樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

樹木礼賛

2014年10月30日 | 木と作家
現在、仙台市博物館で「樹木礼賛」という絵画展が行われています。その開催趣旨は以下のとおり。

日本人は昔から樹木とともに暮らしてきました。住まいや日々の生活に利用するだけでなく、花や紅葉など四季折々の姿を愛で、また信仰の対象として敬い、そして絵にもたくさん描いてきました。例えば、鎌倉時代以降の宗教絵画には榊や松などの樹木が神木として描かれています。桃山時代から江戸時代の襖や屛風といった大画面絵画には、その力強い生命力を感じさせるように樹木が大きく描かれます。
本展覧会では、樹木を描いた様々な絵画を通して、日本人が樹木をどのようにとらえ、表現してきたのかを紹介します。


ツリーウォッチャーとしては観たくてウズウズしますが、わざわざ仙台まで行けないので、展示作品を自分でピックアップして「樹木礼賛・樹樹日記バージョン」を開催します。(説明は受け売りです)
今回の目玉の一つは、円山応挙の「雪松図屏風」。応挙の作品で唯一国宝に指定されています。
右隻には堂々としたクロマツ、左隻にはソフトな印象の二本のアカマツが描かれています。雪の白さを強調するために、この絵のために特別に漉かれた紙が使われているそうです。


右隻はクロマツ


左隻はアカマツ

もう一つの目玉は、長谷川等伯の最高傑作『松林図屏風』。こちらも国宝です。
藁筆による荒々しい松もさることながら、屏風として折り立てたときに、遠景と近景が強調されるような画面構成になっているそうです。


右隻


左隻


松の絵が続いたので、次は落葉広葉樹。江戸時代の絵師、鈴木其一の『朴に尾長図』。



オナガは日本画のモチーフによく登場しますが、関西では見られません。でも、ホオノキとの取り合せが面白いですね。
この頃の題材は、花鳥風月の伝統からか樹木と鳥をセットにした題材が多く、このほかにも「松に孔雀」「松に山鳥」「枇杷に金鳩」「柏に鳩」「柳に翡翠図」といった作品が展示されています。樹木観察のつもりが、いつの間にか野鳥観察になりそうです。
この展覧会、関西にも巡回してくれないかな~。
「樹木礼賛」展の詳細はこちら
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スズメが死ぬと人も死ぬ

2014年10月27日 | 野鳥
いつも鳥を見に行く近くの干拓田は稲刈りも終わって、スズメなどの野鳥が落穂を拾って食べています。実った稲も啄むので、スズメは害鳥と思われています。
1955年、中国はスズメをネズミ、ハエ、カとともに「四害」に指定し、大規模な撲滅運動を展開しました。年間11億羽ものスズメが駆除されたそうです。
ところが、1960年にはスズメを四害から除外します。理由は、スズメの激減によって虫による農作物の被害が甚大になったから。
スズメは稲だけでなく、子育て期にはタンパク質豊富な虫を食べます。そのスズメがいなくなれば、農地は虫の天国。稲だけでなく野菜など他の農作物に被害が拡大したため、スズメを四害から除外したわけです。



この「四害撲滅運動」は毛沢東が進めた「大躍進政策」の一環として行われたのですが、他の農業政策の失敗もあって、2000万人以上の国民が餓死したと言われています。
スズメを四害から除外してもすぐには数が回復しないので、ソ連からスズメを移入したという話も伝わっています。
毛沢東はこの失敗の責任をとって国家主席を辞任。第2代主席となった劉少奇は、大躍進政策を「三分の天災、七分の人災」と分析し、失敗を認めたそうです。
スズメが大量に死ぬと、人間が餓死するという恐ろしい結末に至るわけです。突き詰めて言えば、「生物の多様性」という概念の中に、植物や動物だけでなくホモ・サピエンスも含めて考えるべきだということですね。
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木はエライ!木はスゴイ!

