樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

野鳥とジャズ

2016年03月31日 | 野鳥
日本野鳥の会京都支部では野外で行う探鳥会とは別に、室内(事務所)で行う例会を「Birder’s Café」と名づけて月1回ペースで開催しています。
その一つとして、クラシックに造詣の深い会員を講師にして「野鳥と音楽」というテーマで2回実施しました。ヴィヴァルディ、ベートーベン、モーツアルト、レスピーギなどの鳥の曲を聴きながら、クラシック音楽の中の野鳥を解説していただきました。
その後を私が引き継いで、「野鳥とジャズ」というテーマで実施しようかなと企画中です。一見、縁遠い野鳥とジャズですが、意外にも面白いつながりがあります。
少しでもジャズをかじったことがある人なら、通称“Bird”と呼ばれたミュージシャンをご存知でしょう。「モダンジャズの父」とも言われるチャーリー・パーカーです。その生涯をクリント・イーストウッドが映画化したときのタイトルも『Bird』でした。
パーカーがなぜ「鳥」と呼ばれたのかについては諸説ありますが、面白いのは自身が鳥をテーマにした曲を3つ作っていること。その一つ、「Bird Feathers」をお聴きください。



パーカーらしい軽快な曲です。画像にもありますが、トランペットは若き日のマイルス・デイヴィスですね。そのマイルスも名盤『Round About Midnight』で「Bye Bye Blackbird」というスタンダードナンバーを演奏しています。
鳥をテーマにしたジャズナンバーの中には、数は少ないものの、楽器で鳥の鳴き声を表現したものもあります。その一つが、デューク・エリントン楽団の「Sunset & The Mockingbird」。



この曲は、エリントンがフロリダへツアーに行った際、初めて耳にする美しい鳥の声を聴いて、その場で書き上げたそうです。
モッキンバードの和名はマネシツグミですが、日本には生息しません。そのオリジナルの鳴き声をエリントンの演奏と比較しながら聴いてみてください。



野鳥とジャズについてはまだ面白い話題があるので、次回またご紹介します。
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さよなら冬鳥

2016年03月24日 | 野鳥
光も風もすっかり春になりました。バーダーを楽しませてくれた冬鳥も北へ帰りつつあります。
前回ご報告したように奈良へプチ遠征した程度で、今シーズンの鳥見はもっぱら近場でした。その中で観察できた鳥をご紹介します。
まずは、干拓田のタヒバリ。あまりにも天気がいいので、家にいるのがもったいなくて出かけたときに出会った鳥です。珍しくはないですが、久々のご対面でした。



次は、ツグミ。シーズン当初は少なかったものの、寒さが厳しくなるといたるところで見かけました。下は桃山城公園で撮影。すぐ近くでしばらくじっとしてくれていたので、丁寧に撮ることができました。遠くから見ているとそうは思いませんが、近くでじっくり見るとなかなか美しい鳥です



同じく、桃山城公園で出会ったルリビタキ。かわいいですね~。今年は大吉山の探鳥会でも観察できましたが、見たのは私だけで、参加者にはみていただけなかったのが残念。



下のジョウビタキ♀は宇治川での撮影。もともとあまり人を恐れない鳥ですが、この個体は特に人懐っこくて、行くたびに同じ場所で愛想よく私の相手をしてくれました。体を動かすたびにロープが揺れるのがおかしくて…。



このほか、以前ご紹介したヒシクイ、オシドリ、オオジュリン、アリスイ、さらにカワアイサ、ハシビロガモ、ノスリなども記憶に残っています。でも、冬鳥たちとは来シーズンまでしばらくお別れです。
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奈良で鳥見

2016年03月17日 | 野鳥
3月初旬、同じ町内の鳥仲間と奈良へ鳥見に出かけました。場所は平城宮跡。2年前にも同じ頃に一人で行きました。
だだっ広い敷地に入ると、すぐにホオアカ3羽がお出迎え。上空ではヒバリがにぎやかにさえずっています。



ここは広い草地の中に湿地や池が点在するので、草原性の鳥と水辺の鳥が見られます。今回の主な目当ては、2年前と同じくアリスイ。前回と同じ場所で採餌していました。
名前のとおりアリを食べるのですが、今の時期アリがいるとは思えません。でも、さかんに草の中にクチバシを入れて何か食べています。同行の鳥仲間によると「草の中に小さい虫がいます」とのこと。アリの代わりにそういう虫を食べているんですね。



