樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

庭木のリスク

2007年09月28日 | 木と鳥・動物
3週間ほど前、妻の首が赤く腫れ上がったので、皮膚科に連れて行きました。
医者は「虫に刺されたのではないか」と言いますが、本人にはその記憶がありません。いろんな情報を総合すると、庭の樹にいた毛虫が何かの拍子に毒毛を飛ばして、それが首に刺さったようです。

       
           (見苦しい写真ですが、妻の首の患部)

植木屋さんが剪定作業中、虫に触ってないのに刺されることがあるそうで、それと同じ状況だったのでしょう。「そう言えば、庭に水をまいた時、カシワの葉に当たる音が面白くて長い間水をかけていた」とのこと。そのカシワの葉裏を調べたら、毛の長い虫がくっついていました。

       
            (カシワの葉の裏にいた毛虫)

こんな形で役立つとは思っていませんでしたが、前回ご紹介した『昆虫の食草・食樹ハンドブック』で調べるとマイマイガのようです。ところが、「刺されると物理的に痛いだけで、毒はない」と書いてあります。
一方、皮膚の症状から判断すると犯人はチャドクガです。でも、チャドクガの食樹であるツバキやサザンカを調べましたが、虫はいません。結局、真犯人は突き止められませんでした。
庭に樹があると気持ちがいいし、花も咲くし、夏は涼しいし、防火にも役立ちますが、落ち葉の処理や剪定など面倒なこともあります。それに加えて、今回のようなリスクもあることを知りました。
それにしても、痛がっている妻の患部を撮影し、その見苦しい写真を公開するとは、見上げたブロガー魂でしょう?
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名を知るは愛のはじめなり

2007年09月26日 | 木と鳥・動物
以前、鳥の図鑑が19冊、樹の図鑑が12冊あると書きましたが、また1冊増えました。
セミと樹木の記事を書いた後、「木と昆虫の関係も面白そう」と思って調べたら、『樹皮ハンドブック』の著者の林将之さんが下の図鑑を出版されていたので買いました。

          
  (蝉は出てきませんが、甲虫や蝶、毒虫などと草や木の関係が分かります)

私は昆虫にはあまり興味がなくて、トンボやチョウの名前はほとんど知りません。でも、この図鑑には「チョウはミカン科の木に集まる」など、樹木と虫のつながりが書いてあって参考になります。うちの庭にある唯一のミカン科の樹はユズですが、そう言われてみれば、この樹の近くでチョウがヒラヒラしているのをよく見ます。
鳥もそうですが、樹を見始めると、庭木や街路樹や野山の自然木を見るたびに、その名前を知りたくなります。最初は、手軽な入門版の図鑑を買って調べますが、だんだん満足できなくなって、いつの間にか本棚に図鑑が10冊、20冊と並びます。
ある樹木のサイトに、「名を知るは愛のはじめなり」という植物学者の言葉が紹介してありました。自然観察のスタートはまず名前を覚えることであり、そこから自然を愛する心が育つ、という意味でしょう。私は言葉を生業にしていますが、こういう名言はなかなか思いつきません。
私流に言い換えれば、「図鑑の数と自然への愛は比例する」。チョット違うかな~? 皆さんの本棚に図鑑は何冊ありますか?
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馬鹿の蜂蜜

2007年09月24日 | 木と飲食
東京の銀座で蜂蜜を採取していること、ご存知ですか? 私もテレビで知ったのですが、NPO法人「銀座ミツバチプロジェクト」のホームページによると、スタートした昨年は150kg、今年も200kgの蜂蜜が採取できたそうです。
銀座のビルの屋上でミツバチを飼育して、4月のソメイヨシノ、5月上旬のマロニエ(セイヨウトチノキ)、5月下旬のユリノキなど、街路樹や近くの公園の樹木の花から蜜を集めているとか。その銀座ブランドの蜂蜜は近くのレストランやお菓子屋さん、バーなどで使われています。花が咲く街路樹があれば、都心でも蜂蜜が採れるんですね。ちょっとビックリしました。
私がいつも口にしている蜂蜜は、栃の森に行った帰りに地元の蜂蜜屋さんで買うトチノキの蜂蜜。写真の1.2kg入りの大瓶が、以前は3,000円でしたが、2年連続で500円ずつ値上がりして今は4,000円。それでも街で買うことを思えば安いです。私は1本しか買いませんが、仲間の一人は毎年3本買い込んでいます。

         
      (ブランド名も何もなく、ただ「純粋蜂蜜」。素朴でしょ?)