2014年10月23日 | 木のイベント
19日(日)、大阪・茨木市主催の環境フェアでツリーウォッチング教室の講師を務めてきました。昨年12月に真如堂・吉祥院の「メダカの学校」に招いていただいて以来、講師は2回目。
そのフェアを受託した友人のイベント・プロデューサーがプログラムの一つとして企画し、私に依頼してきたという経緯です。講師のほか、フェアのパネルに使う樹木の画像を提供したり、本職のコピーライターとしてパンフレットの文案も作成しました。
1時間15分の教室を2回実施。最初の30分はホールでパワーポイントを使っていろいろな木の恵みを説明しました。
そのタイトルが「木はエライ!木はスゴイ!」。環境フェアなので、地球温暖化や生物多様性に対する樹木の効用を説明した後、当ブログのテーマである「人間の暮らしや文化に樹木がいかに役立っているか」という話をしました。
残りの45分は外の公園へ出て、クスノキの葉の匂いを嗅いだり、エノキの実を食べたりしながらツリーウォッチングを実習していただきました。


エノキの実を実食

参加者の反応が高かったのは樹木の防火能力。「火を防ぐ木はどれですか?」と熱心に質問する方もいらっしゃいました。酒田の大火や関東大震災、阪神淡路大震災での事例を紹介しながら、タブノキやサンゴジュの話をしました。
2回目はキャラクターショーの開催時間と重なったため、参加者は少数でした。そりゃあ、ツリーウォッチングよりも「列車戦隊トッキュウジャー」の方が面白いですよね、家族連れにとっては(笑)。
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国果

2014年10月20日 | 木と飲食
先週の連休は3カ月ぶりに栃の森で野鳥調査の予定でしたが、台風で中止。レンタカーを予約していたので、妻のリクエストに応えて奈良の法隆寺へ行ってきました。



帰路、農家の直売所でカキを買いました。閉店直前だったこともあって、少し傷のあるものも含めて17個で500円。法隆寺は数年前に訪れたので、古刹見学よりも大好きな果物がたくさん買えたことの方が私は嬉しかった(笑)。



カキは日本の「国果」とのこと。と言っても、オフィシャルなものではなく、懐石料理の第一人者・辻嘉一氏が、「国果(日本を代表する果物)を決めるとすればそれは柿」と記したことが根拠のようです。
国果を決めている国もあって、英語版のウィキペデイアで「National Fruits」を調べるといくつかリストアップされています。
それによると、インドはマンゴー、イギリスはリンゴ、インドネシアはドリアン、イランはザクロ、メキシコはアボカドなどなど。意外にも、中国の国果はキウィ。
一般的なイメージでは「キウィ=ニュージーランド」ですが、原産は中国なんですね。ニュージーランドは国果を決めていないようです。
「日本を代表する果物は柿」という辻説に私も賛成ですが、調べてみると、生産量は189,400トンで世界第3位。第1位は中国の3,046,400トン、第2位は韓国の390,611トン。韓国の半分というのは意外です。
「柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺」と詠んだ正岡子規が大変な柿好きであったことは、1年前の記事でご紹介しました。下の写真は法隆寺・夢殿の鐘楼ですが、子規が聞いたのはこの鐘の音だったかもしれません。



この撞木の材はシュロのようです。「ゴ~ン」というよりも「シュワ~ン」というようなやわらかい音だったはずです。
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野球と野鳥(大リーグ編)

2014年10月16日 | 野鳥
前回ご紹介した「野球と野鳥」の大リーグ編です。
1983年のブルージェイズ対ヤンキース戦で、イニングの合間のキャッチボールを終えた外野手デーブ・ウィンフィールドが、ボールをボールボーイに返球したところ、カモメを直撃して即死。観客席から激しいブーイングを浴びました。
試合後、動物虐待の容疑でオンタリオ州警察に拘束され、保釈金500ドルを支払わされたそうです。
ちなみに、デーブ・ウィンフィールドは大学時代に野球とバスケットで活躍し、大リーグと2つのバスケットボールリーグからドラフト指名されたばかりか、抜群の運動能力を買われて、経験のないアメフトのリーグからも指名されています。4つのプロリーグから指名を受けた唯一の選手として知られています。
2001年のジャイアンツ対ダイヤモンドバックス戦では、ランディ・ジョンソンの投球がたまたま飛んできた鳥に当たって憤死するという事件が起きています。
その時の衝撃的な映像がYouTubeに掲載されています。繊細なバードウォッチャーは見ない方がいいかも。



