樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

晴れ男VS雷鳥

2010年06月28日 | 野鳥
毎年1回、仲間3人で出かける鳥見ツアー、今年は富山県の有峰湖と立山へ行ってきました。私の主な目的は、ライチョウとイワヒバリとの初対面。
ところが、出発する金曜日の夜から雨模様で、天気予報は土曜が雨、日曜が曇り時々雨。重い気分のスタートでした。しかし、今年の私は晴れ男。毎月訪れる栃の森でも、悪い予報を覆して快適に森歩きができています。
今回も最初のポイント・有峰湖に着くと雨が止み、鳥見が終って車に乗ると雨が降るというラッキーな巡り合わせ。翌日の立山でも「降水確率50%」という予報に反して、ケーブルや登山バスで上へ登るほどに雲が消え、標高2,400mの室堂に到着すると、残雪の照り返しがまぶしいくらい。仲間が私に手を合わせて拝むほどの晴れ男ぶりです。


下界は夏なのに上はまだ雪に被われていました

双眼鏡と望遠鏡を持って歩き始めると、早速「ピリュリュ、ピリュリュ」という声が…。ルリビタキと思いきや、イワヒバリでした。
人を恐れない愛嬌のある鳥で、観光客が歩く木道のすぐそばまで寄ってきて、無心に遊んでいます。私はこういう可愛い小鳥が好きなので、イワヒバリが大変気に入りました。


名前のとおり岩の上に…

さらに歩くと、今度は「ゲゲー」という声が…。ライチョウです。いました、いました、夏羽のオスが雪の上を歩いています。その後も、岩の上にいる姿や2羽が飛び立つシーンを見ることができました。
雷鳥の名前の由来について、私は鳴き声を雷に例えたと理解していましたが、観察センターの説明によると、「天敵から身を守るために、雷雨や霧など視界の良くないときに活動するから」とのこと。


(撮影できなかったので、岐阜県観光連盟のフリー画像を頂きました)

ライチョウとイワヒバリが見られて満足したので、標高1,900mの弥陀ヶ原まで降りて他の鳥を見ることにしました。木道を歩き始めると、期待していたホシガラスがすぐに現れ、順調な滑り出し。
ところが、いつの間にか灰色の雲が現れ、ゴロゴロという音が響きます。周囲は平らな湿原で、落雷のおそれもあるので近くのホテルに避難し、お茶を飲みながら時間をつぶしました。


弥陀ヶ原ではホシガラスやウソが出現

さすがの晴れ男も雷を呼ぶ雷鳥には勝てません。それでも、2日間で57種の鳥が見聞でき、大満足の富山ツアーでした。
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樹木の組曲

2010年06月24日 | 木と作家
クラシック音楽は時々聴く程度でほとんど知識はありませんが、フィンランドの音楽家シベリウスが樹木の名前のついたピアノ曲を5編作曲しています。いずれも演奏時間3分程度の小品で、5曲まとめて「樹木の組曲」と呼ばれています。
 1番 ピヒラヤの花咲くとき
 2番 孤独な松の木
 3番 ポプラ
 4番 白樺
 5番 樅の木
「ピヒラヤ」はナナカマドのことで、初夏に咲く白い花をイメージした作品。5曲とも聴いてみましたが、私はそのナナカマドと5番のモミが気に入りました。


ピヒラヤ(ナナカマド)の花

「樅の木」は特に有名で、ピアノ発表会でもよく演奏されるようです。北欧ならではの哀愁漂う旋律で、日本人受けするメランコリックな曲調。
北欧ではモミは永遠の生命と死の象徴で、この楽曲は、死を迎えるとモミの木から魂が抜け出し、再び循環して返ってくるという輪廻のようなイメージを表現しているそうです。
自然を愛したシベリウスは森の中の山小屋風の家に住んで作曲活動をしていたとか。この「樹木の組曲」のほかにも、「あやめ」「金魚草」「つりがね草」など草花をタイトルにしたピアノ曲を作曲しています。


宇治川の川辺に生えているモミ

最近、世界から注目されている盲目の若手ピアニスト・辻井信行さんが、初リサイタルで演奏した「樅の木」をYou tubeにアップされているので貼り付けました。聴いてみてください、いいですよ~。

