樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

木六竹八塀十郎

2008年11月28日 | 樹木
タイトルは「きろく たけはち へいじゅうろう」と読みます。木は6月に、竹は8月に伐るのがベストで、土塀は10月に塗ると長持ちするという意味の諺です。
木や竹には伐採に適した時期があり、これを「伐り旬」と言います。この諺では(旧暦を新暦に直しても)夏ということになりますが、現在は樹木の細胞の活動が停止する冬がベストと言われていますから一致しません。
これとは別に、冬の新月に伐った木は腐らず、反らず、虫もつかず、火も着かず、空気を浄化すると言われています。この「新月伐採」にスポットを当てたのは、オーストリアのチロル地方に住むエルビン・トーマという木こり。

       
     (ある製材所の材木置き場。新月に伐った木かどうかは知りません)

長男が重いシックハウスを患ったので、昔お爺さんに教えられたように冬の新月に伐った木で家を建てたら症状が回復したそうです。以後、真冬の新月に伐採し、谷に向かって倒して十分に乾燥させるという方法で木材を生産。その経験を『木とつきあう知恵』という著書にまとめて、世界中の林業関係者から注目を浴びています。
おもしろいことに、日本を代表する林業地・奈良の吉野地方にも、旧暦の1日(新月)に伐った木は日持ちがいいという言い伝えがあり、これを「闇伐り」と言うそうです。
京都大学の研究者が半信半疑で新月伐採と満月伐採の木を比較調査したところ、後者の細胞には水分とデンプンがより多く含まれていた、つまりカビが生えやすい状態だったそうです。月の満ち欠けと樹木の成長に因果関係があるという話は、想像力を掻き立てますね。

       
  (伐採されたモミの巨木。画像を拡大して年輪を数えたら約120ありました)

さて、きょうはその新月。しかも冬。林業関係の方は、ぜひたくさんの木を伐採してください。
なお、日本にもこの新月伐採を実践している林業グループがあり、その一つ「新月の木国際協会」のサイトはこちら
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花のお茶

2008年11月26日 | 木と飲食
先日、NHKのローカル番組で滋賀県の茶どころ朝宮の製茶組合が、お茶の花を使った新しい商品を開発している話題を取り上げていました。茶葉とお茶の花を7:3の割合で煎れると、ハーブティーのような香りのあるお茶が飲めるというのです。
私も試してみようと、お茶の花を摘みに行ってきました。近くの宇治橋には観光用に茶の木が植えてあって、ちょうど今が開花時期。人目もはばからず、10個ほど花泥棒しました。

       
                     (お茶の花)

テレビで紹介されたとおりに煎れて飲んでみたところ、ほのかに花の香りがします。お茶はツバキの仲間ですから、香りも似ていると言えば似ている。味は、いつもより少~し甘みがあるかな?という感じ。
ご存知かも知れませんが、実は花を使ったお茶はコカ・コーラから発売されています。その名も「茶花(ちゃか)」。武将姿のキム兄がはちきれそうな腹で留め具を飛ばして大騒ぎ、というテレビCMで宣伝しているペットボトルのお茶です。

       
             (花を入れてもお茶の色には変化なし)

お茶の花に含まれているカテキンやサポニン、フラボノイドが脂肪吸収を抑制し、コレステロール値を整えるそうですが、コカ・コーラは公然とは言わず「毎日のウェイトサポートに」とか「健康緑茶」とだけ表現していす。
私も広告業界で同じ仕事をしているので分りますが、健康系の商品は表現が微妙です。「効果がある」とか「痩せる」と書けば薬事法違反。「茶花」の表現はぎりぎりのところでしょう。
いずれにしても、メタボの境界線をウロウロしているオジサン(私も含めて)には気になるお茶です。

       
            (宇治橋のお茶の花とコカ・コーラの「茶花」)

茶畑では、樹勢を葉に集中させるために花はすべて摘み取るとか。その花を捨てずに活用して、メタボが気になる中高年に売り込もうというのが朝宮製茶組合の魂胆のようです。該当する方はどうぞお試しください。私はまた宇治橋で花泥棒してきますから…。
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森の牧場

2008年11月21日 | 木と飲食
牛は草食性ですから、牧場は草原にあります。ところが、森の中で牛を飼って、草はもちろん木の葉も食べさせている牧場が故郷の丹後にあるというので、帰省の際に行ってきました。
実家から山を2つ越えた京丹後市弥栄町にある「森林ノ牧場」。ここでは、放置された雑木林を活用して、森林酪農という方法で乳製品を生産しています。

