樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

一妻多夫

2018年08月30日 | 野鳥
鳥の結婚形態は一夫一妻、一夫多妻、一妻多夫、乱婚など多様です。同じ一夫一妻でも、タンチョウは人間のように基本的に終生添い遂げますが、オシドリは年ごとに相手を変えます。
日本に生息する数少ない一妻多夫の鳥がタマシギ。他の鳥は雄が派手・雌が地味ですが、この鳥は雌が派手・雄が地味で、子育ても雄がします。このタマシギの結婚形態に関して、先日から興味深い事例を観察しています。
先々週「シギの季節」でお伝えしたように、8月中旬から調査を兼ねて3日に1回のペースで近くの干拓地へ出かけています。17日にタマシギのペアを発見し、カメラに収めたのが以下の動画。前半は仲良く一緒にいますが、後半では雌が交尾を促すようにお尻を上げて誘うものの、雄はその気がないようで無視して通り過ぎます。



その後、21日には雌は発見できなかったものの、同じ休耕田に雄が2羽いました。24日には雌1羽、雄2羽を発見。27日には雄2羽が少し離れた場所でじっとしています。頭しか見えないので撮影はしていませんが、どうやら抱卵しているようです。さらに、昨日は雄が3羽に増えていました。
つまり、1枚の休耕田に3羽の雄が同居し、それぞれが卵を温めているのです。3羽の雄の距離は最大5mくらい。こんなシーンを見るのは初めてです。
通常は近くの別の田んぼに複数の雄が散らばっていて、雌が次々に交尾して産卵し、それぞれの田んぼで雄が抱卵・子育てしますが、今回はいわば同居型の一妻多夫です。ヒナがかえったらどういうことになるのか、しばらく通って観察を続けようと思っています。
ちなみに、雄親が子育てしている様子を2014年撮影の動画でご覧ください。前半は餌をもらおうと親鳥にくっついて歩く4羽のヒナ、後半は2週間後に撮影した同じ親子。「よっこらしょ」と畔を登ります。

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渡り鳥のパワーを飲む

2018年08月22日 | 野鳥
最近、気になるテレビCMがあります。小林旭がギターを弾きながら「まだまだ頑張るぞ、俺たちは…」と歌って、ドリンク剤を飲むというもの。YouTubeにも投稿されています。



頭の中が鳥だらけの私は、この中の「ヒミツは、渡り鳥のチカラ。」というフレーズに反応しました。「どういうこと?」と思って調べると、何千キロも飛び続ける渡り鳥の持久力は鳥の胸肉に含まれるイミダペプチドという成分に由来することが分かったので、それを使って疲労回復剤をつくったということのようです。
開発した日本予防医薬は大阪大学医学部が関係するバイオベンチャーとのことで、よくある怪しげなサプリメントではなさそうです。
ただ、同社のウェブサイトには以下の画像がありますが、これはトビでしょ。渡り鳥ではありません。また、上記のCMで空を渡っていくのはペリカンで、日本には生息しません。



突っ込みどころの多い広告ですが、分かる人には分かる面白い伏線もあります。私が子供の頃、「ギターを持った渡り鳥」という映画がヒットし、その後7本がシリーズ化されました。その主役の流れ者を演じたのが、小林旭。
往年の「ギターを持った渡り鳥」が、渡り鳥が飛ぶ空の下で、渡り鳥の持久力に由来するドリンク剤のコマーシャルをしているわけです。私より下の年代の人にはピンとこないでしょうが、団塊の世代にはニヤッと笑えるCMです。
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シギの季節

2018年08月16日 | 野鳥
「そろそろ来てるかな?」と思って、昨日シギ・チドリ観察のため近くの干拓地に出かけました。今年から減反政策が完全に廃止されたため、シギやチドリが羽を休める休耕田が大幅に減ると予想していましたが、2週間ほど前の下見ではそれほどでもなく、減ったのは3~4割でした。
最初にカメラに収めたのはタカブシギ。水を張った1枚の休耕田にコチドリ約15羽といっしょに2羽が草陰でじっとしていました。



この干拓地に北陸新幹線の延伸ルートが建設されようとしています。その計画が具体的になれば、野鳥や環境を保護するためにさまざまな活動が展開されるはずです。
そのために、今年から野鳥の会として生息データを記録することにしました。私のようにこの干拓地で野鳥観察している人たちに協力していただいて、調査データを収集するわけです。昨日はその方法をテストするために、地図に観察場所をプロットしたり、時刻や種類や個体数を記入しました。
毎年アオアシシギの小群がたむろする休耕田があって、ゆっくり近づいたのですが、警戒したサギが飛び立ち、それにつられてアオアシシギ5羽が飛び去りました。1時間半ほどしてから再アプローチ。姿勢を低くして接近すると、先ほどのアオアシシギ5羽にタカブシギ2羽も加わっています。