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日本最古の民家

2010年06月21日 | 木造建築
日本最古の木造建築は法隆寺の本堂と五重塔で、607年に建築、670年に再建されたもの。世界最古の木造建築でもあります。では、「一般民家で日本最古の建物があるのか?」と言うと、あるんですよ、これが、神戸の山奥に。
前回ご紹介した神戸市立森林植物園を下見した際、寄り道して行ってきました、通称「千年家」と呼ばれる箱木家住宅を見に。


箱木家住宅の外観

もともとは数十メートル離れた川沿いに建っていたのですが、ダム建設のため1977年に現在地に移築され、国の重要文化財として保存されています。
806年(平安時代)に建てられたという記録も残っているそうですが、移築時の解体調査で室町時代後期の建築と発表されました。1450~1500年頃でしょうか。
しかし、柱の松材を放射性炭素年代測定で測ったところ1283~1307年(鎌倉時代後期)に伐採された木材であることが判明したそうです。ということは、古い木材を再利用して、室町時代に建てたということかな?


鎌倉時代後期に伐採された木材(柱)

内部に入ると、広い土間にカマドやナガシや馬屋があり、板張りの部屋が3つあります。柱も床も時代に磨かれて黒光りしています。
黒澤明の『七人の侍』に登場する村人たちの家のような、暗くて、重くて、ワラや草の匂いがしてくるような空間。ほとんど色を感じさせないモノクロの世界が、「日本最古」を実感させてくれます。


囲炉裏のある客間(おもて)


食事する部屋(だいどこ)、奥が寝室(なんど)

建築当初から残っている部材は6本の柱、桁、梁、貫など。柱や床板に凹凸があるのは、当時はまだ台鉋が使われておらず、チョウナと呼ぶ道具ではつって仕上げたためです。


縁側の板も凹凸があります

移築されるまで箱木家のご家族が住んでおられたそうですが、多分この母屋ではなく、江戸時代に建てられたという横の離れでしょう。現在は近くの新しい家に住まれ、現当主が入場の受付や民芸品販売を担当されています。
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神戸市立森林植物園

2010年06月17日 | 木のミュージアム
6月6日に神戸市立森林植物園で野鳥の会の催しを行いました。六甲山の自然な地形や植生を生かした広大な植物園で、鳥博士、野草博士、樹木博士(私)の3人が案内しながら自然観察を楽しもうという会です。
京都から片道2時間半、往復交通費2,500円もかかるというのに、約20人が参加。中には私以上に樹木に詳しい人、昆虫など生物全般に造詣が深い人もいて、誰が案内役で誰が参加者なのか分からないほど。鳥を見たり、さえずりを聴いたり、花の匂いを嗅いだり、蝶々を追いかけたり…、いい大人が子どもに還ったような催しでした。



園内には白い花を咲かせたアジサイ系の樹木が目立ちましたが、私も植物に詳しい参加者も種類が同定できません。しばらく歩くと案内板が立っていて、「コガクウツギ 伊豆・三重・和歌山に分布し、六甲山にも自生する」とあります。
京都近辺では見られないので同定できなかったのですが、同じ関西圏なのにわずか50km離れただけで全く異なる種類が自生することに少し驚きました。


京都にはなくて神戸にはあるコガクウツギ

私の目を引いたのは、入口に展示してある樹木の化石。3500万年前の神戸の地層から発掘されたもので、中には「シマモミ」など聞いたことのない古代樹木の化石もあります。樹の化石の断片は見たことがありますが、幹がそのまま化石になったのは初めて。


シマモミの化石

もうひとつの注目は、展示館内部にあるセコイアオスギの輪切り。北米に自生する世界で最も(体積が)大きい樹です。カリフォルニア州政府の許可を得て自然倒木から切り出したもので、直径5.4メートル、重さ17トン。アメリカ国外に持ち出されたものとしては最大とか。
樹木のミュージアムで巨木の輪切りを見たことは何度かありますが、このセコイアオスギは桁外れ。所々にチェーンソーの跡が残っていますが、こんな太い幹をどうやって輪切りにしたのか、いろいろ考えても分かりませんでした。 


右下の子供から大きさを推定してください

この植物園で観察会を行うのは初めてなので、事前に3人の担当者と一緒に下見に行きました。その日はたまたま「みどりの日」で、名前に木や木扁の字がある人は入場無料とのこと。私の本名には木扁の字があるのでその恩恵に浴し、なぜか地元のテレビ局の取材も受けました。わずか300円のことですが、樹木マニアとしては嬉しかったです。
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「アジサイは毒」の謎