       
           (牛たちが、秋の陽差しを浴びながらのんびり…)

牛が草木の葉を食べて排泄する→草木の肥料になる、牛が歩き回る→下草刈りや地ごしらえと同じ効果が得られる、そして人間には乳製品が供給される。人間と森と牛の共生関係の中で酪農を営むというエコロジカルなコンセプトがあるようです。
飼っているのは約10頭のジャージー種。牧場の横には「森林ノ工房」があり、牛乳やアイスクリーム、ソフトクリームを製造・販売しています。私はソフトクリームと牛乳をいただきました。

       

牛乳を飲んでみると、いつものと比べるとサラッとした口当たりで、ほのかな甘みがありました。輸入飼料やポストハーベスト飼料を一切使わず、低温殺菌というこだわりの製法なので、500mlで630円とスーパーの牛乳よりかなり割高です。面白いのは、季節によって牛が食べる草木が変わるので、牛乳の味も少し変化するとか。

       
               (工場とお店がある「森林ノ工房」)

この工房にも特徴があって、稲わらを圧縮したブロックを積み上げて、その上に土を塗る「ストローベイル」という方法で建てられています。地元の農家や小学生がボランティアで稲の刈り取りや乾燥、圧縮を手伝ったそうです。ストローベイル・ハウスは、確かwoodyowakuさんも一時研究しておられましたね。

       
        (ガラス窓から壁の中のワラが見られようになっています)

話を聞くと、牛はスギやヒノキなどの針葉樹やツバキの葉は食べないそうですが、それ以外の木の葉は食べるそうです。針葉樹というくらいだから、やっぱり舌に刺さって痛いのでしょうか。また、ツバキのような分厚い葉っぱは、さすがの牛も消化しないのでしょうか。それにしても、牛が木の葉を食べることはまったく知りませんでした。
森林ノ牧場のサイトはこちら
なお、24日(月)は栃の森に出かけているので、ブログはお休みします。
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落ち葉の行方

2008年11月19日 | 樹木
関西も紅葉のピークを迎え、この後は「♪枯葉よ~」の落葉シーズン。私は以前から疑問なんですが、落ちた葉っぱは最終的にどこに行くのでしょう? 
山の落ち葉は土に還るし、街路樹や庭木の落ち葉はそれぞれの管理者が掃除してゴミとして焼却します。でも、誰も管理していない小さな公園や並木の枯葉は、地面に落ちた後、風に吹き寄せられてどこかに集まるはずですが、冬になり春を迎える頃にはどこにも姿が見えません。
あのたくさんの落ち葉はどこに行ったのでしょう? 昔の漫才師じゃないですが、「それを考えると夜も眠れない」。

       
        (近所のサクラの落ち葉。彼らはこの後どこへ消えるの?)

落ち葉の処理にも手間やコストがかかります。日本では財政難から、コストを省くために街路樹を切り倒す自治体もあるとか。一方、ドイツでは樹木は市民の共有財産という認識があるので、周囲80cm以上の樹木は公有地でも私有地でも伐採禁止だそうです。
そのドイツでも落ち葉の処理には頭を悩ましているようです。庭のある家ではコンポストを設置し、野菜クズと一緒に処理して堆肥にするとか。大量の落ち葉や剪定枝など家庭用コンポストで処理できないものは、公共サービスとして無料で収集し、処理場でバイオマス燃料や堆肥に再生して活用するそうです。

       
     (わが家のコンポスト。今はモクレンやツルウメモドキの枯葉が多い)

わが家でもコンポストを利用しています。野菜や果物のクズに、今の時期は落ち葉が加わります。近くのお寺に来るマナーの悪い観光客やタクシーの運転手が捨てる吸殻やゴミなど、無機物が混じる時はゴミ箱に捨てますが、ほぼ毎日落ち葉の掃除をするのでコンポストが一気に満杯になります。
地面に穴を掘って、底のないバケツみたいな容器を埋め込むだけの簡単なタイプですが、満杯になったら容器を外し、土をかぶせて1~2年寝かせておくと、黒い堆肥になります。穴を3つ掘って1年ごとにローテーションしています。

