樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鳥の保育園

2015年06月29日 | 野鳥
20日(土)の夕方に栃の森のキャンプサイトに到着し、翌朝4時半に起きて出発しようとしましたが、夜中に始まった雨と雷が止みません。過去20数年間、雨で出発を遅らせたことはありませんが、さすがに雷はやり過ごして30分ほど待ちました。
不安定な天候はその後も続き、小雨が降ったり止んだり、晴れ間が出たかと思うと急に滝のような雨が降ってきたり、また晴れたり…という猫の目状態。レインウェアを着たり、脱いでデイパックに詰めたりの繰り返しでした。
カメラと三脚もデイパックに収納して、雨が止んだらセットするつもりでしたが、なかなか出せません。
そんな状態にもかかわらず、鳥たちがよく姿を現してくれました。繁殖の最終段階というか、巣立ちしたばかりのヒナが親鳥の後を追いかけて餌をもらうシーンがあちこちで見られました。下は、ヒガラの親子。



このほか、アオゲラのヒナが巣穴から餌をねだったり、アカゲラの幼鳥が餌をもらったり、コガラやキバシリのヒナ連れが出てきたり、森の中は鳥の保育園のよう。育てる親は必死でしょうが、見ている私はつい微笑んでしまいます。
最後の休憩ポイントでは最近必ずタカが出現しているので、「今回も…」と空を見上げていると、期待どおりツミのペアが登場。しかも、ハチクマまで現れて、ツミがモビングするという贅沢なシーンを見せてくれました。



同行の仲間は「ハチクマの羽根が傷んでいるのは抱卵のせいかもしれない」とのこと。ということは繁殖しているということです。ペアのツミも繁殖の可能性が大。この森の豊かさをあらためて実感しました。
帰路の林道では、オオルリがすぐ目の前の木に止まってさえずってくれます。天気には恵まれませんでしたが、鳥には恵まれた一日でした。



雨の森歩きは厄介ですが、帰宅後も大変。ほとんどのものが濡れているので、部屋中に広げて乾かすことになります。レインウェアや三脚、レジャーシートは広げて、カメラや双眼鏡、デイパック、フィールドノートなども机の上や床に置くので、私の部屋は丸一日足の踏み場もなくなります(泣)。
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トチノキの開花

2015年06月25日 | 樹木
5月に栃の森を歩いた際、コースで最も巨大な樹木であるトチノキが花をつけていませんでした。下から見上げて花が見えないだけでなく、地面にも花弁が落ちていません。
樹齢500年以上と思われる老木ながら、毎年元気に花を咲かせ、たくさん実を落としていたのですが、今年は開花しなかったようです。


トチノキの巨木

ほかにも開花していないトチノキがいくつかあったので、気になってトチノキの開花サイクルを調べてみました。
天然のトチノキは不明ですが、埼玉県志木市のツリーウォッチャーが街路樹のトチノキ(多分セイヨウトチノキ=マロニエ)の開花状況を調べて公表していました。
それによると、86本のトチノキのうち「花付きのいい木」が24本、「まあまあ」が27本、「寂しい」が31本、「開花せず」が4本。自生の樹木と街路樹では条件が違うでしょうが、開花しない個体が5%はあるということです。


トチノキの花。マロニエの花もほとんど同じ

5月に未開花の株が目立ったので、毎年6月に森の里で購入するトチノキの蜂蜜の出来が悪いのではないかと心配していました。ところが、週末に訪れた帰りに買いに行くと、「今年は花が咲くのが早く、開花時期に雨が降らなかったので、例年よりもたくさん採れました」とのこと。開花時期に雨が続くとミツバチが活動しないので、収量が減るそうです。


今年も上出来の「とちはちみつ」

ご主人に「トチノキが開花しない年もあるのですか?」と尋ねると、「株によって時期がずれたり、花付きが悪いことはありますが、花は咲くと思いますよ」とのことでした。
でも、つぶさに調べたわけではなさそうなので、私の巨木の観察結果とマロニエの調査結果を信じることにしました。
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むくどり通信