スーパーで売っている安物の蜂蜜は(多分水飴が混ぜてあるのでしょう)ただ甘いだけですが、この蜂蜜はほのかに野生的な花の匂いがします。最初は少し抵抗がありましたが、今では私の蜂蜜のスタンダード。約10年間、ほぼ毎朝トーストに塗って食べています。
しかし、中味はおいしいのに、瓶のラベルはひどいな~。花はいいとして、トチノキの葉は掌状複葉なのにカエデのような分裂葉になっている。しかも、実物は5枚か7枚の奇数なのに、描かれている葉は6枚。今度、蜂蜜屋のおじさんに忠告してあげよう。
トチノキの蜂蜜がなぜ「馬鹿の蜂蜜」かについては、こちらをご覧ください。トチノキを馬鹿にしているわけではありません。大好きな樹なので、新しいメールアドレスにその英語名を使ったほどです。
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割り箸か?マイ箸か?

2007年09月21日 | 木と飲食
下の写真は、ファミリーレストラン「デニーズ」の割り箸です。包装フィルムには、「森林資源を大切にしています。杉の建築材として使用しない部分を”お箸”として有効活用しています。」と書いてあり、中には最初から2本に割った箸が入っています。
この割り箸は、日本のスギの端材を中国に輸出し、現地の工場で箸に加工して日本に再輸入しています。なぜ、そんな回りくどいことをするのか、というのが今日のお話。

       

「マイ箸」がエコ運動の一つとしてブームになっています。現在、日本で使われている割り箸のほとんどが中国製。日本製の割り箸がスギの端材(丸太から角材を取った後に残る弓状の木材)を利用するのに対して、中国製の割り箸は材木(主にシラカバ)をカツラむきにして板状にし、型抜きするという方法で作られています。これが森林破壊につながるというので、一部のエコロジストが「マイ箸」を提唱しているのです。
ところが、日本の林業を守る立場からは反論が上がっています。ただでさえ苦境なのに、これ以上割り箸を排斥すれば日本の林業や割り箸産業が崩壊すると言うのです。日本製の割り箸を普及させればいいのですが、コスト的に無理なうえに、日本の割り箸製造業はすでに疲弊していて増産能力がないとか。
そこで考えられたのがデニーズの割り箸。日本で生まれる端材を利用することで森林破壊を防ぎ、なおかつ日本の林業にも貢献します。往復の輸送代がかかるので、その分のコストダウンを図るために最初から割った箸にしてあるのです。それでも一般的な中国製割り箸に比べれば高いでしょうが、デニーズはあえてこの割り箸を採用しています。

       
      (両方の色や木目は揃っていませんが、お箸としては十分です)

中国でも森林保護政策を採っているため、最近は材料のシラカバをロシアやモンゴルから輸入しているとか。割り箸の世界もグローバル化しているんですね。
中国政府は最近「割り箸輸出禁止」を発表したそうです。一時、炭でも同じようなことがありましたが、相変わらず中国製の炭は輸入されているようですから、割り箸も一筋縄ではいかないでしょう。
なお、割り箸に関しては『割り箸はもったいない?』という本が面白く、この記事もその受け売りです。著者の田中淳夫さんのブログは私も毎回読んでいます。
そこで知ったことですが、「日本製の割り箸をマイ箸にすればいい」という人もいるそうです。賢いアイデアですね。
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木と飛行機

2007年09月19日 | 木と乗物
那覇空港で中華航空機が炎上した事故がまだ記憶に新しいですが、あの737を製造したボーイング社はもともと材木会社です。社長のウィリアム・ボーイングがシアトルで飛行機を見て魅了され、航空機事業に乗り出したのが始まり。当時の飛行機は木製だったからです。
1916年、初めて完成したのは複葉の水上機でした。その後、第一次大戦の軍需によって大きく成長したものの、戦後は需要が激減して大リストラ。その間は家具やモーターボートの製造で何とか乗り切ったそうです。
第二次大戦当時の飛行機は金属製が主流ですが、イギリスでは木製の爆撃機(モスキート)が生産されました。そのメーカー、デハビランド社もボーイング社と同じく材木会社。木の性質を熟知していたため、完成した飛行機は優秀で、最高速度は630km。日本のゼロ戦が518km、アメリカのB29が576kmですから、はるかに上回ります。

