樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

25年目の栃の森

2021年04月29日 | 野鳥
週末、今年初めて栃の森へ行ってきました。予報が少し外れて、土曜の深夜から小雨。ここの天気は予想しにくく、雨具は常備しているのでだいじょうぶでしたが、朝5時にキャンプサイトを出発した頃は写真のような幻想的な風景に包まれました。



7時頃には雨雲も消えて、春の森を満喫できました。例年この時期は雪が残っていますが、今季は少なかったようで、谷にも残雪は見られません。林内で目立ったのは、オオカメノキ(ムシカリ)。あちこちの斜面で白い花を咲かせていました。



早朝から雨が降った割にはたくさんの鳥が確認できました。特にキツツキの声があちこちから聞こえてきます。マヒワも20羽ほどの群れがまだ残っていて、キビタキなど夏鳥と競演してくれました。
この森に通い始めたのは25年前。鳥獣保護区を設定するための調査を5~6人で始めて以降、ほぼ同じメンバーでその後も管理者の許可を得て自主調査を続けてきました。この間、鳥は種類、数とも減少傾向にありますが、相変わらず元気なのはオオルリとミソサザイ。この2種に限れば、「少なくなった」という感じはありません。





林道にはヤマザクラが咲いていました。下界よりも1カ月ほど遅い春です。



私は草本には無頓着ですが、同行の仲間が皆詳しいので、いつの間にか名前を覚えます。下のイワカガミもその一つ。かわいいピンクの花を付けていました。



25年と言えば4分の1世紀。こんなに長く続いたのは、それだけこの森に魅力があるからです。私が樹木に興味を持ってこのブログを始めたのもこの森のおかげ。年々、歩くスピードが遅くなり、鳥の声も聞こえにくくなりましたが、もう少し通い続けようと思います。

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カラスを食べる

2021年04月22日 | 野鳥
生涯アマチュアを貫いた野鳥研究家・仁部富之助に『野鳥八十三夜』という著作があり、そのうちの二夜を費やして「カラスを食べるべきだ」と主張しています。
地方によっては昔から食用にしてきたこと、悪臭のあるハシブトガラスの臭いの抜き方、調理方法などを書いた後、東京で試食会が行われ、すき焼きやカツを食べるうちに「これはうまい、牛肉以上だ」と大好評であったという新聞記事を紹介しています。
ただ、執筆されたのは戦争中。「非常時下とかく動物蛋白質の不足がちな今日とて、いくぶんなりともその緩和を図りたいからである」という趣旨だったようです。



ところが、現在でもカラス料理を出す店があります。「オーベルジュ・エスポワール」というフランス料理の店で、有害駆除で捕獲されたカラスを調理しているようです。
同店のウェブサイトには次のように書いてあります。「カラスは、古くからヨーロッパでは食べられていた記述が残されているそうです。ボルドー色の赤味肉にジビエらしい野性味溢れる味わい。胸肉はロティ、モモ肉などはミンチにしてパイ包みとして盛り合わせてお出ししています」。
同店のキャッチフレーズは、「ジビエ料理とワインが美味しい信州蓼科高原のフレンチレストラン」。食指が動いた方は、ぜひ予約してください。
お店のウェブサイトはこちら
カラス料理の記事はこちら
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ゴッホのカワセミ

2021年04月15日 | 野鳥
以前、当ブログで「ゴッホが描いた鳥」と題して、『ヤマウズラが飛び立つ麦畑』と『カラスのいる麦畑』という作品をご紹介しました。それらはあくまでも風景の中の鳥でしたが、先日、ゴッホがカワセミを描いていることを知って驚きました。


『カワセミ』(キャンバスに油彩・26.6 × 19.1 cm)

アマツバメのスケッチ(下)は残っていますが、油絵としてはおそらくゴッホ唯一の野鳥画です。しかも、この“炎の画家”はカワセミの剝製を持っていて、それを見ながら描いたそうです。


アマツバメのスケッチ(紙に鉛筆、ペンとインク、チョーク・26.9× 35.2 cm)

