樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

宇治茶を世界文化遺産に

2013年10月31日 | 木と飲食
「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されるようです。それにあやかるわけではないですが、宇治では現在「宇治茶を世界文化遺産に」という運動が展開されています。
先々週は「宇治茶世界文化遺産シンポジウム」が開催されました。こうしたイベントで宇治茶をアピールするのが、当地のゆるキャラ。
今年、宇治にも待望のゆるキャラが誕生しました。しかも、二つも。
一つめは、宇治商工会議所がつくった「チャチャ王国のおうじちゃま」。60過ぎのオジサンが口にするのは恥ずかしいような名前です(笑)。



公式サイトのプロフィールによると、「チャチャ王国の88代目王子。頭に載せているのは茶筅の冠、口にしているのは抹茶の味がするおしゃぶり」。ほとんど意味不明ですが(笑)、最近けっこう人気が出てきたようで、週に3~4回地元や京都市、全国各地のイベントに登場しています。
もう一つのゆるキャラは、9月に登場したばかりの「ちはや姫」。こちらは宇治市が「宣伝大使」として製作したもの。「宇治」の枕詞「ちはやぶる」が名前の由来です。



モチーフは紫式部のようです。当地は『源氏物語』のエピローグ「宇治十帖」の舞台になったことから、「源氏物語のまち」を観光テーマにしています。今回の2枚の写真も先日開催された「宇治十帖スタンプラリー」で撮影したもの。
「京都府民だより」によると、「府では、2011年に世界文化遺産登録に向けた検討委員会を設置しました。現在、まずは国内での候補となるべく、暫定リスト入りを目指しているところです」。
私は「世界文化遺産は無理だろう」と斜に構えていましたが、前述のシンポジウムに参加した妻によると「けっこう現実味のある話」だそうです。
二つのゆるキャラがどこまで力を発揮するか分かりませんので、あまり期待せずに登録される日を待ちます。
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難行苦行

2013年10月28日 | 野鳥
京都のタカの渡りのメッカは岩間山。宇治市と滋賀県の境にあります。今年はここに4回通いました。
移動手段はミニバイク。双眼鏡、望遠鏡、カメラ、望遠鏡用の三脚、カメラ用の三脚、コンパクトカメラとありったけの光学製品に加え、お弁当や飲み物などをデイパックと三脚ケースに詰めて運ぶので大変です。
しかも今年は、台風18号による土砂崩れでいつものルートが通行止めになったため、大きく迂回しなければなりません。約10kgの荷物を肩に担いだまま、1時間かけて山を4つ越えるという難行苦行です。


私の鳥用光学製品のすべて

現地では飛翔中のタカを撮るのですが、これがまた難行苦行。静止画なら600mm程度のレンズで連写して後でトリミングすればいいですが、動画はトリミングできないので、最初から1200mm換算程度のフレームに入れたまま数分間追いかけなくてはなりません。
しかも、タカが真上を通過すると三脚が使えないので、ほとんどの場合岩の上に寝そべって手持ちで撮ります。呼吸するとブレるので、息を止めます。
さらに、私のカメラはコントラストで合焦するAFですが、空に向けると逆光になってAFが効きません。たとえAFが効いても、自動追尾AFは動画撮影時には機能しません。
カメラを手に持って岩に寝そべり、息を止めながら、左手はマニュアルフォーカスで動く被写体にピントを合わせつつ、右手は手動ズームで被写体を徐々に大きくするという至難の技が要求されるのです。その難行の結果が以下。



いつまでたっても満足できる映像が撮れません。
この時期に渡っていく主なタカは、動画のようにサシバとハチクマとノスリ。岩間山では熱心なホークウォッチャーによって毎日調査が行われていて、今年はサシバが4,425羽、ハチクマが673羽カウントされました。
ノスリはまだしばらく渡りが続きますが、現在約2,214羽。その他のタカも合わせると9月6日の調査開始から昨日までの約50日間で7,593羽が渡って行きました。
タカたちの無事な旅を祈りつつ、もう少しマシな映像が撮れるよう、難行苦行に耐える体づくりを期します。
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野菜と果物と木の実