       
       (木製飛行機に使われたバルサ。京大木材研究室で撮影)

機体は、スプルース(マツの仲間)の細い材の上にカバの合板やバルサ(世界一軽い木材)の合板を貼り合わせて作られました。速いだけでなく、製造が簡単で生産効率がいい、飛行中に機体に穴が空いてもそのまま接着剤で補修できるという長所がありました。
逆に、初期の機体はエンジンの過熱で燃えたとか、東南アジアに配備したら高温多湿のために腐ったという欠点もあったようです。カナダやオーストラリアでのライセンス生産も含めて8,000機近く生産されたとか。
日本でも木製の軍用機が製造されました。金属不足という理由よりも、敵のレーダーに捕捉されず奇襲できるから。こちらは実戦に配備される前に終戦を迎えました。

       
     (ラジコンの模型飛行機もバルサの骨組みにフィルムを貼っています)

ところで、世界最大の飛行機も実は木製です。大富豪ハワード・ヒューズが第二次大戦中に米軍用輸送機として製作した飛行艇で、愛称は「スプルース・グース(スプルース製の雁)」。正確に言うと、世界最大の翼を持つ飛行機。
世界最大の旅客機・エアバスA380は、全長73m、翼長79.8m。スプルース・グースは全長67m でエアバスに及びませんが、97.5mの翼長ははるかに凌ぎます。しかし、1機製造されただけで終戦となり、1回飛んだだけ。現在は、エバーグリーン航空博物館に保存展示されています。
木と飛行機の関係、意外でしょう?
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象のおかげ

2007年09月17日 | 木と鳥・動物
庭用のテーブルが壊れたので、ガーデニングのお店で物色しました。
目についたのが「チークのガーデンテーブル 半額 9,800円」。妻は「絶対これ!」と商品から離れません。私は「5,000円程度」と思っていたので迷いましたが、「チークは水に強いから雨ざらしの庭でも長持ちするだろう」と奮発しました。

       
   (買った時は汚れていたので、サンドペーパーで磨いてニスを塗りました)

チークは世界的な優良材で、水に強いので昔から船の甲板に使われてきました。また、マホガニーやローズウッドなどと並ぶ高級家具材でもあります。
原産は東南アジア。ミャンマーでは、「家を建てるのも、飼い葉桶も、豚小屋も、斧の柄、鍬の柄、杓もチーク」と言われるほど用途の広い木です。
テレビや雑誌でご覧になったことがあると思いますが、現地ではこの材木を象に運ばせています。スギやヒノキの倍くらい重いので人力では負担が大きいのでしょう。ミャンマーにはチークの運搬方法を教える「象の学校」があって、9年間トレーニングしてから実際の仕事をさせるそうです。職業訓練としては長いですね。
私が買ったテーブルのチーク材も、きっと象が運んでくれたんでしょうね。ありがとう~。

という記事を書き溜めた後、先日NHKで象使いのドキュメント番組が放映されました。タイではチークが伐採禁止になったために、象使いは隣のミャンマーで出稼ぎするか、観光産業で生き延びるしかないそうです。
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シギチ

2007年09月14日 | 野鳥
近くに巨椋(おぐら)池干拓田という広い農地があります。昔は大きな遊水地だった所で、前回ご紹介した秀吉の土木工事も宇治川の水をこの巨椋池にスムーズに流すためのものでした。
日本初の国営干拓事業として昭和8年に着工され、昭和16年に完成したそうです。ここは近畿でも有名な鳥のポイントで、今の時期はシギやチドリが、冬になると草原性のハヤブサやフクロウが集まってきます。

      
              (見渡す限り稲の海)