今回、アリスイを同時に2羽確認。1羽だけと思い込んでいましたが、2~3羽いるようです。
池の周囲ではクイナとヒクイナを期待しましたが、いるのはコガモやカルガモのみ。それでもしばらく粘って待っていると、クイナが出てきました。



2年前はすぐ近くで2~3羽いましたが、今回は遠くの1羽だけでした。
平城宮跡の北側にある池では、どういうわけかカモメが2羽浮いています。カモメ類の識別は苦手ですが、たまたま合流した大阪支部の探鳥会のリーダーに聞くと「カモメで間違いない」とのこと。そのほか、50羽ほどのオシドリの群れにも遭遇できました。
もう一つのハイライトは、トモエガモ。大阪支部のリーダーが教えてくれた別の池に行くと、向う岸の木の茂みに隠れてじっとしています。トモエガモは別の場所でしたが、2年ぶり。
平城宮跡は今ごろのバードウォッチングには面白いところです。来年は京都支部でも探鳥会をやろうかな。
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プラントハンター

2016年03月10日 | 木と文化
しばらく鳥の話題が続きましたので、久しぶりに木の話を…。アオキに赤い実が成る季節になりました。
アオキは日本原産で、学名はaucuba japonica(アウクバ・ジャポニカ)。18世紀の中頃に来日したツンベルクというスウェーデンの医師が命名したもので、当時、関西ではアオキバと呼んでいたために「アウクバ」という属名になったようです。



意外なことに、このアオキは日本よりもヨーロッパで人気が高く、特にロンドンでは公園や庭園に多用されているそうです。
ヨーロッパに持ち込まれたのは1783年。各地に普及しましたが、雌雄別株であることに気づかず、持ち込んだのが雌株ばかりだったので、アオキの特徴である赤い実が成りませんでした。
そこで、イギリスのフォーチュンという人物が雄株を求めてわざわざ来日しました。そのことを『江戸と北京』という著書に書き残しています。

冬から春にかけて鮮やかな赤い実が多数生じて飾られる庭園を想像してもらいたい。イギリスから日本までの旅に値するものだった。

雄株を求めて地球の裏側から船に乗ってやってくるとはご苦労なことです。その甲斐あって、現在ではヨーロッパでも「アオキ」と呼ばれるほどに普及したわけです。
中国のチャノキをインドのダージリンに持ち込み、イギリスの紅茶文化を築いたのもフォーチュン。私自身はプラントハンターに疑問を持っていますが、紅茶にしてもアオキにしても、その社会的な影響力は大きいですね。
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鳥の歯

2016年03月03日 | 野鳥
江戸時代の画家・伊藤若冲(じゃくちゅう)はニワトリの写実的な絵で知られています。自宅にニワトリを飼ってスケッチを繰り返し、細部に至るまで精緻に描いたそうです。
その一方、ニワトリ以外の鳥は実物を観察して描いたわけではないようです。例えば、下のタンチョウは首の前部分だけを黒く描いていますが、実物は首のほぼ全部が黒です。



さらに不自然なことに、歯が描いてあります。バードウォッチャーには自明ですが、鳥に歯はありません。若冲は先達の絵や図譜(当時の図鑑)を参考にしながら想像で描いたのでしょう。
だからといって、作品の価値が下がるわけではありません。写実的か否かではなく、鬼気迫る筆力が若冲の絵の魅力。鳳凰も描いていますが、写実ではないのに、真に迫る圧倒的なパワーがあります。
鳥に歯はありませんが、ハシビロガモのクチバシには歯のようなものがあります。下は知人の羽根コレクターが採取した標本。細かいブラシのようなものがあります。



これは噛むためではなく、水中の餌(プランクトンなど)を濾し取るためのもの。ハシビロガモはクチバシを開けて泳ぎながら水を取り入れ、餌だけをこのブラシで濾し取ります。下の動画はハシビロガモの採餌シーン。



鳥は歯の代わりに内臓にある砂嚢(さのう・砂が入った袋)で咀嚼します。焼き鳥の「砂ずり」はニワトリの砂嚢。肉食系の鳥も草食系の鳥も餌を丸飲みして砂嚢で咀嚼し、消化できない骨や種は吐き出すか糞として排出します。
ただ、鳥の先祖である始祖鳥には歯があるそうです。他の動物と鳥の分かれ目は歯の有無と言えるかも知れませんね。
コメント (2)
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