樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

美名と悪名

2012年11月29日 | 木と鳥・動物
ミズメという木があります。樹皮がサクラに似ているので「ミズメザクラ」という別名がありますが、サクラとは縁もゆかりもないカバノキ科。シラカバと同じ仲間です。

 
樹皮も葉もサクラに似ています

この木には他にも別名があって、その一つは「梓」。「真野あずさ」など女性の名前のほか、三島由紀夫の父「平岡梓」など男性の名前にも使われます。特急の名前にも使われ、「あずさ2号」という歌がヒットしました。
そういう美しいイメージとは正反対に、「ヨグソミネバリ(夜糞峰榛)」という強烈な別名もあります。ミネバリは「峰(=山)に生える榛(はり)の木(=ハンノキ)」という意味ですが、「夜糞」の由来は不明です。
ミズメの枝の皮を爪で少し剥ぐと、サロンパス(サロメチール)の匂いがします。この匂いが「夜糞」の由来という説もありますが、悪臭ではないので私は違うと思います。


皮を剥いで鼻を近づけるとサロメチールの匂いが…

別名の由来もさることながら、なぜサロメチールの匂いを出すのかが以前から疑問でしたが、最近読んだ本にその答を見つけました。
それによると、アフリカのサバンナに生えるアカシアの木は、キリンに食べ尽くされそうになるとサロメチール(サリチル酸メチル)の匂いを放出するそうです。人間にとって悪臭ではなくても、キリンにとっては悪臭なんでしょう。そうすることで、キリンの食圧から種を保全しているらしいです。
ミズメもシカやクマやサルの食害から自らを守るためにこんな匂いを出しているのではないでしょうか。彼らにとってはサロメチールの匂いは「夜糞」なんですね。

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ブランドマークでバードウォッチング

2012年11月26日 | 野鳥
鳥のシンボルマークシリーズ第3弾として、企業やブランドの商標に使われている鳥を探鳥します。
まず、世界で最も知られている鳥のマークといえば、世界最大の食品・飲料会社ネスレの「鳥の巣」でしょう。社名は創業者のアンリ・ネスレに由来しますが、そのNestleはドイツ語で「小さな鳥の巣」を意味し、ネスレ家の家紋が鳥の巣だそうです。



ちなみに、中国では同社を「雀巣」と表記するようです。一方、日本で最も有名な鳥のマークは大正製薬でしょう。
「鷲のマークの大正製薬」というキャッチフレーズは1912年から使用されているそうです。当時の社長・上原正吉氏が自分の出身地・埼玉県杉戸町の地図を模してワシをシンボルにしたとか。



私が以前から気になっていたのは、ホンダのバイクのエンブレムに使われている翼。「何の鳥の翼だろう?」と調べてみると、由来は古代ギリシャの彫刻「ニケの像」でした。
創業者・本田宗一郎氏の「世界一を目指し、世界へ羽ばたこう」という熱い思いを表現してこの「ウィングマーク」が生まれたそうです。



しかし、バーダーとしては「じゃあ、ニケの像の翼は何の鳥の翼だろう?」とさらに興味が湧きます。しつこく調べたら、予想通りワシでした。


ニケの像

ついでながら、スポーツブランドのナイキも由来は同じで、ニケ(nike)の英語読みが「ナイキ」。あのスウォッシュマークのモチーフもニケの翼です。



このスポーツ分野には意外にも鳥が多く生息しています。カンタベリーというニュージーランド生まれのラグビーブランドは、飛べない鳥キウイをマークにしています。
3羽描かれているのは、羊毛事業で創業した際に3人のキーマンがいたからのようです。キウイはニュージーランドの国鳥にもなっています。



スポーツアパレルではマンシングウェアのペンギンの方が先輩でしょう。ワンポイントマークの流行以来カジュアルウェアとして有名になりましたが、もともとはゴルフウェアのブランド。