シギやチドリは河口部や海辺の干潟、大きな湖などに集まるのが普通で、内陸部の田園は珍しいようです。おそらく、遊水地があった頃の地理情報が鳥たちの体の中にDNAとして残っているのでしょう。
数年前、珍しい鳥が出現した際、多くのカメラマンが押し寄せて農家の人たちとトラブルを起したことがあります。それまでは、近いのでしょっちゅう行ってましたし、野鳥の会として毎月1回農道のゴミ拾いをしながら鳥を見る会を催すなど良好な関係を築いていたのですが、そのトラブル以来肩身が狭くなって遠慮していました。今年はそういう騒ぎもないようなので、久しぶりに鳥を見てきました。

      
     (車で接近すれば鳥が逃げないので、こんな道具で観察します)

デジカメとスコープを組み合わせた「デジスコ」で鳥を撮影するという目的もありました。その結果が下の写真。こうしたクチバシが長くて、茶色っぽい鳥がシギです。これは多分タシギ。チュウジシギやオオジシギの可能性もありますが、よく似ているので私には識別できません。

         
     (初めてのデジスコ。クチバシが異様に長いのがシギの特徴)

下の写真はツバメチドリ。けっこう珍しくて、環境庁は絶滅危惧Ⅱ類に指定しています。この干拓田では毎年出現するので、遠くからもバードウォッチャーがやってきます。
チドリの仲間は「千鳥足」と言われるように、あっちへチョロチョロ、こっちへチョロチョロ歩き回りますが、このツバメチドリはじーっとしています。

      
        (トリミングしたので不鮮明ですがツバメチドリ)

野鳥の会に入った頃、先輩たちが「シギチ、シギチ」と言うので、何のことだろうと思ったらシギ類とチドリ類をまとめて呼ぶ略語でした。当時は仲間内の隠語みたいで馴染めませんでしたが、今では私も平気で「シギチ、シギチ」と言ってます。

      
        (owakuさん、こちらでも不耕起栽培やってますよ)
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400年前の土木工事

2007年09月12日 | 木造建築
テレビや新聞で報道されたのでご存知かも知れませんが、豊臣秀吉が築いた堤防が宇治川沿いのマンション開発用地で発見されました。
徒歩15分の場所なので、説明会に行ってきました。「近所の人が100人くらい集まる程度だろう」とタカをくくっていたら、1回目の説明会だけで約300人。しかも、報道用のカメラがあちこちにセットされていて、上空にはヘリコプターも飛んでいました。それほど重要な発見だったんですね。

      

1600年頃、秀吉が伏見城を築く際に、物資運搬や治水のために宇治川の流れを変えたと言われていた「太閤堤」。その文献上の記録が、今回の発見で裏付けられたそうです。
堤の幅は5.5m、高さ2.2m、法面の角度は30度。写真のように割石をきれいに並べて護岸してあります。今回はマンション用地内の75m分だけが発掘されましたが、昔の記録や地図から測ると総延長は約12kmに及ぶそうです。
私が関心を持ったのは、水際の石が流れないように打ち込まれた木製の杭。「立入禁止」なので近くには寄れませんが、直径20cmのマツ材だそうです。

      
         (400年前のマツの補修杭が残っています)

400年前の土木工事の杭が残っていることは驚きですが、さらに昔の土木工事も発見されています。弥生時代の集落跡である登呂遺跡(静岡県)では、水田の区画工事に大量のスギ板が使われていたそうです。こちらは2~3世紀の遺跡ですから、1700年前の工事の木がまだ残っていたわけです。
当時はまだノコギリがありませんから、スギを伐るのも、そこから板を作るのも並大抵の労力ではなかったはずです。昔の人の知恵やエネルギーもスゴイですが、今まで残ってきた木もスゴイ!