       
     (容器を外した状態。今年1年分の野菜クズや枯葉の成れの果て)

面白いことに、堆肥の中から毎年カボチャが蔓を伸ばして1~2個実をつけます。野菜クズの中の種が勝手に発芽して成長するようです。小さくて形もいびつな土手カボチャですが、収穫して食べます。

       
        (2年前に埋めたコンポスト。こんな黒い堆肥になります)

コンポストの蓋を開けるとミミズがいっぱいうごめいています。コンポスト用のミミズも売っているそうですが、うちのミミズはどこかから勝手に集まってきました。
落ち葉の行方もそうですが、あのミミズたちはどこからやって来たのだろう? それを考えるとまた眠れなくなる。
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ソラード

2008年11月17日 | 樹木
1970年に大阪で万博が開催されましたが、私は東京で学生生活を送っていたのと世間のメインストリームに背を向けていたので(笑)、興味もなく行きませんでした。その万博の跡地は現在、国立民俗学博物館や日本民芸館、児童文学館といった文化施設、日本庭園、自然観察の森などからなる広大な記念公園になっています。
万博には行かなかった私も、現在の記念公園には見たい所がたくさんあるのでよく足を運びます。先日は紅葉観察のためにソラードを歩いてきました。

       
        (森の上を歩きながらツリーウォッチングできるソラード)

ソラードとは、森の上に架けられた歩道。場所によって違いますが、3~10mの高さに総延長300mの木道が設けてあるので、普段は見上げて観察するしかない樹木を、見下ろしながら歩いて観察できます。
花の時期には目の高さで開花するので、写真を撮る方の絶好のポイントになっているようです。「空」と「ロード」からソラード。

       
            (目の高さで紅葉や花が観察できます)
       
             (見下ろしながらの紅葉見物もできます)

山に行けば、林道から谷の樹木を見下ろせますが、こんなに近くで、枝や葉や実を触りながら観察することは難しいです。紅葉も普通は見上げるか遠景を眺めるだけですが、ここでは真上から見られるので、ちょっと感じが違います。

       
                    (森の集音器)

いろんな仕掛けもあって、湾曲した金属板とベンチを置いた「森の集音器」では、森の中のいろんな音が強調されて耳に入るようになっています。座ってみると、風の音や遠くのせせらぎの音、鳥の声がよく聞こえました。「色のトンネル」では3色の透明板が設けてあり、昆虫やクモの目を疑似体験できます。

       
                    (色のトンネル)
       
            (昆虫には左のように見えているそうです)

樹木や生態系の研究者が樹上に仮設物を設けてジャングルを観察しているのをテレビで見たことがあり、そんな視点から森を見てみたいと以前から思っていました。ソラードは大した高さではありませんが、その雰囲気が少し味わえました。花の時期にもう一度行ってみよう。

       
      (高さ19mの展望タワーからの眺め。左に見えるのが太陽の塔)
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みんなの木

2008年11月14日 | 木と子ども
関西に朝日放送という民放があります。この局が「ガラスの地球を救え」という環境キャンペーンを展開していて、その中で「みんなの木」というイベントを実施しています。
近畿2府4県の小学校や幼稚園に苗木をプレゼントし、アナウンサーや着ぐるみキャラクター「おきたクン」が訪れて植樹したり、「みどりの授業」で自然について学ぶというもの。
昨年の3月から現在まですでに19回の実績があり、今年の2月には近くにある城陽市の佐伯幼稚園でも行われたと知って取材してきました。

       
         (当日の模様の写真。右がキャラクターのおきたクン)

創立40周年の記念として応募されたそうで、「花が咲き、実が成り、葉が落ち、季節の移ろいを感じることができて、しかもその実を食べることができれば食育にもなる」ということからトチノキを選ばれました。

             
       (佐伯幼稚園の「みんなの木」はトチノキ。まだ180cmくらい)

園長ご自身も樹木がお好きで、広い園内には春の花が楽しめるソメイヨシノ、秋の紅葉が美しいナンキンハゼやトウカエデ、実が食べられるブドウ、サクランボがいっぱい成るサクラなど多様な樹木が植えてあります。
大きなケージもあって、ウサギが4羽遊びまわっていました。以前はヒツジやアヒルも飼っていたとのこと。園児たちに植物や動物に触れさせてやりたいという園長の想いが伝わってきます。