実は、私は以前このブランドの広告物の制作を担当し、CMの撮影で1カ月ほどアメリカに行ったこともありました。
当時の記憶では、同社の営業部長が出張先でペンギンの剥製を購入して機内に持ち込んだところ、隣席の老女が「まぁ可愛い!あなたの会社のマスコットにすればいいのに」と言ったことがきっかけだったようです。
私の前の担当者が、「本物のペンギンがゴルフ場を歩くCMを作ったら、どこかの団体からクレームが来た」と言っていました。日本野鳥の会かも知れませんね。
ほかにも鳥のマークのブランドはありますが、長くなるので本日の探鳥会は終了します。

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弥勒菩薩像の謎

2012年11月22日 | 木と宗教
10月下旬に京都大学宇治キャンパスの公開イベントが行われました。山中教授がノーベル賞を受賞した後だったせいか、宇治キャンパスには医学部の施設がないのに、これまでよりもたくさんの人出でした。
私の目当ては樹木に関する講演。今回、「木をみて木にまなぶ」「大気の環境変動と森林の関わり」という2つの講演を聴講してきました。
その中で興味深かったのは、前者の講演の仏像と木材の話。日本の仏像はほとんどがクスノキかヒノキで作られているのですが、京都の広隆寺にある国宝・弥勒菩薩像だけはなぜかアカマツで作られているそうです。


広隆寺の弥勒菩薩像(東京国際博物館アーカイブより)

当ブログでも以前ご紹介しましたが、朝鮮半島の主要木材はアカマツで、日本のヒノキのような存在。また、広隆寺を創建したのが百済から渡来した秦氏であることから、朝鮮で作られた弥勒菩薩を持ち込んだのではないかと言われているのです。
しかも、この独特のポーズの弥勒菩薩像は朝鮮半島にもたくさんあって、その一つ(金属製)は韓国の国宝。講演で写真を見ましたが、そっくりそのままでした。
ところが、後になって像の背中の一部にクスノキが使われていることが判明。クスノキは朝鮮半島には存在しないことから、謎が深まったのです。
メイド・イン・ジャパンかメイド・イン・コリアか、学者の間ではまだ決着がついていないようですが、私はメイド・イン・コリアと推測しました。
その根拠はコウヤマキ。古代の日本では棺にコウヤマキを使いました。日本特有種ですが、朝鮮半島でもコウヤマキ製の棺が発掘されています。つまり、日本と朝鮮半島の間では、木材の輸出入が行われていたので、弥勒菩薩にクスノキが使われていても不思議はない…。
こういう推測が勝手にできるところが考古学の面白さなんでしょうね。
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飛行機でバードウォッチング

2012年11月19日 | 野鳥
国旗に続いて、鳥のシンボルマークシリーズ第2弾は飛行機。どちらも空を飛ぶことから、鳥をマークに採用している航空会社がけっこうあります。
早期に再建を果たした日本航空も、一時廃止していた「鶴丸」を復活させました。JALの機体に初めて「鶴丸」が登場するのは、ジェット機を採用した1959年。ツル採用の理由は不明ですが、半官半民の航空会社でしたから日の丸がモチーフになっているんでしょうね、多分。



意外なことに、ドイツのルフトハンザ航空のマークもツル。同社は1919年に世界初の定期航空輸送を複葉双発機で始めたのですが、その機体にすでにツルのマークが描かれていたそうです。
鳥の中で最大級の大きさであること、童話で「天国の使い」とか「幸運を呼ぶ鳥」として扱われていることからツルを描いたとのこと。現在、野生のツルを保護する活動も行っているようです。



中国東方航空の尾翼に描かれているのはツバメ。速いイメージで採用したのでしょうか。



ついでに、中国国際航空は架空ながら不死鳥(鳳凰)です。架空の鳥と言えば、ガルーダ・インドネシア航空の尾翼にはガルーダ(神の鳥)が描かれています。
同じ東南アジアのシンガポール航空も鳥のマーク。Silver Krisと呼ぶようで、同社の機内誌のタイトルにもなっていますが、鳥の種名なのかマークの愛称なのかは不明。



このほか、アメリカン航空(ワシ・下)、キャセイパシフィック航空(翼・種類は不明)、トルコ航空、イラク航空、クウェート航空、ガボン航空、エアロメヒコ、ジャマイカ航空などが鳥や翼をロゴマークに使用しています。