2015年06月22日 | 野鳥
私が所属する日本野鳥の会京都支部の会報名は『そんぐぽすと』。野鳥がさえずる場所Song Postに、会員それぞれが言いたいことを発言する場という意味を込めてのネーミングです。
お隣の大阪支部の会報は『むくどり通信』。これにも何かいわれがありそうですが、先日たまたまそれが判明しました。
江戸時代、冬になったら集団で出稼ぎにやってくる東北人を、江戸っ子たちが「やかましい田舎者の集団」という意味で「椋鳥」と名づけてバカにしていたそうです。故郷から江戸に向かう道中でその屈辱を受けた小林一茶は、「椋鳥と人に呼ばるる寒さかな」という俳句を残しています。
確かに、ムクドリは冬になると群れを形成し、ギュルギュルとうるさく鳴きます。


木に群がるムクドリ

この「ムクドリ=田舎者」というアイコンを利用し、明治時代の文学者・森鴎外が海外情報を伝える文芸誌の連載コラムを、「日本=世界の中の田舎者」という意味で「椋鳥通信」と命名。それが大阪支部の会報名の由来のようです。
この話には尾ひれがあって、現代の作家・池澤夏樹が1993年から1998年まで『週刊朝日』に連載していたコラムも「むくどり通信」。
池澤自身が森鴎外の「椋鳥通信」を盗用したことを認め、「名もなき人のものを盗むのはこそこそしていけないが、天下の大文豪のものならば堂々と盗めるような気がしたのだ」と書いています。
大阪支部には申し訳ないですが、会報名としては『むくどり通信』よりも『そんぐぽすと』の方が含蓄があっていいネーミングだと思います(笑)。
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鳥類学者兼作曲家

2015年06月18日 | 野鳥
現代音楽の作曲家、オリビエ・メシアンは『鳥のカタログ』など野鳥をテーマにした作品をいくつか遺しています。鳥類学者でもあったようで、鳥のさえずりをそのまま楽譜にするというユニークな方法で作曲しています。
親日家でもあったらしく、鳥の声を採譜するために軽井沢を訪れています。その際に案内した野鳥の会の会員が以下のように記しています。
「先生はじっと鳥の鳴き声を聞いておられたかと見る間に、5線譜の上に、1小節ずつ書いていかれるのであった。特にキビタキとクロツグミにはいろいろな替え歌があって、われわれ野鳥の会員の間でも、いくら教えても覚えられないほど難しい鳥であるにもかかわらず、先生はすらすらと譜面上に書いてゆかれるので驚いてしまった」。
そして、録音テープから採譜することを勧めると、メシアンは次のように断ったそうです。
「鳥が鳴き、嘲るのは皆それぞれレパートリーがあって、ただ勝手に鳴くのではありません。だからフィールドで実際に聞かなければ、強弱や鳴くタイミングがわかりません」。
このあたりが、単なる作曲家ではなく、鳥類学者兼作曲家である所以でしょう。
その作曲の様子がYouTubeにアップされています。



軽井沢で採譜した後にメシアンに会った小沢征爾は次のように述懐しています。
「彼は採譜した野鳥の歌の譜を私に見せてくれた。それは実に詳細なもので、例えばウグイスの声をただそれだけ記譜してあるのではなく、一斉に嘲る野鳥のコーラスを、まるでオーケストラ・スコアのように、同時に書きとめているのである」。
このときに採譜された鳥の声が、後に『軽井沢の鳥たち』という作品になっています。
鳥の声に関心のある人は、メシアンの作品をチェックした方がよさそうですね。
なお、オリビエ・メシアンは第1回京都賞の受賞者でもあります。
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This is a pen.

2015年06月15日 | 野鳥
筆記具ケースから万年筆が消えて、もう10年以上経ちます。残っているのは、ボールペン、シャープペン、サインペン。
この英語のPENの語源はラテン語のPENNAで、そのPENNAは「羽根」を意味するそうです。つまり、万年筆(fountain pen)やボールペンのルーツは羽根ペンにあるわけです。
ということを知ると、バードウォッチャーの心には「羽根ペンにはどんな鳥の羽根が使われていたのだろう?」という疑問が当然のように湧いてきます。
ペン用の最良の羽根は、北ヨーロッパのガチョウ、ガン。次いで、ハクチョウ、シチメンチョウ、ペリカンなどの羽根も利用されたそうです。細字用にはカラスの羽根も使われたとか。
猛禽類の羽根も重宝されたようです。下の羽根はハヤブサの仲間、チョウゲンボウの初列風切羽。知人が保有する膨大な羽根コレクションのうち、猛禽の中では最も美しいと思った羽根です。
チョウゲンボウはヨーロッパにも生息しますから、猛禽の好きな当時の男どもは好んで使っていたのではないでしょうか。