       
            (佐伯幼稚園は敷地が広いのでゆったり…)

私も栃の森の帰りにトチノキの苗木を買って庭に植えたことがありますが、土が合わなかったのか手入れが悪かったのか枯らしてしまいました。しかも2回…。でも佐伯幼稚園のトチノキは、専門家がきちんと植樹したらしく、力強く育っていました。もうすぐ葉が変色して落葉するでしょう。

       
        (収穫が終わったブドウ棚にはまだ実が残っていました)

栃の実を収穫するまでにはまだ何年もかかるでしょうが、今でもブドウの実やサクランボを子どもたちといっしょに収穫して食べているとか。「ここの園児は幸せだな~」と思いながら門を後にしました。
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木のファッションショー

2008年11月12日 | 樹木
先週の土日と、仕事の調べもので大津市にある滋賀県立図書館に通いました。宇治から大津へは天ヶ瀬越え(『天城越え』じゃないですよ、石川さゆりじゃないですから…)、天ヶ瀬ダムを越えて行くのが早いので、いつも宇治川沿いの道を遡ります。
このあたりは昔は宇治川ラインという周遊船が就航したくらい風光明媚で、特に紅葉シーズンは美しいです。途中で車を停めて撮ったのが下の写真。コンパクトデジカメで、しかも曇天だったので画像がイマイチですが、錦のような裾模様でした。

       

図書館に着くと、植栽されたアメリカフウが鮮やかに紅葉していました。しかも、1本ずつ微妙に色が違います。それぞれの葉を撮影したのが下の写真。モミジもきれいですが、アメリカフウもこんなにカラフルです。

       
       
       
       

別名モミジバフウ(もみじのような葉のフウの木)というくらいで、形はモミジにそっくりですが、こちらはマンサクの仲間。ついでながら、日本で「楓」の字はカエデと読みますが、中国ではフウの木を意味します。漢字も葉の形も、そして紅葉の鮮やかさも、カエデ(=モミジ)とフウは紛らわしいです。

       
         (一列に並ぶアメリカフウ。1本ずつ色が違います)

図書館の帰り、琵琶湖畔の道を通ったら、今度は紅葉しつつあるメタセコイヤの並木に遭遇しました。緑、黄色、赤、褐色…、1本ずつ微妙に色が違います。

       

アメリカフウもメタセコイヤもしょっちゅう見る樹ですが、秋になるとこんなに個性のある色をまとうんですね。人間がそれぞれ好みの色の服を着るように、樹木にも好みがあるんでしょうか。タイムラグかも知れませんが、私には木のファッションショーのように見えました。
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牛ほめ

2008年11月10日 | 木造建築
落語に「牛ほめ」というネタがあります。ある男が小遣いを稼ぐために、叔父さんが新築した家をほめに行き、ついでに牛をほめて落ちがつくというストーリーです。
その中で、ご隠居さんが家のほめ方を伝授するくだりがあります。「家は総体檜造り、表構えが総一面の栂(とが)造り、中に入ると土間が縮緬漆喰,上がり框が三間半節無しの桜、上にあがると畳が備後表の寄り縁、天井が薩摩杉の鶉杢(うずらもく)、奥へ通ると南天の床柱に黒柿の床框(とこがまち)…」。
順番に説明すると、檜は最高級の建築材、栂(とが=ツガ)はマツの仲間で、おそらく門構えなどの材に使われたのでしょう。桜は多分ヤマザクラ、薩摩杉の鶉杢とは美しい木目の出た屋久杉、南天は赤い実の成るナンテン、黒柿は柿の渋で黒い縞模様が入ったカキノキのこと。合計6種類の木材が登場します。

       
              (京都府の有形文化財、旧三上家)

下の写真は、落語に出てくる黒柿の床框(とこがまち)。実家に近い宮津市にある旧三上家のものです。宮津市には母の実家があり、私はこの町で生まれました。今はさびれてしまいましたが、江戸時代は港町として栄えていました。
三上家は回船業や酒造業、糸問屋を営む傍ら、宮津藩の財政や政治にも関わった名家で、その屋敷を京都府が有形文化財として保存しています。「牛ほめ」の主人公になったつもりで、帰省のついでに寄ってきました。

       
          (黒柿の床框。黒い模様に値打ちがある銘木です)