鳥をモチーフにしたことがないゴッホが、なぜカワセミを描いたのか? 気になって少し調べてみました。
ご存じのように、ゴッホは日本の浮世絵に魅せられていました。貧乏だったからでしょうが、有名作家のものより、強烈な色使いや芸者など異国情緒豊かなものを集めていたようです。そして、それらをアトリエの壁面に飾っていました。
オランダのゴッホ美術館は数多くの作品とともにゴッホの浮世絵コレクションをウェブに公開していますが、その中に『草木花鳥図』という版画(下)があります。この絵には2羽のカワセミが描かれており、1羽は枝に止まり、1羽は水中の魚をめがけて飛び込もうとしています。


草木花鳥図(東岳)

日本のバードウォッチャーの勝手な推測ですが、ゴッホはこの絵のカラフルな鳥に触発され、剝製を入手して自らも描いたのではないでしょうか。
ヨーロッパに生息するカワセミは日本と共通なので、描かれているのは私たちが見ているカワセミと同じです。
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サンクチュアリー

2021年04月08日 | 野鳥
北海道のウトナイ湖に日本初のサンクチュアリーが開設されたのは、今から40年前の1981(昭和56)年。それを主導した日本野鳥の会の創設者・中西悟堂は、「サンクチュアリーという言葉は、最近ようやく新聞でも取り上げ、『鳥の聖域』として知られているが、(中略)現行の『禁猟区』とも『鳥獣保護区』とも概念のちがうもので、(中略)要するに野鳥を主として、その他一切の動植物をその生態系ぐるみ守る区域」と書いています。
イギリスでは王立鳥類保護協会が60カ所、アメリカでは国が370カ所も保有しているのに日本には一つもないと嘆いてもいます。


ウトナイ湖(Public Domain)

悟堂の意欲は相当なもので、文化功労者に選ばれた際の報奨金も開設資金につぎ込んでいます。私が入会する前の話ですが、京都支部をはじめ全国の支部も募金活動を展開しました。
また、会員の漫画家・岩本久則が仲間に呼びかけて、あんぱんまんの作者・やなせたかし、デザイナーの黒田正太郎の描いたTシャツを販売したそうです。また、イベント会場には手塚治虫やはらたいらなども駆けつけてサイン会を実施したとのこと。
かなり前ですが、そのウトナイ湖サンクチュアリーに私は2回行きました。


ウトナイ湖サンクチュアリーの観察路(Public Domain)

野鳥の会の本部は現在、ウトナイ湖サンクチュアリーと鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリーを直営するほか、自治体などから受託して6カ所のサンクチュアリーを運営しています。
一方、大阪府には大阪南港野鳥園が、滋賀県には湖北野鳥センターと高島市新旭水鳥観察センターが、兵庫県には県立コウノトリの郷公園がありますが、京都府にはサンクチュアリーがありません。京都府にも開設しようという動きがなくはないのですが、一向に話が前に進みません。
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初めての出会い

2021年04月01日 | 野鳥
奈良の平城宮跡にサンカノゴイが飛来したと聞いたものの、連日100人ほどのフォトグラファーが来ているらしく、そういう集団にはなじめないので遠慮していました。1カ月もすればほとぼりも冷めて誰もいないだろうと考え、すでに飛び去った可能性も高い中、天気がいいのでダメモトで昨日出向いてきました。
ポイントに着くと、案の定カメラは1台も並んでいませんが、目当ての鳥もいません。半分あきらめて、次のポイントで何気なく双眼鏡をのぞいていると、池の向こう岸をのしのし歩くサンカノゴイを発見。すぐに茂みに隠れたので、持久戦覚悟で腰を据えました。最初は私一人でしたが、そのうちに地元の方やフォトグラファーが集まって、結局10人くらいに…。そして、主人公が登場したのは約2時間後でした。



この鳥はきわめて珍しく、京都府では1976年に北部で2個体が保護されのみ。以前、琵琶湖で繁殖していた時期があって、何度か訪れましたが、結局見られませんでした。私にとっては、30年の鳥見歴で初めての出会いです。
サンカノゴイが出てくるのを待っている間、小鳥のさえずりが聞こえてくるので、そちらに向かうと、柵の上にヒバリがいます。普通、ヒバリは空高く飛びながらさえずることが多く、地上のこんな間近で目と耳の保養ができることは珍しいです。



秋篠川の桜が満開でしたが、私はさえずるヒバリにより強く春を感じました。
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