良質の羽根を入手するために、生きた鳥の翼から翼端に近い風切羽を抜き取ったようです。だから、ガチョウとかシチメンチョウなど飼い鳥の羽根が使われたのでしょう。
面白いのは、右利きの人には左の翼の羽根、左利きの人には右の翼の羽根が書きやすいそうです。バランスからいうと逆のような気もしますが、右利きの人が右の翼の羽根を持つと内側にカーブして顔に当たるからかもしれません。
初めて英語を習う時のフレーズ「This is a pen.」は、「これは羽根です」という意味だったわけですね。
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木の視線

2015年06月11日 | 樹木
当ブログに毎回コメントを下さる北海道のguitarbirdさんは、「見つめるシラカンバ」と題して以下のような画像を時々ブログに掲載されています。シラカバの樹皮には人間の目のような模様が出ることが多いからです。


guitarbirdさんの許可を得て転載

シラカバが自生しない関西では木に見つめられることはありませんが、先月、栃の森を歩いているとき視線を感じました。
振り返ると、私を見つめていたのがミズメだったので、「なるほど!」と納得しました。ミズメはシラカバと同じく、カバノキ科カバノキ属。この仲間は、樹皮に「への字」模様が現れるという共通点があるようです。


私を見つめていたミズメ。左の幹にも目があります。

そうなると、「なぜカバノキ属の樹皮にはへの字が現れるのだろう」と気になります。
カバノキの仲間の特徴は皮目が横一であること。日本の樹木の中で、横一の皮目はサクラとカバノキのみ。多分、それが理由だろうと推測しました。
調べてみると、以下のことが判明しました。
シラカバは紙状に樹皮がはがれるので、枝の部分ではひずみができて黒いシワになります。その枝が枯れ落ちた後、シワがへの字に、丸い枝の跡が目のように見えるとのこと。横一の皮目のことは書いてありませんでした。
また、同じカバノキ属でもダケカンバはへの字になりにくく、それがシラカバとの識別点になっているとのこと。
私を見つめたミズメも、栃の森にはたくさんあるのに今まで視線を感じなかったのは、への字になりにくいからでしょう。シラカバと違って樹皮がグレーなのでへの字が目立たないということもあるでしょう。
でも、木に見つめられながら森を歩くのは落ち着かないですね(笑)。
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川端康成と野鳥

2015年06月08日 | 野鳥
日本で初めてノーベル文学賞を受賞した川端康成に『禽獣』という短編があります。この中にはいろんな鳥が登場します。ただし、飼い鳥として。
主人公が特に可愛がったのはキクイタダキ(菊戴)。その理由を以下のように記述しています。

菊戴は、日雀(ひがら)、小雀(こがら)、みそさざい、小瑠璃(こるり)、柄長(えなが)などと共に、最も小柄な飼鳥である。(中略)頭の頂に一つの黄色い線を囲んだ、太い黒線がある。毛を膨らませた時に、その黄色い線がよく現われて、ちょうど黄菊の花弁を一ひら戴いたように見える。雄はこの黄色が濃い橙色を帯びている。円い目におどけた愛嬌があり、喜ばしげに籠の天井を這いまわったりする動作も溌剌としていて、まことに可憐ながら、高雅な気品がある。

下の動画は2年前に撮影したキクイタダキ。川端が表現するように、頭頂部に黒い線と黄色い菊が見え、クリッとした目で愛嬌があります。



引用したような愛らしい描写がある一方、売るために巣ごと取ってきたヒバリのヒナのうち、売れないメスを道端に捨てるとか、死んだキクイタダキを押入れに放置するなど、バードウォッチャーには読むに耐えないシーンも出てきます。
また、以下のような描写を読むと、主人公の心は歪んでいるように思います。

夫婦となり、親子兄弟となれば、つまらん相手でも、そうたやすく絆は断ち難く、あきらめて共に暮らさねばならない。おまけに人それぞれの我というやつを持っている。それよりも、動物の生命や生態をおもちゃにして、一つの理想の鋳型を目標と定め、人工的に、畸形的に育てている方が、悲しい純潔であり、神のような爽やかさがあると思うのだ。