犠牲になったのはハト。ランディ・ジョンソンもショックを受け、その後は打ち込まれたそうです。
この場合はノーカウントになるそうですが、打ったボールが鳥に当たった場合はインプレーで試合続行とのこと。
2009年のインディアンス対ロイヤルズ戦の延長10回裏、無死一二塁のチャンスで、インディアンスの4番チュ・シンスが打ったボールはセンター前へ。ところが、打球がカモメに当たってそれたためにヒットとなり、サヨナラ勝ち。その映像が以下です。後半にスロー再生があります。



このほか、打ち上げたボールが鳥に当たってヒットになったり、逆にアウトになったという事例もいくつかあるようです。
前回、「野球選手にとって鳥は迷惑かも」と書きましたが、命に関わる鳥の立場になれば「野球こそ迷惑なゲーム」でしょうね。
さて、大リーグはもうすぐワールドシリーズの対戦相手が決まります。バードウォッチャーとしては、オリオールズ対カージナルスという小鳥球団の対決になってほしいです。
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野球と野鳥(日本編)

2014年10月13日 | 野鳥
「野球と野鳥」と言っても、東北にイヌワシ、東京にツバメ、九州にタカという名のチームがあるという話ではありません。
先日、鳥の本を読んでいたら、1958年9月13日の巨人・大洋戦(後楽園・ナイター)の最中、鳥の群れがグランドに舞い降りたために試合が1時間余り中断されたという話が紹介されていました。
渡り途中のヒレアシシギだったそうで、ライトに惑わされてバックネットに激突し、命を落とした個体もあったようです。日本に渡ってくるヒレアシシギは2種類ですが、おそらく内陸部を渡るアカエリヒレアシシギでしょう。



調べてみると、このほかにも1971年4月29日の広島・中日戦(広島)、1976年9月6日の日本ハム・ロッテ戦(秋田)でも同様のことがあったそうです。いずれも渡りの時期ですね。
また、2004年6月8日の中日・巨人戦(ナゴヤドーム)では、カラスが高圧線に接触したために照明が半分消え、試合開始が15分遅れたそうです。
さらに、昨年5月5日の西武・日本ハム戦(西武ドーム)では、カラスに襲われたハトがグラウンドに落下したために試合が中断されました。その模様がYouTubeにアップされています。襲われたのはドバトと思いきや、キジバトです。



襲ったのはハシブトガラスかな。いずれにしても、野球選手にとって鳥は迷惑な存在でしょうね。
プロ野球もポストシーズンの真っ最中。できれば、阪神VSオリックスの関西対決になってほしいですが、そうなれば私はオリックスを応援します。ブルーウェーブ時代、仕事でファンブックやポスターを制作したから。そして、故郷・丹後出身の糸井選手がいるから。
関西対決は1964年の阪神VS南海以来のようですが、このときも丹後出身の野村選手が活躍しました。
さて、タイトルに(日本編)と書きましたが、大リーグには「野球と野鳥」に関してもっと驚くべき事例があります。次回ご紹介しますので、お楽しみに。
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剣豪が描く鳥

2014年10月09日 | 野鳥
宮本武蔵は剣だけでなく絵筆のさばきも巧みだったようで、多くの絵画を残しています。その中には鳥を描いたものが5点あり、モチーフはハト、ガン、ウ、カワセミ、モズの5種。このうち「紅梅鳩図」「蘆雁図」「鵜図」の3点は国の重要文化財に指定されています。
下はモズを描いた「枯木鳴鵙図(こぼくめいげきず)」。枯木の先にモズが止まり、その下に虫が這っているという構図です。「鳴鵙」という題から察すると、モズが高鳴きする秋の風景でしょう。



