樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

Duck Watching

2011年04月28日 | 野鳥

バードウォッチングには「宝探し」に似た楽しみがあって、「この時期に、ここに行けば、こんな鳥が見られるだろう」と予測し、実際に現地でその鳥を探し当てた時は感激します。目当ての鳥に出会えずガッカリすることもしょっちゅうですが、そんな時でも予想外の鳥が見られることがあるので止められません。

ところが水鳥、特にカモ類は、冬の池や川に行けば群れがいて、森の鳥のように視界を遮るものもないので探すのは簡単。「宝探し」の面白味がないので、ベテランになるとわざわざカモを見に行かなくなります。

 

 

近くの池のカモ

 

でも私は、鳥歴20年の一応ベテランですが、今でも時々ダックウォッチングに出かけます。カモを見ていると何故か心が落ち着くからです。

車を持っていた頃は琵琶湖へ行ってカモを見るのを楽しみにしていましたし、現在もバイクで近くの池に出かけて、暖かい陽射しを背中に浴びながら、プカプカ浮いているカモをのんびり眺めています。

この池では今年も80羽ほどのカモが越冬しました。種類は多い順に、キンクロハジロ、ホシハジロ、マガモ、コガモ、ハシビロガモ、ヨシガモ。

今年は一眼レフを持参して撮影したので、その面々をご紹介します。まずはキンクロハジロ。目つきは悪いけど、お下げ髪(冠羽)が可愛いでしょ?

 

 

 

次はホシハジロの動画。目の赤、頭の赤茶色、胴体の白と黒の細かい縞模様…、色もデザインもおしゃれでしょ?

 


 

 

続いてハシビロガモ。水面に浮いている水草をヘラのような嘴ですくって、細かい歯で漉し取って食べています。ちょっと変なヤツでしょ? 地味な方はメスです。

 

<!-- ハシビロガモ -->
 

 

賭け事で「鴨にする」とか「鴨がネギを背負ってやってくる」と言います。カモは動きが愚鈍で、簡単に捕獲できるからでしょう。そう言えば、私も子どもの頃よく「ドンくさい」(標準語で「のろま」)と言われましたし、ギャンブルも下手で、若い頃は麻雀でよく鴨にされました。

鳥歴20年の今でもカモを見ると心が落ち着くのは、愚鈍なカモに自分を投影しているからですね、きっと。ということは、Duck Watchingは私にとってはSelf Watchingか?

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森の木琴

2011年04月25日 | 木と楽器

ドコモとシャープとオリンパスが共同で、間伐材を使った携帯電話TOUCH WOODを開発しました。そのCM(というかプロモーションビデオ)として「森の木琴」というムービーを制作しYou Tubeに転載したところ、世界中から賞賛されて360万回以上のアクセスになっています。まずはご覧ください。 


 

 

この木琴は全長44メートル、鍵盤の数は413個あるそうです。演奏されているのはバッハの「主よ、人の望みの喜びよ」という曲。撮影は福岡県の森で行われたとか。

製品のボディは高知県四万十のヒノキの間伐材をオリンパスが開発した技術で圧縮成形して作られています。以前このブログで岐阜大学の教授が考案した高圧水蒸気による木材の圧縮成形を紹介しましたが、それをオリンパスが確立させたのではないでしょうか。

本物の木を使うので1個ずつ木目や色が違います。同じものを作って大量販売するという従来の発想とは違うため、シャープの開発者は社内で大反対されたそうです。実際、大量生産が難しいので15,000台に限定し、しかも数回に分けて販売されています。

坂本龍一氏が率いる環境団体More Treesもこのプロジェクトに参加しています。当ブログでは以前、この団体について「No More Trees」というタイトルで「木はもう植えるな、伐って使え」と突っ込みを入れたことがありましたが、ようやく植えるだけでなく伐る運動も始めたようです。

企業がやることなので100%は信用できませんが、この携帯電話の特設サイトには、「日本の森を、救え。」というメッセージがあったり、高知県の林業家や設計者の動画が掲載されていてなかなか興味深いです。

