樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

クリスマスツリーのリサイクル

2015年02月26日 | 森林保護
クリスマスから2カ月が過ぎました。世界中で膨大な数のクリスマスツリーが飾られたわけですが、終わった後はすべてゴミとして処分されるのでしょうか? 気になったので調べてみました。
最も有名なクリスマスツリーは、ニューヨークのロックフェラーセンターに飾られる巨大ツリー。毎年、全米各地で69~100フィート(21~30メートル)の樹を探して、トレーラーで運ぶそうです。
欧米でクリスマスツリーに用いられるのは基本的にはモミですが、このロックフェラーセンターのツリーは代々ヨーロッパトウヒを使うそうです。


ヨーロッパトウヒ。ドイツトウヒとも呼ばれる

ニューヨーク市ではクリスマスツリーのリサイクルに取り組んでいて、このロックフェラーセンターのツリーも枝を切り払ってチップ化。幹は製材して板に加工され、低所得者向けの住宅用木材に再利用するそうです。
また、市内80カ所に粉砕機を置き、市民が持ち込んだツリーをチップ化するイベント「マルチフェスト」も行われます。日本でもお正月の松飾りやしめ縄をまとめて焼く「どんど焼き」がありますが、それに似ていますね。


マルチフェストのロゴ。粉砕機と鳥がモチーフ

チップは子どもの遊び場にケガ防止のために敷き詰めたり、街路樹のマルチ材にしたり、さらに細かく粉砕して腐葉土に再利用するとのこと。
しかし、ニューヨーク市で使われるツリー約150万本に対して、「マルチフェスト」で処理されるのは約1万2000本。残りは、各家庭から道路に出され、市の回収車が回収して同じくチップにしてリサイクルするそうです。
日本でこういう取り組みをしているところはないようですが、ペレット化して発電に利用するとか何かリサイクルを考えた方がいいですね。
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フクロウの耳

2015年02月23日 | 野鳥
日本で観察できる主なフクロウ類は8種類。このうちフクロウとシマフクロウ以外は「○○○○ズク」と名付けられています。「ズク」は漢字で「木菟」。ウサギのような耳を持った鳥が木に止まっている姿を表しているのでしょう。
トラフズクをモデルにしたといわれる「となりのトトロ」にも耳があります。
正確にはフクロウ類の聴覚器官は顔面の目の横あたりにあって、耳のように見える部位は耳角(うかく)と呼ばれています。
この耳角が小さいので「小耳木菟(コミミズク)」と命名されたフクロウが、この冬、淀川の河川敷に7~8羽まとまって飛来し、連日多くのバードウォッチャーやフォトグラファーを集めています。
私も先日、2度目の観察に行ってきました。杭の上にとまっている姿には、小さい耳が出ています。



この耳角が聴覚器官でないとすると、何のためにあるのでしょう? 
調べてみると、いくつかの説があります。一つは、カムフラージュ説。耳を立てることによって木の枝を模しているというもの。
しかし、それなら常に耳を立てておくべきですが、「木の菟」はウサギと同じように耳を立てたり寝かしたりします。
「なるほど」と納得したのは、ペットとして外来種のフクロウを飼っている人の見解。そのフクロウは眠る時に耳角を立てることが多いそうです。
以前「フクロウの首」でご紹介したように、起きているときは首を左右270°回転させて音をキャッチしますが、眠っているときは首を回せません。睡眠中に後方の音をキャッチするために耳を立てているのではないかという説です。
その人の説明では、耳角は本来の聴覚器官の真上あたりに位置し、根本に少し窪みがあるそうです。
私が撮った動画を見ても、他の人の写真を見ても、飛翔中のコミミズクは耳角を立てていません。飛んでいるときは後方の音が必要ないからでしょう。
しかし、フクロウの耳にはもう一つ疑問があります。フクロウとアオバズクには耳角がありませんが、これはなぜか? 「後方の音キャッチ」説ではこの疑問は解けません。
フクロウとアオバズクには生態的に後方の音をキャッチする必要がないのか、あるいは、目立たないだけで耳角と同じ働きをする部位があるのか。疑問は次々に湧いてきます。
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青い鳥がやってきた

2015年02月19日 | 野鳥
正月明けにカメラが故障して修理に1カ月近く要したので、しばらく撮影できませんでした。やっと戻ってきたので、いつもの散歩コースに出かけて地元の鳥を撮ってきました。
多いのはヤマガラ、シジュウカラ、メジロ。その混群に時々加わっているのが、「かわいい鳥」のベスト3にランクされるであろうエナガ。チョコマカと動きが細かいので動画で撮るのは大変です。