2010年06月14日 | 木と飲食
家の近くにアジサイで有名なお寺があって、毎年今頃は全国から花見客がやってきます。いつもは閑散としている町内の道路が珍しく渋滞するほど。
そのアジサイに有毒成分が含まれていることを最近になって知りました。蕾や葉、根に青酸カリと同じような青酸配糖体が含まれていて、摂取すると、めまいや嘔吐、痙攣、昏睡、呼吸麻痺などの症状を引き起こすそうです。


私は青いアジサイが好きです

一昨年、茨城県の料亭で料理の盛り付けに使ったアジサイの葉を8人の客が食べて中毒症状を発症。大阪市でも同様の事件が発生しています。これを受けて、厚労省は「アジサイの喫食による青酸食中毒について」という通達を出しました。
ところが、茨城県がアジサイの葉を分析したところ、青酸配糖体や農薬などの毒性物質は検出されず、厚労省も「アジサイの青酸配糖体が含まれていることについての知見が十分ではない」という理由で先の通達を廃止したそうです。


この葉にも毒が?

アジサイの仲間にアマチャという木があります。この葉を乾燥してから煮出すと甘い汁になるので、甘茶としてお釈迦様にかけたり、飲んだりします。
アジサイはもともと無毒なのか? アマチャだけが無毒なのか? 葉を乾燥すれば毒性が分解するのか? 謎は広がりますが、樹木の本には「葉を虫に食べられるのを防ぐためにアジサイが有毒成分を分泌する」と書いてあります。


庭のアジサイ「隅田の花火」

科学的には謎のままですが、実際に茨城県や大阪市でアジサイの葉を食べて中毒になった事例がありますから、口にしない方がいいですね。料理を提供する側も、飾りにアジサイの花や葉を使って客が誤って食べると責任問題になりますから用心してください。
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マグノリア

2010年06月10日 | 木と歌
団塊世代のご多分にもれず、中学時代にビートルズにかぶれました。でも、私の最初のアイドルはリッキー・ネルソンという歌手でした。小学生の頃、『陽気なネルソン』というテレビドラマで毎回彼が歌うのを見たのが洋楽との出会いです。
エルビス・プレスリーの陰に隠れてあまり有名ではありませんが、ヒット曲もいくつかあります。レコードも何枚か買いました。古いものはスッパリ処分する方ですが、わずかなお小遣いを貯めて買ったアルバムは捨てられませんでした。


15才の時に買ったアルバム

このアルバムの中の「Down Home」という曲に、「♪~sweet magnolia in the breeze」という歌詞があります。magnoliaを辞書で調べてモクレンと知り、あの縦長の花を想像しながら、「その香りが風に乗って匂ってくるんだな~」と思っていました。
その45年後、樹木の知識が深まるにつれて、マグノリアはモクレンではなくタイサンボクであることを知りました。日本でも公園や庭によく植えてありますが、北米原産のモクレン科の樹木。


ちょうど今頃開花するマグノリア(=タイサンボク)(散歩コースで撮影)

一方、モクレンは中国原産。わが家にも1株あり、早春に花を咲かせますが、香りはタイサンボクに比べると弱く、風に乗って匂ってくるというほどではありません。


我が家のハクモクレン(3月25日撮影)

モクレンが落葉樹であるのに対してタイサンボクは常緑樹。葉はプラスチックのように硬く、花はサッカーボールくらい大きいので、可憐な感じはありませんが、歌詞にあるように柑橘系のいい匂いを漂わせます。


タイサンボクの葉は硬くて裏が茶色

「Down Home」は故郷の山や川を思い描いた望郷の歌。今でも時々聴きますが、山にはタイサンボクの花が咲き、川で魚釣りをしているアメリカの田園風景を想像しています。
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風変わりな絵馬

2010年06月07日 | 木と宗教
樹木や建築物を見にあちこちの神社に行くと、時々おもしろい絵馬に出会います。今回はそうしたユニークな絵馬特集です。
まずは、伏見稲荷大社の奥の院の絵馬。さすがお稲荷さんの総元締め、絵馬までキツネ型です。商売繁盛で参拝する人が多い神社ですが、この絵馬は願い事なら何でもOKのようで、若い参拝者がおもしろがってキツネの顔を描いています。私にはイヌに見えますが…(笑)。
ちなみに、境内にある数件の食事処ではきつねうどんと稲荷寿司が必ずメニューに入っています。