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蔵王堂の柱

2011年04月21日 | 木造建築

平日、仕事をサボって調整して吉野に出向いた目的は、ヤマザクラ見物のほかにもう一つありました。金峯山寺(きんぷせんじ)の蔵王堂に使われている木材を見ること。

1年ほど前、蔵王堂の柱にはナシやツツジなど多様な木が、しかも自然木のまま使われているという情報をキャッチし、「これはぜひ見に行かなければ」と思っていました。同じ行くなら桜の季節にしようと、1年間待っていたのです。

蔵王堂の案内板には、「堂内の柱は全部で68本あり、一本として同じ太さのものはなく、すべて自然木を素材のまま使用している。材質も様々で、杉、桧、欅などの他に梨やツツジの柱もあり一定しない」と書いてあります。

 

 

蔵王堂は国宝

 

寺院建築の特に柱はヒノキを使うのが普通で、ナシやツツジを使うのは極めて珍しいです。残念ながら撮影禁止で写真をお見せできませんが、蔵王堂の内部を拝観すると、古びた柱に「神代杉の柱」とか「梨の木」と表示してあります。

しかし、ツツジは柱にするほど太くはなりませんし、お寺に質問すると「ツツジの原種」と答えるそうですが、不可解です。アセビやネジキ、シャシャンボなどツツジ科の中にはけっこう大きくなる樹もありますが、直径1mもの柱に使える巨木があるとは思えません。

帰宅して調べると、ツツジと伝わる柱を奈良女子大学の教授が調査したところ、チャンチンだったそうです。中国原産のセンダン科の樹木で、日本の野山には自生しません。おそらく中国から寄進されたのでしょう。いずれにしても柱の樹種としては異例です。

 

 

 

横手に廻ると、上の写真のように1本だけ白っぽく変色している柱がありました。材質が異なるために、長年の風化の過程で他の柱と違う色になったのでしょう。

また、下の写真のように上の方が少し細くなったり、曲がった柱もありました。自然木をそのまま使ったからでしょうか。

 

 

 

ヒノキをはじめスギ、ケヤキはお寺や神社、お城などに用いられるので強度や耐久性は実証済みですが、ナシやチャンチンには柱に用いるほどの物理的な特性があるのでしょうか。その点でも気になる建造物です。

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一目千本

2011年04月18日 | 樹木

土日は人でもみくちゃになりそうなので、先週の平日、仕事の合間をぬって奈良県の吉野へ行ってきました。お墓を予約するような年になったので(笑)、死ぬまでに一度はここの桜を見ておきたかったのです。

普通の桜の名所なら往復5時間もかけて出かけませんが、吉野の場合はソメイヨシノではなく全山ヤマザクラ。しかも「一目千本」と言われるビューポイントが下千本、中千本、上千本、奥千本と4カ所もあるのです。ツリーウォッチャーの端くれとしては、園芸品種ではなく自生種の桜の日本一の名所を見ておかないとお墓に入れないのです(笑)。

日本一長い私鉄・近鉄を乗り継いで、さらにケーブルカーに乗り換えて、ようやく到着。平日というのにケーブルカーも参道も満員でした。

 

 

下千本はほぼ満開

 

 

向こうの山肌が中千本

 

自生種のヤマザクラといっても野生ではなく植樹です。吉野山では、役行者(えんのぎょうじゃ)が千日の祈願行をした際に蔵王権現を感得し、近くにあったヤマザクラでその像を彫ったことから、ヤマザクラがご神木とされたそうです。

神木になっただけでは一目千本も増えませんが、蔵王信仰が盛んになると、信者が献木するようになります。麓の村で桜の苗木を育てて売り、参拝者がそれを買って山に植えるようになったとか。天正7年(1579)には大阪の豪商が1万本の苗木を寄進したという記録もあるそうです。

 

 

ヤマザクラは茶色い若葉と一緒に開花するのが特徴

 

 

そのため全体に赤茶色く見えます

 

蔵王権現を祀る金峯山寺(きんぷせんじ)は明治の修験道廃止令で廃寺となったため、近代以降はヤマザクラが献木されることはなくなったようですが、最近はお寺が献木を募っています。

その案内ビラには明記されていませんが、数年前からヤマザクラがナラタケ病にやられているからだと思います。吉野には何千本どころか3万本の桜があるそうですが、そのうちのかなりの数が枯れたようです。

ケーブルカーの窓越しにも、根元近くで折れた無残な姿がいくつか見られました。現在、守る会が結成され、大学の研究者が調査や対策を実施しているようです。

 

