樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

白樺の大地

2007年06月29日 | 木と飲食
信州ツアーで樹木の名前のお土産を見つけたので買ってきました。「白樺の大地」という名前で、白樺の幹に見立てた円柱のパッケージ。中身は、砕いたゴーフレットをミルクチョコレートに散りばめて、ホワイトチョコレートでコーティングしたお菓子です。

          

確かに信州は「白樺の大地」でした。霧ヶ峰でも美ヶ原でもシラカンバが群生していました。日本人が白樺を好きなのは、現在の美智子皇后が天皇と婚約したミッチーブームの頃、信州のテニスコートでプレイするシーンや白樺林のシーンがメディアによく登場したからだ、という説を本で読んだことがあります。
その真偽は分かりませんが、昨年9月の悠仁新王誕生の際おしるしが話題になりましたが、皇后のおしるしが白樺であることは本当です。

      
             (美ヶ原の白樺林)

もう1つ樹木の名前のお土産を買ってきました。「白い針葉樹」という名前のラングドシャ。買った時は名前の意味が分かりませんでしたが、帰宅後に写真を整理していて「はた!」と気がついたことがあります。

      

諏訪大社に御柱を見に行った際、その横に「天覧の白松(三葉の松) 昭和天皇御参拝 昭和39年」という札のある樹がありました。マツなのにプラタナスのように樹皮が白く、まだら模様に剥がれていました。初めて目にする樹です。
          
             (諏訪大社秋宮の白松)

調べてみると、ハクショウという中国原産のマツで、日本のアカマツやクロマツが二葉であるのに対して三葉であることが特徴で、日本では別名「三鈷の松(さんこのまつ)」と呼ばれ、その落葉を持っていると願いが叶うという言い伝えがあるそうです。道理で、三葉の落葉を撮影しようと探しましたが、人が拾うためか落ちていませんでした。
お菓子の「白い針葉樹」がこの白松に由来するのかどうか分かりませんが、白い針葉樹を見たのは初めてでした。
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宇宙を旅したツツジ

2007年06月27日 | 樹木
街のツツジはもうピークを過ぎましたが、鳥見ツアーで訪れた霧ガ峰高原ではレンゲツツジが満開でした。また、次の日に登った栂池自然公園(標高約2,000m)でもムラサキヤシオが美しい花を咲かせていました。

      
          (霧ガ峰高原のレンゲツツジ)

ツツジは漢字で「躑躅」と書きます。なぜ足ヘンなのかと思ったら、この熟語は「行ったり戻ったりする」という意味で、あまりにもの美しさに旅人が行きつ戻りつしながら花を眺めるのでこの字が当てられたそうです。
そのツツジが宇宙を旅行したという話をご存知でしょうか? 平成6年にコロンビア号で宇宙飛行した向井千秋さんは、ツツジで有名な群馬県館林市の出身。飛行士には記念としていくつかの品を船内に持ち込むことが許されているそうで、彼女は故郷のツツジの種(約30kg)を持ち込みました。

      
     (栂池自然公園のムラサキヤシオ。まだ雪渓が残っていました)

そして、約2週間の宇宙飛行の後に地球に帰ってきた種は、東大植物園などの研究所で育成され2、3年後に開花したそうです。宇宙旅行による突然変異が注目されていましたが、残念ながら特に変化はないとのこと。現在、宇宙のツツジとして館林市のつつじ研究室をはじめ、館林市から贈呈された「宇宙を旅したツツジ」が日本各地の研究機関や教育施設で育てられています。
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蕎麦と御柱

2007年06月26日 | 木と宗教
土曜日から月曜日までの3日間、友人3人で信州に鳥見ツアーに行ってきました。最初に訪れたのは諏訪。目的は鳥ではなく、蕎麦と諏訪大社。以前から、この神社の御柱(おんばしら)祭のことが知りたくて、機会があれば行きたいと思っていました。
みなさんも、大きな丸太に大勢の氏子が乗ったまま山を駆け落ちるという勇壮なシーンをテレビでご覧になったことがあると思います。6年に一度、寅と申の年にしか行われない祭で、前回は平成16年(申)だったので、次回は平成22年(寅)まで行われません。

          
       (秋宮の一の御柱。白い木肌はモミならでは。)

