樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

サギのコロニー

2022年06月30日 | 野鳥
家の近くに、菟道稚郎子(うじのわきいらつこ)の陵墓があります。この人物は応神天皇の子で、政争を避けて仁徳天皇に皇位を譲り、自身は宇治の地に隠遁した皇子。「うじ」の地名の由来とする説もあります。



陵墓は宮内庁が管理しており、誰も中に入らないので、サギ類がコロニー(集団繁殖地)を形成しています。すぐ前を宇治川が流れ、巣材となる流木の枝や餌となる魚が豊富なので、子育てには最適の場所のようです。



宇治在住の会員が毎年調査をしており、2017年はアオサギ79、ダイサギ69、チュウサギ13、コサギ10、アマサギ6、ゴイサギ26、計203羽をカウント。2005年は計498羽でしたから、12年で半減しています。特にコサギは94%も減っています。
以前、宇治市で花火大会が催されていた頃は陵墓の前の河川敷が打ち上げ場所になっていたので、発射されるたびに音に驚いてサギが飛び出していましたが、今は花火大会もなくなったので、鳥たちにとっては静かな環境です。
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梅雨の干拓地で鳥探し

2022年06月23日 | 野鳥
近くの干拓地で鳥探しをしてきました。この時期に出向くのは久しぶり。
干拓地に入るとあちこちから「ギョギョシ、ギョギョシ」の声が聞こえてきました。普通はブッシュの中でさえずるオオヨシキリが電線で鳴いています。電線の下のブッシュから聞こえる声は少なくとも4個体。目立つ場所の方が有利ということでしょうか。



最近あまり目にしないアマサギを探して田んぼの中を走っていると、5~6羽の群れがいました。この鳥は「亜麻鷺」と表記されることがありますが、正確には「飴鷺」。鎌倉時代に「あまさぎ」という記録があるものの、亜麻が日本に移入されたのは元禄時代なので、「亜麻鷺」はありえないそうです。「飴(あめ)」が「あま」になるのは「雨雲」「雨脚」と同じく転音。
同じアマサギなのに飴色ではなく全身白色の個体もたくさんいて、初心者はコサギと誤認するようですが、くちばしが黄色い小型の白鷺はアマサギです。



アマサギは昔に比べると数が少なくなりました。以前はわざわざ探しに行かなくても見られましたが、今は干拓地の中を走り回らないと遭遇できません。
一方、ケリはまだ普通に見られます。ここでは珍しくないのでほとんど撮影したことはないですが、じっくり見るとそれなりに美しい鳥です。



この干拓地の多くは久御山町に位置します。同町が町制施行65周年を迎えた3年前、京都支部に「町の鳥を制定したいので候補種を挙げてほしい」という依頼があり、優良農地の指標となるツバメ、ヒバリ、アマサギ、タマシギ、ケリの5種を提案し、町民の人気投票でケリに決まりました。
自治体の鳥は、最初から住民の人気投票で選ぶためかウグイスやメジロなどどこにでもいる種類に決まることが多く、地域の特色が表現されません。久御山町と同様、日本野鳥の会など野鳥に詳しい団体に相談して決めた方が地域の特性に合った鳥が制定できると思います。
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お札でバードウォッチング

2022年06月16日 | 野鳥
日本では1984(昭和59)年に発行された1万円札の裏面にキジの、千円札の裏面にタンチョウの雄と雌が描かれていましたが、現在発行されているお札では1万円札の裏面に鳳凰が印刷されているだけで野鳥は登場しません。2024年発行予定の新紙幣にも鳥は描かれていませんが、すべての紙幣に鳥を描いている国がいくつかあります。
例えばニュージーランドでは、5種類の紙幣の表面には人物画の左に小さく鳥が描かれ、裏面にはその鳥が大きく描かれています。5ドル札にはキンメペンギン(下)、10ドル札にはアオヤマガモ、20ドル札にはニュージーランドハヤブサ、50ドル札にはハシブトホオダレムクドリ、100ドル札にはキイロモフアムシクイが登場します。いずれもニュージーランドの固有種。



スリランカでは6種類のルピー札が発行されており、表面のメインとなる建築物の絵柄の右に必ず鳥が描かれています。セレンティブコノハズク(20ルピー)、セイロンヒタキ(50ルピー)、セイロンヤブメチドリ(100ルピー)、セイロンミドリワカケホンセイインコ(500ルピー)、ズアカサトウチョウ(1000ルピー)、キミミヒヨドリ(5000ルピー・下)はすべてスリランカの固有種。



アフリカ大陸の東に位置する島国セーシェルも同じく、25ルピー(セーシェルシキチョウ)、50ルピー(セーシェルシハイイロメジロ)、100ルピー(セーシェルサンコウチョウ)、500ルピー(セーシェルチョウゲンボウ・下)と全て表面に大きく鳥が描かれています。



また、カナダは1986年に鳥類シリーズの紙幣を発行し、裏面に7種類の鳥を印刷ました。2ドル(コマツグミ)、5ドル(アメリカヤマセミ)、10ドル(ミサゴ)、20ドル(ハシグロアビ)、50ドル(シロフクロウ・下)、100ドル(カナダガン)、1000ドル(ギンザンマシコ)。表面はエリザベス2世などの肖像画が描かれています。