 

ソメイヨシノよりも花が白いです

 

帰りに、サクラのソフトクリームをいただきました。宇治は何でもかんでも抹茶ですが、吉野では何でもかんでもサクラなんですね(笑)。ほのかにクマリン(サクラの芳香物質)の匂いがしました。

 

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私のお墓

2011年04月14日 | 木と宗教

家から車で10分くらいの所に公園墓地があります。その一角で「桜下庭園樹木葬」という墓地が売り出されたので、半分本気で、つまり自分のお墓の候補として見学してきました。

樹木葬につては以前も採り上げ、「近くに樹木葬をやってくれる所があればそうしたい」というようなことを書きましたが、それが現実になったわけです。樹木葬と言っても、ここの場合は小さな枝垂れ桜が2本立っているだけで、私がイメージしていたものとは違いました。

 

 

小さな枝垂れ桜が2

 

でも、私が葬られる頃にはこの桜も大きくなっているでしょうし、西行法師や本居宣長も「桜の下で死にたい」と言っているくらいですから、これでよしとすべきでしょう。

経営母体は浄土真宗のお寺ですが、宗教や宗派を問わないらしいので無宗教の私には好都合です。また、他の樹木葬はいろんな人の骨をまとめて埋めるようですが、ここは小さいながら1区画(30cm四方)ずつ仕切られて石碑もあります。

 

 

「ご契約」つまり生前に予約された区画もたくさんあります

 

実際のお墓を見ると、一人の名前や夫婦二人の名前が刻まれた石碑が並んでいます。犬のイラストと人の名前が刻まれた石碑もありました。愛犬と同じお墓に…という故人の意思なのでしょう。

私たちは子どもがいないので、夫婦二人が死んだ後はお墓を管理する人間がいませんが、永代供養なのでその点でも安心です。

 

 

遺族がお参りされていました

 

1区画25万円、2霊目は10万円、合計35万円で夫婦二人の墓が確保できるわけです。妻に相談したところ嫌ではないようで、今度二人で見学することにしました。

60歳を越えて、年々棺桶が近づいて来るので(笑)、そろそろお墓も予約しておいた方が良さそうです。

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散歩コース名木10選「花木編」

2011年04月11日 | 街路樹・庭木

私が散歩するコースには「宇治名木100選」のうち12本が立っています。イチョウ、クスノキ、エノキ、クヌギ、ケヤキなど樹種も多彩で11種。 

これとは別に勝手に散歩コースの名木を10本選んでみようと思って、昨年からリストアップして写真を撮っていました。その結果をご紹介します。まず、花木編として5種。 

最初はサザンカ。古いアパートの空き地に大きな樹があって、白い花をいっぱい咲かせています。奥まった場所にあるので普段はあまり人目につきませんが、開花時期はやはり目立ちます。撮影は昨年の12月中旬。

  

 

 

 

次は家のすぐ近くにあるサンシュユ。いつも早春に黄色い花を咲かせますが、今年は開花が遅くてサクラの開花と少しダブりました。別名「春小金花」。中国原産で、日本には朝鮮経由で移入されたようです。 

 

 

次は禅寺の入り口にあるシモクレン。木が大きくて、紫の花をたくさんつけるのでゴージャスに見えます。このお寺の境内には4本の「宇治名木100選」があります。

  

 

 

次は古墳だったという山の斜面に生えるヤブツバキ。これは妻の推薦。栽培品種のツバキは花がたくさん咲いてうるさい一方、野生のツバキは葉の中に赤い花が点々と咲くのがいいそうです。

 

 

最後は、近くの翔英高校の敷地にあるシダレザクラ。毎年、ソメイヨシノよりも一足先に咲きます。シダレザクラはエドヒガン系なので、花が少し赤っぽくて小さいです。

  

 

  

この学校はほとんど無名の小さな私立高校ですが、昨年夏の高校野球の京都府大会で決勝に進出して宇治では話題になりました。ご当地自慢のついでに、今年の全国高校サッカー大会の決勝で惜しくも敗れた久御山高校は隣町の高校です(笑)。