こういう心情を川端康成自身が抱えていたのかどうかは不明ですが、この巨匠は犬が大好きで、ワイヤー・フォックス・テリアやコリー、グレイハウンドなどを飼っていたようです。『愛犬家の心得』という一文も残しています。
一方、鳥については、バードウォッチャーであった『婦人画報』の編集長・矢口純が、川端康成と次のようなやりとりをしたことを書き残しています。
川端「あなたは鳥の姿を見たり、鳥の声を聞くだけでいいんですか?」。
矢口「運の悪いときは姿はもちろん声も聞けないこともありますが、鳥の里にいるだけで、なぜかホッと心が休まるんです」。
川端「ホッとする…それは分かりますが、それだけでいいんですか? そうですか…分かりませんねぇ」。
野鳥に対する愛情と飼い鳥に対する愛情は別物ということでしょうか。
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変な葉っぱ

2015年06月04日 | 樹木
南信州ツアーでは鳥がなかなか現れないので、樹木の葉を写して暇をつぶしていました。どういう訳か、変わった形の葉っぱを多く見かけました。
まずは、フサザクラ。下の写真は先端が長くて漫画の吹き出しみたいな形です。このほか、葉先が5~7つに分裂しているタイプもあります。



京都でも鞍馬の貴船川ぞいにたくさん生えています。名前は「房桜」ですが、サクラの仲間ではなくフサザクラ科フサザクラ属。日本にはこの1種のみ自生します。
別名「タニグワ」。クワの葉は最も変形が激しく多様なので、「谷筋に生える桑」と命名されたのだと思います。
次は、ダンコウバイ。この葉も変形の幅があって、写真の葉は先割れスプーンみたいな形ですが、先割れせず普通にハートの形をした葉もあります。



漢字で書くと「檀香梅」。と言ってもウメの仲間ではなく、クスノキ科クロモジ属。クスノキ科の樹木はいい香りがしますが、このダンコウバイの材もクロモジのような香りがあって爪楊枝に使われます。
この「檀香梅」という名前は本来はロウバイの一品種の名前でしたが、明治時代にある人がこの木に転用して以来、広まったそうです。
次はケヤマハンノキ。形はそれほど変わっていませんが、関西では見かけないハンノキ属です。
葉の縁のギザギザを「鋸歯(きょし)」と言いますが、この葉のように小さなギザギザがさらに大きなギザギザを形づくっている場合は「重鋸歯」と言います。



重鋸歯の葉は他にもありますが、これほどはっきり「じゅ~きょし!」と主張している葉は少ないです。
珍しい葉っぱを追いかけながら、「珍しい鳥が出ないかな~」と期待しましたが、普通の鳥ばかりでした。
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南信州鳥見ツアー

2015年06月01日 | 野鳥
週末、毎年恒例の鳥見ツアーに行ってきました。昨年は北信州でしたが、今回は南信州。ところが、トラブル続出…。
まず、カーナビが不調なこともあって、名神→中央自動車道の分岐(小牧JCT)を通り過ぎてしまいました。信州に入ってからも、一般道や林道でUターンを繰り返す始末。
また、最初のポイントでは車がコンクリートブロックに乗り上げて、ジャッキアップで脱出することに…。さらに土曜の夜は、同行の友人宅でトラブルが発生して真夜中に何度も電話がかかってくるという騒ぎもありました。
それでも、鳥バカなのでバードウォッチングさえできれば結果オーライなのですが、肝心の鳥が…。
収集した情報が古かったこと、現地の環境が変化したことなどから、行く先々のポイントで目当ての鳥が現れてくれません。欲求不満が蓄積したころ、やっとブッポウソウを発見。3人でじっくり観察しました。
下の動画を見ると、オスがメスに対して求愛のディスプレイや給餌をしています。ということは、これから繁殖が始まるということのようです。なかなか見応えのあるシーンでした。



今回、カメラで撮った鳥はこのブッポウソウと、同じ地点で営巣していたイワツバメのみ。でも、天気に恵まれたので、それなりに信州ツアーを楽しんできました。
昼食は2日連続で同じ店で蕎麦をいただきました。しかも、土曜日に食べた野草や山菜の天ざるがおいしかったので、日曜日も天ぷら蕎麦を注文。鳥三昧できなかったので蕎麦三昧してきました。


1日目に食べた天ざる


2日目に食べた天ぷら蕎麦
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