北山杉で作ったクリスマスツリーも飾ってありました。モミの木である必要はないですし、国によって樹種が違うようですから、京都府民は北山杉のツリーでいいのではないでしょうか。


北山杉のクリスマスツリー

ある木工品のブースでは、端材で作った楽器が展示してありました。ドラムセットとエレキギターには食指が動きましたが、家の飾り棚や書棚は鳥のぬいぐるみや木製の置物だらけで場所がないのでグッとガマンしました。


ドラムセット(3000円)


10cm
くらいのエレキギター(1000円)

このほか木を使った新製品や開発中の技術なども展示されていて、なかなか興味深いイベントでした。

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大銀杏の木霊

2011年01月03日 | 伝説の樹

あけましておめでとうございます。今年も樹木のウンチク話にお付き合いください。
さて、昨年の3月、鎌倉にある鶴岡八幡宮の大銀杏が倒れたというニュースがありました。妻の実家があちら方面なので、年末に帰省した際に携帯カメラで写真を撮ってきてもらいました。

 
大銀杏があった場所(注連縄のある所)。すでに根元から彦生えが出ています

このイチョウは幹回り6.8m、高さ約30mで、樹齢は1000年だったそうです。日本史の授業で習いましたが、鎌倉幕府3代将軍の源実朝は、このイチョウの幹に隠れていた甥の公暁に暗殺されます。以後、「隠れ銀杏」として有名になり、鶴岡八幡宮のご神木として崇められてきました。
ところが、「樹齢1000年であれば実朝が暗殺された1219年にはまだ樹齢200年程度なので、暗殺者が隠れられるような太い樹ではなかったはず」と疑問を呈する樹木学者もいます。

 
倒木を切って立てた別の場所でも新しく芽吹いています

ご神木が倒壊した後、その枝をお守りとして販売しているというニュースも伝わったので、買ってきてもらいました。
鶴岡八幡宮のホームページには、「3月の倒伏後に見事に芽吹き始めた御神木大銀杏の生命力は、私たちを勇気付けてくれます。この「大銀杏 木霊」は大銀杏の枝から奉製した特別なものです。木霊の尊さを感じ、お守りとしてお持ち下さい。」と書いてあります。

 
大銀杏木霊(こだま)800

「倒れてもただでは起きない」と言うべきか、神社もなかなか強かですね。

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