樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

大型木造ビル

2013年06月27日 | 木造建築
2カ月ほど前、NHKの「クローズアップ現代」で大型木造ビルが都心部で次々に建設されているという話題を放送していました。
その中で取り上げられたのが、横浜市に建築中の大型商業施設「サウスウッド」。建築面積約3,000㎡、延床面積約1万㎡という巨大な木造建築で、地下は駐車場、1~2階はショップフロア、3階は学校や病院のフロア、4階はオフィスフロアという本格的な複合ビルです。
番組では今年3月に竣工した「大阪木材仲買会館」も紹介していました。たまたま、私がよく行く大阪市中央図書館の近くなので見学してきました。



こちらは、地上3階、建築面積457㎡、延床面積1,093㎡と小規模ですが、都心部にこうした大型木造ビルが建ったのは50年ぶりだそうです。
それを可能にしたのが、2010年に施行された法律。CO2を固定する環境素材として木が見直され、公共建築物の木造化を進めるために制定されたそうです。国産木材の利用促進という目的もあるはずです。
もう一つは、耐火・耐震性能の高い木質建材が開発されたこと。NHKなので社名も商品名も伏せていましたが、調べてみると竹中工務店が開発した「燃エンウッド」。
3層構造になっていて、外側が燃えても第2層のモルタル層で燃焼を食い止め、中心部は燃えずに強度を維持するという仕組みです。
使われているのは国産のカラマツ。スギよりも強度が高いため、都心部の大型施設に必要な9mスパンの建築にも使えるとのこと。
横浜の「サウスウッド」には、この「燃エンウッド」の柱が56本、梁が114本使われているそうです。


「大阪木材仲買会館」のエントランスは内装も木材

コピーライターとしては「燃エンウッド」というネーミングに物足りなさを感じますが、こういう木造ビルのオフィスで仕事がしたいですね~。
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ヤマドリ夫婦

2013年06月24日 | 野鳥
今年の春、某所でヤマドリを観察しました。この鳥は警戒心が強くて、これまでは山道で目の前を横切る一瞬の出会いがほとんどでしたが、今回はオスとメスがじっくり姿を見せてくれました。
ヤマドリのオスは尾羽が長く、図鑑によると全長125cm。全身ではタンチョウ(140cm)に及びませんが、尾羽の長さでは日本一でしょう。
『百人一首』で柿本人麻呂が「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の 長長し夜をひとりかも寝む」と歌っているように、「長い」の序詞にもなっています。その長い尾羽をご覧ください。



長いものを象徴するだけでなく、なぜか昔の人は夜になると雌雄が谷を隔てた山に分かれて眠ると思っていたようで、男女が別々に寝ることを表現する際にもヤマドリが登場します。
『新古今和歌集』には「昼はきて夜は別るる山鳥の 影みるときぞ音はなかれける」という歌があるそうです。
また、清少納言は『枕草子』で自分の好きな鳥のことを書いていますが、ヤマドリについて「谷隔てたるほどなどいと心苦し(雌雄が谷を隔てて寝ている夜の間はとても気の毒)」と綴っています。
先の百人一首の歌も、「山鳥」は夜の長さだけでなく、最後の「ひとりかも寝む」にもかかっているようです。
なぜ昔の人は、ヤマドリが雌雄別々に寝ると認識したのか? 気になったので調べてみました。
平凡社『日本動物大百科・鳥類Ⅱ』によると、「雌雄を同居させておくと、よほど広い小屋(放飼場のような)でないとオスはメスを殺してしまう。これはメスが交尾を受け入れる時期が限られており、交尾期以外にはつがい関係がないことを示唆している」。
こういう生態を知っていたからこそ、昔の人は「ヤマドリ=雌雄別々に生息する鳥=一人寝の鳥」というアイコンを成立させたわけですね。
実は、わが家も現在は夫婦別々の部屋で寝ています。家庭不和ではなく、私のイビキがうるさいという身も蓋もない理由からですが、最近は就寝時間が異なるとか、テレビやパソコンなど夜の過ごし方が違うとかで、こういう“ヤマドリ夫婦”が増えているのではないでしょうか。
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ツリーウォッチングの快感