2013年10月24日 | 木と飲食
10月3日の「柿食い」の記事のコメントで「スイカは野菜」と書きました。私の中では「草本の果実は野菜、木本の果実は果物」なのですが、「じゃあ、イチゴは野菜か?」と反論されると返答に困ります。
農林水産省のサイトで確認すると、「野菜」の定義は以下のとおり。
・田畑に栽培されること(山菜は野菜と区別する)
・副食物であること
・加工を前提としない
・草本性であること
その後に以下の但し書きがあります。
「しかし、どの定義も確固たるものではありません。 また、農林水産省では、果実を、生産や出荷の統計をとる上で果樹として分類しています。この果樹は、木本性などの永年作物のことをいいます。なお、いちご、メロン、すいかなどは野菜に分類されますが、果実的な利用をすることから果実的野菜として扱っています」。
バナナも草本ですから「果実的野菜」ということになります。結論的には、野菜と果物は厳密には線引きできないということです。


私は毎朝1本「果実的野菜」を食べます

「じゃあ、果物と木の実はどこで線引きするのだろう?」という新たな疑問がツリーウォッチャーの頭に中には湧いてきます。
「柿食い」の記事でご紹介した果物好きの正岡子規によると、次のとおり。
「くだもの、というのはくだすものという義で、くだすというのは腐ることである。果物は凡て熟するものであるから、それをくさるといったのである。大概の菓物はくだものに違いないが、栗、椎の実、胡桃、団栗などいうものは、くだものとはいえないだろう。さらばこれらのものを総称して何というかといえば、木の実というのである」。


栃の実も木の実(栃の森で撮影)

なるほど。要するに、柔らかい(つまり果汁を含んだ)実は「果物」、堅い実は「木の実」という線引きが成り立ちそうです。
「さすが、正岡子規!」と言いたいところですが、ツリーウォッチャーの頭の中にはさらに疑問が湧いてきます。「じゃあ、ブルーベリーは果物か?」


これは果物?

ブルーベリーだけでなく、前々回の記事で私が試食したような小さくて柔らかい実は、「果物」ではなく「木の実」と言うはずです。英語では木本の果実をFruit、Nut、Berryと言い分けますが、日本語にはBerryに当たる単語がないことに気づきました。
日本では野菜と果物と木の実の境界は曖昧ということですね。
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フィールドサイン

2013年10月21日 | 野鳥
前回ご紹介した栃の森ではキノコもたくさん生えていました。同行のキノコ博士が珍しい種類を発見しては教えてくれます。下はヤマブシタケ。私は初めてです。



キノコ博士の図鑑には「ハリネズミがうずくまったような」と書いてありましたが、私にはソーメンの塊のように見えます(笑)。
ガンに効果があるらしいですが、幸いなことに今はお世話にならなくて済みそうです。
アサギマダラも飛んでいました。こんな小さなチョウが南西諸島や台湾へ渡っていくというのが私には信じられません。



和歌山県でマーキングされた個体が香港で捕獲された記録もあるそうで、2500kmを83日間で移動したことになります。アンビリーバボー!
この森では野鳥、樹木、草花、キノコ、昆虫も多様ですが、いろいろな動物の痕跡が見られます。例えば、下のように鳥の羽が散らばっているのは、猛禽類の食痕。



餌食になったのはアオバトのようです。捕食したのは大型のタカでしょうが、この後の休憩ポイントでオオタカが飛んでいたので、メンバー一同で「こいつが犯人」と決めました。
こういう痕跡を「フィールドサイン」というようです。足跡が最も一般的ですが、糞もその一つ。尾篭な画像で申し訳ないですが、下のはまだ新しいですね。



糞の識別も難しくて、フィールドサインの図鑑を1冊持っていますが、同じ哺乳類でも食べ物によって形や色が違うようなかなか同定できません。ネットでも調べた結果、落とし主はイノシシのようです
足跡や食痕などと一緒にした図鑑はありますが、糞だけの図鑑はないようです。文一総合出版で発行しないかな?
次のフィールドサインはツキノワグマの爪痕。これも新しいです。



この森ではミズキに爪痕が集中していますが、これはトチノキ。爪痕の下には、背中をこすりつけたような跡もありました。
最後の休憩ポイントではノビタキが出迎えてくれました。



こちらはフィールドサインというよりもシーズンサイン。関西では秋、北日本の繁殖地から東南アジアへ渡って行く途中によく姿を見せます。今年生まれた若鳥のようです。
なお、この森は一応原生林ですが、所々にネットが張ってあります。シカが入れないゾーンを作って、食害の比較調査をするためです。
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Tree Tasting

