樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鳥の保育園

2019年07月25日 | 野鳥
白神山地から帰った翌々週、いつもの栃の森に行ってきました。前夜から降り続いていた雨は、翌日も降ったり止んだり。鳥もあまり出てきませんが、湿原の林でカラ類の混群に出合いました。
よく見ると、ほとんどが幼鳥。シジュウカラ、ヒガラ、ヤマガラの幼鳥が30羽ほど入れ替わり立ち替わり、樹の枝先で採餌しています。すぐ近くにはキバシリの幼鳥も2羽いました。
保育園のお散歩を見ているようで、心なごみます。そのうちヒガラ組の1羽をカメラに収めることができました。無邪気で可愛いですね。



私はいつもは樹と鳥しか撮影しませんが、支部の記録用動画を撮っている仲間がお休みだったので、代役として冬虫夏草やタゴガエル、マムシなども撮影しました。アナグマとテンの頭蓋骨も撮りました。
帰路、トチノキの巨木があるせせらぎでカワセミに遭遇。こちらも幼鳥です。こんな山奥にもカワセミはいて、以前から鳴き声を聞いたり飛ぶ姿を一瞬目撃したことはありますが、じっくり観察できたのは初めて。



何度もせせらぎに飛び込んでいたので、多分、親離れした後、餌を捕る練習をしていたのでしょう。
幼鳥たちがこうして一人前になって、来年また私たちの目を楽しませてくれるとうれしいです。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

白神山地の樹木

2019年07月18日 | 樹木
前回に続いて白神山地ツアーのご報告です。今回は樹木。ツアーの目的は鳥見ですが、せっかくなので、ディープなブナ林を体感すべくガイドを雇いました。
まず案内されたのがマザーツリー。当地のブナがすべてこの母樹から生まれたわけではないでしょうが、これまでに私が栃の森や各地のブナ林で目にした中で最大でした。残念ながら最も太い枝が折れて、往年の威風が損なわれていました。
その後、ガイドは林道から森の中に分け入り、腰のナタで小枝を切り開きながら奥へ奥へと進んで行きます。密林の中をヨタヨタついて行くと、立木がなく、ブナの幼木がびっしり生えた20畳ほどの空間に到着。ガイド自身が作ったという木のベンチに腰掛けていると、コーヒーをいれてくれました。
彼は客の反応や会話から案内すべきコースを選んでいるようで、鳥や樹の話をしている私たちを熱心な自然観察者と判断して、このプライベートスポットへ案内してくれたようです。
林道から眺めるだけでは把握できなかったのですが、密林の奥に分け入ると、中はブナの純林。高木はほぼ100%ブナです。その情景を動画で撮ってみました。



歩きながら目に入る低木の樹種が最初は識別できませんでした。よく見るとオオカメノキやクロモジなどですが、いつも栃の森で目にする同種に比べると葉が異様に大きいのです。しかも、栃の森ではせいぜい人間の高さ程度ですが、ここでは倍ほどの樹高。翌日に訪れた弘前大学の白神自然観察園でも同様でした。


クロモジの葉。栃の森では半分以下


マルバマンサクの葉もデカイ

帰りの飛行機の中で、「高木のブナが密生しているので降り注ぐ光が少なく、必要な光合成を行うために葉が大きくなった。そして、光をめぐる競争に勝つために上へ伸びる必要があるので樹高が高くなった」という仮説を思いつきました。
しかし、信州や東北に出かける機会が多い栃の森の同行メンバーによると、「樹木の葉は北に行くほど大きいです」とのこと。葉のサイズは、光ではなく緯度と相関関係があるようで、一度調べてみようと思います。
東北は樹の葉がデカイだけでなく、樹体そのものも大きいようで、白神山地から十二湖への移動途中に「日本最大のイチョウ」を見てきました。看板によると、樹齢1000年以上、高さ31m、幹回り22mだそうです。