散歩コースの冬鳥の代表はクロジ。いつ行ってもほぼ確実に見られます。数年前、この鳥を撮影するためにわざわざ静岡県から来られたご家族もあったそうです。
この小さな山にはツブラジイが茂っていて、斜面にはたくさんの実が落ちています。クロジはそれを食べているようで、下の動画の後半では、クチバシでクルクル回しながらシイの殻を割って中の実だけ食べています。
関西では主にツブラジイとスダジイが自生しますが、スダジイの実はクロジの口には大き過ぎるので、ちょうどいいサイズのツブラジイが繁茂するこの山に渡来するのではないでしょうか。
動画の前半の個体は全身チャコールグレーなので成鳥オス、後半の個体はオリーブ色が残っているので若いオスだと思います。



嬉しかったのは、ルリビタキの成鳥オスがやってきたこと。このコースを歩き始めたのは約10年前ですが、これまでメスか若鳥のタイプしか見たことがなく、青いルリビタキは初めて。毎冬来ていた若鳥が大人になって帰ってきたのでしょう。



この成鳥以外にも若鳥タイプを2羽見かけたので、数年後には青い鳥が複数見られることになるかもしれません。
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木の意外な用途

2015年02月16日 | 木の材
このブログの元々の趣旨は、樹木と人間の暮らしや文化とのつながりをご紹介すること。右のカテゴリー欄は23に分かれていて、私自身、記事を書きながらいかに幅広く樹木と人間が関わっているかを実感しています。
先日も、「こんなところでも木が活躍しているんだ!」という意外な事実に遭遇しました。それは火薬。
黒色火薬は硫黄と硝酸カリウム(または硝酸ナトリウム)と木炭で作るそうです。私は全く無知でしたが、「黒色火薬」の黒色は木炭の黒なんですね。
その火薬の木炭に最も適した樹種はハンノキだそうです。


ハンノキの実。そう言えば火薬っぽい?

ドイツに、18世紀のナポレオン時代から黒色火薬を生産している老舗企業があります。その社長によると、「炭の材料としてハンノキ、ナラ、カエデなどいろいろ使うが、最高性能の炭はハンノキ」とのこと。
私の知識ではハンノキは有用材の範疇に入っていませんが、こんなところで活躍していたんですね。


ハンノキの幹。これが炭になって火薬になる

このドイツのメーカーでは花火用、鉱山用、銃砲用などの黒色火薬を年間1,700トンも生産しているそうですが、最も多いのは銃砲用。狩猟用も少しはあるでしょうが、圧倒的に多いのは戦闘用でしょう。
そう言えば、鉄砲の銃床にはオニグルミの木材が使われます。狂いが出ないので最適だそうです。そのために、戦争中は特に北海道のオニグルミが大量に伐採されました。
こういう危ない用途にも木は使われているわけです。
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不審者? 幽霊? UFO?

2015年02月12日 | 野鳥
ある女子大の寮の周辺で夜な夜な口笛を吹く不審者がいるという通報が警察に入りました。また、山梨県のある地域で「幽霊の声が聞こえる」という噂が広がり、子どもたちが夜トイレに行けなくなりました。
さらに、神奈川県丹沢近くの温泉で毎晩UFOのような音がするという騒動がありました。警察が調べたところ、いずれも犯人はトラツグミだったそうです。
この鳥は「ヒョー、ヒョー」と不気味な声で鳴き、時には「キーン」という金属的な音に聞こえます。それが不審者の口笛や幽霊の声、UFOの音と勘違いされたのです。
その声は入っていませんが、下は一昨年の4月に京都御苑で撮ったトラツグミ。



丹沢のUFO騒ぎについては作家の渋澤龍彦も以下のように言及しています。
このニュースを読んで、私は思わずにやりとした。私は北鎌倉の円覚寺の裏山に住んでいるが、じつは、もう数年も前から、毎年のように、この季節に.トラツグミの鳴声を聞いているのである。明け方に近く、「ヒョー、ヒー」という声がする。最初のうちは、どこかで誰かが、深夜にブランコにでも乗っているのかと思った。アンマさんの笛のようだとも思った。じつに不気味な、何とも寂しい声である。
トラツグミの声による騒動は今に始まったことではなくて、『平家物語』にも「妖怪ヌエ」として登場することは以前にもご紹介しました。
人騒がせな鳥ですが、とぼけた顔で、動きがユーモラスなので、不気味どころか私は愛らしくて好きです。
ちなみに、渋澤龍彦はその鳴き声について以下のようにも書いています。
四月から五月の繁殖期にかけて、しきりに鳴くが、「ヒョー」と鳴くのが雄であり、「ヒー」と鳴くのが雌である。雌雄の二羽が呼び交わすように「ヒョー、ヒー」と鳴く。
この記述は本当かな?と思って、蒲谷鶴彦さんの『日本野鳥大鑑鳴き声333』で確認すると、そういう俗説がある一方、否定する報告もあって、「野外における観察例、飼育下の記録はともになく、この習性の有無は不明。(中略・雌雄同色なので)姿を見ても雄か雌かわからないので、どちらの説が正しいのかは残念ながらわからない」そうです。
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バレンタインデーの由来は鳥