2013年06月20日 | 樹木
週末、栃の森に行ってきました。5月に実施した環境省の委託調査は繁殖期に2回行うことになっているので、今回もスポットセンサスで往復2回調査しました。
そちらは他のメンバーに任せて、私は通常のラインセンサス調査の記録を担当。その合間に樹の観察を楽しんでおりました。
ツリーウォッチングの喜びというか気持ちよさは、緑の葉が風にそよぐ様子を見るところにあるのではないかと思い、今回はそれを表現するべく撮影しました。しかも、札幌のguitarbirdさんのブログで、葉は透過光で撮るときれいに写ることを知り、すべて下から撮りました。
ツリーウォッチングの快感が伝わるかどうか、花も挿入しましたので、とにかくご覧ください。



鳥のさえずりやせせらぎの音を聞きながら、木漏れ日の中で葉や花が揺れるのを見ていると、「このままずーっとここに居たい」と思ってしまうのは私だけでしょうか。
いつもは樹と鳥しか撮りませんが、今回は野草や魚、小動物も撮ってみました。この森の奥深さが分かっていただけるかも知れません。



栃の森の近くに養蜂農家が1軒あって、毎年6月にはメンバーそれぞれが「栃の蜂蜜」を買い求めます。先月来たときはトチノキの開花が遅れていたので、「今年は収穫が少ないのでは…」と心配していましたが、ご主人によると「開花は遅れましたが、その後暖かい日が続いたので一気に開花し、ミツバチを入れた時期とタイミングがピッタリ合ってたくさん収穫できました」とのこと。



そのおかげか、昨年は確か1瓶1200円だったものが1100円でした。以前、妻の友人に1瓶分けて上げたところ、「本当においしい」と褒めていただいたこともあって、プレゼント用に1瓶多く購入しました。
私は味や匂いに鈍感ですが、この蜂蜜は香りが違います。早速、ヨーグルトに入れていただいています。
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叶内拓哉さんに学ぶ「鳥と木」

2013年06月17日 | 木と鳥・動物
6月9日は野鳥の会の総会でした。今年度から私も幹事に復帰したので、8年ぶりに出席しました。
毎年、総会終了後に野鳥研究者などを招いた講演会を行いますが、今回は野鳥写真の第一人者で、図鑑の著者でもある叶内拓哉さんに来ていただきました。
しかも、午前中に開催した探鳥会にも参加していただき、いろいろなお話を伺うことができました。


叶内拓哉さん

叶内さんはもともと園芸業界で9年間仕事されていたこともあって樹木にも詳しく、『野鳥と木の実ハンドブック』という図鑑も出版されています。
ちょうど探鳥コースにヤマザクラの実が成っていて、「甘いから食べられる」ということなので一粒口に入れたところ、最初甘くて後で酸味が出てきました。私も木の実を口に入れる方ですが、叶内さんはほとんどの木の実を実食しているとのこと。「ナンテンは味がない、カナメモチは石みたいに硬い」そうです。


ヤマザクラの実

講演会でもサクラと鳥の話が出ました。ヤマザクラ系の花には蜜が少ないのか小鳥は来ないが、ソメイヨシノなどオオシマザクラ系は蜜が多いので小鳥が集まる。しかも、スズメは子房を潰して吸うのに対して、シジュウカラは子房に穴を開けて吸うなど種類によって吸蜜方法が違うとのこと。観察が細かいですね。
また、同じ樹種で同じように実が成っていても、鳥が来る樹は決まっているので、どの時期のどの樹にどんな鳥が来るかを30年来カレンダーに記録しているとのこと。そこまでしないといい写真は撮れないということでしょう。
もう一つ興味深かったのは、ヤラセ写真の話。叶内さんはカレンダー用の写真の審査員もされているのですが、応募作品の1割くらいがヤラセ写真(例えば、梅の枝を都合のいい所に挿して鳥を止まらせて撮ったような写真)だそうです。
ある年、素晴らしい写真が応募されて即採用にしたものの、ルーペで見るとあり得ないシダが写っていたので没にした。「なぜ没か?」と問い合わせてきた作者にシダのことを指摘すると、黙って引き下がったそうです。
「私は鳥も木も分かりますから、ヤラセ写真を応募してもムダですよ」とおっしゃっていました。
今回の講演会は望遠鏡や双眼鏡のメーカーであるコーワさんのご協力で実現できました。私はコーワの光学機器は持っていませんが(笑)、ありがとうございました。
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ワシは金曜日に飛ぶ