このほか多数のコチドリとケリ、識別できなかったジシギ1羽を記録しました。例年のことですが、まずタカブシギとアオアシシギがやって来て、その後いろいろなシギやチドリが渡ってきます。どんな鳥に出合えるか楽しみです。調査もしっかりやらないと…。
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温暖化と野鳥 part-2

2018年08月09日 | 野鳥
7月に「温暖化と野鳥」と題して、気温上昇によって野鳥が減少したり絶滅する話をしましたが、逆に個体数が増える種類もいます。
例えばイギリスでは、北海の水温上昇によってプランクトンや魚の種類が替わったために、それを食べていたミツユビカモメが20年間に70%も減少した反面、アマサギやセイタカシギなど120種もの鳥がイギリス国内で繁殖するようになったそうです。温暖化によって、生息域が北上したわけです。
また、アラスカでは温暖化によってシロハヤブサやホンケワタガモの繁殖が危ぶまれる反面、ミヤマシトド、ツメナガホオジロなどはその恩恵を受けて個体数が増えているとのこと。
日本でも、コハクチョウが増えたのは温暖化の影響であるという研究が発表されています。動画は6年前に湖北で撮影したコハクチョウ。



コハクチョウの日本への渡来数は1975年の1,745羽に対して2008年は40,485羽。33年間に23倍にまで増えています。
その要因を探るために、研究チームは繁殖地(シベリア)・中継地(北海道)・越冬地(新潟県)の3地点で個体数を記録し、気温や降雪量の変化を調査。最高気温が33年間に繁殖地で約3.8℃、中継地で約1.5℃、越冬地で約2.6℃上昇していることを把握しました。
そして、各地点の最高気温が高いほど成鳥の生存率が高くなり、繁殖地ではひなが多く育ち、日本への幼鳥の渡来数も増える傾向があることを解明しました。
研究者は、「繁殖地と春の渡りの中継地の気温が高く、越冬地の降雪量が少ないと、翌年の越冬数が増えることが示唆される。越冬地の降雪量が減れば、水田などで餌を採りやすくなるだろうし、中継地や繁殖地の気温上昇は生息に十分な餌を早くから得ることを可能にする」と分析しています。
野鳥が減少したり絶滅するのは寂しいですが、かといって温暖化の影響で数が増えるのは単純には喜べません。
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シンボルとしての鳥

2018年08月02日 | 野鳥
私はツイッターをやりませんが、Twitter社のシンボルマークは鳥。日本ではツイッターに投稿することを「つぶやく」と言うようですが、twitterは本来「さえずる」という意味です。



創業当時のマークは右でしたが、2012年に左に変更されました。この鳥にも名前があって、2代目(左)の名はTwitter Birdで、先代(右)の名はLarry Bird。これはNBA(プロバスケットボール)の選手の名前で、Twitter社の創業者がファンだったからと言われています。そのラリー・バードには冠羽がありますから、モデルはヒバリでしょうか。
多くの写真家やバードウオッチャーがカメラや双眼鏡でお世話になっているキャノンにシンボルマークはなく、ロゴタイプ(特定のフォント)だけですが、内部的に使っている社章はワシです(下左)。同社のフェイスブックによると、「キヤノングループでは、社章デザインを(2013年)4月1日より『レンズを想起させるデザインの円形の社章』から『鷲の社章』へと一新しました」。
1937年に創立した当時の社章はワシでしたが、その後円形の社章に変更され、創立75周年の2013年に再びワシに戻したわけです。ラグビーのトップリーグに所属するキャノンのチームの名前も「キャノン・イーグルス」で、マーク(右)に描かれているのはワシ。

 

意外なことに、カレーや胡椒のメーカー「エスビー食品」も鳥に由来します。同社は1930年に太陽と鳥を図案化した「ヒドリ」を商標にしました。「社運が、日が昇る勢いであるように、また鳥が自由に大空をかけめぐるように、自社製品が津々浦々まで行き渡るように」という願いを込めたそうです。
当時の社名は日賀志屋(ひがしや)でしたが、1949年にマークの太陽と鳥(Sun & Bird)のイニシャル「S&B」から「エスビー食品」に社名変更しました。当時の商標(下)を見る限り、モチーフはハトのようです。

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