あの大きな柱はモミです。御柱祭の公式サイトによると、3年前に使う木を決めて、1年前にオノとノコギリだけで伐採するそうです。切り出される木は全部で16本、大きさは、長さ約20m、直径約1m、重さ10トン。それぞれの山から運び出されて、本宮、前宮、春宮、秋宮の四つの宮の四隅に建てられます。
私たちがテレビでよく見るのは「木落とし」と呼ばれるシーンですが、その後の「川越し」もクライマックスだそうです。

          
    (御柱の模型。木に開けた小さい穴に太い縄を通して引くようです)

なぜモミなのか? なぜ四隅に建てるのか? 確かな由来は分かっていません。ご神木ならモミではなく、マツとかスギでしょう。社殿の建築が起源ならヒノキのはずです。
民俗学者の柳田国男をはじめ多くの専門家がそれぞれの説を唱えていますが、定説にはなっていません。いずれにしても、樹木崇拝から生れた神事であることは間違いないです。
諏訪大社の近くのお店でいただいたお蕎麦は、やっぱりおいしかった。3人で行く鳥見ツアーは10年以上になります。以前は鳥ばかり追いかけていましたが、最近は樹や野草を見たり、グルメに走ったり、少し余裕が出てきました。
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首かけイチョウ

2007年06月22日 | 伝説の樹
6月初めに久しぶりに東京に出張しました。仕事が終ってから、何ヶ所か樹木のポイントを寄り道して、新幹線に乗る前に日比谷公園で「首かけイチョウ」を見てきました。

      
    (樹の向こうは公園内にある明治36年創業のレストラン「松本楼」)

このイチョウはもともと日比谷交差点にあったもので、明治32年頃に道路拡張のために伐採されようとした際、本多静六という日本初の林学博士が東京市議会議長に掛け合って、日比谷公園に移植したもの。イチョウの移植は不可能と言われる中、「私の首をかけても移植してみせる」と言ったためにこの名前があります。

           
         (幹周り6.5m、推定樹齢400年だそうです)

この本多静六は「日本の自然公園の父」とも言える人で、日比谷公園をはじめ明治神宮、福岡の大濠公園などを設計したほか、東北地方に鉄道防雪林を設けたり、国立公園の開設を指導しています。また、博覧強記で知られ、生涯に376冊もの本を書いたそうです。
その一方で、節約して投資しながら莫大な資産を築き、故郷の埼玉県に広大な山林を所有したものの、後にすべてを県に寄贈しています。その生き方や投資術が注目され、最近は樹木分野だけでなく経済分野の雑誌や単行本に時々登場します。
なお、明日から3日間、信州に鳥見ツアーに出かけますので、来週月曜日はお休みして火曜日にアップします。
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お滝さん

2007年06月20日 | 木と言葉
うちの近所にアジサイで有名な三室戸寺というお寺があって、満開のいま全国から観光客がやってきます。テレビ局も毎年取材に来ています。
このアジサイの学名Hydrangea Otaksa(ハイドランジア・オタクサ)は、江戸時代に長崎に在留したドイツ人医師・シーボルトが命名したもので、Otaksaは「お滝さん」と呼ばれていたシーボルトの日本人妻に由来します。その後、この学名は変更されましたが、植物学の世界では有名な話です。

      
      (三室戸寺ではなく、散歩コースの花寺のガクアジサイ)

シーボルトはアジサイ以外にもたくさんの日本の植物に学名をつけています。もう一人、ツンベルグというスウェーデン人医師も同じく日本の多くの植物を命名しています。以前ご紹介しましたが、柿の学名をKakiとしたのもツンベルグです。
彼らは日本の医学の進歩に貢献した人物と思われていますが、裏の顔は違ったようです。2人を雇っていたのはオランダの東インド会社。コショウや紅茶などアジアの植物で大儲けした会社ですから、第2のコショウや紅茶を求めて各国にこうした人物を送り込んでいたのです。

      
          (栃の森で撮影した自生のコアジサイ)