黒光りするケヤキの大黒柱、土間の上に渡した太いマツの梁など、昔ながらの重厚感あふれる造り。また、上で紹介した床框のクロガキとか、下の写真の床柱のカリンとか、和風建築の愛好家なら溜息が出るような銘木があちこちに使われています。

       
            (茶室の床柱はカリンの芯を磨き上げたもの)

       
       (床の間の違い棚は欅の玉杢、床柱は南天ではなく北山杉)

実家の近くにありながら訪れるのは初めてでしたが、予想以上にすごい屋敷でした。もう一度じっくり見学したいです。落語と違って、ほめても誰もお小遣いはくれませんが…。
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木の駅

2008年11月07日 | 木と乗物
社会人になってこれまでに4回引っ越しましたが、ほとんど京阪電車の沿線で、もう30年以上利用しています。
関西の主な私鉄の阪神、阪急、近鉄、南海はプロ球団を保有していたので全国的にも認知されていますが、京阪はほとんどご存知ないでしょう。百貨店事業に乗り出したのも20年ほど前。地味というか、堅実というか、私は「真面目な電鉄会社」と思っていますが…。
その京阪に先日新しい路線が誕生しました。大阪の「天満橋」から「中之島」まで新駅4つ分。国際会議場や国立国際美術館、大阪市立科学館などが建ち並ぶ、言わば副都心の地下を走ります。その駅に木を多用しているというので、仕事の打ち合わせ前に見てきました。

       
                  (ホームの壁面が木)

終点の「中之島」駅に着くと、ホームから見える壁面は全面木で覆われています。改札階に上がると、コンコースの天井や壁面も木。「もしかしてトイレも?」と思って入りましたが、ここには木は使ってありませんでした(笑)。

       
                (コンコースの壁も天井も木製)

打ち合わせ先の最寄り駅「渡辺橋」へ戻ると、ここもホームの壁面が木。階段の壁面や駅ビルの通路の壁面も木の建材。地上に出ると、出入口やエレベーター乗り口の建屋も木製。鼻を近づけると、プーンと木の香りがします。

       
                  (階段の壁面も木製)
       
                (地上の出入口の建屋も木製)

全国的には無名ですが、折り返し駅で2人掛けシートの背もたれが自動で反転して進行方向を向く車両や、混雑時にはベンチシートが天井に上がって開閉ドアが増えるユニークな車両も開発しています。私は昔から緑色のツートンカラーの電車が気に入っています。この木の駅を見て、ますます京阪電車ファンになりました。
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命繋げた木

2008年11月05日 | 木と防災
みなさんもまだ覚えていらっしゃると思いますが、4年前の10月20日に台風23号によって京都府の由良川河口で大洪水が発生し、観光バスが立ち往生しました。乗客はバスの屋根に避難し、翌21日にかろうじて救出されました。
あの時、さらに増水してバスの屋根も水没するおそれがあったため、2人の男性が近くの街路樹まで洪水の中を泳いで渡りました。バスのカーテンで作ったロープを携え、残りの乗客を木に誘導するためです。当時の模様はこちら
その街路樹が今もあることをテレビで知って、帰省の途中に寄ってきました。由良川沿いの街路樹はユリノキ。ちょうど紅葉の時期で、黄色の葉と緑の葉が入り混じって目を楽しませてくれました。

       
      (由良川沿いの道にはたくさんのユリノキが植えられています)

その近くには、洪水時の水位を示すモニュメントが立っていて、8.24mと記してあります。近所で木の場所を教えてくれたおじさんも、「うちの2階も75cmまで浸水して、屋根に逃げるしかなかった」と当時の模様を話してくれました。

       
    (水位を示すモニュメント。青い方が今回、赤い方は昭和28年のもの)

毎年10月20日になると、このユリノキにつかまって助かったご本人が兵庫県の豊岡市からわざわざ肥料を与えに来られるそうです。下の写真の札もその方がつけられたもの。ご本人にとっては、命の恩人なのでしょう。

             
           (このユリノキにつかまって助かりました)

直径20cmくらいの細い樹ですが、たまたま近くにあったので人間の命を助けることができたわけです。当時、バスの屋根から無事に救出されるニュースを見ながら、「人間、どんな状況になっても最後まであきらめたらいかん。奇跡が起こることもある」と思ったことを覚えています。

       
   (車で通れば見過ごす小さな札ですが、ご本人の気持ちが伝わってきます)
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