樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鳥に由来する意外な言葉

2020年01月30日 | 野鳥
以前、「ペン」はラテン語で「羽根」を意味するpennaが語源で、羽根ペンに由来することをご紹介しましたが、その他にも鳥に由来する意外な言葉があります。
例えば「ワンダーフォーゲル」は、ドイツ語のwander(さまよう)とvogel(鳥)で「渡り鳥」を意味するそうですし、化学の実験に使うビーカー(beaker)は、注ぎ口が猛禽のくちばし(beak)に似ているところから名付けられたそうです。
工事現場で建設資材を釣り上げるクレーン(crane)はツル。あの長い首に似ているからでしょう。工事つながりでいうと、ツルハシも鶴嘴、つまりツルのくちばし。もうひとつおまけに、水道の蛇口をカランといいますが、これはオランダ語でツルを意味するkraan(クラーン)に由来します。こちらもツルの首に似ているから。日本人はヘビにオランダ人はツルに例えたわけです。



お菓子のパイ(pie)はカササギに由来します。この鳥の英名はmagpie。木の枝やワラなどさまざまなものを集めて巣をつくることから、いろいろな材料を詰めて焼くお菓子のことをパイと呼ぶようになったとのことです。



代表曲『ハナミズキ』で知られる歌手の一青(ひとと)窈(よう)さんは、お父さんが台湾人でお母さんが日本人。「一青」は石川県出身のお母さんの姓です。この珍しい姓について、地名学者の谷川健一さんが『列島縦断地名逍遥』で以下のように書いています。
北陸地方の日本海沿岸は潟湖や沼沢地が多く、飛来する鳥たちの楽園であった。そこで鳥にちなむ地名も生まれた。一風変わっているのに、能登半島の中央部にある鳥屋町(石川県鹿島郡)の一青(ひとと)、黒氏(くろじ)という地名がある。シトトはホオジロ、ホオアカ、アオジ、クロジなどのホオジロ類をひっくるめた呼称である。アオジはアオシトト、クロジはクロシトトのことである。アオシトトがアオヒトトと訛って青一の漢字が宛てられ、それがさらに一青に転じ、それをアオシトトの意味でヒトトと読ませたと推考される。もちろん、黒氏はクロジである。
一青はアオジのことだったわけです。現在もサバンナシトド、ミヤマシトドといった名前のホオジロ類がいるのはその名残でしょう。下は8年前に撮ったアオジ。


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ガンカモ調査

2020年01月23日 | 野鳥
全国のガンやカモの飛来数を把握するため、環境省が各都道府県に調査を依頼しています。京都府ではそれを日本野鳥の会京都支部が受託し、毎年1月中旬に期間を限定して、府内全域の川や池、海で一斉に調査します。私は例年、故郷である丹後の海と淀競馬場の池、自宅近くの池の3カ所を受け持っています。
11日(土)はいつもの4人で阿蘇海(天橋立の内海)と丹後半島東岸に行ってきました。故郷には「弁当忘れても傘忘れるな」という諺があるくらい天気が変わりやすく、毎年順延になりますが、今年は珍しく晴れて予定どおり調査できました。それでも後半少し降られて、諺の正確さを再認識しましたが…。


阿蘇海での調査風景

阿蘇海は京都府で唯一コハクチョウが定期的に訪れる場所。昔は何十羽も渡来しましたが、ここ数年の調査ではわずか2羽でした。
ところが今回、嬉しいことに、3羽確認しました。しかも、1羽は幼鳥。昨年飛来した2羽がシベリアで産み育てた子供を連れてきたのでしょう。


真ん中にいるのが幼鳥(ややグレーの体色)

ただ、暖冬の影響かカモ類は全体に少なく、阿蘇海では昨年の77%の約2,000羽。逆に丹後半島東岸では、ウミアイサの180羽もの大群がいたこともあって、1.8倍の540羽。あれほどの大群を見るのは初めてで、3羽のコハクチョウとともにメンバーにとって大きなご褒美になりました。
お昼は昨年メンバーに好評だった和食レストランを再訪。ここでの昼食を楽しみにしてくれているようで、今後は定番になりそうです。



14日(火)は、丹後とは別チームの3人で淀競馬場の池を調査しました。昨年までは土日のレース開催日の早朝でしたが、先方の要請で平日に実施。その方がこちらもリラックスして調査できるのでありがたい。


向こうに見えるのがスタンド

しかし、こちらも昨年に比べると数が少なく、暖冬の影響を感じさせました。今季はカモだけでなく冬の小鳥も少ないようですが、積雪のない北国や山中で十分餌が採れるので、わざわざ南や下に行かなくてもいいということなのでしょう。鳥が健康に過ごせるならそれでいいのですが、こちらにいるバードウオッチャーには少し寂しい冬です。
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正月は鳥三昧

2020年01月16日 | 野鳥
毎年1月2日は近くの干拓地で開催される新春探鳥会で案内役を務めます。そして、今年は3日、4日と連続して行われた新春探鳥会にも参加しました。
私は取材がてらでしたが、同様に3日連続で参加された方や、2回参加された方もあって、みなさん鳥三昧の正月を過ごされたようです。


1月2日の新春巨椋探鳥会

3日の探鳥会では「冬の貴婦人」と呼ばれるタゲリが呼び物でしたが、なぜか現れません。それでもノスリ、チョウゲンボウ、ハヤブサ、オオタカの猛禽4種が出現したので参加者は満足されたようですが、同じ場所で2月に私の担当で探鳥会を実施するので、気になって先日下見がてら再訪しました。
なかなか発見できず「今年は来てないのかな」と諦めかけたとき、分かりにくい田んぼの陰に6羽いるのを確認しました。



帽子の飾りのように見える後頭部の冠羽や、高級そうなメタリックの羽衣から「冬の貴婦人」と呼ばれるようになったのでしょうが、チョコチョコと歩いてはピタッと止まる独特の動きは貴婦人のイメージとは異なります。しかし、私にとっては貴婦人というよりも、公園で無心に遊ぶ子供のような可愛いらしさがこの鳥の魅力。
久しぶりに会えてうれしかったです。2月の探鳥会までいてくれますように。
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変な葉っぱのわけ

2020年01月09日 | 木と鳥・動物
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお付き合いください。
さて、最近久しぶりに読んでいる木の本に面白いことが書いてありました。
クワ科の樹木の葉には不定形な切れ込みがあって、以前から不思議に思っていたのですが、それは虫に対して「この葉はすでに虫にかじられていますよ」と擬態することで、防虫効果を上げているという説があるそうです。
下は、クワ科の1種、コウゾの葉。確かに、虫に食われたように見えます。



クワ科の葉は日当たりのいい枝先の葉ほど切れ込みが多いそうですが、虫の目につきやすい葉ほど擬態する必要があるわけです。
下はマグワ、つまり養蚕用の木の葉。これも不定形の切れ込みがあります。



マグワはカイコの大好物。それだけ、虫にとってはおいしい葉ということでしょう。カイコという虫にとっては不定形の切れ込みの防虫効果はないわけです。
また、木の葉の表面にある細かい毛も、虫が動くのを阻止するためだそうです。葉っぱにすれば、虫にかじられたら光合成できないわけですから、あの手この手で防虫対策するわけです。虫と葉の攻防戦、面白いですね~。
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