残りの5本「緑樹編」は近いうちにご紹介します。

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世界最大の種子

2011年04月07日 | 樹木

宇治市植物公園で世界中のおもしろい種子を約35種類集めた「種子の世界」という催しがあったので行ってきました。「世界最大の種子がやってくる」というキャッチフレーズに釣られて…。

その種子というのはフタゴヤシのもの。展示場では立ち入り禁止のロープが張ってありました。宝石扱いです(笑)。

 

 

お尻のようなユニークな形で、日本名で「双子椰子」、英名でも「ダブル・ココナツ」。サイズは約30cm、重さ約20kg。世界最大の種子としてギネスブックに登録されているそうです。原産はセイシェル島。この小さな島の、しかも限られた地域にしか自生しないとか。

会場にもう一つ、ホウガンノキという真ん丸い大きな種子も展示してありました。日本名「砲丸の木」、中国名「砲丸樹」、英名「キャノンボール・ツリー」のとおり大砲の弾丸のような種です。原産は南米のギアナ~アマゾン。

 

 

こういうのを見ると、種だけじゃなく実際の樹木を見たくなります。フタゴヤシは近くの植物園にはありませんが、ホウガンノキは宇治市植物公園と京都府立植物園の温室にあります。下の写真は府立植物園のもの。幹から直接花が咲いて実をつける変わった木です。

 

 

この大きな種を見ていて「果実はもっと大きいわけ?」と疑問になったので調べたところ、フタゴヤシもホウガンノキもこの種の上に薄い果皮がくっついているようです。つまり、果肉はなくて皮だけ。

私たちが知っているココナツは種の中にある固形胚乳、ココナツジュースは液状胚珠だそうです。ホウガンノキの種子も食べられるようです。

世界最大の種があるということは世界最小の種もあるわけですね。また、世界最大の果実もあるはずね。いい年こいて(笑)、次々に好奇心が湧いてきます。

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宝の持ち腐れ

2011年04月04日 | 野鳥

天気が良くて暖かい休日、久しぶりに近くに点在する鳥のポイントをミニバイクで廻ってきました。

まず、裏山の断崖絶壁。かなり前からハヤブサが棲みついて、毎年繁殖しています。数年前、写真家が集まって車で道を塞いだために住民から苦情が出たのでしばらく遠慮していました。

この日も45台停まって、大きな望遠レンズが並んでいました。大阪や神戸のナンバーもあります。私のカメラはレンズも小さくて列に加わりにくいので早々に引き上げました。肝心のハヤブサは一度飛ぶ姿を見せただけでした。

 

宇治川ではカワアイサのペアに遭遇

 

その後、宇治川へ降りてヤマセミのポイントへ。ここにも20台ほどのカメラが並んでいるので、遠慮して下流に向かうと、一心にシャッターを押している人がいます。レンズの方向を見ると、木の枝にヤマセミが止まっています。後姿ですが、私のカメラでも撮れました。

 

 

宇治川名物?ヤマセミ

 

その次に干拓田に向かいました。ここは珍しい鳥が出現する場所として全国に知られていて、昨年はアメリカウズラシギや日本で2例目というウズラクイナが出現しました。

この日もマキバタヒバリという珍しい鳥が現れたために、農道に15台ほど車が停まり、望遠レンズが並んでいました。大阪や神戸のほか水戸、新潟といったナンバーも並んでいます。

私は珍鳥を追いかけるタイプではないのと、ここでも前に写真家と農家の間でトラブルが発生したことがあったので、その列には加わらず、好きな鳥の一つタゲリでも見ようかなと別のエリアをウロウロしました。

 

鳥の成る木(ムクドリの群れ)

 

結局タゲリには出会えませんでしたが、うららかな空の下、気ままにバイクを走らせて、あっちでツグミ、こっちでヒバリと、のんびり鳥見を楽しみました。

考えてみると、遠くからバードウォッチャーや写真家が集まるポイントが半径5km圏内に3ヶ所もあるわけです。しかも、2年前にはこの圏内で日本で数例目というノハラツグミが現れて大騒ぎになりました。

 

 

マキバタヒバリではなく、ただのヒバリ

 

 こんな恵まれた環境なのに、アメリカウズラシギもウズラクイナもマキバタヒバリも見に行きませんでした。珍鳥派のバードウォッチャーには「もったいない!」と言われそうです。これも「宝の持ち腐れ」と言うんでしょうね。

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