2013年10月17日 | 樹木
真冬と真夏以外の4~7月と10月~12月の月1回、家から75km離れた栃の森へ野鳥調査を兼ねた自然観察に1泊(車泊)2日で出かけます。7月は大雨で急きょ中止したので、先日の訪問が4カ月ぶり。
森の中は紅葉にはまだ早いものの、色とりどり木の実が成っていました。以前、「鳥の味覚」と題して、それらの実を試食した感想を記事にしましたが、今回もさらに他の実を試してみました。
まずはカナクギノキ。この樹の果実を見るのは初めて。クスノキ科の実は黒いものが多いので、赤い実は意外でした。


カナクギノキの実

香りの表現を時間差で「トップノート」「ミドルノート」「ラストノート」と言うらしいので、それを真似て味を表現すると、カナクギノキのトップテイストは酸味、ミドルテイストは青臭み。そしてラストテイストは、クスノキ科特有の樟脳のような風味。とても人間が食べられるものではありません。
次はツルウメモドキ。わが家でも車道側のフェンスに巻き付けて西日除けにしているので、毎年たくさんの実をつけます。土埃まみれの実は口に入れる気がしませんが、森の中の実なら抵抗はありません。


ツルウメモドキの実

試食してみると、トップテイストはやや酸味があり、ミドルテイストは意外にも梨のような爽やかな味。美味しくはないですが、嫌な味ではありません。
次は、同じくツルウメモドキ属のイワウメヅル。いつも休憩する場所にオニグルミの巨木があって、そこに巻き付いています。他では見たことがなく、馴染みの薄い樹です。


イワウメヅルの実

こちらは、ツルウメモドキと違ってトップテイストは無味無臭、ミドルテイストは青臭み。人間には全く魅力のない味でした。
最後はヒサカキ。この樹の花はタクアンの匂いがするので、実もそんな味かなと食指が動きました。


ヒサカキの実

口に入れて噛むと、トップテイストは酸味、ミドルテイストは強い苦味。実が小さくほとんどが種で果肉はわずかなのに強烈な味です。
私の趣味は鳥と樹の観察ですが、Birdの場合はWatchingかListeningしかできないのに対して、Treeの場合はWatchingのほかにTastingもSmellingもTouchingもできます。植物観察は動物観察よりも多くの感覚で楽しめます。
もちろん、アセビなど有毒な実には手を出さず、試食後は吐き出し、苦味のあるものは水で口をすすぎました。Tree Tastingは注意が必要です。
なお、昨日の台風26号では関東地方に大きな被害が発生し、1カ月前の台風18号では京都府が水害に見舞われました。栃の森にもその爪痕が残っていました。
下の画像は崩落した林道。手前の小石のある部分が道、その先は崩落個所。林道に生えてたスギが下にずり落ちています。



森の中でも、小川の流れが変わっていたり、あちこちに倒木があって道を塞いでいました。
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石川啄木

2013年10月14日 | 野鳥
たはむれに 母を背負いて そのあまり 軽(かろ)きに泣きて 三歩あゆまず
友がみな われよりえらく 見ゆる日よ 花を買い来て 妻としたしむ

これらの短歌で知られる石川啄木の本名は「一(はじめ)」。長男だからでしょう。「啄木」と名乗ったのは18歳の頃。
文学で身を立てるべく、岩手県の盛岡中学校を退学して上京したものの、栄養失調に陥ったため、父親に連れられて一旦帰省します。実家はお寺。
療養の部屋で、「カンカン」とキツツキが樹を叩く音を聞いて勇気づけられ、歌を作る気持ちをあらたにしたそうです。そして、キツツキを意味する「啄木」を雅号にしました。
バードウォッチャーとしては、そのキツツキが何であったかが気になります。山寺の奥の森から聞こえたそうですから、アオゲラよりもアカゲラの可能性が高いでしょう。(以下の動画には音は入っていません)



あるいは、部屋まで聞こえてくる大きな音ですからオオアカゲラかも知れません。さらに、当時は東北地方にも多く生息したであろうクマゲラの可能性もあります。いずれにしても、失意にあった天才歌人を蘇らせたのはキツツキだったわけです。
啄木は短歌や詩のほか小説も書いていて、その中に『鳥影』という作品もあります。バードウォッチャーというわけではないでしょうが、以下のような鳥の歌も何篇か残しています。
草に臥(ね)て おもふことなし わが額(ぬか)に 糞して鳥は 空に遊べり
蛇足ながら、盛岡中学の1年先輩で親友だったのが言語学者の金田一京助。その長男の金田一春彦は日本野鳥の会の設立発起人の一人です。
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ガウディと樹