2013年06月13日 | 野鳥
私の好きな音楽ジャンル「ブルース」の中に、『Stormy Monday』というスタンダードナンバーがあります。以下のように、1週間の生活を歌った曲です。
They call it Stormy Monday.(人は嵐のような月曜日と言う)
But Tuesday's just as bad.(でも、火曜日も悪い日)
Lord, and Wednesday's worse.(神様、水曜日は最悪)
And Thursday's all so sad.(そして、木曜日はとても悲しい日)
The eagle flies on Friday.(ワシは金曜日に飛ぶ)
Saturday I go out to play.(土曜日は遊びに行く)
Sunday I go to church,(日曜日は教会へ行って)
Gonna kneel down and pray.(ひざまづいてお祈りをする)
ブルースは虐げられた黒人たちの歌なので暗い曲が多く、この歌詞でも月曜から木曜までは陰鬱です。ところが、金曜日になると唐突にワシが飛びます。
私がこの曲と出会ったのは40年ほど前ですが、以来「なぜ金曜日にワシが飛ぶのだろう?」と疑問でした。最近、ようやくその謎が解けました。
アメリカの1ドル札の裏面には国鳥のハクトウワシが描かれています。そして、この国は週給制なので金曜日に給料が支払われます。つまり、The eagle flies on Friday は「給料日」という意味のようです。


1ドル札の裏面、右に描かれているのがハクトウワシ

それを頭に入れて聴くと、月曜から木曜までは(多分、苦しい労働で)最悪だけど、金曜日に給料をもらって、土曜日には遊びに行く。そして、日曜日には教会へ行ってお祈りを捧げる…という1週間のストーリーとして繋がります。40年来の疑問がスッキリ解決しました。
ちなみに、現在の日本の紙幣には1万円札の裏に鳳凰が描かれているだけですが、以前の1万円札には国鳥のキジが、千円札にはタンチョウが描かれていました。
日本式に歌うと、The Pheasant flies on 25th となるのでしょうが、ブルースっぽくないな~。
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落語の中の樹木

2013年06月10日 | 木と文化
この冬、見たいテレビ番組がないので、自室に閉じこもってYouTubeで落語ばかり聞いていました。その中に、樹木をテーマにした演目が2つありました。
一つは「植木屋」という軽いサゲ話。もう一つは、オーバーに言うと植物の生態系をテーマにした「百年目」という話。
そのストーリーは、表面は堅物・裏は遊び人の番頭が、ある夜遊び呆けているところを旦那に見つかり、翌日クビにされると覚悟していたところ、「遊ぶときは思いきり遊びなさい」と勧められたうえに、日頃の真面目さを認められて暖簾分けの約束までしてもらうというもの。
店では真面目すぎる番頭を、旦那は次のように諭します。
「店の主を“旦那”と言う訳をご存知か。昔、天竺に栴檀(センダン)という立派な木があり、その下に南縁草(ナンエンソウ)という汚い草がいっぱい生えていた。目障りなので南縁草を取り除いたら、栴檀が枯れてしまった。
調べてみると、栴檀は南縁草を肥やしにして、南縁草は栴檀から露をもらって育っていたことが分かった。栴檀が育つと、南縁草も育つ。栴檀の“ダン”と南縁草の“ナン”から“ダンナン”となり、それが“旦那”になったそうです。
こじつけだろうが、私とお前の仲も栴檀と南縁草。そして、店ではお前が栴檀、店の者が南縁草。その南縁草は最近元気がない。南縁草にも少し露を降ろしてやってください」。
つまり、部下をもっと自由にやらせなさいと専務を諭す太っ腹な社長の話です。


「双葉より芳し」と言われる栴檀はインド原産の樹。こちらは日本在来のセンダンの花。

いろんな落語を聞きましたが、上方落語はやっぱり米朝ですね。話に艶と奥行があります。この「百年目」も米朝で聞きました。
関西では枝雀ファンも多いですが、コミカルな動きや表情、「すびばせんね~」といったギャグで笑わせるのは私には邪道に思えます。
江戸では、やはり志ん朝でしょう。談志は小骨が多くて滑らかではないですが、「芝浜」だけは絶品。落語を聞いて泣いたのは初めてです。
学生時代、浅草や新宿の寄席に通ったことがありましたが、久しぶりに寄席で落語が聞きたくなりました。
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贅沢