そういえば、しばらく飛行機に乗っていないな~。
なお、掲載した飛行機の写真はフリー画像です。
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シャボン玉売り

2012年11月15日 | 木と子ども
先日、ムクロジの実で作った洗剤をご紹介しましたが、ある人から「昔はムクロジの実で作ったシャボン玉を売る商売があった」と教えていただきました。
調べてみると、シャボン玉を吹きながら売り文句を唱え、子どもたちにムクロジの実で作った石鹸液とストローを売る「サボン玉売り」が江戸時代から明治にかけてあったようです。
その売り文句が、江戸では「玉屋~、玉屋~」、大阪や京都では「ふき玉やサボン玉、吹けば五色の玉が出る~」。キャッチフレーズとしては関西の方が優れていますね。
三都とも夏の風物詩で、特にお祭りの日はよく売れたそうです。このシャボン玉売りは日本舞踊の「玉屋」という作品にも残っているとか。
わが家ではムクロジの洗剤が却下されたので、シャボン玉を作ってみました。



ムクロジが子どものおもちゃに使われたのはシャボン玉だけではありません。種は羽根つきの羽根に使われました。下の写真はたまたま現在、宇治市歴史資料館で開催されている「子どもたちの近代誌」の展示品。



今ではほとんど見られなくなりましたが、昔はお正月になると「カチーン、カチーン」という羽根つきの音が聞こえてきました。ムクロジの種は硬いので、この羽根のほか数珠にも使われます。お寺の境内にムクロジの樹が多いのはそのせいかも知れません。
下の写真は、あるイベントで展示されていたムクロジの種。葉っぱと実も並んでいます。



ちなみに、羽子板の方の材はキリ。子どもが手に持っても軽いからでしょう。現在は遊びよりも装飾用として豪華な羽子板が作られています。
埼玉県の春日部市がその主な産地らしいですが、ここはもともと桐箪笥の産地であったことから、端材を利用して羽子板を作ったようです。
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国旗でバードウォッチング

2012年11月12日 | 野鳥
「木が描かれた国旗は?」というクイズなら「カナダ」とか「レバノン」と答えられますが、「鳥が描かれた国旗は?」と尋ねられたら何も思い浮かびません。しかし、調べてみると意外にたくさんあります。
まずは、アフリカのウガンダ。中央に描かれているのは、国鳥ホオジロカンムリヅル。日本には生息しませんが、最近どこかの動物園から逃げ出してニュースになったようです。



同じくアフリカのザンビアの国旗には、国鳥のフィッシュ・イーグルが描かれています。文字通り魚食性のワシですが、フラミンゴも捕食するそうで別名「フラミンゴ・イーグル」。



次は、旧ソ連邦のカザフスタン。太陽の下で翼を広げているのはステップ・イーグル。昔、この地を支配していたチンギス・ハーンも青地にワシの旗を使っていたので、それを受け継いでいるそうです。



次は、南太平洋に浮かぶ小国キリバス。日付変更線に最も近く、世界で一番早く太陽が昇る国であることを国旗でも表現しています。その太陽の上を飛んでいるのはコグンカンドリ。日本にもたまにやってくるようで、今年も鳥取県や愛知県で目撃されたようです。



同じく南太平洋のパプアニューギニアの国旗に描かれているのは、アカカザリフウチョウ。テレビの自然番組にはフウチョウの仲間がよく登場しますが、実物は見たことないです。



今度は中南米に渡って、グアテマラ。小さくて見えにくいですが、中央に緑色で描かれているのはケツァール。私はこの鳥はコスタリカのイメージが強いですが、グアテマラの国鳥なんですね。ケツァールの下に描かれているのは2丁のライフル。国を守るためには戦争も辞さないという意志を表しているそうです。



次は、カリブ海に浮かぶドミニカ。ややこしいですが、カリブ海には野球で有名なドミニカ共和国がありますが、それとは別にドミニカ国があるんですね。知らなかった。国旗に描かれているのは、国鳥ミカドボウシインコ。