2013年10月10日 | 木と作家
サグラダ・ファミリアで知られる建築家アントニオ・ガウディは、多くのインスピレーションを自然界から得たそうです。遺された言葉からも、それがうかがえます。
「美しい形は構造的に安定している。構造は自然から学ばなければならない」。「芸術におけるすべての答は、偉大なる自然の中にすべて出ている。私たちはただ、その偉大な教科書を紐解いていくだけだ」。
「自然がいちばん美しい」と思っている私としては、「我が意を得たり」とうれしくなります。
具体的に、例えばサグラダ・ファミリアの内部の柱は、プラタナスがモチーフになっているそうです。下の写真を見ると、柱が樹木のように枝分かれしています。また、天井部分にはヤシの葉をかたどった装飾が施されています。


サグラダ・ファミリアの内部(著作権フリー画像)

さらに、サグラダ・ファミリアで働く労働者の子どもたちのために設計した学校の屋根は波型になっているそうですが、ヒントは波打つ葉っぱ。この天才建築家は、「仕事場の近くにある1本の樹が自分の師である」とも言っています。
デザインに樹木を取り入れただけでなく、構造物を建築する場合、元々ある樹木を伐採しないように設計しています。例えば、グエル公園の建物や道も元からあった樹木を避けるように造られているそうです。
サグラダ・ファミリアには樹木だけでなく、草、花、昆虫、動物など自然界のモチーフがあちこちに表現されているようです。死ぬまでに見てみたいですね。
完成はガウディ没後100年に当たる2026年とのこと。13年後…、無理かな~。
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千鳥足

2013年10月07日 | 野鳥
酒に酔った人の歩き方を「千鳥足」といいます。その由来は、チドリが右に行ったり左に行ったりジグザグに歩くからだと思っていましたが、別の説もあります。
チドリが右足と左足を交差させて歩くからというもの。そう言えば、酔っぱらいも左右の足を交差させて歩いています。
本家のチドリはどうなんだろうと思って、私が撮影したいろんな動画で確かめました。基本的にジグザグに歩くのでやはり第一の説が有力ですが、以下のシロチドリをよく見ると、ジグザグにも歩くし、ときどき左右の足を交差させても歩いています。特に、ゆっくり歩くときや方向を変えるときに交差しています。



千鳥足の由来についてはもう一つ、普通の鳥の足指は4本(後ろに第1趾が1本、前に第2~第4趾が3本)なのに、多くのチドリは第1趾が退化して前の3本しかないのでフラフラ歩くという説もあります。
いろいろなチドリの歩き方を見ましたが、この説には説得力がないように思います。昔の人は、チドリがジグザグに歩いたり、足を交差させて歩くのを見て、酔っぱらいの行動を表現したんでしょうね。
私自身は千鳥足の経験はほとんどなく、酔って前後不覚に陥ったこともありません。ただ、飲み会の後、電車で眠ってしまって、途中下車すべきところを終着駅まで気づかず、折り返しの電車でまた眠って再び通過してしまったことはあります。チドリも行ったり来たりしますから、これも千鳥足の一つなんでしょうか。
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柿食い

2013年10月03日 | 木と作家
果物売り場に柿が並び始めました。大好物なので、毎日食べています。
柿といえば、正岡子規の「柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺」が思い出されますが、子規も私と同じく柿に目がなかったようです。
『くだもの』という随筆に、「学生時代、奨学金をもらうとまず牛肉を食べ、その後に柿などの果物を買って食べた」というようなことを記しています。
さらに、晩年には「我死にし後は 柿喰ヒの俳句好みしと伝ふべし(私が死んだら、柿食いの俳句好きと言ってほしい)」とまで書いています。


毎日1個食べている富有柿

正岡子規の親友・夏目漱石は『三四郎』の中で、子規の柿好きぶりを書いています。三四郎が乗った列車の向いに座った男が次のように語ります。
「子規は果物がたいへん好きだった。かついくらでも食える男だった。ある時大きな樽柿を十六食ったことがある。それでなんともなかった。自分などはとても子規のまねはできない」。
子規は奈良を訪れた際、上記の法隆寺の句以外にも柿を詠んでいます。
柿落ちて 犬吠ゆる奈良の 横町かな
渋柿や あら壁つゞく 奈良の町
奈良の宿 御所柿くへば 鹿が鳴く
今、私たちが口にするのは多くが「富有柿」ですが、正岡子規が食べたのは「御所柿」だったわけです。
柿は生でも食べますし、子規が書いている樽柿やさわし柿、干し柿にもします。私は干し柿も大好き。子規にあやかって、「我死にし後は 柿喰ヒの鳥好みしと伝ふべし」と書いておきます。
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