2015年02月09日 | 野鳥
もうすぐバレンタインデー。2月14日が男女の愛の日とされる由来は諸説ありますが、その一つには鳥がからんでいます。
平凡社の『世界大百科事典(第2版)』には次のように書いてあります。
古代ローマの豊穣祭ルペルカリア祭Lupercalia(2月15日)はとくに鳥がむつむ日として祝われた。これがバレンタイン・デー(2月14日)の起りで、この日に鳥が愛をささやき始めるといわれる。また復活祭にEaster eggで遊ぶ習慣もここに由来するようである。
また、これによく似た「2月14日はツバメがつがいになる日」という民間伝承もあって、そこから「この日に最初に出会った人が将来の結婚相手なる」という俗信が生まれたようです。
話はさらに発展して、「2月14日に見た鳥によって、その女性の結婚運が決まる」という言い伝えがヨーロッパにはあるそうです。
例えば、青い鳥を見たら幸福を与えてくれる男性と結婚する、というもの。2月に見られる青い鳥といえば、日本ではルリビタキかカワセミ。
下の動画は某所で撮影したルリビタキ。幸せな結婚がしたい女性はご案内しますので連絡してください(笑)。



ほかに、カラスなど黒い鳥を見かけたら聖職者か牧師と結婚する、というのもあります。さらに、イスカなら饒舌な人と、ゴシキヒワなら金持ちと、コマドリなら犯罪者と結婚するとか。とどめはフクロウで、2月14日にこの鳥を見た女性は結婚しない方がいいそうです。
何の根拠もない迷信ですが、チョコレートで大騒ぎしている日本人にはそれを責める資格はないですね。
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茶歌舞伎

2015年02月05日 | 木と飲食
私が住んでいるのは、宇治市の中でも特に古い茶農家が残る地域。文化活動も活発で、夏祭り、文化祭、秋祭りなどいろんなイベントが催されます。
日曜日には「茶香服(ちゃかぶき)」が行われたので参加してきました。「茶香服」とは、お酒で言えば「利き酒」。お茶を試飲して銘柄を当てるお遊びで、「茶歌舞伎」とも表記されます。
出されるお茶は、玉露2種、煎茶2種、玄米茶1種。上等な順に「花」「鳥」「風」「月」「客」の符号が付けられています。
この5つのお茶が1種ずつアトランダムに、試飲用の小さな器に入れられて出てきます。香りと味から、「これは花(上等の玉露)」とか「これは客(玄米茶)」と判定し、それぞれの札を投票します。


小さな器で試飲した後、札を順に投票箱に入れます。「5」は私の席順。

一度に5種出てくればあれこれ飲み比べて判定できますが、1種ずつ順番に判定するのは、投票済の札を訂正できないだけに結構難しい。
これを、毎回順番を変えて5回繰り返します。計25回試飲し、全部当てれば25点。私は臭覚も味覚も鈍感なので冷やかし半分の初参加でしたが、さすがに玄米茶だけはすぐに分かりました。


1回ずつ投票箱を開けて採点

私の成績は、初めの2回はそれぞれ2点、後の3回はいずれも3点、合計13点でした。優勝者は19点。回によっては0点の人もいますし、私の隣の方は簡単なはずの玄米茶を4回も外していました。初めての参加にしてはまあまあの成績でしょう。
ちなみに、「花」は100g当たり3,000円の玉露、「鳥」は1,500円の玉露、「風」は1,500円の煎茶、「月」は400円の煎茶、「客」は388円の玄米茶。
鈍感な私が言うのも何ですが、上等の玉露は甘味があり、等級が下がるにつれて徐々に渋味や苦味が増すという感じでした。
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鳥の生声が流れる交響曲

2015年02月02日 | 野鳥
クラシック音楽には疎いですが、鳥の声を表現した曲がいくつかあることは知っています。例えば、ベートーベンの『田園』とかビヴァルディの『四季』…。
これらはフルートなど楽器でさえずりを再現しているわけですが、そうではなくて、鳥の生の声を使うように作曲された交響曲があります。
イタリアのレスピーギが作曲した『ローマの松』。その第3部「ジャニコロの松」の楽譜には、鳥の声を収録したレコードの番号が記されていて、どこからどこまで再生するようにと指定されているそうです。
百聞は一見(一聴?)に如かず。以下の動画の5分45秒あたりから最後まで小鳥の声が流れます(画面下の進捗バーを5分40秒くらいまで早送りして聴いてください)。登場するのは、ナイチンゲール(小夜泣き鳥)などヨーロッパの初夏に鳴く小鳥だそうです。



この曲が作曲されたのは1924年なので、指定したレコードはSP盤だったようですが、現在はCDやテープなどメディアがいろいろあるので、指揮者によって使う音源が違うとのこと。
レスピーギは、このほかに組曲『鳥』を作曲しています。こちらはバイオリンやフルート、木管楽器でハトやナイチンゲール、カッコウなどを再現しているそうです。
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