フィジーは軍事政権時代の2009年にイギリス連邦の資格を停止されたため、それまで使っていたエリザベス2世を描いた紙幣が使えなくなり、2013年から貨幣・紙幣とも動植物のモチーフに切り替えました。紙幣は4種類あり、そのうち5ドル札にアカズボンインコ、20ドル札にフィジーミズナギドリ(下)が描かれています。



お札に鳥が描かれているとバードウォッチャーはうれしいですが、そうでない人にとっては「お札に羽が生えたように出ていく」と敬遠されるかもしれませんね。
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自然観察会

2022年06月09日 | 樹木
日曜日、大阪府交野市にある植物園で自然観察会を開催しました。この時期は鳥が少ないので、植物や虫など多様な生物観察で楽しんでもらおうという企画です。
私がツリーウォッチングを始めた頃、樹木の勉強のためによく通ったこの植物園は、京都府立植物園と違って、標本木以外に自然の地形や植生をそのまま生かした木や草が生えていて、自然観察に最適だと思って15年ほど前に始めました。
コロナで2年連続中止となり、今回3年ぶり。この間、大阪市立大学付属植物園が大阪公立大学付属植物園と名称変更され、標本木のネームプレートが増え、トイレもリニューアルされました。
樹木は私が説明しますが、草や虫の知識はないので、それぞれに詳しい会員にサポートしてもらいました。樹の花では、タイサンボクが見頃。アメリカのモクレン(マグノリア)で、いくつかの州で州の花に選定されています。鼻を近づけると、ハクモクレンとは少し違った柑橘系の香りがします。



キササゲの花も咲いていました。この樹の中国での表記は「梓」。日本で梓(あずさ)と言えばミズメを意味しますが、日中で木の漢字の意味が違うことは時々あります。本を出版することを「上梓(じょうし)」と言うのは、キササゲの材を版木にして印刷したからだそうです。



この観察会でのハイライトの一つがササユリ。多分、標本ではなく自然分布で生えていて、あちこちに計30株ほど花を咲かせていました。今回、野草に詳しい参加者から「いい匂いですよ」と教えてもらったので、嗅いだら上品な香りでした。



自宅にバタフライガーデンを開設するほどチョウに詳しい参加者もいます。私もコンパクトデジカメで撮影しながら、種名を教えてもらいました。





このほか、トンボに詳しい人、クモの名前がスラスラ出てくる人など、参加者の中には花博士や虫博士が何人かいて、それぞれの話を聞きながら歩くので、いつもの探鳥会とは違う空気が流れます。この会に付けたキャッチフレーズは「子供の頃に戻って、鳥、虫、草と戯れる」でしたが、そのとおりの自然観察会になりました。
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ウクライナの野鳥

2022年06月02日 | 野鳥
毎日テレビでウクライナの戦争シーンを見ていると、現地の人の生活や命はもちろん、「環境や野鳥にもダメージが広がっているのではないだろうか」とか「どんな鳥がいるのだろう」と気になります。そこで、ウクライナの野鳥について少し調べてみました。
国土のほとんどが草原ですが、いくつかの川が注ぐ黒海沿岸には湿地が点在しており、草原地帯にはアネハヅルやノガンなどが、湿地帯にはペリカン、カモ、アジサシなどが生息し、シギなどの渡り鳥も飛来するようです。これまでに記録された鳥は約450種類。ただ、主要な生息地は激しい戦闘が続く南部に多いようです。



ヨーロッパの大河ドナウ川はウクライナとルーマニアの国境で広大な湿地を形成し、「ドナウデルタ」と呼ばれています。ユネスコの世界自然遺産と生物圏保護区に指定されており、300種の鳥類が確認され、何百万羽の鳥が繁殖に訪れるそうです。モモイロペリカンやニシハイイロペリカン、メジロガモ、サギ類などたくさんの水鳥のほか、オジロワシ、イナダヨシキリも生息しているとのこと。
ニュースによく登場するオデーサの東にはティリグリ河口が広がり、ここにもモモイロペリカンやイナダヨシキリなどが生息するそうです。


モモイロペリカン(画像:pixabay)

激戦地ヘルソン州にあるアスカニア・ノバ自然保護区では、原生状態の草原を保護しながら野生の馬など多くの動植物を研究しています。鳥類も多様で、アネハヅル、クロヅル、マガン、アオガン、アカツクシガモ、ウスハイイロチュウヒなどが生息し、IBA(重要野鳥生息地)に指定されています。
クリミア半島の東に伸びるのはケルチ半島。現在はロシアに併合されていますが、自然の草原と農耕地からなる緑地、いくつかの湖や山など多様な自然環境が形成されています。野鳥も豊富で、草原地帯にはノガン、アネハヅル、セグロサバクヒタキ、イナバヒタキなどが、山や湖のある地域にはチュウヒワシ、ニシオオノスリ、バライロムクドリなどが生息しているそうです。


アネハヅル(画像:pixabay)

歴史のあるアスカニア・ノバ自然保護区は2つの世界大戦で荒廃しました。1983年にようやく再編されましたが、今回も激戦地になっているので再び荒廃するのではないかと心配されます。
ただ、世界の鳥を記録するウェブサイト「eBird」でウクライナのページをを見ると、戦争の最中でも投稿されており、バードウォッチャーが健在であることが分かります。また、ウクライナ野鳥保護協会(USPB)が活動しているようです。現地のバードウォッチャーに期待しましょう。


USPBのホームページ(写真はクロライチョウ)
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