このほか、メキシコの国旗にはワシが、エクアドルとボリビアの国旗にはコンドルが描かれています。中南米の国旗にはなぜか鳥が多いです。

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秋の色

2012年11月08日 | 樹木
週末に栃の森へ行ってきました。今の時期の見どころは、やはり紅葉。
まず、動画で森の外(前半)と中(後半)のカラフルな風景を見てください。一口に「紅葉」と言っても、さまざまな色やトーンがあります。



この森には12種類のカエデが自生しています。そのほとんどは緑~黄~赤と変化しますが、日差しのいい場所に立つ樹ほど鮮やかで、同じ樹でも樹冠部から色づくので、紅葉には日差しが影響していることが分かります。


緑色から一気に赤くなったコハウチワカエデ


黄色から赤に変身しつつあるウリハダカエデ


オレンジ色のコミネカエデ


イタヤカエデは赤くはならず黄色のまま

「紅葉」や「黄葉」だけではありません。よく観察すると、意外な色に染まっている樹の葉があります。


ナナカマドは赤紫


ミズキは紫色


ミズキの仲間ヤマボウシはサーモンピンク

下はウワミズザクラですが、肌色です。デジタルでは再現しにくいですが、肉眼ではうっとりするような肌色でした。



そして、今までにも何度か紹介した“白く紅葉する”コシアブラ。多分、カロチノイドなど赤色系の色素がないために、クロロフィル(葉緑素)が分解されると白くなってしまうのだと思います。


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鳥が作曲した音楽

2012年11月05日 | 野鳥
三好達治という詩人は鳥をモチーフにした作品をたくさん遺しています。その一つ「燕」では、電線に止まっているツバメの家族を五線譜の音符に例えて、「あそこの電線にあれ燕がドレミハソラシドよ」と表現しています。
こういう着想は三好達治だけではないようで、ブラジルのあるミュージシャンが、電線に止まっている鳥の写真を新聞で見て、そのまま楽譜にすることを思いつきました。それを編曲して演奏した音楽がYouTubeで公開されているので、お聴きください。



電線の写真はPhoto Shopなどでの加工は一切していないそうです。
たまたま電線が5本あったこと、そこに音符になるように鳥が止まったこと、それを誰かが撮影して新聞に掲載したこと、それを見て「音楽になる」とひらめいたこと…、いくつかの偶然が重なってこんな面白い音楽が生まれたわけです。
以前、当ブログで、坂本龍一が樹木の生体電位を音楽にした話をご紹介しましたが、それに似ています。
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バードフレンドリーブレンド

2012年11月01日 | 野鳥
日本野鳥の会はバードウォッチング用品も販売しています。先日、本部から届いたカタログをパラパラ眺めていると、「バードフレンドリーブレンド」というコーヒーが目に止まりました。
渡り鳥が安心して帰れるよう、豊かな森林を育てる伝統的な方法で栽培された中南米産のコーヒーで、収益の一部はスミソニアン渡り鳥センターの運営資金として渡り鳥の保護や生態系の維持のために還元されるとのこと。
しかも、販売しているのが京都の「小川珈琲」。私が入社した広告代理店の主要クライアントで、よく仕事をさせていただきました。野鳥の会のカタログで懐かしい会社の名前を見つけたこともあって、いつも買うコーヒーの2倍の値段でしたが注文しました。



私は家ではほとんど飲みませんが、妻が淹れたのを一口飲むと、とてもマイルドな味でした。
ついでに、キャップも注文。散歩用に使っていたアメフトチームのキャップが汚れたので、新しいのが欲しかったのです。こちらは、野鳥の会が保護に取り組んでいるカンムリウミスズメをモチーフにしたもの。ブルーを注文したのに白が届きましたが、「まっいいか」。



来年のカレンダーも注文しました。



実は、私は以前、京都支部でこうした物品販売を8年間担当していました。本部から商品を仕入れ、車に積んで探鳥会の現場やイベント会場に出向いて販売していたのです。
収益だけでなく会員サービスも目的なので、京都府北部や、当時は京都支部のエリアだった滋賀県にも出張しました。今の時期はカレンダーの注文が多く、近くの会員には配達もしていたので結構忙しかったのを覚えています。
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