現在でも、新しい医薬品や食品の材料を求めてアフリカやアマゾンの奥地に出かけるプラント・ハンターがいますが、シーボルトもツンベルグもプラント・ハンターが本来の任務だったようです。
シーボルトにいたっては、当時のドイツ政府から日本の内情視察の命令を受けていました。要するにスパイです。1828年に帰国する際には、荷物の中にご禁制の日本地図が入っていたために国外追放処分を受けています。
オランダは現在も花卉類の種苗産業では世界のトップに君臨しているようですが、その基礎は私たちが世界史で習った東インド会社にあるんですね。
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ゴ~ン

2007年06月18日 | 木の材
以前、タワシに使われる木としてシュロをご紹介しましが、この木はもっと意外な所で使われています。お寺の鐘をつく撞木(しゅもく)です。

      
         (黄檗山・万福寺の撞木はシュロ)

以前、近くにある黄檗宗総本山・万福寺に除夜の鐘を撞きに行きましたが、私の記憶では「ゴ~ン」という重い音ではなく、「シュワ~ン」というような柔らかい音でした。その時は気づきませんでしたが、後日訪れたとき確かめたら撞木はシュロでした。
また、平等院にフジの撮影に行った際、鐘楼に登って確かめたらこちらもシュロ製の撞木でした。

      
           (平等院の撞木もシュロ)

すべての撞木がシュロ製というわけではなく、NHKの「ゆく年くる年」でお馴染みの京都の知恩院はヒノキ。先日、京都市内に出かけた折に、足を延ばして撮影してきました。
万福寺や平等院の鐘と違って、びっくりするほどでかい。高さが3mもある大鐘ですから、シュロのような柔らかい木で撞いても音が出ないのでしょう。撞木も太いです。案内板には、除夜の鐘はお坊さん17人が力を合わせて撞くと書いてありました。

       
         (浄土宗総本山・知恩院の撞木はヒノキ)

また、奈良の東大寺の大鐘の撞木はケヤキだそうです。鐘の大きさや寺それぞれの伝統に合わせて材質が選ばれるのでしょう。シュロは鐘を痛めないので重宝されるようです。
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七色の木

2007年06月15日 | 伝説の樹
京都府のほぼ中央に位置する京丹波町に「七色の木」があるというので、5月に帰省した折、少し遠回りして見てきました。
関西百名山の一つ長老ケ岳の登山口から少し歩くと、その樹はありました。幹の周囲7.4m、樹高11mのカツラの巨木に、スギ、ケヤキ、フジ、カヤ、イロハモミジ、イタヤカエデの6種類の樹木が共生しているそうです。合計7種類なので「七色の木」。
特別な伝説はないようですが、なかなか風格のある巨木です。京都府の自然200選にも選ばれています。うかつなことに双眼鏡を忘れたので、肉眼で確認できた寄生樹種はスギとイロハモミジだけでしたが、どちらも樹齢100年くらいの太い幹でした。

         

これとは別に、鳥取県にも「七色の木」があります。こちらは本で読んだ知識ですが、大山の麓に「七色ガシ」というシラカシがあり、その樹の葉は春から冬にかけて紫→黄→白→赤→緑→青と色が変わるそうです。以前、鳥取大学がそのメカニズムを調査しましたが、結局分からなかったとか。この樹はネットでも紹介されています。
カシ類には時々こうした葉の色の変化を見せる突然変異体があるようで、岡山県にはウラジロガシの「七色ガシ」があるそうです。
日本各地にこうした不思議な木がたくさんあるのでしょう。それを想像するとワクワクしてきます。
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焼き鳥

2007年06月13日 | 木の材
「私は野鳥の会の会員なので、焼き鳥は食べられないんです」と言うと、ほとんどの人は「やっぱり、そうですか~」と納得します。
全くの冗談で、焼き鳥は大好きでよく食べます。ニワトリは食糧として飼育されているもので、野鳥ではないのでノープロブレム! 焼き鳥やフライドチキンはもちろん、玉子も食べますし、野生のカモでなければ鴨ロースも食べます。
鳥の話と思いきや、ここから急に木の話に変るのですが、焼き鳥の全国チェーン「大吉」は店舗の建築材に電柱や鉄道の枕木を再利用しています。最近、近所に「大吉」が開店したので、早速食べてきました。そして先日、店頭の木材を撮影するために、午前中に散歩がてら行ってきました。

          
         (北陸電力の電柱を再利用した柱)