2013年06月06日 | 野鳥
隣町の神社に今年もフクロウがやってきてヒナを2羽育てたようなので、様子を見てきました。
昨年は親だけ観察して巣立ち後は行かなかったので、ヒナを見るのは初めて。白い産毛に包まれて、飛ぶのもおっかなびっくり。人間で言えばヨチヨチ歩きでしょうか。



実は、フクロウはわが家の近くでも繁殖しているようで、姿を見たことはないですが、毎年今ごろになると夜に声が聞こえてきます。
また、1カ月ほど前から毎日、朝から夕方までホトトギスが鳴いています。隣のお寺の森や裏山あたりを巡回しているようで、時間によって声の方角が変わります。
先日から2~3回、声のする場所へ行ってカメラを構えましたが、姿は現しません。しかたがないので、声だけ動画に収めました。



昼間、庭で本を読んでいると、この「オチョチョギス、オチョチョギス」という声が近くなったり遠くなったりしながら聞こえてきます。夕方、窓を開けてお風呂に入っていると、聞こえてくることもあります。
そして夜、自室でパソコンを触っていると、不意に「ゴロッホ、ホッホ」という声が耳に入ってきます。先日は、同じ方角から「ホッホッホー」という声も聞こえてきました。フクロウだけでなく、アオバズクもいるようです。
一応、私鉄沿線の駅から徒歩10分の住宅地に住んでいて、居ながらにしてホトトギスやフクロウ、アオバズクの声を聞くというのは、何とも贅沢な話です。
札幌のguitarbirdさんのご自宅の庭にはウソやノゴマ、ギンザンマシコが来るそうで、いつもブログに「うらやましい」とコメントしますが、隣の芝はあおく見えるもの。わが家もなかなかです。
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初夏の「栃の森」

2013年06月03日 | 樹木
5月下旬に栃の森へ行ってきました。今回はいつもの野鳥生息調査に加えて、夜の鳥の調査と環境省による5年に一度の「モニタリングサイト1000」の調査を行いました。
通常5時起床のところ夜中2時に起きて車で森の奥に入り、夜しか鳴かない鳥の声をチェックするのです。出発時に早速キャンプサイトでオオコノハズクとトラツグミの声が聞こえました。
森の中ではコノハズク3羽、ヨタカ4羽のほかツツドリとジュウイチの声が聞こえたようですが、遠いこともあって難聴気味の私にははっきりとは聞こえませんでした。それにしても、期待したより個体数は少なかったです。
そのまま5時から「モニタリングサイト1000」の調査を開始。通常の調査はコースを歩きながら見聞した鳥の種類を記録するラインセンサスですが、こちらは5カ所のポイントで10分ずつ往復2回記録するスポットセンサス。
私は植生調査を担当したので、各ポイントの樹種や樹高、被覆率を記録したり写真を撮ったり、けっこう忙しいものの往路で終了。復路は余裕があったので、樹の花や鳥をカメラに収めました。
今回のハイライトは、ミソサザイの巣立ち。まだ産毛が残る可愛いヒナが次から次へ飛び出して、合計6羽が巣立ちました。その様子を含めてご覧ください。



樹の花では、マルバアオダモとアズキナシの花が目立ちました。例年はほとんど見られませんが、今年は開花時期がずれたようで、思わぬ出会いとなりました。アズキナシのキャプションに「別名ハカリノメ」と書いたのは、枝先に白い斑点があり、それを天秤式の秤の目盛りに例えたからです。
通常のコースは往復約10km。その中でスポットセンサスの調査コースを往復した後、さらに通常調査の終点まで歩いて帰ってきたので、さすがに疲れました。
キャンプサイトに戻ったのが夕方4時。都合14時間も森の中をウロウロしていたことになります。帰宅して車泊用の寝具や道具を片付けると、もうヘロヘロ(笑)。それでも、新緑の森歩きは止められまへん。
なお、現在この森(「栃の森」は仮称)は立ち入り禁止ですが、私たちが約20年前に始めた野鳥生息調査を継続するため、管理者から許可を得て入山しています。
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