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野にあるものは、野にあるように

2007年09月10日 | 野鳥
先週の日曜日、京都市の女性から「拾ったツバメのヒナをどうすればいいですか?」という電話がありました。6月に巣から落ちたヒナを拾って家で育てていたが、最近はエサを食べない。6畳くらいの部屋で放し飼いにしているが、このままでは心配、というお話でした。
野鳥の会の事務所にはこういう話がしょっちゅう舞い込んでくるのですが、私の家にはこれが2回目。8月に担当した「宇治川ツバメ探鳥会」の案内に名前と電話番号が載ったので、回りまわって私の家に連絡されたのでしょう。
野鳥の会では毎年春に「ヒナを拾わないで」というキャンペーンを展開しています。ヒナが落ちていると、多くの人が「かわいそう」と思い、拾って自分で育てようとするのですが、結局人間には育てられないからです。
電話のケースのように、ヒナの間はミルワームやすり餌を食べても、若鳥になると野性が目覚めて自分で餌を獲ろうとします。その時期に、親鳥がいれば獲り方を教えますが、人間には教えられません。結局、餌が食べられなくなって、死んでしまうのです。

         
    (もうみんな無事に南へ渡ったかな?)(写真は2枚とも友人から借用)

ヒナが落ちていてもそのまま放置して、親鳥に任せる。それが野鳥の会の指導です。あまり長く手で触ると、ヒナに人間の匂いが移って親鳥が子育てを放棄する、とも言われます。
電話の女性にもそういう話をしつつ、宇治川のねぐらの状況を伝えて、その集団の中に放鳥するよう勧め、現地の地図をファックスしました。観察会が8月4日、その後25日に知人を案内した際にもまだ7割くらいの数がいましたが、9月にまだ集団が残っているかどうか不安でした。数日後に電話で確認したら、「ツバメの集団を見ながら放鳥しました」とのこと。

      
     (黄色いクチバシを思い切り開けておねだり。かわいいでしょ?)

そのツバメが無事に南へ渡って、来年日本に帰ってくるかどうかは分かりません。ツバメは1つがいで平均10羽くらいのヒナを育てます。全員無事に成長すればいいのですが、ツバメの総数は増えずにむしろ減っていますから、計算上は10羽のうち8羽は何らかの理由で死んでいるわけです。タカやハヤブサに捕食される個体もいれば、渡りの途中に力尽きて海に落ちる個体もいるでしょう。そんな話を女性にしたら、「そうですね~」とせつない声。
ヒナを拾う気持ちはよく分かりますし、そういう愛鳥精神を普及させるのが野鳥の会の使命ですが、大きな目で見れば自然のしくみに任せる方が鳥のためなんですね。野にあるものは、野にあるように。日本野鳥の会の創設者・中西悟堂の言葉です。

(後日談)
ツバメが無事放鳥されて「よかったな~」と安心した翌日、新聞の地方版に不愉快なニュースが載りました。
滋賀県の大津市で、頭に糞を落とされたことを恨んだ男が、ツバメの巣をつついて落としていたそうです。しかも5年前から毎年約10個ずつ。この男は鳥獣保護法違反で書類送検されました。
落ちたヒナを拾う優しい気持ちの人もいれば、その一方でこんな心無い人もいるんですね。
オンラインニュースはこちら
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空気をきれいにする並木

2007年09月07日 | 木と防災
8月29日の記事で「イチョウは防火にはあまり役に立たない」と書きましたが、名誉回復のために、きょうはイチョウの別の効用について。
日本の街路樹として最も多く使われているのはイチョウ。関西では大阪の御堂筋(みどうすじ)が有名です。両側の歩道と2つの分離帯の4列で、合計830本のイチョウが植えられています。欧陽菲菲の「雨の御堂筋」や坂本スミ子の「たそがれの御堂筋」など大阪のご当地ソングにもよく登場します。

       
         (大阪のメインストリート・御堂筋のイチョウ並木)

このイチョウ、防火性ではそれほど頼りになりませんが、空気の浄化能力はかなり高いようです。亜硫酸ガスの吸着能力について大阪市で調べたところ、防火力に優れたサンゴジュの2倍、サクラの3倍以上、また川崎市の調査でもプラタナスの2倍の吸着能力を示したそうです。
亜硫酸ガスは車の排気ガスにはあまり含まれていませんが、公害や環境破壊の原因とされる有毒物質。イチョウは空気を浄化することで、人間に貢献してくれているのです。
また、なぜか大学のシンボルに多用され、東京大学、大阪大学、熊本大学の校章はイチョウで、東大の同窓会の名前は「銀杏会」。さらに、東京都と大阪府、神奈川県のシンボルツリーに選定されています。東京にも大阪にもイチョウ並木が多いからでしょうか。
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