この絵は、「モズが虫を捕える直前の生と死の狭間の緊張感を描いている」というように解説されます。しかし、バードウォッチャーの目で見ると、このモズが下の虫を捕えるとは思えません。
モズは木や草のてっぺんによく止まりますが、それは周囲の広い範囲を見渡して餌を見つけるため。数十メートル先に飛んで、虫や小動物を捕えるという行動パターンです。
セキレイ類なら虫を捕えるために、弧を描いて下に飛ぶでしょうが。モズの飛び方は直線的。この絵のモズの目には下の虫は入っていないでしょう。
「モズは武士道の到達点を象徴し、そこに向かって這い上がっていく虫は剣の修行者である」といううがった解釈もあるようですが、そちらの方が「小さな猛禽」と呼ばれるモズの生態にはかなっています。
宮本武蔵が鳥を描いた一方、ライバルの佐々木小次郎は「燕返し」を会得するために何羽かのツバメを切り殺しています。
判官びいきの私としては小次郎にシンパシーを感じますが、バードウォッチャーとしては許せませんね~(笑)。
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噴火の影響?

2014年10月06日 | 野鳥
今シーズンは3回ホークウォッチングに出かけました。
タカの渡りのメッカは京都府では宇治の岩間山ですが、本州全体では信州の白樺峠。ここを通過したタカの群れが、ほぼ1日遅れで岩間山に到達するので、白樺峠の状況を見ればその日に渡るタカの数が予想できます。
私が2回目に行ったのは9月21日で、その前日に白樺峠を渡ったタカは今シーズン最高の約2,491羽。そして予想通り、岩間山でも今シーズン最高の1,053羽を記録しました。
久しぶりにタカ柱(20羽以上の群れの帆翔)をじっくり見ることができました。下の動画はその模様。調査員や観察者の興奮した声も入っています。



ほとんどのタカが上空を通過しますが、時々、周囲の木に止まる個体もいます。この日も1羽のサシバが羽を休めました。3時過ぎでしたから、ここで1泊するつもりかもしれません。



3回目に訪れたのは9月28日。「前日の白樺峠が約300羽だから、150羽くらいは飛ぶだろう」と期待して出かけましたが、結果は55羽。天気も良く、条件としては悪くなかったはずなのに予想が外れました。
原因は、御嶽山の噴火のようです。白樺峠の南西に位置する御嶽山は渡りのコース。27日に噴火し、大量の水蒸気や噴煙がタカの行く手をはばんだのでしょう。白樺峠からも噴煙が見えたそうです。
その中を突破してきたのか迂回したのか、少ないながらもサシバやハチクマ、ノスリが渡って行きました。


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木の国旗

2014年10月02日 | 木と文化
ニュージーランドで国旗をリニューアルする話が進んでいます。現在のユニオンジャック&南十字星から、ラグビーのオールブラックスでお馴染みのシダ(シルバーファーン)に変更されるようです。
旧イギリス植民地の国では、カナダが1964年にユニオンジャックを捨ててサトウカエデのデザインに変更しました。どちらも植物に変わるところが面白いですね。

 
昔のカナダ国旗(右の紋章の下にすでにサトウカエデが描かれています)  現在のカナダ国旗

樹木を国旗のデザインにしている国はカナダとレバノン(レバノンスギ)が有名ですが、その他にもいろいろあります。
まず、地中海の島国キプロス。自国の領土とオリーブが描かれています。枝が2本あるのは、「ギリシャ系住民とトルコ系住民の平和と協力」という意味だそうです。



次は、イタリア半島の中東部に位置する小国サンマリノ。中央の紋章の左にゲッケイジュ、右にカシワの葉が描かれています。樹種の意味は不明ですが、リボンに描かれているのは「自由」を意味するイタリア語。



次は、アフリカにある赤道ギニア。中央の国章に描かれているのは「神の木」とされるパンヤ。綿や油が採れる樹木だそうです。



このほかにも、木の葉のリースを描いた国旗がいくつかあります。
日本の国旗をもし樹木で表現するとすれば、やはり固有種のスギでしょうか。私としては、同じく固有種であるカツラの葉をデザイン化してほしいです。
ニュージーランドはシルバーファーン(固有のシダ)だけでなく、国鳥キーウィを組み合わせればいいのに…。
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