以前ご紹介しましたが、京都市の中心部にある御金(みかね)神社の絵馬はイチョウ型。理由は単純、ご神木がイチョウだから。この神社は名前の通り金運祈願で知られ、鳥居も金色です。ひょっとすると、イチョウの黄葉を黄金色に例えた絵馬かも知れません。



豊臣秀吉を祀った豊国神社では瓢箪型の絵馬を発見。立身出世や開運祈願と思いきや、縁結びだそうです。案内板によると、秀吉とねねは当時としては珍しく恋愛結婚で結ばれたから…。女性観光客目当てのこじつけっぽいな~(笑)。




奉納場所は千成瓢箪状態

お寺の場合も絵馬と言うのかどうか、大阪の一心寺には断酒祈願のしゃもじの絵馬があります。言い伝えによると、本多忠朝という武将が大阪夏の陣で前夜の深酒がたたって敵に打たれ、死ぬ間際に酒癖を悔い「酒のために身を誤る者を助けたい」と誓ったので、その墓に酒に苦しむ当人や家族が参拝するようになったとか。
なぜしゃもじなのか分かりませんが、お墓のまわりにたくさんぶら下げてありました。私も酒飲みですが、今のところお世話にはならなくていいようです。



最もインパクトがある絵馬は、奈良の春日大社の末社・夫婦大国社(めおとだいこくしゃ)のハート型。日本で唯一、大国主命(おおくにぬしのみこと)と須勢理姫命(すせりひめのみこと)の夫婦の祭神を祀った神社で、縁結びにご利益があるそうです。
色も濃いピンクで、たくさんの絵馬が奉納されている一体は異様に熱っぽい雰囲気でした(笑)。





絵馬の材質はもともとは国産のヒノキやモミだったはずですが、現在はほとんどが輸入材。アメリカ産のモミ、スプルース、中国産のシロマツ、ロシア産のエゾマツなどのようです。木目がそろって美しいこと、木肌が白くて願い事が書きやすいことが絵馬の木材の条件でしょう。
こうやって風変わりな絵馬を並べると、神社側の“商売繁盛”の戦略が見え隠れしたり、それを承知の上で神頼みする人間のせつなさが偲ばれたり、なかなか感慨深いです。
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座禅

2010年06月03日 | 木と宗教
木製品を見ると何でも気になる私は、テレビで座禅シーンを見ていて、「肩を叩くあの棒にはどんな意味や由来があるのだろう?」と疑問になって調べてみました。
あの棒は「警策」と書き、曹洞宗では「きょうさく」、臨済宗では「けいさく」と読むそうです。坐禅の最中に睡魔に襲われたり、逆に非常に充実した坐禅をしている者に、励ましの気持ちを込めて、文殊菩薩に成り代わって叩くものだそうです。
材質は宗派や寺院によって違うようですが、あるお寺では夏は薄着の人を叩くのでヒノキ、冬は厚着の人を叩くのでカシを使うとか。カシは硬いので、薄着では痛いからでしょう。また、叩く回数も夏は両肩を2回ずつ、冬は4回ずつと決めているそうです。ヒノキやカシのほかナラやクリの警策もあるようです。



以上は一般人対象の話で、お坊さんが修業するときはそんな生易しいものではなく、座禅も長時間に及び、警策を激しく打ちつけるので何本も折れるそうです。(お~恐っ!)
上の写真は宇治で最も大きなお寺、万福寺の座禅会。太っ腹な宇治市観光課のフリー画像サイトからいただきました。
巡回するお坊さんが警策を体の中央に立てるのは曹洞宗、右肩に担ぐのは臨済宗だそうですが、この写真では左肩に担いでいます。万福寺は黄檗(おうばく)宗の総本山ですから、この宗派独特なのでしょう。
私は座禅の経験はありませんが、叩く部分は平たく、骨を避けて筋肉を狙うので、打たれた後は血の巡りが良くなって清々しい気分になるそうです。
それでも、カシやクリの警策は痛そうだから、できればヒノキにして欲しいな~(笑)。
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