資源の再利用もそうですが、「大吉」が偉いのはそれぞれの材木に「九州電力さんの電柱です」などと表示していること。古材の管理を確実にやっていないと、こんな芸当はできないでしょう。
近くの「大吉」では、九州電力と北陸電力の電柱が使われていました。これらの電柱はほとんどがスギです。電柱が木製だった頃、富山県を中心にボカスギという電柱専用の栽培品種が植えられたそうで、成長が早く、木目が粗いので防腐剤などが注入しやすかったとのこと。

      
        (関西本線の枕木を再利用した梁)

枕木については以前にも書きましたが、最高級品はクリ。地方によってはカシなど他の木も使われたようですが、クリは腐りにくいので防腐剤を注入せずに使ったそうです。
「大吉」の店頭には関西本線の枕木が使ってありました。匂いをかいでみると少しクレオソート臭が残っていたので、多分クリではなく他の材でしょう。
最近は「大吉」以外の飲食店の建材や、ガーデニングの材料として電柱や枕木の古材が使われているようで、樹木ファンとしては嬉しい傾向です。
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スペインとザクロ

2007年06月11日 | 木と楽器
以前、ピアノの記事を書くために鳥仲間のピアノの先生宅へ行ったとき、スペイン土産のカスタネットも見せてもらいました。フラメンコのダンサーが手につけて踊る例の楽器です。このカスタネットの素材はザクロ。

      
          (親指にはめて、4本の指で叩くそうです)

スペインとザクロは縁が深く、スペインの国の木に選定されています。また、アルハンブラ宮殿で知られるグラナダという古い街がありますが、Granadaはスペイン語でザクロの意味です。
スペインの特にアンダルシア地方にはザクロがたくさん自生していて、花を愛で、実を食用にし、木材はカスタネットをはじめさまざまな道具に使う、言わばザクロ文化圏を形成しているようです。

      
        (ちょうどいま、あちこちでザクロの花が咲いています)

カスタネットにはザクロのほかツゲ、クルミ、コクタンなど堅い木が使われていますが、木は寒さや乾燥で割れることもあるので、最近は気温の変化に強いグラスファイバー製のカスタネットも出回っているようです。

      
           (いかにも堅そうなザクロの幹)

先日、テレビ番組の雑学クイズで、「小学校で使うカスタネットが赤と青に塗り分けられているのは何故でしょう」という問題があって、「どちらか1色にすると男女の数が合わないことがあるので、どちらでも使えるように赤と青でセットにした」という答でした。
あの赤と青のカスタネットはザクロではなく、多分ホオノキとかブナなど軽くて入手しやすい木だと思います。懐かしいですね、私もカチャカチャた叩きました。
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トチノキの日曜日

2007年06月08日 | 街路樹・庭木
トチノキは英語でChestnut(チェスナット)と言います。イギリスではこのトチノキ(正確にはセイヨウトチノキ)の花が咲く5月末~6月上旬にかけて、Chestnut Sunday(トチノキの日曜日)という、日本のお花見のような行事が行われるそうです。
バッシー公園という所にはチェスナットアベニューという道があり、1.6kmの大通りに12m間隔でトチノキが植えられていて、その開花状況で「今年のChestnut Sundayは○月○日」と決め、当日は家族連れでトチノキのある各地の公園に出かけて、花を愛でながらピクニックを楽しむとか。

      
        (5月中旬に栃の森で撮影したトチノキの花)

パリのシャンゼリゼ大通りはマロニエの並木で有名ですが、マロニエはセイヨウトチノキのことで、イギリスのチェスナットアベニューを真似て作られたものだそうです。
私もトチノキが好きで、いつも行く「栃の森」の帰りに蜂蜜や山菜を売っているオジサンから2回も鉢植えを買いましたが、いずれも枯らしてしまいました。もともと水辺に生育する樹木なので、水遣りを疎かにするとダメみたいです。

      
      (京都市伏見区の京セラ本社付近にあるマロニエ並木)

外国産のセイヨウトチノキや園芸品種のベニバナトチノキはそうでもないようで、日本でもシャンゼリゼ通りを真似て街路樹に使っていますが、枯れずに大きな葉を広げています。京都の大企業・京セラの本社近くにもマロニエの並木があります。
考えてみると、私が「栃の森」に出かけて自生の花を見るのも日曜日。知らぬ間に「トチノキの日曜日」を実践していたわけです。
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