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

白神山地の野鳥

2019年07月11日 | 野鳥
先日、いつもの仲間と3人で白神山地に行ってきました。青森県に足を踏み入れるのは初めて、飛行機に乗るのも、同じく3人の沖縄ツアー以来11年ぶり。
1日目は世界遺産のブナ林を堪能し、2日目は早朝から鳥見。いつものことですが、5時頃に部屋を出てひと回りし、いったん宿へ戻って朝食とチェックアウトをすませて再び鳥見というパターンです。
その2日目の朝飯前、電柱に止まるクマタカに遭遇。これまで何度も飛ぶ姿を下から見上げたことはありますが、止まっているクマタカを見るのは初めて。車を降りると逃げるので、乗ったままフロントガラス越しに撮った映像が以下です。



仲間によると、頭の色から若鳥とのこと。成鳥は人工物に止まったりしないそうです。
その後、暗門の滝へ寄った際に、カケスを発見。珍しい鳥ではありませんが、警戒心が強くてまともに撮影できたことがありません。
葉裏に付いている虫を探しているようですが、川の音に交じって「チ、チ、チ…」と聞こえるのはキセキレイの声で、カケスがヒナを襲わないように警戒しているようです。



3日目は十二湖でアカショウビンとヤマセミを期待したのですが、朝から雨。朝飯前のラウンドではオシドリの親子を見つけました。この鳥も珍しくはないですが、関西で見るのは越冬中の個体で、子連れを見ることはありません。
その後、場所を変えてアカショウビンの声が聞こえた湖のほとりで、傘を差してねばりました。期待通りというか、予想外にもすぐ近くを2羽が飛びましたが、そのまま対岸の森に入ったまま出てきません。一瞬ながら、アカショウビンにお目にかかれたのは、確か7年ぶり。
赤い“幻の鳥”はカメラに収められなかったのですが、この湖でもオシドリの親子がのんびりと泳いでいたので、暇つぶしに撮影しました。
前半の朝飯前の家族はヒナが5羽いますが、後半の家族は3羽。多分、天敵に襲われたのでしょう。また、オシドリは仲のいい夫婦の象徴ですが、オスは子育てには関わりません。



このほか、美しい景色を楽しんだり、意外な出合いがあったり、2泊3日の白神山地ツアーはアッという間に終わってしまいました。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

モーツァルトと鳥

2019年07月04日 | 野鳥
興味があって、モーツァルトと鳥の関係を調べていました。『神モーツァルトと小鳥たちの世界』という本には、「モーツァルトの作品には鳥の声が存在する」と書いてあります。また他の本には、モーツァルトとホシムクドリとの謎めいた出合いが記されています。
ある時、ウィーンの街を歩いていたモーツァルトは、1軒の小鳥屋の前で足を止めます。自分が1カ月前に作曲したばかりの、つまり初演前で誰も知らないはずの旋律を歌う鳥がいたからです。声の主はホシムクドリ。


ホシムクドリ(Public Domain)

モーツァルトはそのホシムクドリを買って持ち帰り、さえずりを採譜しました。一方、1カ月前に完成したのは、ピアノ協奏曲第17番ト長調(K453)。その第3楽章のテーマと鳥の声を比較した楽譜が下。ほとんど同じです。



ホシムクドリはものまねが上手な鳥ですが、未公開の曲をどこで覚えたのか?という疑問が湧いてきます。
昨年、アメリカのある野鳥研究家が、この謎を解くために自らもホシムクドリを飼い、ウィーンやザルツブルグなどモーツァルトが暮らした街を取材して1冊の本を上梓しました。タイトルは『モーツァルトのムクドリ~天才を支えたさえずり~』。



その中に、モーツァルトが窓を開けて作曲していたので、その音を聞いてまねしたのではないかなどいくつかの推論が披露されています。そして、この天才作曲家がいかにホシムクドリを愛していたかについても詳しく述べられています。
例えば、ホシムクドリが死んだとき、父親の葬儀にさえ出席しなかったモーツァルトが葬儀を挙行し、次のような追悼の詩をつづります。「その死を思うとこの胸はいたむ。(中略)憎めないやつだった。ちょいと陽気なお喋り屋。ときにはふざけるいたずら者…」。
また、ホシムクドリだけでなくかカナリアも飼っていたなど、モーツァルトと鳥に関する面白いエピソードが書いてあります。偉大な作曲家の頭の中には、鳥のさえずりがいっぱい詰まっていたのかも知れませんね。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする